学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
3 巻, 1 号
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目次
原著
  • 武元 浩新, 福島 亮治, 小山 諭, 石井 信二, 遠藤 龍人, 児島 洋, 斎藤 恵子, 篠 聡子, 中瀬 一, 山口 恵, 小谷 穣治
    2021 年 3 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

    【目的】2006年にヨーロッパで始まったnutritionDayであるが,2012年よりがん患者に特化した調査も行われている.今回,2015年から2017年のnational reportをもとに本邦および世界のがん患者の現況について報告する.【対象】日本から748例,世界から4,630例のがん患者が登録されており,平均年齢はそれぞれ71.3歳,65.4歳,BMIについては21.6,24.1となっていた.【結果】終末期の入院患者の割合が,日本の13.4%に対して世界では4.8%であった.栄養療法についてみると,静脈栄養がおこなわれていたのは日本で18.0%であったが,世界では10.9%しかなかった.逆に経口栄養補助食品の摂取については,日本では3.9%しかなかったのに対し,世界では14.4%であった.【結論】本邦のがん患者の現状を客観的に評価し,今後の栄養療法の改善に向けた基礎資料となる.

  • 水間 久美子, 岩部 博子, 北久保 佳織, 松浦 成志, 浅見 暁子, 中山 雅博, 田川 学, 鈴木 浩明, 増本 幸二
    2021 年 3 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

    【目的】当院では2013年9月より頭頸部がん患者の栄養管理を目的に,病棟担当管理栄養士を配置している.今回,配置前後の対象患者の体重減少率およびエネルギー充足率を比較検討した.【方法】対象は2013年4月1日~2014年3月31日に当院耳鼻咽喉科に14日以上入院した頭頸部がん患者91名(年齢64.6±9.8歳,男性74名,女性17名).病棟担当管理栄養士配置を行っていなかった群(以下,配置前群と略)46名と病棟配置後群(以下,配置後群と略)45名の体重減少率およびエネルギー充足率を比較した.【結果】頭頸部がん患者の入院中の体重減少率は配置前群7.1±4.7%から配置後群4.9±4.7%へと有意に低下した(p=0.029).退院時エネルギー充足率は,配置前群71±30%から配置後群87±27%へと有意に上昇した(p=0.011).【結論】管理栄養士の病棟配置によりエネルギー充足率が高まり,体重減少を抑えることが可能であった.

  • 四十物 由香, 鴨志田 敏郎, 小川 竜徳, 阿部 春果, 鈴木 俊一, 鈴木 薫子, 齋藤 祥子, 青山 芳文
    2021 年 3 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

    【目的】ポリファーマシーの実態と薬剤が血清アルブミン(以下,Albと略)値に与える影響を明らかにする.【対象および方法】2018年9月3日から2019年8月30日に持参薬を確認した患者のうち総服用薬剤数6剤以上の患者割合を算出した.これらの患者背景と総服用薬剤数を調べ,食欲低下をきたすことが知られる代表的な12薬効群とAlb値の関係を検討した.【結果】ポリファーマシー患者は1,532/3,749名(40.9%)であり,総服用薬剤数とAlb値に相関は認められなかった(r=-0.083,p=0.001).Alb値3.5 g/dL未満のオッズ比は,75歳以上1.421倍,主観的包括的評価(subjective global assesment;以下,SGAと略)の重症度が上がる毎に2.407倍,NSAIDs 0.656倍,ステロイド2.381倍,抗がん剤0.454倍,鉄剤2.398倍,オピオイド鎮痛剤2.178倍であった.【結論】総薬剤数とAlb値に相関は認められなかった.Alb低値に影響を与える因子は,75歳以上,SGA中等度以上の栄養障害,ステロイド,鉄剤,オピオイド鎮痛剤であった.

