学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
4 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
目次
原著
  • 青山 高
    2022 年4 巻2 号 p. 52-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー HTML

    要旨:【諸言】思春期・若年成人(Adolescent and Young Adults;以下,AYAと略)世代のがん患者における栄養介入法の議論は進んでいない.【目的】同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem cell transplantation;以下,allo-HSCTと略)を受けたAYA世代患者における栄養介入の実際を調査する.【方法】2007年から2015 年に静岡がんセンター血液・幹細胞移植科においてallo-HSCTを受けたAYA世代(16~29歳)の患者を対象とし,前処置前から経静脈栄養終了までの栄養および臨床指標を評価した.【結果】14例(女性6例)の体重減少率と骨格筋量減少率は相関していた(r=0.87:p<0.01).体重減少率と基礎代謝熱量充足率,総供給タンパク質量は相関していた(r=0.54:p<0.05,r=0.56:p<0.05).経過中の栄養関連有害事象と経口摂取熱量は相関していた(r=-0.94:p<0.01).【結論】AYA世代患者におけるallo-HSCTの経過中の体重変化は骨格筋量変化および基礎代謝熱量充足率,総供給タンパク質量と関連していた.allo-HSCTにおいて有害事象に対応できる早期からの栄養介入には利点があると考えられた.

  • 徳光 亜矢, 楠 祐一
    2022 年4 巻2 号 p. 63-71
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー HTML

    要旨:【目的】当施設入所中の重症心身障害児(者)の血清亜鉛値の実態を把握し,血清亜鉛値に影響する因子を同定する.【対象および方法】入所者の血清亜鉛値と,種々の属性,血液・尿検査所見との関連を検討した.【結果】対象301名中115名が低亜鉛血症(<60μg/dL)で,基準値内の対象者は17名のみであった.血清亜鉛値はBMI,体重当たりエネルギー摂取量,血清アルブミン,血清クレアチニンと有意の正の相関があった.また,低亜鉛血症患者に寝たきり,気管切開,抗てんかん薬内服者の割合が有意に高かった.重回帰分析の結果,運動機能,BMI,誤嚥防止術,バルプロ酸,血清アルブミンが血清亜鉛値に有意に関連する因子であった.【結論】多くの対象者の血清亜鉛値は基準値を下回っていた.寝たきり,低BMI,誤嚥防止術,バルプロ酸内服,低アルブミン値は重症心身障害児(者)の血清亜鉛値低下の関連因子と推測された.

  • 玉井 由美子, 海道 利実, 加茂 直子
    2022 年4 巻2 号 p. 72-78
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー HTML

    要旨:【目的】肝移植術前握力・術後握力の経時的変化,周術期栄養管理の関係について検討.【方法】対象は2013年1月から2020年2月までに当院で成人生体肝移植を施行し移植後6カ月以内死亡症例などを除いた125例.筋肉量は体組成分析装置,握力は握力計で評価.1)術前握力,2)握力の経時変化(全症例,年齢別,性別,術前握力別),3)術後1カ月の握力測定症例96例を術後早期栄養投与量推奨以上投与群・未満群で握力回復率を比較,4)握力回復率高値群・低値群で術後在院日数を比較検討.【結果】1)術前握力低値例は45例(36%)で,女性で有意に多く2)術後6カ月で術前値に回復,術前握力低値群で有意に回復が早かった.3)たんぱく質の推奨以上投与群は未満群より有意に握力回復率が高値であった.4)握力回復率高値群で術後在院日数が有意に短かった.【結論】生体肝移植術後早期の適切な栄養投与は,握力の早期回復および早期退院に寄与すると考えられる.

