土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 6 号
通常号(6月公開)
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 井上 龍一, 蓮池 里菜, 古木 宏和, 麻生 稔彦
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00191
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     耐候性鋼橋梁の維持管理のためには,さび状態の定期的なモニタリングが必要である.近年,さび状態評価方法の簡易化や定量化のための研究が盛んに実施されている.本研究では,耐候性鋼材表面の可視光および近赤外線における光学スペクトルと教師あり学習分類器を組み合わせた評価方法を提案した.はじめに,ハイパースペクトルカメラを使用してさび状態の異なる耐候性鋼材表面の光学スペクトルを1cm2毎に測定し,測定された光学スペクトルの1次微分から波長569nm,波長694nm,波長796nmおよび波長896nmがさび状態評価に有効な波長であることを明らかとした.次に,これらの波長における反射強度に対してカーネル主成分分析を適用して第1,第2主成分を抽出し,これらを使用してランダムフォレスト分類器を構築した結果,評価精度は90.7%であった.

  • 河邊 大剛, 金 哲佑, 北川 慎治, 濱田 吉貞
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00213
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,橋脚天端に加速度センサを設置し常時微動を計測することで,河川増水時においてもリアルタイムに河床洗掘に対する橋脚の安定性を確率的に評価できる新しい手法の提案を目的とする.鉄道橋橋脚の安定性は固有振動数によって評価されるものの,常時微動から橋脚の固有振動数を同定する場合,同定値のばらつきが大きく不確実性が大きい.そこで,平常時の固有振動数同定値のばらつきをLevy Flight分布でモデル化し,累積密度関数・周辺確率密度関数およびロジスティック関数に着目した3つの新しい確率論的な洗掘警報指標を提案する.各指標を鉄道橋橋脚の河川増水時の観測値に適用し,洗掘が進行している可能性は低いことを示した.また,洗掘進行時の加速度波形を疑似的に再現した観測値を用いて,各指標の利用性が示せた.

  • 水野 剛規, 川西 直樹, 海老澤 健正, 後藤 芳顯, 小坂 崇, 篠原 聖二
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00233
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     L2を超える地震動下での鋼管集成橋脚の優れたロバスト性を高架橋の危機耐性向上に生かすにはCFT柱に局部座屈変形が生じる大変形領域までの橋脚挙動を解析する実用的な手法が必要である.解析では,局部座屈部にシェル・ソリッド要素を用いる手法を検討したが,複数のCFT柱から構成される鋼管集成橋脚では収束解を得るのが困難であった.そこで,安定した数値計算が可能な実用的モデルとして,複数の1次元要素で構成され,多数の内部パラメータを持つセグメントモデルの適用性を検討した.内部パラメータはシェル・ソリッド要素モデルで算定されたCFT柱局部座屈部の面内履歴挙動にセグメントモデルの挙動が数値的に一致するように最適計算で同定した.本モデルの適用性と精度は1/10鋼管集成橋脚模型の1方向繰り返しと螺旋載荷実験を比較し検証した.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 𠮷河 秀郞, 菅原 大助, 山本 真哉, 増田 英敏, 今村 文彦
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00179
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     津波による土砂移動の数値計算は,3.11津波による地形変化の解析や,南海トラフ地震津波による影響の評価など,実用的な技術になってきた.更なる展開においては,数値計算や観測・実験結果に含まれる不確かさを評価・定量化して,数値計算の信頼性を合理的に示すことが課題となる.本研究では,米国機械学会のV&V(Verification and Validation)のガイドラインを参考に,3.11津波による沿岸域の土砂移動現象を対象としたV&Vの枠組みの構築を試みた.主な成果は,1)現象や数値モデルに対する必要な検討事項の体系的な整理,2)数値モデルが示す結果の妥当性の確認方法の提案である.また,数値計算の入力データや妥当性確認で用いる観測データへの不確かさの与え方については課題があることが分かった.

  • 羽田野 袈裟義, 荒尾 慎司, 永野 博之
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00222
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     転倒堰は傾斜刃形堰であり,倒伏高さの制御により所望の堰上流水位を容易に実現する機能を有する.転倒堰の十分な機能発揮と合理的な建設計画のためには,越流量,堰上流水深,堰高の評価式が必要となる.本研究では,傾斜刃形堰上の完全越流について,越流量,越流水深,堰高のそれぞれをそれ自体以外の2つの水理量により陽形式の評価式を求めることを試みた.運動量の定理に基づき越流水深/堰高比と限界水深/堰高比との関数関係を推論し,種々の傾斜条件について広範囲の越流水深/堰高比で行われたU.S.B.R.の実験データを用いて関数形を特定した.その関数から得られた計算式は,その実験のほぼ全範囲,越流水深/堰高比0.3程度から14まで,において実験値を良好に再現した.

