学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
3 巻, 4 号
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目次
原著
  • 吉田 輔, 岡野 弘, 大和田 玄, 木村 康宏, 七尾 大観, 藤本 潤一, 西澤 英雄
    2021 年3 巻4 号 p. 210-217
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】標準体重以下の重症患者におけるエネルギー必要量推定式の有用性を検討する.【対象および方法】当院ICUで間接熱量測定を行った18歳以上,BMI < 22 kg/m2の患者21名(BMI中央値19.2 kg/m2)を対象とした.間接熱量測定から求めたエネルギー消費量(energy expenditure-indirect calorimetry;以下,EE-ICと略)と簡易式(体重×25 kcal/日),およびHarris-Benedict式から求めた総エネルギー必要量(total energy requirement-Harris-Benedict;以下,TER-HBと略)を比較検討した.【結果】EE-ICとの相関係数は簡易式が0.78(95%信頼区間:0.53~0.91, p < .0001),TER-HBが0.53(95%信頼区間:0.13~0.78,p = 0.013)であった.Bland-Altman解析によるEE-ICとの平均差および95%一致限界は,いずれも簡易式がTER-HBより低値となった.【結論】標準体重以下の重症患者におけるエネルギー必要量の推定には簡易式が有用であると思われる.

  • 西岡 絵美, 森 菜美, 山内 杏奈, 西岡 心大
    2021 年3 巻4 号 p. 218-227
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】回復期リハビリテーション(以下,リハと略)病棟入院時から退院後の患者における栄養状態の推移および退院後の低栄養の関連要因を検証することを目的とした.【対象および方法】回復期リハ病棟を2017年4月~8月に退院した患者が対象.MNA-SFを含む質問用紙を本人または家族へ配布して退院後の情報を収集し,入退院時および退院後の栄養状態を比較した.また,退院後栄養非良好状態への関連要因を検索した.【結果】対象者は80名(平均69.7歳).低栄養割合は入院時56.3%,退院時10.0%,退院後3.8%であった.退院後に低栄養と低栄養リスクありの患者を合わせた栄養非良好群は退院時FIMやFILSが低値であり,退院時FIMおよびMNA-SF,退院後再入院が説明因子であった(オッズ比各0.946,0.755,9.921).【結論】回復期リハ病棟入院患者の栄養状態は経時的に改善していた.退院時ADLと栄養状態,退院後再入院が退院後の栄養非良好状態と関連していた.

  • 渡邉 一礼, 津田 朱里, 中山 環, 土肥 守
    2021 年3 巻4 号 p. 228-237
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】重症心身障害者におけるセレン欠乏の実態と,血清セレン値が低い経口摂取患者に対しセレン補助食品を付加した効果を明らかにすることを目的とした.【対象および方法】重症心身障害者40名の血清セレン値を測定し,低値であった経口摂取患者22名にセレン補助食品を約3カ月の間付加し,再度血清セレン値を測定した.【結果】推定セレン摂取量は経腸栄養群が多く,血清セレン低値は経口摂取群に多かった.ペースト食摂取群は固形食摂取群と比べて推定セレン摂取量には差がなかったが血清セレンは低値であった.セレン補助食品の付加により血清セレン低値を示した21名中17名で血清セレン値が上昇した.【結論】形態調整食による経口摂取を実施している患者では,献立上の推定摂取量が経管栄養よりも少なく血清セレンが低値であったが,十分なセレン補給により血清セレンが上昇したことから,セレン含有補助食品の活用や,調理方法による提供セレン量の減少を考慮した栄養管理が有用だと考えられた.

  • 二村 昭彦, 飯島 正平, 鈴木 裕, 篠田 純治, 郡 隆之, 飯田 純一, 早川 麻理子
    2021 年3 巻4 号 p. 238-248
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】わが国の栄養管理体制の実態を調査する.【対象および方法】日本臨床栄養代謝学会(旧日本静脈経腸栄養学会)の代議員および学術評議員657人を対象にインターネットアンケート調査を行い,現在の栄養サポートチーム(以下,NSTと略)加算における回診,カンファレンスの実態,地域連携に関する制度上の困難感や矛盾点について選択式の質問にて回答を求めた.【結果】40.3 %(265人)の回答率を得た(施設回答率53.5%).医療機関の機能により,NST回診の頻度,患者数,時間に違いがあった.また,栄養管理の地域連携において,「退院・転院時の栄養管理情報提供」や「入退院前のNSTによる栄養評価」についての高い必要性が示された.栄養管理の情報としては,嚥下機能や経口摂取,栄養剤,体重の情報についての連携が不十分とする回答が50%以上あった.【結論】医療機関の機能分化に相応したNST加算点数の再評価,および地域医療連携推進のためにNST加算を地域全体に繋いでいく制度上の新たな評価が課題となった.

