Geographical review of Japan, Series B
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62 巻 , 2 号
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  • 石川 義孝
    1989 年 62 巻 2 号 p. 75-85
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    競合着地モデルは,地図パターン問題(空間的相互作用モデルにおける距離変数にかかるパラメーターの推定値が,対象とするシステムの空間構造の影響をうけて歪んでしまい,結局モデルの誤った特定に陥ってしまう,という問題)の解決に向けての曙光と評価される。しかし,この新しいモデルの根底にある二段階目的地選択過程という前提は,これまで経験的に論証されていなかった。本稿は,概念上競合着地モデルと対応するネスティド・ロジヅト・モデルを用いて,この課題に取り組んだものである。1980年におけるわが国の各都道府県からの移動者データの分析を通じて,このモデルにおける合成変数にかかるパラメーターが,一段階目的地選択を含意する値から有意に離れていることを確認した。この知見は,上記の二段階目的地選択過程が作用していることの証左とみなしうるものである。さらに,異なる選択トリーがモデルの実行度に与える影響についても,論及した。
  • 東京,メキシコ市,パリ,およびサンパウロの事例
    萩原 八郎
    1989 年 62 巻 2 号 p. 86-103
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    この小論でとりあげる4都市は,人文・自然環境ともに大きく異なるが,その基本的都市施設である給・排水施設に着目し,地域性の理解を比較によって試みた。手順としては,まず東京とメキシコ市について比較・考察し,次に先進国と開発途上国の巨大都市という両者の関係をより多元的に検討するために,先進都市であるパリ,そしてメキシコ市同様に都市問題に苦慮するサンパウロの事例をとりあげ,それぞれ東京,メキシコ市と比較してみた。
    その際,主に歴史的発展過程と現在の普及状況について各都市の特徴(長)や問題点を明らかにした。また,上・下水道システムを示す図はできるだけ同一の縮尺で表現し,比較しやすくした。
    その結果,東京とパリの比較では,両者に共通している先進性にもその内容に違いがあることを確認し,一方メキシコ市とサンパウロ市の比較では,それぞれの独自性とともに問題点に共通性が認められた。
    これらの比較を通して,各都市における普及の程度に優劣をつけることは可能であるが,それが本論の目的ではない。地域の自然環境に応じて必要性から作り上げられて現在に至った各都市の上・下水道システムはその地域性を反映するものであるという点を重視し,そのあり方自体には優劣をつけるべきものではなく,むしろそこに見られる優れた点や劣る点について相互に参考とすべきものであろう。その意味で,東京は先進都市であるパリの事例のみならず,開発途上国の巨大都市であるメキシコ市やサンパウロの事例からも参考になる点が少なからずあるといえる。
  • 許衛 東, 白坂 蕃, 市川 健夫
    1989 年 62 巻 2 号 p. 104-115
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    雲南省,西双版納倦族自治州は,中華人民共和国の南西端に位置し,南はラオス,ビルマと国境を接している。西双版納は植物資源の宝庫といわれ,中国だけではなく,ひろく外国の研究者にも興味深い地域である。
    西双版納は東南アジアのマレーシアやイソドネシアのような,典型的な熱帯多雨林地域と比べると,熱帯の限界的性格が強く,それ故に複雑な自然条件に対応した様々な農業や集落がみられる。
    西双版納倦族自治州には,傑族をはじめ,基諾族など10を越す少数民族が独特の生活様式を持って生活している。本稿では,筆者の実地調査をもとに,西双版納における集落立地を含めた農業的土地利用と近年の変化を,民族別に考察した。
    1980年代に入るとともに,西双版納では農業において生産責任制が採り入れられたこともあり,かつてない急速な農業変革が進められている。その中心は,西双版納の自然環境に基づいたゴム,茶そして熱帯果樹を中心とした換金性の高い近代的集約農業の拡大である。中でもゴム栽培は,多かれ少なかれ,ほとんどの民族に取り入れられ,その高距限界は海抜1,360メートルにもおよんでいる。この,いわゆる“近代化”農業への移行過程で,盆地においては水田耕作の比重が増し,山地においては焼き畑の比重が低下し,仏教文化を持たない少数民族ほど,伝統的農法や固有の農耕文化要素が衰退し,漢民族化・漢文化化が速いテンポで進んでいる。
