産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
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9 巻, 1 号
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原著
  • 北野 菜奈, 福本 真一郎, 徳山 桂理, 池田 恵子, 髙橋 俊彦
    原稿種別: 原著
    2018 年 9 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

     プアオン式イベルメクチン製剤は公共牧場において長期間継続的に使用されており,消化管内線虫駆虫に有効である.本研究では,駆虫を行っていない牧場を用いて駆虫計画を立案し,対象農場に適した駆虫のタイミングを模索するために,イベルメクチン製剤による駆虫を実施した.

     駆虫は試験区にのみ5 月,7 月,10 月に行った.消化管内線虫卵数において試験区が対照区と比較し6 月と8 月で有意に低値を示し,試験区において7 月と比較し8 月,10 月が有意に低値であったこと,体重において試験区で7 月と比較し駆虫後の8 月が有意に増体したこと,繁殖成績でも試験区が良好な傾向を示したことは,イベルメクチン製剤による駆虫から得られた効果であると考えられた.

     イベルメクチン製剤は世界的に牛で薬剤耐性が報告されている.今回のような投与回数を必要最小限に抑えた駆虫プログラムであれば薬剤耐性は容易に起こらないと思われた.

  • 岡田 翔一, 田川 知嘉, 鈴木 直人, 樋口 貞行, 片貝 富夫, 山野辺 浩
    原稿種別: 原著
    2018 年 9 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

     酵母細胞壁混合飼料は成牛および育成牛において抗ストレス作用が期待されており,寒冷地における子牛の発育増進に寄与する可能性がある.本研究では,寒冷期の子牛25 頭を,酵母細胞壁混合飼料を給与する試験群13 頭と給与しない対照群12 頭とに分け,試験期間中のTemperatureHumidity Index(THI)を算出するとともに,体重測定および血液生化学性状検査を行った.THI は子牛が寒冷ストレスを受ける可能性が高い数値である50 を下回る期間が長く,平均値は49.8 であった.試験群と対照群の間で,試験期間内での増体に有意な差はなかったが,酵母細胞壁混合飼料給与から30 日目に,対照群と比べ試験群の血清中ビタミンA 濃度の有意に高い値を示した.酵母細胞壁混合飼料は寒冷ストレスによる影響を低減させることで,子牛の成長に伴う血清中ビタミンA 濃度の上昇を維持することが示唆された.

症例報告
  • 上坂 花鈴, 小山 憲司, 堀内 雅之, 古林 与志安, 猪熊 壽
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 9 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

     6 日齢の黒毛和種雌子牛が,突然の後躯麻痺による起立不能を呈した.左後肢の膝蓋腱反射亢進,両後肢の前脛骨筋および腓腹筋反射減弱が認められ,胸髄から腰髄の脊髄損傷が疑われた.病理解剖では第1 頸髄および第3 腰髄から第6 腰髄の硬膜下に出血を認めた.組織学的検査では,第3 腰髄以降の脊髄白質で散在性の軸索変性および脊髄灰白質で神経細胞体の色質融解を認めた.本症例の脳脊髄液中Neuron-specific enolase(NSE)をELISA 法により測定したところ,77.32 ng/mℓであり,健常対照群(N=9)の脳脊髄液中NSE 濃度(平均± SD:1.68 ± 0.63 ng/mℓ)より高値を示した.牛の脳脊髄液中NSE は神経細胞損傷を示すバイオマーカーになりうる可能性が考えられた.

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