本論文では,COVID-19の流行と米中対立の顕在化を題材に,現在の米国を中心としたリベラルな国際経済秩序が今後直面するであろう「危機」について,その具体的な性質について考察する.考察にあたっては,「産業政策」「監視技術」「文化対立」というお互いに密接な関連性を持っている三つのキーワードを軸に議論を進め,「危機」がもたらす価値観の対立をどう乗り越えるのかを検討する.
2020年に全世界で爆発的に拡大した新型コロナウイルスのパンデミックは,朝鮮半島の分断国家である韓国と北朝鮮にも大きな社会・経済的インパクトを与えた.本稿では,未曾有のパンデミックを前にして,韓国と北朝鮮の政府がどのような対策をとったのか,またその結果,両国の社会と経済にどのような影響が及んだのかを,防疫および社会・経済的被害の最小化戦略の両面から検証し,その特徴を比較分析することを試みる.
いわゆる「移行経済」研究では,事実分析による裏付けを欠く規範的な命題が,分析の出発命題になっているものが多い.体制転換は歴史的社会変動であり,静態的な市場均衡分析にもとづく規範的アプローチは絶対的な限界をもつ.筆者は事実分析に支えられた体制転換分析を目指して,『体制転換の政治経済社会学』を認めた.本稿は本誌に寄せられた小山洋司氏の書評,ならびに上垣彰氏の書評論文を手掛かりに,体制転換の分析手法を再検討し,事実に裏付けられた分析と歴史的認識の重要性を訴えるものである.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら