本稿では、高速道路の動的速度マネジメントを対象に、文献調査に基づいて欧米諸国で導入されている可変制限速度のシステム概要や理論的背景、導入効果の報告事例をまとめて紹介する。また、日本の制限速度制度との違いや制限速度に対するドライバーの意識についての日英比較分析の事例を紹介する。最後に、それらの知見を通して、今後、日本で動的速度マネジメントを展開するに当たっての課題や展望を述べる。
本稿では、速度マネジメントのEngineeringアプローチおよびEnforcementアプローチにおける比較的新しい技術の動向について紹介する。具体的には、欧州諸国で2000年頃から研究や実証が始まったIntelligent Speed Adaptation(ISA)やAverage Speed Enforcement(平均速度取締)、および国内における新しい速度取締技術である可搬式オービスの動向について紹介するとともに、Evaluationという視点から速度取締の効果評価の視点について解説する。
2017年11月より、高速道路の一部区間において最高速度が試行的に100km/hを超えて引き上げられた。本稿では、この引き上げによる交通状況への影響を検討した研究事例を報告する。そこでは、110km/h規制や120km/h規制への引き上げによる影響が、走行速度の変化、車線変更回数の変化、衝突余裕度(Margin-To-Collision)を指標とした追い越し時の追突リスクの変化、の3つの観点から検討された。2019年3月までのデータでは、総じて最高速度引き上げによる大きな影響はなかったが、一部には興味深い変化も確認された。今後、影響を長期的なスパンで観察する必要がある。
本研究では、ドライバーの速度選択に影響する時間節約バイアス(高速領域にて加速による節約時間を過大に評価する認知バイアス)の抑制を目的とした教育の効果について検討した。具体的には、免許を所有する大学生27名に対し、速度の表示が「秒/km」もしくは「km/h」の場合の加速による節約時間を、時間節約バイアス測定の前に計算させるトレーニングを行った。その結果、前者では時間節約バイアスが生じたのに対し、後者では生じなかった。また、時間節約バイアスの程度は、ドライビングシミュレーター上の運転行動と関連しなかった。
本稿では、全国アンケート調査データを用いて、都道府県間を中心に運転速度意識の地域間差異の有無を検証した。分析の結果、走行中、道路の制限速度に対する認知度は、都市部、地方部という居住地の違いや都道府県間の違いといった単純な傾向としての地域間差異は観察されなかった。一方、速度取締や通学路における速度調整の態度に関しては、近接地域では類似しているが、物理的な距離が遠くなると地域差がみられることなどが明らかとなった。
幹線道路においても生活道路においても、道路の構造は安全かつ円滑な交通を確保できるものでなければならない。本稿では、「安全性と円滑性」「幹線道路と生活道路」「歩行者と自動車」の観点から、道路構造における安全性と円滑性の確保の考え方を紹介するとともに、供用中の道路における安全性、円滑性の確保の方策について、近年広がりを見せている生活道路の交通安全対策を中心に紹介するものである。
本稿では、超高齢社会の日本における交通課題の解決手段の一つで、住宅地等における移動手段として共存空間での活用に期待されている低速モビリティについての紹介を行う。まず、低速モビリティとしての車両の種類と区分、利点と欠点を紹介する。また、活用事例として、グリーンスローモビリティなどの実証や事業化事例などを示す。さらに自動運転技術を活用した低速モビリティについての実証実験を紹介し、課題や今後の展開について述べる。
世界のロジスティクス先進国・地域のいずれが最も強い競争力を持っているのか。これについて、グローバル規模のアンケート結果に基づく世界銀行の調査報告書をはじめ、世界の主要国・地域のロジスティクス競争力を比較計測した拙稿もまた、EUの圧倒的な競争優位の存在を実証している。そこで本稿では、EUを輸出拠点として展開される主要国の海空運の代替行動を、期待運賃に基づく延期型ビジネスモデルとその形成の引き金となる直接投資行動の2軸より考察して、EUのロジスティクス競争力の源泉が、合理的に他と区別される自己調整力を持った優れたビジネスモデル構築力の機能にあることを実証している。
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