産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
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9 巻, Supple 号
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総説
  • 根尾 櫻子
    原稿種別: 総説
    2019 年 9 巻 Supple 号 p. 199-206
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     血液塗抹標本の評価は身近であるがゆえに方法を見直すことが少ない診断法である.また,産業動物に対する細胞診は,米国では主に馬を対象にして行われているが,国内ではまだ一般的ではない.血液塗抹標本および細胞診から最大限の情報を得て診察に有効活用するためには,“良い標本”を作製することが重要である.そのためには, 採血や細胞の採取,標本の作製,標本の染色までの準備過程において起こりうる様々な過誤を回避する必要がある.血液塗抹標本および細胞診の評価を確実に行うためには,標本上に細胞が適度に分布し,細胞形態の観察が可能であり,常に同一のロマノフスキータイプの染色で作成された標本が理想的である.標本の準備段階は,臨床現場での作業であり,その方法を統一化することは容易ではない.しかし,標本準備段階での作業は,確実に診断に影響を与える.したがって,診断価値のある標本を作製するための注意点を熟知する必要がある.一方,標本から確実に病気を診断し,その診断に関しての信頼性を確保するためには,標本の評価法を習得する必要がある.将来的には,産業動物診療に活用できる血液塗抹標本・細胞診の評価法に関する卒前および卒後教育の充実が望まれる.

短報
  • 紀野 瑛里奈, 上松 瑞穂, 北原 豪, 大澤 健司, 佐々木 羊介
    原稿種別: 短報
    2019 年 9 巻 Supple 号 p. 207-210
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,黒毛和種牛における発情発見方法と分娩率との関連性を分析することである.宮崎県に所在する黒毛和種牛の繁殖農場272 戸を対象として,発情発見方法に関するアンケート調査を実施し,各発情発見方法の実施手段と分娩率との関連性および複数の発情発見方法の組み合わせと分娩率との関連性を分析した.発情発見の各方法に関して,実施農場と非実施農場との間で分娩率を比較したところ,発情発見方法として鳴き声を用いている農場が用いていない農場よりも分娩率が高かった(53.1 ± 0.9% vs. 50.2 ± 0.9%;p < 0.05).また,発情発見方法が「粘液のみ」であった農場は,「粘液&行動&鳴き声」または「粘液&鳴き声」の組み合わせで実施している農場よりも分娩率が低かった(p < 0.05).結論として,本研究では牛の鳴き声を発情発見の一つとして用いることが分娩率と関連しており,発情の見落としや遅れを防ぐために,個々の牛に対する観察に十分な時間をかけることが繁殖成績を向上させるうえで重要であることが示唆された.

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