都市は、多様な人々が集まり、交流し、多様な活動を繰り広げることにより、その力を発揮してきた。しかしながら、近年の都市を取り巻く状況は、人口減少、高齢化など著しく変化しており、市街地の郊外化とともに商店街がシャッター街化するなど、本来にぎわうべきまちなかからにぎわいが失われている。また、成熟社会において経済成長を図っていくためには、イノベーションの創出を進めていくことが重要であるが、イノベーションの創出には、多様な人々が集い、交流し、活動を行うことが必要不可欠である。本編では、こうした状況において、都市の力を最大限引き出すために必要な「まちなか」を人間中心の空間に転換し、多様な人々が集い、交流し、活動することを促していく「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりの取り組みについて紹介する。
歩行は最も一般的な身体活動であり、健康の維持・増進に重要であるが、日本人の歩数は減少傾向にある。横浜市が実施する「よこはまウォーキングポイント事業」のデータ分析から、歩行を促すまちづくりの要素として4つの“D”と2つの“P”を紹介する。特に、緊急事態宣言下における公園の重要性の変化、位置情報ゲームによる中高年の歩行促進の可能性について詳説する。
自動車優先の都市から歩行者中心の都市への転換は、世界で進みつつある。2000年代前半にウォーカブル指標が提案され、都市の歩きやすさについて数々の検討がなされてきた。歩くことが人間の健康にさまざまな効果をもたらすことは、多くの研究によって証明されている。ますます深刻になる地球環境問題、そして、2019年末からの新型コロナウイルス感染症拡大は、この都市の転換を一気に押し進め、15分都市など、ヒューマンスケールの持続可能な都市の構築に向かっている。本稿では、歩行という視点で1990年代終わりから現在まで、どのような議論が世界で繰り広げられてきたか概観する。
超高齢社会の訪れとともに運動器の障害を有する高齢者人口が増加し、運動器の障害は、要介護あるいは要支援状態となる原因の20%以上を占めている。運動器の機能障害の早期発見および運動器障害の進行予防のため、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」という概念が提唱されている。ロコモ症例では、歩行速度の低下のみならず、立脚期における股関節の伸展ならびに遊脚期における股関節と膝関節の屈曲の減少などの歩容変化が生じる。したがって、ロコモ症例に対して効果的な歩行の未病効果をもたらすためには、歩行による身体活動時間の増加に加え、ロコトレなどの補強訓練により、歩容を改善させることが必要と考えられる。
本稿では、人が装着し、その動作や姿勢を外部エネルギーにより補助するパワーアシストスーツについて紹介する。われわれがこれまで販売してきた腰用パワーアシストスーツを例に、アシストスーツを取り巻く状況について整理するとともに、歩行時の負担を軽減するパワーアシストスーツHIMICOの開発状況について報告する。HIMICOは、歩行中の股関節運動の支援が可能なワイヤー型アシストスーツである。軽量かつ小型であるため、高齢者が着用することで歩行運動を促進し、健康寿命延伸が期待される機器である。
Honda歩行アシストの特徴である軽量で装着が容易、使用環境の自由度が高いことに着眼し、障がい児の自宅を含む近隣の屋内外環境下における歩行練習への適用を検証した。本稿では、Hondaにおける歩行支援技術研究の経緯から、歩行アシストの原理、脳性麻痺児への歩行練習への適用検証結果を記し、さらにコロナ禍における人々の生活の変化に伴う今後の展望について述べる。
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