脾臓摘出術後重症感染症(以下,OPSI)予防に対し,本邦では23価肺炎球菌ワクチンが保険適用となっている。今回,日本外科感染症学会では,脾摘患者における肺炎球菌ワクチンに関する現状についてアンケート調査を実施した。その結果,多くの医師が脾摘(予定)患者に対してOPSIのリスクや肺炎球菌ワクチンの意義について説明し,肺炎球菌ワクチンを主に術後に接種しているものの,これらを行わない医師も存在した。膵癌などで術前補助化学療法(以下,NAC)を行う場合,その接種時期はNAC前,NAC後脾摘前および脾摘後に分かれた。これらの背景には保険適用の問題,NAC施行時の接種タイミングに関するエビデンスがないことや肺炎球菌ワクチンより癌治療が優先されることがあげられた。以上より,外科医や救急医が活用しやすい脾摘患者における肺炎球菌ワクチンの取扱いに関する提言やガイドライン作成が必要と考えられた。
【目的】膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy:以下,PD)において陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)としてPrevenaTMを用いて,surgical site infection(術野感染:以下,SSI)に与える効果を検討した。【対象と方法】2020年1月から2024年4月までに膵癌に対してPDを施行した49例に対してPrevenaTM装着群と非装着群のSSIを検討した。【結果】臓器/体腔や深部切開創では両群でSSIに有意差はなかったが,表層SSIは装着群で有意に低率であった。【結語】PrevenaTMはPDにおいて表層SSIの減少に寄与する可能性が示唆された。
症例は血液透析歴3年の66歳男性,高度炎症反応を伴う発熱・倦怠感を訴え当院に紹介された。単純CT検査で炎症性腹部大動脈瘤が疑われ同日入院,翌日の造影CT検査では穿孔性虫垂炎が判明した。抗菌剤はMeropenemとVancomycinから開始し,血液培養でMethicillin-Susceptible Staphylococcus aureusが検出されたため,複雑性腹膜内感染症も念頭に置きMetronidazoleとCefazolinを追加移行した。炎症反応は経時的に改善傾向を認めたが入院25日目に動脈瘤破裂が判明し,緊急ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行,以降は抗菌薬療法継続のみで全身炎症が鎮静化したため,術後76日で軽快退院となった。本症例では術中感染制御が未施行も徹底的な抗菌薬療法の併用で急性期の致死的イベントが回避されており,EVARが感染性大動脈瘤に対する低侵襲治療の一選択肢となる可能性が期待された。
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