日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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47 巻, 1 号
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  • 内山 浩孝
    1998 年47 巻1 号 p. 1-17,84
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    種々の界面活性剤単独並びに混合水溶液による有機化合物の可溶化に関する研究について, 準平衡透析法 (SED), ヘッドスペースガスクロマトグラフィー (HSGC), 蒸気圧法 (SVP) により, 物質のミセル-バルク間の分配平衡定数 (可溶化平衡定数), 被可溶化物質のミセル内におけるモル分率並びに活量係数の決定を試みた。可溶化平衡定数は, 被可溶化物質のミセル内におけるモル分率とバルク中に存在する被可溶化物質の比と定義し, 可溶化平衡定数は2次式K=K0 (1-αXX2) を用いて解釈が可能である。そこで, 人体に有害な有機物質並びにイオンの除去に関する新しい処理方法開発の一端として, ミセル並びに高分子/界面活性剤複合体による可溶化現象を応用した分離除去方法の確立を試み, 準平衡透析方法並びに蒸気圧法による可溶化平衡定数の測定から有害な有機物質の除去は充分可能であり, 溶存する有機物質の99%は除去されることを明らかにした。
  • 荒川 浩, 笠井 隆史, 奥村 佳史, 丸銭 詔司
    1998 年47 巻1 号 p. 19-24,84
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    サル脂から調製した純度98.7%の1, 3-ステアロイルアラキドイル-2-オレオイルグリセリン (SOA) の結晶多形をX線回折およびDSCにより決定した。また, カカオ脂から調製した純度93.8%の1, 3-パルミトイルステアロイル-2-グリセリン (POS) の結晶多形と比較した。SOAにはα, γ, β'およびβの4多形を確認した。POSにはα, β'およびβの3多形を確認した。SOAのαおよびβ'のX線回折短面間隔はPOSのαおよびβ'とそれぞれ一致した。SOAのγの短面間隔は文献値の1, 3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリセリン (POP) および1, 3-ジステアロイル-2-オレオイルグリセリン (SOS) のγと一致した。SOAのβの短面間隔はPOSのβの短面間隔とやや異なった。SOAのβの融点 (43.5℃) はPOSのβの融点 (34.7℃) より高かった。SOAの準安定形 (β') から安定形 (β) への結晶転移速度はPOSよりかなり遅かった。
  • 沢辺 昭義, 小畑 貴央, 野近 嘉信, 森田 全律, 山下 那都樹, 松原 義治, 岡本 忠
    1998 年47 巻1 号 p. 25-30,85
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    5種の配糖体は, ノゲイトウ (Celosia argentea L.) の葉より単離された。それらの構造は各種スペクトルデータに基づいて, 1- (4-O-β-glucopyranosyl-3-methoxyphenyl) propane-2-ene (citrusin C, 1), 3-O-β-glucopyranosyl-1H-indole (indican, 2), (3Z) -hexenyl-1-O- (6-O-α-rhamnopyranosyl-β-glucopyranoside) (3), (3Z) -hexenyl-1-O-β-glucopyranoside (4), (7E) -6, 9-dihydromegastigma-7-ene-3-one-9-O-β-glucopyranoside (5) と決定した。発芽に対する影響をレタスを用いて検討した結果, 化合物1, 1のアグリコン, 3のアグリコンは生長阻害作用を示し, 化合物2および3は若干の生長促進作用を示した。
    今回の研究で単離した化合物1~5は, ノゲイトウの葉中から初めて見い出した成分である。
  • 細井 文雄, 大道 英樹, 赤間 和博, 粟井 浩二, 矢野 嘉宏, 中野 善郎
    1998 年47 巻1 号 p. 31-40,85
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    リポソームを用いた人工赤血球の調製を目的として, 重合性混合脂質リポソームの重合挙動及び重合物の安定性等について検討した。混合単分子膜のπ-A曲線から, 1-ステアロイル-2, 4-オクタデカジエノイル-グリセロ-3-フォスフォコリン (SOPC) は, コレステロール (Chol) やステアリン酸 (SA) と不溶であり, 各成分はリポソーム2分子膜内においてドメイン構造を取ることが分かった。混合脂質リポソームの重合は60Coからのγ線を用い, 4℃の温度で行った。SOPCリポソームの重合速度は線量率の一次に比例して増加した。分子量は重合時間の増加とともに低下した。SOPCに, Chol及びSAを混合すると (SOPC/Chol/SA), SOPCの重合速度が著しく増大した。凍結融解操作により照射リポソームの安定性を調べたところ, SOPC/Chol/SA系では粒子径が著しく増大した。この組成にさらにDPPCを混合して照射重合させたリポソームでは, 凍結融解操作を行っても粒子径の増大は観測されなかった。また, リポソームに内包させたヘモグロビンの溶出も著しく抑制できた。
  • 木田 敏之, 五十川 一彦, 森嶋 信明, 張 万斌, 益山 新樹, 中辻 洋司, 池田 功
    1998 年47 巻1 号 p. 41-49,86
