I examine the growth experience of the current BRICS countries in the light of the experience of earlier BRICS-like countries (France, Germany, Italy, Russia and Japan) as well as of the settler economies (Argentina, Australia, Canada, the US and South Africa) using the developmental framework of Alexander Gerschenkron. I also examine the political implications for the BRICS countries of their economic growth. The economic analysis shows the possibility of a middle-income trap at all points in history, due in part to the inability of countries to modify their development strategies or to adopt appropriate policies: continuing to foster the acquisition of labor and capital is critical for growth. In the political sphere, economic development changes the constellation of political forces in a country and the smooth adjustment to new political realities is a key factor in sustaining rapid growth. Within this analytical framework, China and India seem the BRICS countries best poised for continuing their development path. However, the BRICS are unlikely to initiate fundamental changes in the global economic order.

国際社会でブラジルの存在感を減じる要因は，経済面ではマクロ経済と産業競争力の不測の両面から来る不安定性の高さ，伝統的な格差社会であることに起因する政治的な不安定性と，政策実施能力が弱く汚職を引き起こす制度的な問題があるといえる．国際関係においては自国の立場が不明確であることから国際的影響力のある立ち位置を確立できておらず，現在も対米・対中関係のジレンマを抱えている．

ロシア経済の発展を考えるために，その強さと弱さを考察した．強さとしては，豊富な資源，石油・ガスのレントを中央に確保する財政制度，地域との関係における強固な中央集権制度の3点，弱さとしては，オランダ病による製造業の不振，低い投資率，不十分な対外経済開放の3点を指摘した．強さも弱さも豊富な資源に起因するものであることから，近い将来に成長率を3％以上にまで引き上げるのはなかなか難しいという結論を述べた．

インドで2016年11月に実施された「廃貨」政策のミクロ的インパクトを検討することにより，その悪影響は，伝統的な零細小規模企業群とそこで働く労働者，すなわちインフォーマル経済や低所得層において顕著であった反面，ITスターアップにおいてはプラスの効果となった例もあったことを明らかにした．階層間格差の拡大は，世界最大の民主主義という政治構造の下，インド経済の高度成長の持続性に警鐘を鳴らしている．

「中国製造2025」は，世界のハイテク産業を支配することを目指す中国の国家資本主義的な戦略を体現するものだとみなされている．しかし，これを1990年代からの中国の産業政策の文脈においてみると，重点産業のリストは周到になったが，政策を実現する手段は必ずしも多くないことがわかる．中国の産業政策は失敗の連続であるが，それを批判する声があまりに弱いため，政府は再び失敗を繰り返そうとしている．