新型コロナウイルス感染症対策は、「感染拡大防止と社会経済活動の両立をどう図るか」が一大テーマであった。初期はウイルス封じ込めのため、外出や営業の自粛によって人流を7〜8割減らすことが目指された。また、ワクチンと治療薬が開発されるまでの間は、社会経済活動再開の時期と方法が模索された。こうした経緯を振り返り、今後の感染症対策の体制を知ることは、パンデミックに強い社会を考える上で重要である。本稿では、これまでの対策と2023(令和5)年に発足した内閣感染症危機管理統括庁等の新体制を紹介する。
新型コロナウイルス感染症の国内流行では、感染者や家族をはじめ、エッセンシャルワーカー等に対する不当な差別的言動が問題視されたほか、過去に生じた感染症差別の再燃を一部でみることになった。本稿では、これまでの感染症差別の事象、感染症をめぐる差別的言動に対する法的な評価とその可能性を振り返りながら、人々の尊厳を守り、相互に尊重し合える社会を形成するために、先般の感染症流行が感染症差別からの解放を考えるにあたり照らした課題等を報告する。
COVID-19まん延下、我々は大学教育として感染症対策に十分配慮した上で、対面とオンライン併用のハイブリッド講義を展開してきた。今でこそ学会等で実施されているが、当初は試行錯誤の連続であった。その実践の中で学んだことは、教員と学生が「協力し共に学ぶ」という教育の原点の大切さであったといえる。いつ再来するともしれないパンデミックに備え、教育機関としての我々の経験をここに共有し、また、時を同じくして開催されたスポーツの祭典、東京オリンピック・パラリンピック2020における臨床検査技師教育機関として、学生らが参加選手へのドーピング検査に参加協力した事例も併せて報告する。
COVID-19の世界的な大流行は、人々の日常生活や社会経済活動に大きな影響を与えるとともに、医療システムや保健政策にも多大な変化をもたらした。疫学研究は、このウイルスの発生・伝播メカニズムを明らかにし、公衆衛生対策の策定に貢献してきた。交通安全や救急医療の分野においても、疫学研究の結果は、救急医療体制の整備や予防対策の計画・評価に有用な情報源である。今回のCOVID-19の流行がわが国の救急医療や交通事故に与えた影響を継続的に評価し、来るべき次の感染症流行に向けた対策の強化が求められる。
新型コロナウイルス感染症患者は感染拡大防止のため、法に基づき公共交通機関の利用が制限され、行政の管理の下で移送として扱われた。沖縄県では、搬送手段の限られる離島から感染管理や医療提供を行いながら移送するため、県対策本部に搬送調整機能を設け、多数の関係機関と調整を行い、アイソレーター等の感染防御資機材、医療資機材の電磁干渉、運送約款等の課題を乗り越え、事故なく搬送を実施した。この経験が今後の離島からの移送に生かされるべく報告する。
COVID-19パンデミックの間に、新たな交通サービスの一つとしてシェア型交通が注目されている。このシェア型交通の持つ公共交通に対する補完的機能の可能性に着目し、東京都心部における通勤目的の交通行動を対象に、 WEBアンケート調査を行った。調査では、シェアサイクルと公共交通の組み合わせによる手段選択において、交通行動の変容を促すためにナッジインセンティブを考慮した。これらのマルチモーダルの交通手段の組み合わせ条件による選択要因を分析することで、通勤交通における行動変容に関する知見を得た。
COVID-19感染拡大が収束に向かいつつある中、モビリティへの影響の分析が求められている。本稿においては、交通事故に関する疫学的研究報告、警察庁の交通事故オープンデータの解析、佐賀大学病院を中心とする臨床活動から感染拡大前後の比較を行った。また、症例研究からは、運転断念によって交通事故リスクは減少するものの、生活に必須の移動行動、買い物、就労、通院などの移動行動を維持する方策が必要であり、モビリティ維持を目指したコーディネーターの養成により、モビリティをつないでいくことの重要性を論じた。
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