血液塗抹標本の評価は身近であるがゆえに方法を見直すことが少ない診断法である.また,産業動物に対する細胞診は,米国では主に馬を対象にして行われているが,国内ではまだ一般的ではない.血液塗抹標本および細胞診から最大限の情報を得て診察に有効活用するためには,“良い標本”を作製することが重要である.そのためには, 採血や細胞の採取,標本の作製,標本の染色までの準備過程において起こりうる様々な過誤を回避する必要がある.血液塗抹標本および細胞診の評価を確実に行うためには,標本上に細胞が適度に分布し,細胞形態の観察が可能であり,常に同一のロマノフスキータイプの染色で作成された標本が理想的である.標本の準備段階は,臨床現場での作業であり,その方法を統一化することは容易ではない.しかし,標本準備段階での作業は,確実に診断に影響を与える.したがって,診断価値のある標本を作製するための注意点を熟知する必要がある.一方,標本から確実に病気を診断し,その診断に関しての信頼性を確保するためには,標本の評価法を習得する必要がある.将来的には,産業動物診療に活用できる血液塗抹標本・細胞診の評価法に関する卒前および卒後教育の充実が望まれる.
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