学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
2 巻, 5 号
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目次
原著
  • 平田 幸一郎, 菅野 真美, 米倉 竹夫, 百木 和, 羽生 大記
    2020 年 2 巻 5 号 p. 290-299
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    【目的】本邦において管理栄養士が配置されている救命救急センターは少なく,経腸栄養開始時間は諸外国と比べて遅いと報告されている.管理栄養士配置による救命救急センターにおける栄養管理の質向上効果を検討したため報告する.【対象および方法】救命救急センターへ入院し,5病日間経口摂取ができなかった患者を対象とし,管理栄養士が配置される以前の2016年4月1日から2017年5月31日までに入院した17名を管理栄養士非介入群,配置後の2017年6月1日から2018年3月31日に入院した対象患者18名を管理栄養士介入群とし,管理栄養士介入効果を検討した.【結果】管理栄養士介入群では,非介入群に比べ,経腸栄養開始時間,経口摂取開始時間が有意に短縮され,輸液使用料,抗菌薬使用料の有意な減少を認めた.【結論】救命救急センターへの管理栄養士配置は経腸栄養開始時間の短縮,経口摂取開始日数の短縮,抗菌薬使用料減少,医療コストの低下と関連した.

  • 郡 隆之, 戸丸 悟志, 小林 克己, 田中 秀典
    2020 年 2 巻 5 号 p. 300-306
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    【目的】群馬県沼田2次医療圏で管理されている胃瘻患者の長期栄養管理の意義を検討した.【方法】胃瘻地域連携パスを利用している患者の,1)造設後の予後,2)在宅復帰率,3)経口移行率を調査した.【結果】2012年4月から7年間で胃瘻地域連携パス運用患者数は371名であった.胃瘻造設時の平均年齢は81.1歳で,男性169名,女性202名であった.追跡可能な334名の解析では,1)造設後生存期間中央値は619日,1カ月生存率93.7%,1年生存率62.7%,3年生存率32%,5年生存率19.5%であった.2)生存中の99名のうち46名が介護福祉施設に入所中で,在宅復帰率は17.2%(17名)であった.3)経口移行率は4.2%であった.【考察および結論】胃瘻地域連携パス運用患者の予後は良好であった.当地域は在宅復帰率が低いため,胃瘻による介護施設での栄養管理は必要不可欠である.

  • 清水 奈穂美
    2020 年 2 巻 5 号 p. 307-315
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    【目的】在宅高齢者の終末期栄養療法に関わるチームの合意形成における訪問看護師の支援を明らかにする.【対象と方法】訪問看護師11名を対象に半構成的面接を用いた質的記述的研究を行った.【結果】6カテゴリーが生成された.訪問看護師はチームの合意形成にむけて【食べることに対する本人や家族の意向を把握しておく】ことから対話を始め,食べることが困難になった時に【栄養療法の意向を関係者間で情報共有し話し合いの準備】をしていた.話し合いの過程では【本人や家族と医療や介護の関係者の栄養療法に対する方向性を整える】【話し合いの場で本人や家族の意向に沿った栄養療法の選択を支える】【安らかな最期を迎えられるように食べることや点滴をやめる選択を支える】ことを行い【本人や家族や関係者の思いを通して選択した栄養療法の評価】をしていた.【結論】訪問看護師は,食べることの変化を通して,本人の意向を基軸に家族や医療や介護の関係者の意向も整え,対話を継続しながらチームの合意を図っていた.これらは,本人を尊重しつつも家族や周囲との関係性を大切にする日本の文化を踏まえた支援であることが示唆された.

  • 古屋 宏章, 石野 敬子, 熊木 良太, 岸本 桂子, 倉田 なおみ
    2020 年 2 巻 5 号 p. 316-326
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    【目的】経腸栄養分野の相互接続防止コネクタがISO80369-3(以下,ISO規格と略)に変更される.栄養剤投与を模した装置を作成し,細菌汚染について国内規格と比較し,さらに変換コネクタをつけて実験的に検証した.【方法】装置に栄養剤を1日2回14日間注入し,フラッシュした精製水を試料として培養後,細菌数の測定および菌種同定を行なった.変換コネクタは連日使用,毎日洗浄,毎日交換の3群で比較した.【結果】細菌数が104 CFU/mLを超えたのは両規格とも9日目で,変換コネクタ使用時は7日目であった.下痢や敗血症に関連する細菌が同定された.変換コネクタの3群間に違いはなかった.【考察】両規格とも9日以降で細菌性有害事象の可能性が高まるが,ISO規格への変更は細菌汚染に影響しないと考えられる.日常臨床とは異なる実験モデルであるが,変換コネクタを用いる場合は細菌汚染に注意する必要性が示唆された.移行時期には極力ISO規格と国内規格を混在させないことが望ましい.

症例報告
  • 佐々木 麻友, 長崎 太
    2020 年 2 巻 5 号 p. 327-331
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    当院の肝疾患症例は肝臓専門医により管理治療されるが,重症および進行例が多く,しばしば低栄養状態を伴うため管理栄養士は積極的に栄養介入を行っている.今回,管理栄養士が非代償性肝硬変を背景とする進行肝がんに介入し,栄養療法が有効であった1例を経験したので報告する.症例は60歳台男性.肝不全徴候増悪による緊急入院後,緩和医療の方針となった.管理栄養士はサルコペニア判定を含む栄養評価を行い,腹部膨満と嘔気による食欲不振に対し内科的治療と並行して食事個別対応,肝不全用経腸栄養剤を導入し,栄養教育を行った.その結果エネルギー充足率は65~70%,血清アルブミン値を維持,薬剤は内服薬のみとなり,本人が希望していた在宅緩和医療を導入することができた.管理栄養士による入院早期からの継続した栄養管理は,肝不全状態の肝がん患者においても経口摂取と栄養状態を維持し,終末期緩和医療に貢献しうることが示唆された.

委員会報告
  • 武元 浩新, 小山 諭, 朝川 貴博, 梶谷 伸顕, 白木 亮, 利光 久美子, 野田 さおり, 宮田 剛, 山口 恵, 福島 亮治
    2020 年 2 巻 5 号 p. 332-340
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    nutritionDayプロジェクトとは毎年特定の日をnutritionDayと定め,世界的規模で実施される入院患者の栄養状態についてのアンケート調査であり,日本では2008年より当時の日本静脈経腸栄養学会(現日本臨床栄養代謝学会)主導の下に参加している.今回,ちょうど栄養サポートチーム(nutrition support team;以下,NSTと略)加算が評価された2010年から3年間の日本における集計結果を世界のものと比較し検討した.BMIでは3年間とも同様に経過し,日本では22前後,世界では25前後であった.栄養療法では,経腸栄養施行患者割合が日本では2010年から年々増加し,2012年には7%前後と世界とほぼ同程度に達していた.一方静脈栄養は日本では3年とも15%を超えていたのに対し,世界では5%前後であった.この変化は,日本でNSTが健康保険制度として評価され浸透したことが関係していると考えられる.今後も継続して報告していく予定である.

用語解説
編集後記
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