双ロール法で作製した室温で強磁性を示すアモルファスFe
3O
4-CaO-SiO
2 3元系フェライト試料を水素気流中で加熱還元した時のFe微粒子の析出過程,結晶相および磁気的性質について検討し,以下の結果を得た.
(1) 1400℃に加熱・溶融した試料を双ロール間を通過させて作製した急冷試料の結晶相を調べたところ,溶融する組成は限定された領域にあり,かつアモルファス相となる領域はさらに限られた狭い範囲に存在した.しかもそのアモルファス領域はCaO:SiO
2=1:1を中心とする比較的狭い領域であった.
(2) アモルファス領域における磁化の大きさは3emu/g程度と小さかった.この試料を結晶化温度(約640℃)以下で水素気流中で再加熱すると,100Å以下のFe微粒子が生成し,磁化が約7emu/gに増大した.
(3) CaO:SiO
2=1:1を中心とするアモルファス領域でFe
3O
4含有量の異なる試料を水素還元しても磁化の増加が開始する温度は同じであった.600℃以上の水素還元でアモルファス相の中からまずCaFeSiO
4が析出し始め,700℃以上でそこからFeおよびCaSiO
3が熱解離した.これにより磁化が急激に増大した.
(4) CaOとSiO
2との比が異なるアモルファス試料をそれぞれ水素還元すると,CaOを多く含有する試料は水素還元温度が400℃からFe微粒子などの析出が始まり,650℃でCa
2SiO
4を析出する.これに対し,SiO
2を多く含有する試料は500℃以上からFe微粒子などの析出が開始し,575℃からCaFeSi
2O
6を析出する.また,加熱温度を高くしてもその析出速度は遅いこるようになとがわかった.
(5) アモルファス試料を水素ガス中で900~1200℃の温度に加熱すると,試料中の鉄酸化物の大部分が遊離した球状のFe粒子に還元され,その磁化値は約60emu/gに達した.
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