  • 牧田 肇, 中条 廣義
    1989 年 62 巻 2 号 p. 116-126
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    雲南省と海南省は,広西壮族自治区・広東省・台湾省など,他の中国南部の諸地域と同様に,植物区系のうえでは北帯と旧熱帯との漸移帯をなす。そのため,これらの地域には両帯の植物が混在するが,さらに固有の分類群も多い。
    特に雲南省では,無機的環境条件が複雑で,植物の立地の局地的差異が大きい。そのため,熱帯雨林から極帯相当のものまで,多様な植物群が見られる。
    これらの中で,硬葉カシとその群落は,特に興味深いものである。
  • 漆原 和子, 永塚 鎮男
    1989 年 62 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    雲南省の西双版納には成帯性土壌が垂直的に分布している。すなわち標高600mまでは準ラトソル(準磚紅壌), 600mから900mまでは赤紅壌, 900mから1600mまでは赤色土(紅壌),1600m以高には黄褐色森林土(黄棕壌)と思われる土壌が分布する。しかし,赤紅壌は紅壌の分布地域に古土壌として分布している。鉄の結晶化指数(Fed-Feo)/Fetはそれぞれの土壌の化学分析値から計算した。準磚紅壌の結晶化指数はほとんどが0.85以上の値を示し,赤紅壌は0.7~0.85, 紅壌は0.5から0.7の値を示す。
    吉良の暖かさの指数による区分では,西双版納の標高900mまでは亜熱帯,それより高地は温暖帯である。一方,日本では赤色土の分布は西南日本の亜熱帯地域で,黄褐色森林土は西南日本の温暖帯に広く分布し,かつ古土壌として赤色土を伴なう。このように西南日本と中国南部の雲南では,土壌型と暖かさの指数の間の関係は同じではない。しかしながら雲南の紅壌と西南日本の赤色土とは鉄の結晶化指数はほとんど同じ巾 (0.5から0.7) の中におさまる。
    標高600mよりも低い雲南省の南部は吉良の暖かさの指数では亜熱帯であるが,準磚紅壌が西双版納にある。この地方では1月から6月までの間,毎年水不足量 (d) が出現する。雲南省から広東省にかけて,水不足量は毎年1月から6月までは出現しない。むしろ水不足量は中国南部のより東部では8月, 9月に年々出現する。雲南省の南部は夏に高温湿潤であり,有機物の分解には好適である。一方,冬から春にかけて毎年温暖で,かつ乾燥している。このような気候条件は鉄の結晶化を促進させ,結果的に亜熱帯のような温度条件であっても準傳紅壌や赤紅壌を分布させていると考える。ただし,準傳紅壌はこの調査地域では古土壌として分布している可能性がある。
  • 野元 世紀, 杜明 遠, 上野 健一
    1989 年 62 巻 2 号 p. 137-148
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    雲南省西双版納の景洪,劾養盆地で1986年~87年, 88年~89年の寒霧季,冷気湖と霧の観測を行なった。盆地大気下層の気温プロファイルは霧形成時に大きく変化する。霧形成時に気温の逆転層,すなわち冷気湖が発達する。しかし下層の逆転は霧形成時に消滅し,不安定なプロファイルが形成される。
    逆転層や不安定大気の発達は盆地内の地形環境に強く影響される。そのため両盆地における夜間の気温プロファイルの変化は異なる。霧の発達は気温のプロファイルに関係するので霧のラィフサィクルについても両盆地で差が見られた。さらに冷気湖の発達や霧の形成にメソスケールの循環系の関学が示唆された。
  • 吉野 正敏
    1989 年 62 巻 2 号 p. 149-160
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    この論文は先ず気温・霜・降雨・霧・日照などの気候条件について論じ,次にそれらがゴム,茶,米,サトウキビなどの栽培に与えるインパクトについて論じた。寒波はまれではなく,上記の熱帯作物にひどい被害をもたらす。斜面では冬もなく夏もないよい気候は1,300mから1,650の高度に認められる。谷間や盆地底では周辺の斜面とは異なる条件をもっており,違った作物栽培や異った収穫季のために利用される。春の干ぽつは年によりひどい。灌潮iがその対策のために必要である。また,気候変動,寒波,局地循環などの気候条件が西双版納の山地農業の発展を考える上で重要であることを論じた。
