本論文は,基礎,標準,応用コースの習熟度別学習集団を対象として,学習の自己評価と学力の関連について述べた.自己評価項目は学習の「理解度」「興味・関心度」「意欲度」「態度」と「指導法に対する評価」を設定した.これらの評価項目の評定値と学力の関連は,三つの手法,いわゆる相関,主成分,回帰分析を用いて分析した.分析の結果,基礎,応用コースについては,「態度」「理解度」は学力と有意な相関が認められたが,標準コースはいずれの評価項目も学力との有意な相関が認められなかった.むしろ項目によっては負の相関があることが明らかとなった.本文では,これらの原因について考察した.また,習熟度別学級編成授業では,基礎コース学習者の指導研究に力点が置かれがちであるが,これらの分析によればむしろ標準コース学習者の指導に課題があることが判明した.さらに,学習行動を表わす「学習のプロフィール」の記録作業は,学習者に対し意欲を高めるうえからも有効であることが確認された.
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