リメディアル教育研究
Online ISSN : 2423-8252
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16 巻
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
【巻頭言】
【資料】
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特集: ポストコロナ時代におけるオンライン活用を通じた新たなリメディアル教育
【前書き】
【論文】
  • −パンデミックにおける対面授業と遠隔授業の比較−
    中川 知佳子, Shewack Eric, 小林 ゆみ
    原稿種別: 【論文】
    2022 年 16 巻 p. 11-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    これまでの研究では,リアルタイムで双方向のやりとりが可能なビデオ会議システムを用いたコミュニケーションの有効性については十分に検討されていない。また,アンケート結果をもとに学習者の意識の変化を調べた研究はあるが,学生・教師の双方の立場からメリット・デメリットを評価したものはない。本研究は,学習意欲や態度の育成およびコミュニケーションスキルの育成を目指す「英語コミュニケーション」科目における,対面学習と遠隔学習の違いを検証することを目的としている。質問紙調査を行い,5段階評価および自由記述項目の回答を分析した。その結果,初級学習者にとって対面での発話は非常にプレッシャーになること,遠隔授業での適度な距離感が快適なコミュニケーションにつながる可能性があること,リアクションツールやチャットなどの発話以外のコミュニケーション手段が有効に活用できることなどがわかった。これらの結果は,リメディアル教育において,コミュニケーションへの興味などの「態度」を育むためのヒントとなる。

  • ―対面支援の発話量および発話内容との比較―
    坂本 麻裕子, 中島 宏治
    原稿種別: 【論文】
    2022 年 16 巻 p. 27-41
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    筆者らは,ライティング支援における対面での会話とオンラインでの会話は何か違うのではないかという問題意識を持っている。そこで,本稿では次の二点を検証した。対面支援とオンライン支援で1)発話量は異なるか,2)発話内容は異なるか。ライティング・センターの対話12件(対面6,オンライン6)を対象に,発話量と発話内容を分析した。オンライン支援での書き手の発話量は,対面支援より少ない傾向にあった。また,三つの話題(課題,セッション,文章)に分けて発話量を分析した結果,対面と同様に「文章」に関する発話が大半であった。「文章」に関する発話を,8種類の内容コードを用いて分析した。その結果,オンライン支援では【書き手の意図】【読み手の解釈】【修正案の提示】の三つが多かった。また,書き手が気づきを得る瞬間が複数回確認され,対面支援と同様に【書き手の意図】が頻出した。オンライン支援だけの特徴は,支援者からの【問題提起】と,書き手が気づきを得る会話の発端となる支援者からの【読み手の解釈】であった。

【実践研究論文】
  • 奥田 宏志
    原稿種別: 【実践研究論文】
    2022 年 16 巻 p. 43-51
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    本実践研究では,中等教育における研究倫理教育の実施状況調査と研究倫理を題材としたe-ラーニングとグループ討論を用いたリメディアル教育の効果を検証した。大学初年次学生に対して実施した研究倫理の知識・理解を問うテストの結果,大学入学前の「探究」を含む調査・研究活動の経験は,研究倫理の知識・理解に大きな影響を与えていないこと,「引用」について誤った知識を持っていることが確認された。これらのことから,中等教育の現場において適切な研究倫理教育を受けていないことが示唆された。さらに,e-ラーニングとグループ討論を用いたリメディアル教育方法を行った結果,大学初年次学生の研究倫理の知識・理解を問うテストの成績向上につながることが明らかになった。

  • 山下 由美子, 川越 颯亮, 小松川 浩, 山川 広人
    原稿種別: 【実践研究論文】
    2022 年 16 巻 p. 53-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,オンライン型協調学習を通じて学生達が話し言葉を改善するための授業デザインを新たに検討した。グループ議論を通して,他者の文章内の話し言葉にどの程度気づき指摘できるかを検証するため,レポート課題を課し,グループ議論後に修正レポートを再提出させた。検証には,オンラインでの授業実践用に用意したグループウェアに蓄積されたレポート,指摘データやZoomに記録された録画映像から,学生たちの指摘の傾向や話し言葉への気づき・コメントの動きを分析した。結果,再提出後の話し言葉が18.7%減少し,他者からの指摘なしでの修正も116個(10.2%)確認できた。協調学習が他者への指摘に加え,自身のレポート推敲にもつながっていたことがわかった。また,文脈判断の必要なあいまいな話し言葉も37個検出できていた。本研究で,オンライン上のグループで他者の文章を共有しながら議論を行うことが十分可能であり,また話し言葉の減少も確認することができた。

  • ―ICTツールを活用した協働・協調学習に着目して―
    巽 靖昭, 堀 憲一郎
    原稿種別: 【実践研究論文】
    2022 年 16 巻 p. 65-78
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,地域理解をテーマとした遠隔型ディベート学習における,ICTツールを利用した学習支援方針の整理,及び対面授業との教育効果比較を通して,効果的な協働・協調的学びの実践を検証することである。本研究が対象とする科目は工学部単科大学の3年次全学必修科目であり,2019年度は対面授業,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響がでた2020年度は遠隔授業で行われた。ここではICTツールを用いたグループワークを行う際,(ア)協働・協調学習の結果を同一スペースに蓄積させる,(イ)学生間の相互作用を促進・可視化させる,(ウ)グループ間の相互作用を促進させる,(エ)協働・協調学習の結果が常時閲覧・編集できる,ことを学習支援方針としオンラインホワイトボードMiroで協働・協調学習の場を確保した。授業終了後に行われた履修者アンケートの因子分析とその下位尺度得点比較の結果,コミュニケーションスキル自己効力感,授業肯定感,協働・協調ストレスの3因子において対面授業より遠隔授業に肯定的結果が得られた。

【研究ノート】
  • 田中 忠芳, 館 宜伸
    原稿種別: 【研究ノート】
    2022 年 16 巻 p. 79-92
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    COVID-19パンデミックの影響で,2020年度以降,対面で授業を行うことが難しくなった。数理系科目と物理系科目は,STEM教育の根幹にある。2021年度前期,数理系科目と物理系科目について授業改善の取組が行われた。教師が,「授業後に学修者が自学自習しやすいように授業の準備をすること」,「丁寧な授業を実施すること」,「授業のZoomレコーディングを配信すること」により,多様なレディネスの学修者の学修支援が可能になることが示唆された。この授業改善の取組により,STEM教育における多くの知見が得られた。

【実践報告】
  • 黒田 匡迪, 東寺 祐亮, 坂井 美穂, 渕上 千香子, 吉村 充功
    原稿種別: 【実践報告】
    2022 年 16 巻 p. 93-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    日本文理大学工学部の初年次において,リメディアル科目として基礎学力講座(数学・国語)をクォータ制で開講している。2019年度までは共通シラバス・共通教材での複数クラスを対面授業で実施してきたが,クラス間の教育効果に差があるという課題があり,2020年度からはチームティーチングによる遠隔授業(合同クラス)への転換を図った。本研究では,チームティーチングが導入されている基礎学力講座(数学・国語)において,対面方式の授業を遠隔方式に変更した場合に,同程度の効果が得られるかを検証した。その結果,対面授業を行った2019年度と,チームティーチングを導入して遠隔授業を行った2020年度とで単位認定率と期末試験点数に有意な差は見られず,遜色ない効果が得られたことが明らかになった。一方で,2020年度の遠隔授業では,2019年度までの対面授業と比較して,欠席過多による不合格者が多いことが明らかになった。授業時のアンケートを基に,遠隔授業に馴染めない学生の原因・特性とそのサポート方法に関する考察を行った。

  • ―立命館アジア太平洋大学初年次科目を事例として―
    筆内 美砂, カッティング 美紀, 秦 喜美恵, 筒井 久美子, 平井 達也
    原稿種別: 【実践報告】
    2022 年 16 巻 p. 103-114
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本稿は,立命館アジア太平洋大学(APU)で開講する初年次向け多文化間共修科目について,対面とオンラインを併用した同時双方向型ハイブリッド型授業(ハイフレックス型)の授業実践例を報告し,その教育実践の成果と課題を明らかにする。当該科目は,文化的・言語的背景が異なる学生が混ざってプロジェクトを実施するPBL (Project Based Learning)型授業であり,学部生のティーチングアシスタントを活用したユニークな授業である。全受講生対象の授業評価アンケートの分析結果から,2019年度の対面型と比べて,2020年度のハイブリッド型授業はすべての項目の評価が上がった。とりわけ「学生の学び」「アクティブラーニング」「教員の姿勢・関わり,授業設計」が該当する。これらの結果を踏まえて,ハイブリッド型による多文化間共修授業を活かすために重要な「教育的仕掛け」を考察する。

