育種学研究
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12 巻, 3 号
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原著論文
  • 天谷 正行, 中澤 佳子, 松本 紀子, 飯村 一成
    2010 年 12 巻 3 号 p. 73-80
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    単為発生性ニラ品種「テンダーポール(2n=4x=32)」と非単為発生性系統(両性生殖性)「97-12-102(2n=4x=32)」とのF1集団を材料として,バルクセグレガント法により単為発生性に連鎖するDNAマーカー(Parthenogenesis Linked Marker: PLM)を開発した.1,443種類のランダムプライマーを使用して,単為発生性個体および非単為発生性個体のうち各8個体から作製したバルクDNAを調査した結果,3個の単為発生性個体に特異的なマーカーを見いだした.これらをTAクローニング後にSCAR化し,それぞれPLM1,PLM2およびPLM3と命名した.このうちPLM1とPLM3は単為発生因子(P)と3.4 cMおよび1.1 cMの距離で連鎖しており,P因子を挟んで存在すると予想された.これに対し,PLM2は単為発生性との連鎖は認められなかったが,単為発生頻度の高い個体に多く保存されている傾向があった.これらのマーカーをニラ遺伝資源73品種・系統について調査した結果,80%以上から増幅が確認され,種内で広く保存されていると推察された.しかし,品種「成都」とその後代系統「00-02-05」では,単為発生性であるがPLM1およびPLM3は確認されなかった.
  • 貴島 祐治, 堀田 夕夏, 石黒 聖也, 山村 和照, 塙 章, 内藤 聡, 佐野 芳雄
    2010 年 12 巻 3 号 p. 81-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    特定の品種の中の遺伝変異やその発生過程については,殆ど知見がない.本研究では全国15府県から集められたコシヒカリ86集団を材料に,遺伝的な変異についてトランスポゾンの挿入位置を指標に調査した.3種のトランスポゾンの挿入位置を調べると,4集団の例外をのぞいて,コシヒカリ集団間での多型はきわめて少なく,品種の遺伝的同一性が保持されていることが示された.しかし,トランスポゾン mPingを指標にした場合,多くの多型が現れた.多数を占めたのは,コシヒカリの親である農林1号と農林22号にはない固有バンドからなる多型で, mPingがコシヒカリで転移していることを示すものである.その他の多型には,新潟以外の集団にのみ存在し,新潟由来の集団にはない2つのバンドが検出され,コシヒカリを新潟タイプと非新潟タイプ(福井タイプ)で明瞭に分けた.2つの多型バンドは両親に1つずつ存在するので,コシヒカリの育成過程で発生した遺伝的分離に基づくと考えられる.新潟では福井県農業試験場から分譲された育成過程のコシヒカリを独自で選抜したとされ,この期間に新潟タイプと福井タイプのコシヒカリの間に遺伝的な差異が発生したと思われる.
  • 福田 至朗, 辻 孝子, 池田 達哉, 吉田 朋史, 藤井 潔
    2010 年 12 巻 3 号 p. 87-95
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    日本国内におけるコムギ生産を拡大するためには,わが国での利用に適した高い品質を持った品種の育成が必要である.種子の貯蔵タンパク質であるグルテニンは,小麦粉の生地物性を決定するキーファクターであり,グルテニンサブユニットの種類が小麦粉の品質に大きく関与している.特にうどんへの加工用に適した粘弾性の優れた品種育成には,低分子量グルテニンサブユニット(LMW-GS)の Glu-B3座およびGlu-A3座,高分子量グルテニンサブユニット(HMW-GS)の Glu-A1座のそれぞれについて最適な遺伝子型が組み合わされていることが重要であると考えられている.コムギの育種現場において,多数の育成個体からグルテニンサブユニットの種類を正確かつ迅速に判別し,必要な個体を選抜するためには,グルテニンサブユニットを遺伝子レベルで調べることのできる簡便なDNAマーカーの開発が必要である.本研究では,これまで主に利用されてきたPCR法に替わって,新たなDNA増幅法であるLAMP法を用いたDNAマーカーを開発した.グルテニン遺伝子の塩基配列から,強い生地物性に寄与する Glu-B3座のGlu-B3g遺伝子およびGlu-A3座のGlu-A3d遺伝子, Glu-A1座のGlu-A1aまたはGlu-A1b遺伝子を判別することのできるLAMPプライマーを設計すると共に,効率的に塩基配列の差異を検出するため,反応温度を68℃とし,さらにLAMP反応液に含まれるベタイン濃度を0.2 M(通常の4分の1)とした.ガラス繊維濾紙法により簡易抽出したコムギDNAを用いて上記の条件でLAMP反応を行ったところ,それぞれの遺伝子を1時間以内に正確に検出することができ,育種選抜の効率を飛躍的に向上できるものと考えられた.
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