学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
2 巻, 2 号
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目次
総説
原著
  • 小野寺 英孝, 最上谷 拓磨, 森 みさ子, 川端 千壽, 金子 真由美, 松嶋 真哉, 川畑 亜加里, 清水 朋子
    2020 年 2 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    【目的】脳卒中患者における急性期至適栄養プロトコールを経腸栄養剤の違いから検討した.【対象および方法】急性期脳卒中患者のうち,早期経腸栄養プロトコールで栄養管理が行われた患者51例を対象とした.1.0kcal/mLの標準組成栄養剤を用いた1.0kcal群28例と1.5kcal/mLの2種類の栄養剤(高たんぱく消化態栄養剤およびPHGG配合栄養剤)を用いた1.5kcal群23例について経過およびアウトカムを調査し,後方視的に比較検討した.【結果】1.0kcal群と比較して1.5kcal群で,消化管トラブルによるプロトコール停滞率が低く,プロトコール完遂までの日数も短縮された.1.5kcal群は,体重減少率が低く,血液生化学所見における栄養炎症の指標も改善していた.【結論】脳卒中患者の急性期栄養管理に対する1.5kcal/mLの高たんぱく消化態栄養剤およびPHGG配合栄養剤を使用した栄養プロトコールは,1.0kcal/mL栄養剤の場合と比較し有益であることが示唆された.

  • 河合 美佐子, 白井 由美子, 福森 和俊, 奥川 喜永, 渡邊 暁子, 三枝 晋, 田中 光司, 三木 誓雄
    2020 年 2 巻 2 号 p. 112-123
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    【目的】外来がん患者の食事・体調のセルフケア向けに開発した『体調記録』と『メニュー検索』機能を持つ「がん通院患者の食事支援システム」の有用性を調査する.【対象および方法】当院で抗がん剤治療中の外来患者27名に,本システムのアプリケーションソフトを搭載したタブレット端末を3カ月間居宅にて使用させ,1カ月毎に使用感等を評価させた.この間,院外の管理栄養士が週1回,記録された体調を参照して個別に食事のアドバイスを配信した.【結果】被験者20名(男性15名,平均64.0歳)が高い記録率を以て(平均93%)試験を完遂し,簡便性等使用感や食事支援・体調記録としての有用性の評価は概ね良好であった.食事のアドバイスは患者や介助者の食事への実務的かつ心理的支援となったと評価された.【結論】本システムは外来がん患者の体調記録に有用で,特にこのシステムを活用して行った食事のアドバイス配信は食支援として有用であった.

  • 佐藤 謙, 宮越 浩一
    2020 年 2 巻 2 号 p. 124-133
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,リハ病棟と略)に入院した高齢脳卒中患者で,入院時肥満がリハビリテーションに与える影響を検討した.【対象および方法】リハ病棟に入院した高齢脳卒中患者186名を対象とし,入院時のBMIで標準体重群と肥満群の2群に分けて回復期リハビリテーションの効果を比較した.さらに,多変量解析でその他の因子を調整した良好なFunctional Independence Measure(以下,FIMと略)効率に対する肥満有無の影響を検討した.【結果】52名が肥満群に該当し,標準体重群との比較ではFIM効率が有意に高かった.また,多変量解析においても,良好なFIM効率に肥満有が有意に影響したことが確認された.【結論】リハ病棟に入院した高齢脳卒中患者において,入院時肥満は回復期リハビリテーションに良い影響を与え,他の因子調整後もその差は有意であることが確認された.

  • 沖田 充司, 松本 博美, 中山 良子, 出口 章子, 梶谷 しおり, 藤井 攝雄, 水口 真実
    2020 年 2 巻 2 号 p. 134-142
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    【目的】急性期疾患加療後の摂食嚥下障害症例増加への対策と経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)導入には克服すべき様々な課題がある.本検討はPEG診療体制整備のため2018年1月設立された摂食嚥下チーム(DMT)活動とPEGの現状評価を目的とした.【対象と方法】2018年1月から6月までのDMT活動と問題点,待機的PEG施行例を検討.【結果】DMT活動では,多職種による包括的介入が可能となったが,職種毎の役割と活動時間の調整,病院からの支援体制が問題となった.PEGを38例に施行.平均年齢79.7歳,男性22例,女性16例で,導入理由は,脳卒中後遺症11例,認知症進行10例,原疾患進行10例の順に多かった.術前嚥下機能評価は57.8%のみで,術後57.9%が間接訓練のみであった.【結論】チーム活動支援体制強化と,摂食嚥下障害症例へのPEG導入を含む医療従事者間の診療連携調整と強化が必要である.

