日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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49 巻, 8 号
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  • 杉浦 隆之
    2000 年 49 巻 8 号 p. 777-784,840
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    2-アラキドノイルグリセロールは, ラットの脳やイヌの腸から取り出された一種のモノアシルグリセロールで, カンナビノイド受容体の内在性のリガンドであることが明らかにされた物質である。最近, 我々は2-アラキドノイルグリセロールが培養神経系細胞であるNG108-15細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を, カンナビノイドCB1受容体依存的に, 速やかに一過的に上昇させることを見い出した。我々は, さらに, 培養白血病細胞であるHL-60細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を, カンナビノイドCB2受容体依存的に, 速やかに一過的に上昇させることも見い出している。構造活性相関を調べた実験の結果から, 我々は, CB1受容体の場合も, CB2受容体の場合も, 本来の生理的なリガンドは2-アラキドノイルグリセロールで, カンナビノイド受容体は, 本来は2-アラキドノイルグリセロール受容体であるという結論に至った。2-アラキドノイルグリセロールはイノシトールリン脂質代謝亢進の際に生成する物質であるということ, カンナビノイドCB1受容体の機能が, 神経伝達を抑制的に制御するものであることを考えると, 神経興奮に伴って生成した2-アラキドノイルグリセロールには, 一旦起こった神経の興奮にブレーキをかけるという重要な役割のある可能性が考えられる。2-アラキドノイルグリセロールについては, このほか, 血管系や炎症・免疫系において何らかの重要な役割を演じている物質であるという可能性も考えられる。2-アラキドノイルグリセロールの生理的役割の詳細は, 今後の研究によって明らかにされて行くであろう。
  • 小野 大助, 山村 伸吾, 中村 正樹, 武田 徳司
    2000 年 49 巻 8 号 p. 785-791,840
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    本稿では, 出発物質として天然物由来品である1-O-アルキルグリセロールを使用し, これをエステル化, 第四級アンモニウム化して酸またはアルカリにより分解する機能を備えたカチオン型分解性界面活性剤を開発した。これらは, 二親水基型ということでいずれも優れた水溶性を示した。cmcは, 通常の活性剤と比べた場合, アルキル鎖が同じものどうしでは, 約1オーダー小さくなり, ミセル形成能が優れていた。化学分解性は, アルカリ条件下では, 0.01Mで添加直後, 0.005Mでは約1日で分解した。酸分解性は, アルカリに比べ遅く1Mでは約1週間かまたはそれ以上, 2Mでは約5日を要した。活性汚泥による生分解性を測定した結果, ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイドの生分解性が約10%であったのに対し, 本研究の分解性活性剤は約40%とカチオン型の活性剤としては良好な値であった。さらに, 分解性活性剤の特徴を活かし活性剤をあらかじめ加水分解したものを測定したところ約80%と大幅に向上し, 非常に優れた生分解を示した。
  • 丸山 一輝, 島田 裕司, 馬場 貴司, 大栗 智昭, 杉原 耿雄, 富永 嘉男, 森山 茂
    2000 年 49 巻 8 号 p. 793-799,841
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ドコサヘキサエン酸エチル (E-DHA) の大量精製方法の確立を目的とし, 固定化Rhizomucor mieheiリパーゼでマグロ油由来のエチルエステル (E-DHA 55; E-DHA含量, 55mol%) をラウリルアルコール (LauOH) でアルコリシスした。固定化リパーゼを充填したカラム (8.0g; 22×63mm) にE-DHA/LauOH (1 : 7, mol/mol) の混液を30℃, 10mL/hの流速で負荷した。その結果, エステル交換率は58%に達し, エチルエステル画分のE-DHA含量は87mol%まで上昇した。この固定化酵素リアクターを150日間連続運転すると, エステル交換率は48%まで低下したものの, E-DHA含量はほとんど低下せず85mol%まで上昇していた。カラムから溶出した反応液中のエチルエステルは薄膜蒸留により収率よく回収できたが (82%), この画分には2.4wt%のLauOHと6.3wt%のラウリルエステルが混在していた。このうち, ラウリルエステルは尿素包括により完全除去することができた。一連の精製操作により, E-DHA55に含まれていたE-DHAの52%が回収でき, E-DHA含量を88wt%まで高めることができた。
  • 吉村 倫一, 小出 善文, 正泉寺 秀人, 江角 邦男
    2000 年 49 巻 8 号 p. 801-808,841
