学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
4 巻, 4-5 号
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目次
エキスパートレビュー
  • 市川 大輔, 庄田 勝俊, 赤池 英憲, 河口 賀彦
    原稿種別: エキスパートレビュー
    2022 年 4 巻 4-5 号 p. 155-159
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/05/30
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    近年の胃がん患者の高齢化に加えて,進行胃がん患者では,胃がんに伴う栄養摂取困難や担がん状態による身体への影響も合わさって,術前に栄養状態が不良である胃がん患者を治療することが少なくない.サルコペニアに代表されるこれら術前栄養状態の不良が,術後短期成績を不良にし,がんの長期予後も低下させる可能性が報告されている.また,外科治療後には胃切除に伴う食事摂取量の減少や,消化・吸収障害から様々な栄養状態の不良をきたすことが知られており,これら術後体重減少や筋肉量の減少が予後に悪影響をおよぼすことも知られている.これらへの対策として,周術期の栄養介入が臨床試験として行われ,一定の効果は報告されているが,さらなる治療成績の向上を目指して,栄養剤の服薬アドヒアランスを上げる工夫や,運動療法併用の有用性等も報告されている.本稿では,これら近年の胃がん診療における栄養管理の重要性に関する報告を紹介する.

  • 竹内 裕也, 羽田 綾馬, 坊岡 英祐
    原稿種別: エキスパートレビュー
    2022 年 4 巻 4-5 号 p. 161-165
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/05/30
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    食道がん手術は高侵襲手術であり,周術期を合併症なく安全に管理するために,多職種によるチーム医療が重要視されている.当院では,より安心・安全な周術期管理に向けて,多職種スタッフから構成される周術期管理チーム(Hamamatsu perioperative care team;以下,HOPEと略)を立ち上げた.これまでHOPE導入により,食道切除術後肺炎の予防,体重減少抑制等の効果が得られた.現在,スタッフ教育の徹底とともに治療日記やwearable fitness tracking deviceなど新たな試みを導入することでHOPEの成熟を図っている.本稿では,本邦における周術期チーム医療の変遷に触れつつ,チーム医療の有用性と今後の目標について考察する.

原著
  • 花本 尊之
    原稿種別: 原著
    2022 年 4 巻 4-5 号 p. 167-173
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/05/30
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    【目的】大腸がん根治手術後再発に対する化学療法後の予後と骨格筋の変化との関連を検討した.【対象と方法】2010年4月から2021年3月まで,大腸がん根治手術後再発に対する化学療法が終了となった50例を対象として,化学療法後の予後と骨格筋比率(化学療法開始時と終了時の骨格筋面積の比率)および臨床病理学的因子との関連を解析した.【結果】単変量解析では,年齢および骨格筋比率減少,prognostic nutritional index(PNI)低下,modified glasgow prognostic score(mGPS)2,経口摂取低下が有意に予後不良であった.多変量解析では,骨格筋比率減少が独立した予後不良因子であった(ハザード比 0.94,p = 0.017).化学療法終了後90日生存率は,骨格筋比率90.5%未満で0.26[95% confidence interval(CI);0.10–0.47],90.5%以上で0.87(95%CI;0.68–0.95)であり,ログランク検定では90.5%未満で予後不良であった(p < 0.001).【結論】骨格筋比率は化学療法後の予後と関連し,化学療法終了後90日生存予測の指標としての有用性が示唆された.

総説
  • 一丸 智美
    原稿種別: 総説
    2022 年 4 巻 4-5 号 p. 175-181
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/05/30
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    短腸症候群(Short bowel syndrome;以下,SBSと略)では,長期にわたる静脈栄養(Parenteral nutrition;以下,PNと略)により,肝障害などのQuality of Lifeの 低下をきたす合併症が多い.SBSは残存腸管の状態からI型(空腸瘻),II型(空腸-結腸吻合),III型(空腸-回腸吻合)に分類される.I型は脱水・電解質異常のリスクが高く,II・III型はI型よりPN離脱の可能性は高いものの,結腸が残存するゆえに尿路結石,D型乳酸アシドーシスという合併症の発症リスクがある.食事療法は,単純糖質制限や少量頻回食などI~III型共通の内容もあるが,II・III型に特化したシュウ酸制限など,SBSの分類に応じた対応が必要になる.SBSの食事療法は複雑だが,残存腸管の解剖学的特性を理解して実践することが重要で,症状の緩和や腸管順応の促進により,PNの離脱/減量の可能性がある.

