深在性真菌症, 抗酸菌感染症, 寄生虫症などでみられる慢性肉芽腫性炎症は,一般的な液性免疫や細胞性免疫により殺菌・消化・排除できない病原性微生物に対し, 活性化したマクロファージ系細胞が持続的に取り囲む生体防御反応と理解できる. これら病原性微生物に対する難治性疾患に加え, 皮膚では生体に内在する物質が抗原性を獲得して慢性肉芽腫性炎症を引き起こす疾患群がよく知られている.変性結合織成分に対する慢性肉芽腫性炎症には, 1)環状肉芽腫 (GA), 2)環状弾性線維融解性巨細胞肉芽腫 (AEGCG), 3)リポイド類壊死 (NL), 4)リウマトイド結節 (RN)がある. それぞれ結合織はムチン変性,弾性線維障害, リポイド変性, およびフィブリノイド変性を示す. 結合織障害を生じる基盤には, それぞれ, 糖尿病による微小循環障害, 紫外線障害, 糖尿病および静脈環流異常による組織障害, 関節リウマチに伴う血流障害・結合織障害が想定されている. いずれの場合も活性化したマクロファージ系細胞が周囲の結合織の間隙を浸潤してくるため, 病理組織学的に柵状肉芽腫の形態をとるが, サイトカイン分析からはサルコイド肉芽腫に近い性質を示す.持続性リンパ浮腫に続発して慢性肉芽腫性炎症が惹起されることがあり, 肉芽腫性口唇炎, 肉芽腫性舌炎, 肉芽腫性眼瞼炎, 肉芽腫性外陰炎などとして現れ, 臨床的には難治性の疾患である. 口唇腫脹, 皺襞舌, 顔面神経麻痺を三主徴とする Melkersson-Rosenthal 症候群もその一型と考えられる. この場合何が抗原性異物となるかはいまだ不明であるが, 完成された病変部の生検組織像はサルコイド肉芽腫と鑑別しがたい.かつてアレルギー性結核疹として分類されていた疾患の中にも, 現在は結核との関係が疑問視され, 別の機転により慢性肉芽腫性炎症が惹起されていると考えられる疾患がある. バザン硬結性紅斑では他の臓器に結核が証明される場合もあるが, これが認められない場合も多い. また, 顔面播種状粟粒性狼瘡(LMDF) は現在結核との関係が否定的で, 肉芽腫性酒さ, すなわち酒さの一型として理解され, 毛嚢脂腺系異物に対する類上皮細胞肉芽腫と考えられている. 典型的なものでは毛嚢周囲に明瞭な類結核型の類上皮細胞肉芽腫がみられるが, 時に顔面の結節型/小結節型のサルコイド肉芽腫との鑑別の対象となる.これらはいずれもサルコイドーシスの発症機構を理解するためにも, また鑑別診断のためにも重要な疾患群である.
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