本稿は,I.ウォーラーステインやG.アリギなどの「世界システム」論のアプローチを批判的に援用しながら,「長期」の時間的スケールにおいて「自由主義」と「民主主義」の提携レジームを考察する.その際,20世紀の「30年戦争 1914-1945」における「自由主義」と「民主主義」の「歴史的妥協」,そして1970年代以降の「新自由主義グローバリズム」的再編の下での「妥協」の解体,という論点を強調する.
市場経済は,3モード(外部・内部・一般)の商品化が継起する「市場の内部化」を通じて進化する.1990年代以降のグローバリゼーションは現代資本主義における市場の拡大・深化の長期趨勢であり,それと脱工業化の複合効果により先進国・途上国の資本主義が多様化した.遍在する擬制資本と「自由投資主義」を特徴とするグローバリゼーションの先に,複数の貨幣と多元的な資本・投資を含む脱資本主義市場経済の未来を展望する.
資本主義経済システムの原理的安定性は,拡大的資本循環の長期的継起性に関わり,「利潤率低下法則」問題として論じられる.本論では,マルクスの利潤率低下法則論への置塩定理(1961)による批判,及び同定理への近年の批判的議論を概観しつつ,今後の資本主義経済システムの継起性は,新たな資本の拡大的循環を確立させる技術革新に依拠すると同時に,それは人類の持続可能な福祉的自由の発展の方向性とは相容れない可能性を指摘する.
本稿では,新たに入手可能になったアーカイブ資料を用いて,ソ連期ロシアにおける非公式経済活動の規模を推計し,支出面アプローチによって公式・非公式GDPを再推計した.推計の結果,1960-1990年の期間においてロシアの名目GDPが平均して12.6%過小されていたこと,実質成長が15~39ポイント,経済成長率が0.24~0.38%程度低下することが確認された.
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