症例報告
  • 吉田 稔, 角 和恵, 宮城 朋果, 内藤 みなみ, 田中 優子, 岡田 晋一郎, 山口 貴宣, 斎藤 浩輝, 毛利 健, 吉田 徹
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 4 巻 4-5 号 p. 183-188
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/05/30
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    【はじめに】「亜鉛欠乏症の治療指針」により亜鉛測定や補充機会が増えている.亜鉛投与は腸管での銅吸収低下をきたすため両者の測定が推奨されている.亜鉛・銅欠乏時,本邦では銅製剤はなく,治療法は確立していない.亜鉛欠乏は創傷治癒遅延,銅欠乏は好中球減少等を引き起こすため治療が必要である.今回,亜鉛・銅欠乏を合併した難治性創傷に対し高カロリー輸液用複合微量元素製剤(以下,複合微量元素製剤と略)を用い,両者欠乏を補い奏功した症例を経験した.

    【症例】パーキンソン病と幽門側胃切除術後の70代女性.大腿骨頸部骨折で入院し,人工骨頭置換術後,創部離開した.亜鉛銅含有経腸栄養剤,酢酸亜鉛で推奨量を補ったが,亜鉛・銅欠乏を認めた.複合微量元素製剤を末梢静脈投与後,両者の値は上昇し,その後創傷は改善・閉鎖術で治癒した.

    【考察/結語】吸収不全や排泄増加による亜鉛・銅欠乏例では,複合微量元素製剤の静注が有効な可能性がある.

  • 河合 純兵, 小森 充嗣, 河合 雅彦, 前田 健一, 堀尾 忠司, 吉田 智子, 土川 拓也, 小寺 聖, 田中 さとみ, 飯田 真美
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 4 巻 4-5 号 p. 189-193
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/05/30
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    大腿静脈ルートでの皮下埋め込み型中心静脈アクセスポート(central venous port;以下,CVポートと略)留置による静脈栄養管理は感染症や血栓症のリスクが高く,通常は推奨されない.2005年空腸デスモイドに対して小腸切除術を施行中に,上腸間膜動脈を損傷し大量小腸切除と空腸ストマ造設を行った.結果的に短腸症候群となりCVポートによる静脈栄養管理を導入したが,カテーテル感染を繰り返し,CVポートの抜去と造設を何度も必要とした.経過中に両側内頸静脈から鎖骨下静脈合流部に狭窄をきたし,上大静脈内へのカテーテル留置が困難となり,大腿静脈ルートでCVポートを造設した.その後,カテーテル閉塞とセプタムの露出はあったが,経路変更や感染症の合併はなく現在まで経過している.ポート留置の工夫と適切な管理により,大腿静脈ルートでもCVポートを用いた長期の中心静脈栄養管理は可能であり,選択肢になり得ると思われた.

研究報告
  • 吉田 和馬, 高橋 加奈, 白井 由美子, 守田 俊介, 岩本 洋, 田中 光司, 宮地 一裕
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 4 巻 4-5 号 p. 195-200
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/05/30
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    【目的】化学療法中のがん患者を対象に,小容量・高たんぱく質・エイコサペンタエン酸含有栄養補助食品『小さなEプリン』(スイートポテト味,紅茶味)の官能評価を実施した.また,非がん患者の評価と比較し,がん患者に特に適した食品かを調べた.【対象および方法】化学療法中のがん患者50名および非がん患者74名を対象に「おいしさ」「風味属性」「食感」「容量」「継続性」に関する官能評価を実施した.【結果】スイートポテト味が好評で,76%の患者が「おいしい」と評価した.容量を「ちょうどよい」と評価した患者は約65%,「栄養補給のために毎日続けられると思う」と評価した患者は62%だった.また,がん患者は,非がん患者よりも「風味属性」「食感」「継続性」の一部の項目で有意に評価が高かった.【結論】『小さなEプリン』は,化学療法中のがん患者に適した栄養補助食品と考えられた.

編集後記
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