学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
3 巻, 5 号
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目次
原著
臨床経験
症例報告
  • 町野 翔, 斎藤 拓朗, 添田 暢俊, 押部 郁朗
    2021 年 3 巻 5 号 p. 302-307
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/26
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    要旨:術後縫合不全に対する経腸栄養による治療中に下痢を併発した症例に対し,水溶性アルギン酸含有粘度可変型流動食(マーメッドプラス®)の空腸瘻からの投与により便性と栄養状態が改善し,縫合不全の治癒に至った症例を経験したので報告する.症例は83歳男性.2018年12月に食道胃接合部がんに対し下部食道噴門側胃切除術を行い,空腸間置法にて再建し,同時に空腸瘻も造設した.術後12病日に発熱を認め,食道空腸吻合部の縫合不全と診断し,絶食および胃管による減圧と抗菌薬の投与を行った.栄養管理は経静脈栄養に加え,空腸瘻からのペプタメン®スタンダード投与量を漸増したが,術後20病日から水様下痢となった.経腸栄養剤投与速度の調節などを試みたが下痢が持続したため,術後28病日に経腸栄養剤をマーメッドプラス®に変更した.変更後は便性が改善し,1,980kcalまで投与量を増加し得た.栄養状態の改善にともない縫合不全は治癒し,術後64病日に退院した.経空腸での経腸栄養中の下痢に対して,アルギン酸含有流動食の使用は考慮すべき選択肢の1つとなる.

  • 常峰 かな, 東別府 直紀, 西岡 弘晶
    2021 年 3 巻 5 号 p. 308-312
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/26
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    要旨:気道熱傷患者は摂食嚥下障害のリスクが高いが,その評価や摂食嚥下リハビリテーションに関する報告は少ない.症例は61歳,男性.201X年Y月,顔面に油を受け,熱気を吸い込んだことによる気道熱傷が疑われ,気管挿管,人工呼吸管理を受けた.外見の熱傷は軽度であったため抜管後に経口摂取を試みたが,嚥下困難の訴えがあったため,NST摂食嚥下チームが介入した.嚥下内視鏡検査(videoendoscopic examination of swallowing;以下,VEと略)により咽喉頭の器質的異常や誤嚥を認め,重度の摂食嚥下障害と判断した.定期的にVEを行いながらその所見を参考に嚥下リハを行い,約50日で全量経口摂取が可能となった.気道熱傷では,外見上熱傷が軽度でも重度の嚥下障害を呈している可能性があり,VEにより器質的異常や誤嚥リスクを評価し,嚥下リハの方針を立てる必要があると思われた.

  • 宮崎 慎一, 大廻 あゆみ, 森田 照美, 野田 裕之, 竹内 勤
    2021 年 3 巻 5 号 p. 313-319
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/26
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    要旨:患者は59歳時(2009年5月)に鳥取生協病院(以下,当院と略)にて十二指腸副乳頭カルチノイドに対する膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy;以下,PDと略)を施行した.退院後は外科外来でフォローアップされていたが,肝機能障害が出現したため,64歳時(2014年3月)に当院内科に紹介,精査の結果非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis;以下,NASHと略)と診断し内服治療を開始した.しかし,肝機能は徐々に悪化し,68歳時(2019年2月)に肝性脳症で入院となった.本症例のNASHの成因および増悪原因について再考したところ,PDによる長期間の膵外分泌酵素の低下が一因として考えられたため,診断と治療を兼ねてパンクレリパーゼの投与を開始した.その後,徐々に肝性脳症のコントロールは良好となり,53病日に退院となった.PD後の患者では予後規定因子になり得る栄養障害の発生も念頭におき,高力価膵酵素の投与を含む継続的な栄養管理が肝要であると考えられた.

編集後記
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