本稿では、最初に日本における自動運転技術を搭載したモビリティの実用化状況を紹介する。続いてRoAD to the L4プロジェクトの目標、推進体制、個別テーマ1からテーマ4の具体的な取組内容を紹介する。また、これらの取り組みから得られた知見や経験を基に、さまざまな地域で取り組みが実施されているAD MaaS社会実装事業(Automated Driving Mobility as a Service)の支援に関する取組状況を紹介する。国外の取組状況に関する調査結果を紹介した後、今後の計画について説明する。
名古屋大学は、文部科学省/科学技術振興機構(JST)のCOI(Center of Innovation)プロジェクトの中で、地域限定・低速走行の「ゆっくり自動運転」を開発し、春日井市高蔵寺ニュータウンでのラストマイル移動サービスとして実装した。このサービスは、地域住民が結成したNPO法人によって運行されており、オンデマンド型の自動運転サービスの運営形態として世界初の実装と考えられる。自動運転システムは、現在レベル2で運行されており、NPOの高齢者でも扱いやすい運行管理システムと車内の車両操作ボタンを特徴としている。
自動運転の社会実装にあたっては、技術進歩・法整備・社会受容性の醸成が3本の柱とされる。本稿では、社会受容性醸成を「社会的有用性の認識」「技術の理解」「ルールの浸透」「信頼形成」の下、「課題・リスクの最小化と安全かつ効率的な活用に向け、個人を含む社会全体での寄与ができる状態」との定義づけを行った上で、内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム: Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)や経済産業省・国土交通省の委託事業であるRoAD to the L4プロジェクト等を通じて収集したリサーチ結果や事例から、自動運転の社会実装に向け、その社会受容に必要なアクションについて考察する。