臨床経験
  • 松本 卓二, 木村 友香子, 野崎 好美
    2021 年3 巻4 号 p. 249-253
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨近位部骨折患者において,リハビリテーション栄養(以下,リハ栄養と略)チームの介入が周術期合併症に及ぼす影響を検討した.【対象と方法】大腿骨近位部骨折患者173例(平均84.5歳)を対象とし,リハ栄養チーム未介入群(control群;以下,CT群と略)88例,リハ栄養チーム介入群(rehabilitation nutrition 群;以下,RN群と略)85例の2群において,誤嚥性肺炎,尿路感染症,深部静脈血栓症・肺塞栓症,死亡例の発生数を後方視的に比較検討した.【結果】誤嚥性肺炎は,RN群において有意に減少した(CT群:8/80例,RN群:1/84例,p<0.05).入院後の食事調整実施数はRN群で有意に増加し(CT群:17/71例,RN群:32/53例,p<0.05),術前の食事調整実施例についてもRN群で有意に増加した(CT群:術前7例/術後10例,RN群:術前26例/術後6例,p<0.001).尿路感染症,深部静脈血栓症・肺塞栓症および死亡退院については有意差がなかった.【結論】高齢の大腿骨近位部骨折患者に対する入院早期からのリハ栄養チームの介入は,誤嚥性肺炎の発症を有意に減少させることが示唆された.

症例報告
  • 松成 修, 鍋田 祐介, 山村 亮太, 柴田 智隆
    2021 年3 巻4 号 p. 254-259
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    症例は93歳男性.重症熱中症による痙攣後のTodd麻痺のため経口摂取が困難であり,経鼻経管栄養を実施していた.偽痛風の診断にて投与開始したロキソプロフェンナトリウムと,同じタイミングで投与されたミヤBM®の投与開始後に腹痛を訴え,CT検査・レントゲン画像にて門脈気腫をともなう胃粘膜気腫を認めた.気腫性胃炎と診断したが,安静と抗菌薬投与による保存的加療によって胃全摘出を免れることができた.内視鏡検査により採取した胃粘膜の培養検査にてClostridium butyricum(以下,C. butyricumと略)が分離同定され,気腫性胃炎の起因菌と考えられた.カテーテルを用いた栄養管理にてC. butyricumによる気腫性胃炎が発症したと考えられた.整腸剤として投与されるミヤBM®の投与が人体に悪影響を及ぼすことがあることはあまり知られていない.気腫性胃炎も治療法が確立していない稀な病態であり,適切な対応が必要である.

  • 村山 敦, 姜 良順, 高見 友也, 賀集-魚住 のぞみ, 松浦 幸, 四至本 貴大, 植田 智恵, 橋本 裕子, 冨田 雅史, 薬師寺 泰 ...
    2021 年3 巻4 号 p. 260-268
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    2型糖尿病既往があり,中等度栄養不良の83歳女性に発症した歯性感染症由来の深頸部膿瘍に対して,当院早期経腸栄養開始プロトコルを用いて栄養管理した症例を報告する.初診日に全身麻酔下経皮的切開排膿術を要し,術後は気管挿管のまま管理した.術後3時間から10mL/時の速度で経鼻胃管より消化態栄養剤の持続投与を開始し,24時間毎に投与量を上げた.嚥下障害が出現していないことを確認し,第6病日から経口食を開始した.術直後からの早期経腸栄養と抗菌薬投与や膿瘍腔洗浄により,経時的に消炎が得られ,第17病日に退院となった.深頸部膿瘍では消化管機能障害は出現していないと推察され,早期経腸栄養が可能な疾患と考えられる.消炎治療と併行して早期経腸栄養開始プロトコルを用いることで,低栄養状態であってもリフィーディング症候群などの合併症はなく,早期に栄養状態改善し,良好な結果が得られると考えられた.

編集後記
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