カウンセリング研究
Online ISSN : 2186-4594
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53 巻, 2.3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 服部 典子, 飯田 順子
    原稿種別: 原著
    2021 年 53 巻 2.3 号 p. 63-76
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,大学生が卒業に向けて計画的に単位を取得していく履修行動に着目し,履修行動の個人差を測定する尺度を作成することを第1の目的とした。また,自己決定性の違いにより,履修行動に違いがみられるか否かを検討することを第2の目的とした。尺度の作成過程では,大学生や履修支援経験がある教職員を対象としたインタビュー調査と先行研究を参考に項目を収集した。次に,大学生396名を対象に本調査を実施した。因子分析の結果,大学生の履修行動は,情報探索,自己探索,相談・援助希求,履修計画の作成の4側面があることが明らかにされた。各下位尺度のクロンバックのα係数の値は.82~.88となり,高い内的一貫性が示された。各下位尺度は既存の尺度と想定した方向で関連がみられ,一定の併存的妥当性が示された。性差では,履修計画において女性の得点が男性の得点より有意に高い傾向が示された。学年差では,情報探索,援助希求,履修計画に有意差がみられた。自己決定性のレベルから4群に分類し履修行動尺度の得点を比較した結果,低動機づけ群の得点はいずれも他の群と比較して有意に低かった。大学における履修行動支援・キャリア形成支援への提言がなされた。

ケース研究
  • 益子 洋人
    原稿種別: ケース研究
    2021 年 53 巻 2.3 号 p. 77-88
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,①自閉スペクトラム症の行動特徴をもつクライアントへの支援経過を示し, 自己愛性障害と自閉スペクトラム症の生育歴以外の相違点を探索的に検討することと,②援助過程におけるメディエーションの有効性を考察することであった。中学入学時からクラスメイトとの関係に違和感を覚えつつ,周囲に合わせて生活してきたクライアントは,3年時のテストをきっかけに登校渋りを呈した。スクールカウンセラーは,クライアントを自己愛性障害とアセスメントし,コフートの自己心理学を踏まえた関係精神分析に基づく支援を行った。その結果,16回の面接で,クライアントの学校適応は改善した。この経過をもとに,自己愛性障害と自閉スペクトラム症の生育歴以外の相違点を,①自分なりのやり方でも他者の気持ちを想像しようとすることができるか,②そうなる理由を現在の対人関係から推測できるか,③関係精神分析に基づく支援に良好な反応するか,という視点からまとめた。また,経過中に生じる支援者との葛藤に際して,支援者がメディエーションのような葛藤解決の方法を知っておくことで,よりよい支援を継続的に提供できるようになる可能性を考察した。

  • 日高 直保
    原稿種別: ケース研究
    2021 年 53 巻 2.3 号 p. 89-99
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,育児不安を抱えて教育相談に来所した母親のケースを記述し,母親の有するレジリエンスと有効な母親支援のあり方について検討することを目的とした。研究の結果,面接を通じて母親の抱える不安や母親自身のあり方について理解が深まり,母親が有する自己理解の力や問題解決に向けて行動する力が賦活されたと考えられた。また,子育てへの自信を身に付け将来を肯定的に据えられるようになったこと,および周囲からのサポートを認識できるようになったことも,母親のレジリエンスが発揮された結果である可能性が示唆された。そして,教育相談において来談者である母親のレジリエンスを賦活するためには,セラピストが共感的な態度で面接に臨むことで母親と信頼関係を築き,母親が安心して子育ての悩みを話せる場を作り出すことが重要であると考えられた。加えて,子育てにおける困難や子どもへの関わり方,母親自身のあり方について面接を通じて共に考え,時に具体的な提案を行うことが,母親のレジリエンスを賦活すると推察された。

ケース報告
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