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    マロンニトリルを出発物質に用いて, モノアルキル化, ニトリル基の還元, 続いて糖ラクトンとの反応により, 1本のアルキル鎖と2つの糖アミド (グルコノアミド, マルトビオノアミド, ラクトビオノアミド, マルトトリオノアミド) を有する非イオン性界面活性剤を合成した。得られたビス糖アミド型活性剤は良好な水溶性を示した。これらの臨界ミセル濃度 (cmc) はアルキル鎖の炭素数の増加とともに低下した。一方, 親水基中の糖ユニットの数はcmcにほとんど影響を与えなかった。また, 親水部末端にグルコピラノシド基を有する活性剤は糖結合性タンパク質のコンカナバリンA (Con A) に対して結合親和性を示したが, 末端にガラクトピラノシド基を持つ活性剤は親和性を示さなかった。
  • 鎌田 正純, 原 節子, 戸谷 洋一郎
    1998 年47 巻1 号 p. 51-56,86
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    キャベツ起源のホスホリパーゼDを用いて90%のホスファチジルコリン (PC) と10%のホスファチジルエタノールアミン (PE) から成る大豆リン脂質 (PC-90) からホスファチジルセリン (PS) 調製条件を検討した。種々の条件検討の結果, 0.13mmolのPC-90に対して, ジエチルエーテル : 5mL, pH 6.5酢酸緩衝液 : 3mL, 塩化カルシウム濃度 : 1M, セリン : 8.6mmol, キャベツ起源ホスホリパーゼD : 0.5IUを37℃, 2hの恒温振盪で混合することによって, PC-90からPSを含有率約37%まで高めることができた。この最適条件下にPCは加水分解または変換反応により著しく減少したが, PEのPSへの変換は僅かであった。
    本酵素の変換活性はpH 5.6の酢酸緩衝液で酵素を1h前処理することにより向上し, 30minの短時間でPS含有率が52%まで高めることが可能となった。
  • 小出 善文, 李 波, 川口 勇二, 正泉寺 秀人, 江角 邦男
    1998 年47 巻1 号 p. 57-63,87
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    4本の疎水鎖を持ったレソルシノール系カリックス [4] アレン ([4] Ar-Rn : テトラアルキル鎖, [4] Ar-Ph : トテラフェニル鎖, [4] Ar-N : テトラナフチル鎖) を合成し, 可溶化剤としての性能を調べた。 [4] Ar-Rn, [4] Ar-Ph, [4] Ar-Nは, 表面あるいは界面に配向し, 長鎖アルコール, ベンゼン, トルエンなどの有機化合物に対して, cmc付近でも高い可溶化能を示した。また長鎖アルコールに対しては, 長鎖アルコールと同じ鎖長の [4] Ar-Rnのときに最大の可溶化量を示し, 芳香族化合物に対しては, 分子サイズの増加とともに可溶化量が小さくなった。4本のヘキシル基を持った [4] Ar-R6は, [4] Ar-Rn, [4] Ar-Ph, [4] Ar-Nの中で最高の可溶化能を示し, 2×10-3Mのときに11倍モル量のヘキサノールを溶解した。 [4] Ar-Rnの高い可溶化能は, [4] Ar-Rnの包接能とミセルへの取り込みに加え, 優れた界面配向性に基づいたマイクロエマルションの形成によるものと考えられる。色素もまた, [4] Ar-Rnへの包接により可溶化された。
  • 大谷 規隆, 菅野 晶, 平川 徹
    1998 年47 巻1 号 p. 65-71,87
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    疎水性の強いイオン種であるトリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム (TNBS) とβ-アミノエタンスルホン酸ナトリウム (タウリンナトリウム, TauNa), グリシンナトリウム (GlyNa) またはL-フェニルアラニンナトリウム (PheNa) との反応をオクタンを溶媒とするW/O型ミクロエマルション中で行った。界面活性剤にはエーロゾルOT (AOT) とセチルトリメチルアンモニウム=ブロミド (CTAB) を用い, 界面活性剤のイオン性基, 反応イオン種濃度, 水分子数対界面活性剤モル濃度比 (W) などが反応速度に与える影響を詳細に検討した。その結果, 反応イオン種が界面活性剤ミセル表面と強く相互作用する系では, 親水的イオン種間の逆ミセル系での反応と大きく異なり, 反応速度はWばかりでなく水プール内反応イオン濃度に強く依存し, 正常ミセル系ほど界面活性剤の荷電依存性は高くないことが分かった。
  • 白浜 博幸, 小島 圭介, 安田 源
    1998 年47 巻1 号 p. 73-81,88
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ラクチド (LA; L-, DL-体) とε-カプロラクトン (CL) とのランダムおよびブロック共重合体 (コポリマー), ならびにこれらモノマーの単独重合体 (ホモポリマー) が, 反応条件を適切に変化させることにより, 一つの触媒 [AlEt3/H2O (1 : 0.75)] のみを用いて比較的高収率で得られた。
    続いて, 得られた (コ) ポリマーの酵素 {コレステロールエステラーゼ (Pseudomonas sp.由来), プロティナーゼK (Tritirachium album由来)} ならびに活性汚泥による生分解性を調べた。コレステロールエステラーゼはCLに対して, 一方, プロティナーゼKはLAに対して基質特異性 (分解性) を有していた。したがって, 前者 (エステラーゼ) はCLを多く含むコポリマーを, プロティナーゼKはLAを多く含むコポリマーをよく分解した。ランダムコポリマーの分解性は一般的にブロックコポリマーよりも大きかった。
    ポリマーの分解性は酵素の基質特異性やポリマーの一次構造のみならず, 融点や結晶性 (融解熱) のような熱的特性にも大きく依存することが判明した。L-LA/CL (=86/14) ランダムコポリマーは, L-LAホモポリマーの熱的特性をあまり変化させることなく, プロティナーゼKにより容易に分解された。ほどよい酵素分解性を保持しながらも, 非晶性のポリ (DL-LA) に結晶性を付与することが可能であった。これらLA/CLコポリマーはまた活性汚泥によっても分解され得た。
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