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    アクリル酸とアクリル酸アルキルコテロマーの多鎖型界面活性剤 (xRmA-yAA, x, y及びmはそれぞれアルキル鎖の数, 親水基の数及びアルキル鎖長を意味する) を連鎖移動剤に2-アミノエタンチオール塩酸塩を用いて, アクリル酸とアクリル酸n-ヘキシル, 2-エチルヘキシル及びn-ドデシルのコテロメリゼーションにより合成し, 界面化学的性質について検討した。xR6A-yAA, xR8A-yAA及びxR12A-yAA水溶液の表面張力は, それぞれ28~32, 27~30及び38~45mN m-1であった。臨界ミセル濃度 (cmc) は, アルキル鎖数及び鎖長の増加に伴って減少した。300ppmのCa2+存在下では, 2.9R6A-2.3AA, 2.8R8A-2.5AA及び2.7R12A-2.9AAは, それぞれ24, 28及び33mN m-1の表面張力であった。短いアルキル鎖を有する2.9R6A-2.3AAは高い泡沫安定性を示したが, 分岐鎖を有する2.8R8A-2.5AAは低い安定性を示した。xR6A-yAA, xR8A-yAA及びxR12A-yAA水溶液とトルエンとの界面張力は, それぞれ, 11~13, 8~12及び10~15mN m-1であり, cmcは一般の界面活性剤ドデカン酸ナトリウムに比べて1/3~1/4となった。トルエンの乳化は, コテロマー水溶液と振り混ぜることによって形成し, 特に2~3本のアルキル鎖を有するコテロマーに高い安定な水中油滴型のエマルションが認められた。
  • 青山 知令, 上野 聡, 佐藤 清隆
    2000 年 49 巻 8 号 p. 809-816,842
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    O/Wエマルション中のn-ヘキサデカンの結晶化を, 超音波音速測定, 示差走査熱量測定, 時分割X線回折測定を用いて観察した。親油性乳化剤のポリグリセリン脂肪酸エステル (DAS-750) を不純物として, n-ヘキサデカンに添加した。O/Wエマルション系, バルク系を比較すると以下の結果が得られた。
    (a) DAS-750をn-ヘキサデカンに添加すると, エマルション系ではn-ヘキサデカンの核形成が促進されたが, バルク系では促進が見られなかった。
    (b) n-ヘキサデカンの結晶成長速度は, DAS-750添加により抑制された。
    これらの結果から以下のことが示唆される。O/Wエマルション中のn-ヘキサデカンの核形成機構が, 均一核形成から, DAS-750添加により界面不均一核形成に転じている。
  • 大谷 規隆, 菅野 晶, 永井 良太郎, 山下 剛司
    2000 年 49 巻 8 号 p. 817-824,842
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    W/O型マイクロエマルション溶液中におけるニトロベンゼン誘導体とアミンの溶存場所を変化させ, それらの間の求核置換反応を行い, W/Oマイクロエマルション界面の反応に対する影響を調べた。界面活性剤としては, エーロゾルOT (AOT) またはセチルトリメチルアンモニウムブロミド (CTAB) を用い, 界面活性剤の荷電の正負, 反応試薬の電荷の有無, 水対界面活性剤モル比 (w) などが反応速度に与える影響を擬相モデルを用いて詳細に検討した。その結果, 両反応試薬の局所濃度がマイクロエマルション界面で高くなるとき反応は加速されることが分かった。
  • 田口 洋一, 大石 晃広, 藤田 賢一, 池田 嘉一, 渡邊 勝宏, 増田 隆志
    2000 年 49 巻 8 号 p. 825-830,843
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    モノアシルグリセロールを共重合させたポリブチレンサクシネートがコハク酸ジメチル, 1, 4-ブタンジオール及びモノラウリン, モノステアリン, モノオレインのようなモノアシルグリセロールとから調製された。モノラウリンを用いたコポリマーの1H NMRスペクトルはラウリン酸エステル部がコポリマー中に確かに含まれていることを示した。共重合において, コハク酸ジメチルに対し1モル%以上のモノラウリンを用いると一部のラウリン酸エステル部のエステル交換のためゲル化が進行し, コポリマーはクロロホルムに不溶になった。コハク酸ジメチルに対し0.3モル%のモノステアリンまたはモノオレインを含むコポリマーにおいては, 数平均分子量や熱的性質はPBSホモポリマーと変化しないが, 破断点伸度は3倍になった。
  • 濱 洋一郎, 松井 利郎, 幡手 英雄, 中村 孝
    2000 年 49 巻 8 号 p. 831-837,843
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    我々はこれまでに, 高度不飽和脂肪酸の自動酸化によりプロスタグランジン様環構造を持つ共役カルボニル類が生成すること, 生じた共役カルボニル類はアミノ酸と反応して新規な赤色色素を生成すること, を明らかにした。本研究では, リノレン酸メチルの自動酸化物中から上述の共役カルボニルの一種, 3- (2-ethyl-5-hydroxy-3-oxo) cyclopentyl-2-propenalの2種類の立体異性体を調製し, 1H-および13C-NMR, NOE差スペクトル法により, それらの立体構造を含む化学構造を解析した。異性体は, ヒドロキシシクロペンタノン環に対する側鎖の立体配置の違いに起因しており, 天然のプロスタグランジンと同じトランス型は少量成分で, 主要な異性体の側鎖はシス型であった。
  • 2000 年 49 巻 8 号 p. 889
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
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