高校物理授業に導入している作業について,二つの側面から分析した.一つは作業を学習行動として位置づけ,他の学習行動に対比しての評価分析である.高校生2クラス(約90名)を対象として,約1年間,物理Iの正規の授業内容をテープレコーダで記録した.分析方法は,(1)TRによる授業の記録,(2)各授業毎の小規模の達成度テストの実施,(3)テスト項目に直接関連のある学習行動のチェック,(4)判別関数を用いた評価が主な手順である.分析の結果,(1)問題の領域により,正答率の規定力には顕著な差がある.(2)学習行動の能動性が高いほど,それに関連する問題の正答率は高くなることが推測された.もう一つは,作業を授業形態のーつとしての視点から,その構造を分析した.高校生5クラス(230名)を対象とした力学の七つの単元についての作業の授業の中で主観的な理解度,自信度等のデータをもとに,作業を構成しているカテゴリーを抽出し,そのカテゴリーの果たす役割を分析した.その結果,主成分分析で表現される座標系の中で,(1)各カテゴリーがクラスターを形成していること,(2)作図が中心的な役割をもつこと,(3)各カテゴリーが,作業の特徴の依存度に応じた分布領域を有していることがわかった.本論文は以上のように,作業の他の学習行動に対比しての評価の結果とその授業分析の方法,および作業構造の分析結果について,報告している.
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