本稿は,ウクライナ侵攻後のロシアのマクロ経済実績について考察した.西側諸国による経済制裁は,ロシアの外需に強い影響を及ぼしたが,GDPの主要部分を占める内需は,財政支出の拡大を始めとする政策対応によって下支えされた.今後,短期的には,財政支出の拡大は続くものの,労働力や生産設備の不足が成長の制約要因となり,低率の経済成長になると見込まれる.
世界の液晶パネル産業では日本勢が先行し,2000年代には日本,韓国,台湾の企業が競っていた.ところが,今日(2023年)では中国の4社がテレビに使う大型パネルでは世界の7割のシェアを持っている.中国の急速なキャッチアップは,液晶メーカーが中国各地に工場を設立する際,地方政府が多額の出資によってその立ち上げを支援したことで可能となった.また,2000年代までは液晶パネルの大型化競争が激しく展開されていたのが,2009年に大型化がほぼ限界に達し,それ以降大型化のペースが遅くなったことで後発企業のキャッチアップが容易になった.液晶パネル産業における中国メーカーの台頭は,ディスプレイとテレビの関係における垂直統合から垂直分裂への移行が終盤に来たことを示している.
本稿では,企業の市場支配力とイノベーションの関係性を検証した上で,ゾンビ企業の再編を目的とする供給側構造改革の措置の効果に注目し,企業の市場支配力の強弱がそのイノベーション活動に及ぼす影響について計量的な分析を行った.その結果,供給側構造改革の措置が推進された後,これまでに優遇措置または補助金で経営を維持してきたゾンビ企業の延命が難しくなり,これらの企業は経営を維持するために既存技術と外観の改良を目標としたイノベーション活動を活発化させた,ということが確認された.
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