  • ―オンライン授業とハイブリッド型授業の比較から見えてきたもの―
    村木 桂子
    原稿種別: 【実践報告】
    2022 年 16 巻 p. 115-125
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    ポストコロナ時代の大学教育に必要なものを確認するため,コロナ禍における実践授業を振り返った。本稿では,初年次生向けのアクティブ・ラーニングの授業に焦点をあて,オンライン上でも心理的配慮は可能なのかを確認・考察した。その結果,オンライン授業によるアクティブ・ラーニングでは,心理的配慮にはハイブリッド型授業がより適していることが確認された。また,オンライン授業で見出した手法を対面授業で生かすことによって,教室活動をより有意義なものにすることを再認識することができた。オンライン授業の普及により新常識となった受講者全員のパソコン持参や教育アプリケーションの活用を,ポストコロナでは対面授業の中でも生かせるはずだ。すなわち対面授業,オンライン授業それぞれに適した活動を見直し,教室ならではの活動とオンライン特有の活動を組み合わせることによって,授業の内容をより質の高いものにしていくことが期待される。

【解説】
  • 鈴木 一克, 塙 雅典, 森澤 正之, 日永 龍彦, 鈴木 裕, 佐藤 友香
    原稿種別: 【解説】
    2022 年 16 巻 p. 127-136
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    政府は,AI戦略2019において,2025年度までに全国の大学・短大・高専の文理を問わずすべての卒業者がデータサイエンスの素養を身に付けるということを達成目標のひとつとして掲げている。データサイエンスは比較的新しい分野であることから,学習用教材の整備が全国的に進められている。本稿では,山梨大学における数理・データサイエンス・AI教育のための教材開発について解説する。山梨大学では,データサイエンス科目で修得すべき知識と技能をまとめたリファレンスを作成し,全学部入学者に対してリテラシーレベルのデータサイエンス科目を必修化した。授業実施にあたり,授業シラバスを作成するとともに教育用教材を設計・開発した。当該教材は,講義動画およびパソコン演習実演動画の2種類から成り,文系・理系を問わず,学生の事前知識や習熟度,授業の目的,または授業を補完するためのリメディアル教育等,必要に応じて教材の必要な箇所のみを学習に利用可能である。本稿ではまた,教材の学外公開等,今後の展開についても述べる。

【展望】
  • ―数学基礎教育の観点からの遠隔授業―
    佐藤 眞久
    原稿種別: 【展望】
    2022 年 16 巻 p. 137-144
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    大学が遠隔授業を余儀なくされ,各大学が大変な苦労をして対応したのが実情であろう。しかし,遠隔授業が対面授業の代替え手段と捉えているだけでは,既存の固定観念にとらわれ,大学・高校のあり方を考え直す良い機会を逃すことになる。本報告では,最初に基礎教育課程数学の遠隔授業を通して見えてきた遠隔授業全般にわたる問題点を指摘する。次に,遠隔授業の実施にあたり,どのような教育理念をもって授業を展開したかについて報告する。その理念のもとで行う遠隔授業を通して,日本の教育のあり方にも言及し,日本の大学・学校が学びの場として本来の役割に回帰する必要性を述べていく。

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【論文】
  • ―大学生と小中学生の学年別比較―
    田島 ますみ, 松下 達彦, 佐藤 尚子, 橋本 美香, 笹尾 洋介
    原稿種別: 【論文】
    2022 年 16 巻 p. 145-159
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    学術的文章で専門分野を問わず使用頻度が高い学術共通語彙(松下,2011a)の理解度を測定するためのテストを開発し,小学4年生から中学3年生までの児童・生徒および大学生の計4,022名に実施した。学年の上昇に連れて理解度は上がるが,各学年の標準偏差はすべての学年で隣接学年との平均の差を上回り,小学校段階から同一学年内に大きな理解度の差がある。この理解度の差は大学まで続き,今回の調査では小中学生程度の理解に留まる大学生が確認された。また,大学間の差も見られ,理解度の分布が多様な大学と高水準で均質な大学に分かれた。大学生の理解度が低い語彙には,1)高頻度の基本語彙とみなされ正確に理解しているかを問われずにきた,2)抽象度が高い,3)文系学生にとっての理系語彙であるという特徴が見られた。学術共通語彙の頻度順位とテスト正答率との関係は直線的なものではなく,単にインプットを増量するだけでは教育的効果は大きくないことが推測される。

