学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
5 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
目次
原著
  • 石田 順朗, 堀 郁美, 平井 絵里子, 塩田 裕子, 石川 芙実, 谷村 千賀, 土岐 彰
    原稿種別: 原著
    2023 年 5 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/19
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】90歳以上の入院患者の投与エネルギー量を検討した.【対象および方法】2008年4月から2022年3月でnutrition support teamが介入した90歳以上の症例で,4回(21日)以上評価を行った294例を調査した.初回と最終回のGeriatric Nutritional Risk Index(以下,GNRIと略)を比較し,GNRI上昇群161例,不変群9例,低下群124例の3群で,最終回の推奨エネルギー量,推奨エネルギー量達成率,投与エネルギー量を比較した.【結果】推奨エネルギー量に有意差はなく,推奨エネルギー量達成率,投与エネルギー量は上昇群と低下群に有意差を認めた.推奨エネルギー量,同達成率は,上昇群で999.4 kcal,99.7%であり,低下群で994.0 kcal,88.2%であった(p < 0.01).投与エネルギー量は上昇群で1,003.1 kcal,低下群で879.9 kcalであった(p < 0.01).【結論】90歳以上の入院患者の栄養リスクを低下させない至適エネルギー量は約1,000 kcalと示唆された.

  • 三浦 温子, 元井 冬彦, 伊関 雅裕, 石田 晶玄, 狩野 修代, 佐藤 裕子, 佐藤 菜保子, 大沼 忍, 亀井 尚, 海野 倫明
    原稿種別: 原著
    2023 年 5 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/19
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】胃内容排出遅延は,膵頭十二指腸切除術後の合併症の1つであるが,臨床経過や栄養状態に与える影響についての詳細な報告は少ない.当院における胃内容排出遅延症例の臨床経過,栄養状態への影響について検討を行った.

    【対象および方法】2014年から2017年までに当院で膵頭十二指腸切除術を行った175例を対象に,胃内容排出遅延を認めた症例98例と,認めなかった症例77例に分けて,術後経過や術後合併症,Controlling nutritional statusスコアによる栄養状態について解析を行った.

    【結果】胃内容排出遅延は,女性であること,術後合併症の発生と有意に関連した.一方,栄養状態との比較では明らかな差は認めず,膵がん症例においても生命予後との関連は認めなかった.

    【結論】胃内容排出遅延は,術後合併症の発生と関連するが,適切な栄養サポートを行うことで,栄養状態を悪化させることなく,退院させることが可能であると思われた.

  • 池部 麻子, 神原 知佐子, 天野 加奈子
    原稿種別: 原著
    2023 年 5 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/19
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】入院中の小児患者における体重増加不良に影響を与える因子の検討を行った.【対象および方法】小児患者111名を対象とし,後ろ向きコホート研究を行った.体格評価には身長体重標準曲線から算出したstandard deviation値を用いた.nutrition support team介入前後での体重ΔSD値をアウトカムに,栄養学的因子を年齢・治療方法などの共変量で補正した重回帰分析(強制投入法)を行った.【結果】介入開始時平均年齢は8.1 ± 4.4歳,疾患の種類は血液悪性腫瘍50名,固形腫瘍30名,脳腫瘍12名,その他19名であった.平均介入日数144.5 ± 87.8日,介入開始時の平均体重SD値–0.6 ± 1.4,介入期間中の平均体重ΔSD値0.03 ± 0.7であった.重回帰分析の結果,造血幹細胞移植の有無が体重ΔSD値を低下させる有意な因子であった.【結論】造血幹細胞移植治療を行う患者には診断後早期から重点的な栄養介入を行う必要性が示唆された.

症例報告
  • 矢部 正浩
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 5 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/19
    ジャーナル フリー HTML

    症例は70歳,女性.67歳時に胃がんで開腹胃全摘術,Roux-en-Y結腸前再建術を施行され再発なく経過した.術後3年半後から両下肢浮腫や動悸息切れを認めた.血液検査で血清セレン7.9 μg/dL,大球性貧血,高度の低Alb血症,FreeT3低値を認め,脂肪便陽性であった.腹部骨盤部造影CTは消化管全体の浮腫を認め,蛋白漏出アルブミンシンチでは異常を認めなかった.爪・皮膚症状,心筋障害,心電図異常は認めなかったが,その後下肢の筋力低下,歩行困難を認め,亜セレン酸ナトリウム補充で改善したことからミオパチーを主症状とするセレン欠乏症と確定診断した.セレン補充量を行うも改善に乏しく永眠された.セレン欠乏によるミオパチーは静脈栄養や経腸栄養を必要とする患者で稀にみられるが,自験例は通常の経口摂取を行っていた患者に胃全摘術後の吸収不良が生じ,セレン欠乏症によるミオパチーを発症したと考えられた.

  • 定政 信猛
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 5 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/19
    ジャーナル フリー HTML

    症例は72歳女性.4年前に頭部を打撲,この際に撮影された頭部MRIで偶発的にラトケ嚢胞を指摘されたが,その後受診が途絶えていた.3カ月前より食思不振を認め,体重が10 kg以上減少,2カ月前より意識レベル低下,体動困難で当院に救急搬送された.頭部MRIでは腫瘍の明らかな増大を認めたため,手術目的で入院となった.来院時Japan Coma Scale 1,明らかな麻痺はなく,対座法で両耳側半盲が認められた.頭部CTでは最大径29 mmの鞍上部腫瘍を認め,視床下部に進展していた.経蝶形骨洞的にアプローチを行い,内視鏡を併用して嚢胞内容の部分摘出を行った.術後より症状は改善し,modified Rankin Scale 0で独歩退院した.ラトケ嚢胞は良性の経過を辿ることが多いが,本症例のように大きく後上方に進展すると食思不振を認めることがある.従って,稀ではあるが,食思不振を訴える高齢患者では念頭におくべき疾患の一つと考えられる.

編集後記
feedback
Top