日本庭園学会誌
Online ISSN : 2186-0025
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2016 巻, 30 号
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論文
  • 佐々木 邦博, 長井 有紀
    2016 年 2016 巻 30 号 p. 30_1-30_10
    発行日: 2016年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、江戸時代起原の水路網と多数の池庭が残されている長野市松代町において、近年のそれらの減少を明らかにし、その要因を探ることを目的としている。水路と池庭の調査は、1981年から5回行われており、その調査結果を比較して、明らかにした。水路に関しては、主に泉水路が消滅している。代官町の北側、馬場町の北側、表柴町の東と南側があげられる。ただ、カワは変化せず、セギもほとんどが失われていない。いわば、水路網の骨格は残っているといえる。池の減少だが、全体で45%の池が失われている。その原因は、宅地化と水量不足が特に挙げられている。今後の保全を考えると、所有者、地域住民、行政の、3者が協力して対策を練ることが重要である。
  • 大澤 伸啓
    2016 年 2016 巻 30 号 p. 30_11-30_16
    発行日: 2016年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー
    この論考の目的は、汐留遺跡で発掘された2棟の建物跡の性格を明らかにすることである。汐留遺跡は、江戸時代の大名屋敷で、1998年から2006年にかけて発掘調査が行われた。2棟の建物跡は、この遺跡の庭園内で確認された。この論考で私は、2棟の建物跡の性格について、「貴重品を収蔵した建物」であることを主張したい。
    同じようにあえて庭園の中に建てた江戸時代の建物としては、江戸城紅葉山文庫や栃木県の足利学校跡等でみられ、貴重な書籍を収蔵した御文庫とされている。また、近年の発掘調査の事例としては、山口県の大内氏館跡でも見られ、戦国時代から存在したことがわかる。さらに大正時代の事例として旧古河庭園があり、時代や地域を越えて多くの事例があることが想定される。これらの建物をあえて庭園内に建てた理由としては、貴重品を火災等の延焼から守るため、他の建物と離れた庭園内に建てたものと考えられる。発掘調査によって確認された遺構の解釈は、文献史料や絵図の解釈、造園的な知識などさまざまな方面から検討することが必要である。
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