  • 安成 哲三, 田 少奮
    1989 年 62 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    中華人民共和国の雲南省全域における寒波の時空間構造を,28年間 (1958~1987) の冬 (12, 1, 2月)の月平均気温偏差に主成分分析の手法を適用することにより調べた。また,卓越する寒波のモードが,中国全域に影響を及ぼす寒波の卓越モードと,どのような関係にあるかを,中国全土160地点の同じデータの主成分分析の結果と比較することにより,考察した。その結果,雲南省全域で最も卓越する寒波の型は,より巨視的にみると,チベット高原から雲貴高原,さらに華南南部にかけての山岳・丘陵地にのみ集中して襲来する寒波(雲南モード)に対応していること,これに対し,長江の中・下流を中心として中国平原部全域に最も卓越する寒波(平原モード)の影響は,雲南省では比較的小さく,よりローカルであることがわかった。雲南モードの寒波は,チベット高原から吹き降りて来る寒気団と,高原北(東)縁を地形に沿って流れ降りて来る沿岸ケルヴィン波的な寒気団の振舞いが重要であることも示唆された。
    これら二つの寒波のモードに対応する大規模循環場を,北半球全域の500mb高度偏差と,地上気圧偏差の合成図手法により,調べた。その結果,雲南モードは,偏西風の遙か風上側である,ユーラシア大陸西部と北大西洋からグリーンランド付近での循環場の偏差と密接に関連していること,これに対し,平原モードは,中国北東方のシベリア中・東部での低指数型循環と寒気団の南下に,より直接的に対応していることが明かとなった。
  • 永塚 鎮男, 漆原 和子
    1989 年 62 巻 2 号 p. 170-178
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    海南島は,亜熱帯から熱帯への移行帯に位置しているとともに,降水量の多い東部から乾燥した西部へ向かって湿潤度が次第に低下しているため,成帯性土壌の分布様式もかなり複雑である。この島の成帯性土壌型の国際的土壌分類体系における位置づけを明らかにするために,代表的な土壌型であるラトソル(傳紅壌),ラテライト性赤色土(赤紅壌),鉄質ラトソル(鉄質傳紅壌)の3種の土壌断面について一般理化学性,粘土鉱物組成,鉄化合物の存在様式を分析し,アメリカの分類体系, FAO-Unescoの分類体系ならびにフランスの生態的土壌分類体系における分類単位との対比を試みた。対比の結果は以下のとおりである。
    1) 5ケ月間の乾季がある亜熱帯ないし熱帯季節雨林気候下のラトソルはオキシックロドアスタルフ(USA), クロミックリキシソル (FAO-Unesco), 典型的熱帯鉄質土(フランス)にそれぞれ対比される。
    2) 乾季が4ケ月間ある亜熱帯季節雨林気候下のラテライト性赤色土は,オキシックハプラスタルト (USA), ハプリックアリソル (FAO-Unesco), 塩基未飽和熱帯鉄質土(フランス)にそれぞれ対比される。
    3) 亜熱帯ないし熱帯雨林気候下の鉄質ラトソルは,トロペプティックハプロルソックス (USA), ローディーックフェラルソル (FAO-Unesco), フェリソル(フランス)にそれぞれ対比される。したがって,海南島のいわゆるラトソルやラテライト性赤色土は真のラトソル(オキシソルあるいはフェラルソル)のカテゴリーには入らず,鉄質ラトソルだけがかろうじて真のラトソルに属すものと見なされる。
  • 高橋 英紀, 中川 清隆, 山川 修治, 田中 夕美子, 前田 則, 〓 永路, 謝 羅乃, 王 , 曽 平
    1989 年 62 巻 2 号 p. 179-191
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    中国海南島の北部にゴムの木のプランテーションが展開されている農場(林段)があるが,そこで1986年4月から1989年3月までの3年間に観測されたデータを基に,微気象特性を調べた。粗度,地面修正量,ゴム林のキャノピーを通過する放射透過率など空気力学的パラメーターは,落葉前後で明らかに異なる。キャノピー上の短波放射のアルベードは,冬季には10%であるが,夏季と秋季には16%になる。落葉後,キャノピー上の顕熱フラックスが増加すると,潜熱フラヅクスは急激に減少する。林床上における顕熱フラックスは1日を通して非常に小さい。また,夜間には,負の正味放射による熱の損失があるが,それは地熱フラックスにより補償されることなどが明らかとなった。
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