【実践報告】
  • 井内 勝哉, 西尾 悠, 脊戸 和寿, 小川 隆申
    原稿種別: 【実践報告】
    2021 年 16 巻 p. 161-167
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,理工学部初年次生に対する情報教育において,オンデマンド型online講義をデザインした。講義毎の課題および講義期間終了後の授業アンケートを解析した結果,オンデマンド型online講義では課題達成能力,理解度,満足度の点で対面講義より評価が高かった。オンデマンド型online講義の特徴である反復学習により,理解度の向上が予想された。初年次生の知識の習得幅が大きい情報教育では,オンデマンド型online講義で知識を習得し,その後,対面講義や実習などによる知識の定着が効果的と想定された。

  • ―会話の分析を中心に―
    篠崎 祐介, 鈴木 美穂, 冨士池 優美, 北原 博雄, 中田 幸司
    原稿種別: 【実践報告】
    2021 年 16 巻 p. 169-178
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    主体的・対話的に批評を行わせる学修活動を取り入れた授業実践を実施し,批評文の変化を分析するとともに,批評文の変化が大きかったグループの学修活動の分析を会話を中心に行った。その結果,取り出した情報と解釈を結びつける理由づけが記述される等の批評文の変化が見られた。また,分析対象となったグループでは,散発的で単調な会話から相手の発言に関連づいた会話に展開していた。作品がただ面白いという感想から,作品の内容や表現に着目しつつ,他者にも捉えられる理由を求めようとする意識が共有されるようになっていった。一方で,批評においてどのような理由を持ち出すとよいのかという点をメタ的・批判的に意識化させることができなかったという実践上の課題が見出された。

  • 仲道 雅輝, 竹岡 篤永, 根本 淳子
    原稿種別: 【実践報告】
    2021 年 16 巻 p. 179-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    初年次教育における学生の学習経験の質向上に向けた授業改善の取り組みとして,Parrishの「ID美学第一原理」に示される学習者要因(4要因:意図・プレゼンス・開放性・信頼感)を枠組みとした「授業改善ヒント集;学習者要因編」を作成した。このヒント集の項目は,初年次教育に携わる教員への半構造化面接法により導き出されたものである。授業改善の方策として,意図20項目,プレゼンス35項目,開放性21項目,信頼感24項目が抽出できた。これらは,授業を通じて,学生の学習経験の質の向上に取り組もうとする教員の自己評価や授業改善の手掛かりとなるものである。

  • ―ジグソー法形式とオリジナルカードゲームを組み合わせて―
    青江 麻衣, 藤坂 朱紀, 浦嶋 庸子
    原稿種別: 【実践報告】
    2022 年 16 巻 p. 191-199
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    近年,薬剤師には,基礎科学を臨床現場で生かし,現場でおこる様々な問題点に対する解決力が期待されている。その一方で薬学生の質の維持への課題が指摘されている。そこで本研究では,学生が種々の科目を分野横断的に理解して学び,知識習得までのプロセスを体験できることを目的とした新たな学習方略として,ジグソー法とシリアスゲームの要素を取り入れた,ワークショップ(WS)型学習方略を立案・実践した。その学習成果について,知識習得度確認試験及びアンケート調査により評価した。知識習得度確認試験の結果より,全学年で点数の向上が確認され,本WSが知識の向上に寄与することが示された。また,アンケートの単純集計より,概ね本WSにより科目間のつながりが見え,講義形式に比べて理解が深まったことが示された。さらに,自由記述からは,学年を横断したグループ編成が,学年間の交流の機会となっていたことが示された。

【資料】
【訂正記事】
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【会告】
【編集後記】
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