  • 伊東 祐輔, 野村 心, 吉村 芳弘
    2021 年 3 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

    【目的】回復期脳卒中患者の入院中のサルコペニア発症率と関連因子を明らかにする.【対象および方法】当院の回復期リハビリテーション病棟(以下,リハ病棟と略)入院時にサルコペニアを認めない脳卒中患者を対象とした後ろ向きコホート研究.サルコペニアをAsian Working Group for Sarcopenia2019で診断した.ロジスティック回帰分析により入院中のサルコペニア発症に関連する因子を調査した.【結果】解析対象者は147名(男性99名,平均年齢63.7歳)であった.入院中に14人(9.5%)がサルコペニアを新規発症した.発症に関連する因子として,年齢,エネルギー充足率,入院時骨格筋指数が抽出された.【結論】回復期脳卒中患者の入院中のサルコペニア新規発症率は9.5%であった.年齢,エネルギー充足率,入院時骨格筋指数はリハ病棟入院中のサルコペニア発症の予測因子であると示唆された.

  • 竹林 克士, 貝田 佐知子, 山口 剛, 飯田 洋也, 三宅 亨, 小島 正継, 前平 博充, 馬場 重樹, 佐々木 雅也, 谷 眞至
    2021 年 3 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

    【目的】CaHMB・L-アルギニン・L-グルタミン配合飲料(以下,アバンド®)の創傷治癒促進作用が報告されている.今回,胸部食道がん周術期におけるその有用性について検討した.【対象および方法】2012 年1月から 2020 年4月の胸部食道がん85例のうち,アバンド®を手術前7日間に投与した43例をアバンド群,投与しなかった42例を非投与群とし,術後感染性合併症の発症率を検証した.【結果】年齢:67(41-81)歳.男:女=73:12.縫合不全はアバンド群1例で非投与群8例(2.3% vs 19%;p=0.012),肺炎はアバンド群7例で非投与群17例(16.3% vs 40.5%;p=0.013),創感染はアバンド群0例で非投与群3例(0% vs 7.1%;p=0.074)で,縫合不全と肺炎の発症率はアバンド群で有意に低かった.【結論】アバンド®は食道がん術後感染性合併症の発症率の低下に寄与する可能性がある.

臨床経験
  • 賀好 美由樹, 土山 亜紀, 日野 公恵, 西丸 典江, 倉本 睦子, 菅原 由至, 松本 英男, 平井 敏弘
    2021 年 3 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

    【目的】NST介入の総合的評価表を作成,運用し,NSTの介入効果の分析を行う.【対象および方法】2017年8月から2018年7月までに,複数回NST回診を行い,介入終了した140名を対象とした.総合評価表を用いてNST活動を評価し,NST介入効果を後ろ向きに分析した.【結果】評価項目は,『栄養指標』,『食事摂取状況』,『ADL』,『褥瘡』とし,それぞれに小項目を設け,判定基準を設定した.改善・やや改善72%,不変14%,やや悪化・悪化14%であった.【結論】症例数が少なく,対象者背景が不均一でもあることから,総合的評価表の妥当性を検討するには至らなかったが,NST活動の総合的評価を客観的に行うことができ,その結果改善に寄与できる可能性があると思われた.

  • 神山 治郎, 関川 香織, 黒沢 直子, 問註所 英明, 青木 律子
    2021 年 3 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19と略)は,重症化すると人工呼吸・集中治療管理が必要となり,血中リンパ球数減少からの二次感染や,回復後のICU-acquired weakness等の問題を引き起こす.これらの合併症のリスクを低減させるために,早期からの栄養療法は重要である.当施設では気管挿管後早期からの栄養介入の結果,2020年4月から8月にかけて重症COVID-19の患者10例が軽快し,10例全てが独歩退院に至った.この他にも重症COVID-19に対する栄養管理の問題点として,ステロイド投与下での血糖コントロール,消化管合併症に対する腸管機能の維持や,腹臥位療法やレムデシビル投与下での嘔吐への対策が挙げられる.これらの問題に対して,感染対策を徹底しながら多職種が連携して適切に対応していかなければならない.

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