症例報告
  • 松井 亮太, 高 礼子, 苗代 時穂, 的場 加代子, 柳澤 優希, 井出 浩希, 金沢 一恵
    2020 年 2 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代女性で認知症と四肢拘縮がありADLは全介助だった.38度台の発熱と湿性咳嗽を主訴に当院内科を受診し,誤嚥性肺炎の診断で入院となった.絶食で末梢静脈栄養と抗生剤点滴で加療を開始し,入院後5日目に改訂水飲みテストを実施した.座位では判定不能,0°仰臥位では3点だったため,左下完全側臥位法に頚部回旋追加で評価を行ったところ,とろみ2%で判定4点であり,同体位でペースト食を開始した.頚部回旋による口腔期障害対策で,入院前は食事摂取に30分以上要していたが,介入後は20分に短縮できた.食事後半になるとムセを生じるため,食道咽頭逆流を疑い,入院後19日目に嚥下造影検査を施行した.逆流を認めたが,15°の頭部挙上追加で逆流は消失した.頭部挙上位で食事摂取を行うと,食事後半のムセは消失した.完全側臥位法に頚部回旋を加えることで食事摂取時間は短縮し,食道逆流に対し頭部挙上の追加が効果的であった1例を経験した.

  • 市之川 正臣, 大野 耕一, 森多 喜子
    2020 年 2 巻 2 号 p. 148-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    68歳,女性.摂食障害による極度のるい痩を認めていた.血便と腹痛を主訴に当院消化器内科を受診し,採血で貧血と凝固系の悪化を認め入院となった(1病日).4病日にCT撮像したところfree airを認め当科紹介となった.直腸穿孔,肛門周囲膿瘍および壊死性筋膜炎の診断で緊急手術を施行した.17病日に下行結腸穿孔の診断で2回目の手術を施行した.20病日TP 3.6g/dL,Alb 1.0g/dLと低栄養の改善を認めないことから,29病日よりメテノロン10mg/日の投与を開始した.また,36病日から通常の経腸栄養に加えアバンド®2包投与(投与総たんぱく76g/日)を開始した.81病日にはTP 7.1g/dL,Alb 2.8g/dLと栄養状態の改善を認め,アバンド®投与を終了した.特に副作用は認めることなく,メテノロン内服は継続のまま125病日に自宅へ独歩退院となった.

  • 西原 佑一
    2020 年 2 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    経皮経食道胃管挿入術(Percutaneous Trans-esophageal Gastro-tubing;以下,PTEGと略)による減圧チューブ留置を行い,QOLを保つことができた悪性消化管閉塞(Malignant Bowel Obstruction;以下,MBOと略)の2例を経験した.症例1は40歳代,女性.卵巣腫瘍腹腔内再発によるMBOのため,腸管減圧を目的としてイレウス管が長期留置されていた.症例2は50歳代,男性.悪性黒色腫の腹膜播種によりMBOを呈し,イレウス管が長期留置されていた.両症例とも腹水貯留のため経皮内視鏡的胃瘻造設術は施行できず,PTEGを実施した.液体の摂取に引き続き半固形流動食の経口摂取を試みたところ,その内容物は減圧チューブからドレナージ可能であった.PTEGによる減圧チューブ留置により経口摂取が可能となりQOLを改善し得た2例を経験したので報告する.

研究報告
  • 吉田 稔, 吉田 徹, 齋藤 浩輝, 川畑 亜加里, 松嶋 真哉, 森 佑紀, 森 みさ子, 小野寺 英孝, 桝井 良裕
    2020 年 2 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    【目的/方法】2011年国際栄養調査で,本邦ICUの栄養療法における環境体制や実施状況の遅れが示唆された.2011年以降,それらに関する調査は殆どなく,神奈川県内ICUでの栄養療法の実態や栄養チーム内での栄養療法に対する見解を明確にする目的でオンライン質問票を用いた横断研究を行った.【結果】神奈川県内12施設13ICUから回答が得られ,経腸栄養プロトコール使用が54%,ICU常在管理栄養士が31%,ICU常在リハビリテーションスタッフが54%と以前と比し高水準であった.一方,エネルギー・たんぱく質の目標投与量に関し『わからない』と答えた施設が39%を占めた.【結論】ICUにおける栄養療法の環境体制は,以前と比し整えられてきている.一方,栄養チーム内での栄養療法の目標に対する共通見解にばらつきがある可能性が考えられた.今後,栄養チーム内での栄養療法の目標に関する共通見解を深めていく必要がある.

施設近況報告
  • 絹川 雅夫, 相澤 聡一, 阪口 美穂, 佐竹 陽仁, 難波 ひとみ, 鈴木 沙央里, 長岡 万里絵, 斎野 容子, 三松 謙司
    2020 年 2 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    当院の栄養サポートチーム(nutrition support team:以下,NSTと略)は,嚥下機能評価に嚥下内視鏡検査(videoendoscopic evaluation of swallowing:以下,VEと略)を導入した.入院患者でNSTがVEを実施した20例で,患者情報や嚥下内視鏡検査スコア基準による嚥下機能評価や栄養投与方法について調べた.嚥下内視鏡検査スコア評価基準は4点以下5例,5~8点6例,9点以上9例で経口摂取困難の患者が多かった.栄養投与方法はVE前/後で,中心静脈栄養法5/6例,末梢静脈栄養法 7/0例,経腸栄養法5/10例,経口栄養法3/4例で末梢静脈栄養法は減少して経腸栄養法は増加した.当院のNSTは嚥下内視鏡検査スコア基準による嚥下機能評価で経口摂取の可能性を判定して,それは患者の栄養投与方法を選択する一助となった.

その他(参加記)
編集後記
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