  • 柴田 裕
    2022 年4 巻2 号 p. 79-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー HTML

    要旨:【目的】地域高齢者に対するIoT/ICT活用によるフレイル健診システムを構築し分析した.【対象および方法】スクリーニング用アプリを開発し,タブレット・IoT機器より入力後,クラウド上で解析し,診断ツール毎に再構成後出力した.2019年12月-2020年3月,地域高齢者に計2回施行した.健診前後にアンケートを実施し,健診システムの評価と健診後の行動変容に影響した因子を分析した.【結果】延べ173名(男41,女性132,平均72.3歳),フレイル健診の評価は概ね良好.健診後のアンケートでは,問診方法の評価には問診アプリの簡便さが(OR 0.238,p=0.001),健診後の行動変容には健診レポートの総合的アドバイスの評価が(OR 0.104,p=0.013),それぞれ有意に影響する因子として検出された.【結論】IoT/ICT活用フレイル健診は高齢者を対象としても有効で,総合的なフレイル対応が重要である.

  • 島本 和巳, 西山 順博, 中村 文泰, 布施 順子, 西村 直子, 高田 小百合, 中嶋 容子, 今神 透, 佐々木 雅也
    2022 年4 巻2 号 p. 90-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー HTML

    要旨:2016年6月から2021年6月までに施行した経皮経食道胃管挿入術(Percutaneous trans-esophageal gastro-tubing;以下,PTEGと略)73件を対象に,発生した合併症に関しての検討を行った.事故抜去 4例,瘻孔部の不良肉芽 3例,自己抜去 2例,左反回神経麻痺 1例であり,重篤なものは無かった.PTEGによる経管栄養や消化管減圧は比較的安全で安定した管理が可能であり,在宅療養のためにも更なる普及が望まれる.

臨床経験
  • 松下 貴惠, 新井 絵理, 渡邊 裕, 山崎 裕
    2022 年4 巻2 号 p. 96-101
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー HTML

    要旨:【目的】同種造血幹細胞移植患者の味覚異常の実態を把握するために,前向き縦断調査を施行した.【対象および方法】北海道大学病院血液内科で2015年7月から2018年8月までに同種造血幹細胞移植を予定した107名を対象とした.移植前から移植後12カ月までの期間に計5回,全口腔法による味覚機能検査とNRSによる味覚異常の自己評価を行った.【結果】移植前のNRSでは,4つの味質全てで10~20%の味覚異常が既に認められた.移植後の全口腔法とNRSの両方において,塩味が最も高率に障害され,回復も移植後12カ月目の時点で最も遷延した.味覚異常の性状は,移植後1カ月目は全味質で味覚減退の割合が高かったが,3カ月目以降は味覚過敏の方が高くなった.【結語】塩味が最も障害され回復も遷延した.全ての味質で移植後早期は味覚減退,その後味覚過敏の割合が高くなった.味覚異常の自覚症状と味覚検査との間に整合性は認められなかった.

  • 河合 杏奈, 石黒 佳代子, 花山 佳子, 藤本 浩毅, 服部 俊一, 天野 良亮, 大平 雅一
    2022 年4 巻2 号 p. 102-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー HTML

    要旨:【目的】近年,管理栄養士の病棟配置により入院期間の短縮化等の効果が報告され,必要性が増している1).今回管理栄養士を試験的に病棟配置し,栄養介入を行った効果を肺がん患者について検討した.【対象および方法】対象は呼吸器内科に約2週間以上の入院を要する初回化学療法肺がん患者とし,管理栄養士が当該病棟へ試験的配置される以前に入院した(以下,非介入群と略)24例,試験的配置後に入院し,管理栄養士による定期的な栄養介入が行われた(以下,介入群と略)21例に分け,介入効果を検討した.【結果】介入群ではエネルギー充足率は高い傾向にあった.化学療法開始7日目のたんぱく質充足率は介入群で有意に上昇した(p=0.04).化学療法開始7日目の体重減少率は介入群で有意に低下した(p=0.02).在院日数は介入群で有意に短縮した(p=0.04).【結論】管理栄養士の病棟配置により,肺がん患者の摂取栄養量の増加や体重減少の抑制効果がみられ,在院日数の短縮にも寄与できる可能性がある.

編集後記
feedback
Top