琵琶湖のエリ漁には,漁場に吹く風が漁獲量に影響を与えるという伝承事項が古来から存在する。この伝承事項の発生は,湖面に強い風が吹いた時に湖水の水温が変化し,漁場へのコイの来遊に影響を与えるためと考え,2003年6月〜9月に,琵琶湖南湖のエリ周辺で水温,風系,コイの行動を測定した。本エリで漁獲されたコイ4尾の腹腔内に超音波発信機を装着し,受信機を設置したエリ周辺で放流した。その結果,最大で95日間にわたって供試魚の出現を測定することが出来た。記録計によってエリ周辺の水温2層(2.5m, 4.5m)を15分間隔で測定した。供試魚は水温が25℃以下の間はエリ周辺に出現したが,25℃を超える水温上昇に伴いエリ周辺を離れた。その後,南西あるいは北東の強い風が吹き,急激に水温が25℃前後に低下したあとに供試魚は再び出現した。本研究の結果では夏季におけるコイの行動と急激な水温低下現象との間に一定の関連性が認められた。
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