  • 田中 聡, 宮里 信寿, 大城 洋貴, 仲座 栄三
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00235
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     吉川らは定常流に対する堰の流量公式を準用して規則波を対象とした直立護岸上の越波流量の算定式を与えた.合田らは,吉川らの越波流量算定式を一様斜面上の護岸の越波流量特性に適用し,不規則波を対象とした越波流量算定図表を提示した.それ以来約半世紀に亘って,合田の算定図表が実際の護岸設計に用いられている.しかし,水平床上の直立護岸に対する越波特性は十分に解明されているとは言えない状況にあった.著者らは,CADMAS-SURFを用いた数値計算及び大型水理実験を用いて,規則波に対する直立護岸上の越波特性をすでに明らかにしている.本論は,その研究をさらに発展させて,不規則波を対象として直立,消波,テラス式護岸上の越波特性を明らかにし,吉川らの算定式の準用の有用性及び合田の期待越波流量の妥当性を明らかにしている.

地圏工学
論文
  • 伊藤 真一, 酒匂 一成
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00196
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     簡易な現地試験の結果から不飽和浸透特性の概形を推定する手法の確立を目指して,携帯型ミニディスクインフィルトロメータを用いた透水試験の計測データに基づく不飽和浸透特性パラメータの推定手法を提案し,室内試験を通じて提案手法の妥当性について検証した.その結果,提案手法が適用できる土の透水係数の範囲は限られる可能性があるものの,他の保水性試験や透水試験の結果と概ね合致した結果を得ることができ,提案手法の妥当性を確認した.本研究の提案手法は,携帯型ミニディスクインフィルトロメータを用いた試験結果のみからでは推定できない水分特性曲線に関するパラメータも推定できるため,現場で多地点の不飽和浸透特性を推定するための手法として期待できる.

  • 川越 健, 嶋本 敬介, 野城 一栄, 今地 洋佑, 若林 功起
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00198
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     トンネル掘削断面外を含めた地質構造とトンネルの交差関係がトンネルの変形に及ぼす影響を明らかにするために研究を行った.文献調査から,断層破砕帯や割れ目を多く含む弱層が分布する場合に変状事例が多いことがわかった.次に,そのような地山でのトンネル施工記録を分析した結果,傾斜が緩い弱層が分布する箇所でインバート掘削面の変位量が大きい傾向が見られることがわかった.さらに,岩石試験の結果から,割れ目の多い地山で,スレーキング指数が大きい場合には盤ぶくれ量が大きい傾向にあることがわかった.そして,数値解析の結果,トンネルの変形箇所や変位量にはトンネルと弱層の交差関係が影響していることが示された.トンネルの変形を防止するためには,割れ目を多く含む弱層の把握とその連続性を考慮することが重要である.

土木計画学
論文
  • 井村 祥太朗, 中道 久美子, 萩原 剛, 中野 光太郎
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 22-00360
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     クルマから環境にやさしい通勤に転換する「エコ通勤」の普及促進を目的とした「エコ通勤優良事業所認証制度」が2009年に創設された.認証登録事業所数は2013年以降頭打ち傾向となっていたが,近年政府が進める炭素中立政策やプロモーションの観点を採り入れた取組等により,コロナ禍のもとでも認証登録事業所数が持ち直しつつある状況にある.本稿では,1)コロナ禍や炭素中立の動向を踏まえたプロモーション戦略の実施状況を記述した上で,2)認証登録事業所のコロナ禍前後の取組内容の比較結果を整理した.その結果,時差出勤や在宅勤務,徒歩通勤者・自転車通勤への補助制度等の取組実施割合が増加傾向にあり,コロナ禍での外出自粛等の流れから,働き方の見直しや通勤手段の拡充が図られたことを実務データから定量的に明らかにした.

建設材料と構造
論文
  • 若林 大, 佐藤 靖彦
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 22-00306
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     実績のない斬新な部材の導入や新たな部材の組合せに挑戦する特殊橋梁では,管理実績の豊富な一般形式の橋と同等水準の信頼性を確保して保全することは技術的に容易でない.このため,保全において望ましいシナリオを実現するための機能を構造設計に導入することが重要であり,さらにその橋固有の構造特性を反映した保全計画の策定が必要不可欠である.そこで本論文では,特殊橋梁の計画から保全計画策定までを広義な意味での設計と位置づけ,(A)橋梁計画,(B)損傷制御水準の設定,(C)詳細設計・照査,(D)構造特性の評価,(E)保全計画の5つの段階からなる実践的な設計プロセスを提案した.そのうえで,各段階で保全を指向する観点とその方策について,一般橋梁と対比しつつ実橋での実践例を交えて論じた.

土木技術とマネジメント
論文
  • 山本 雄平, 中原 匡哉, 今井 龍一, 神谷 大介, 姜 文渊
    2024 年80 巻6 号 論文ID: 23-00133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

     自動車交通量の調査では,ビデオカメラによる映像を深層学習で解析し,自動で交通量を計数する手法が提案されている.既存手法を道路管理者が保有する既設CCTV映像に適用できると,新たな計測機器を設置せずにAI交通量調査が可能となる.しかし,既設のCCTV映像は長期間の監視が目的であり,低解像度であることに加えて,機器の経年劣化による画像の乱れやくすみがある.そのため,既存手法では交通量調査で必要な精度を担保できない可能性が高い.そこで本研究では,画像全体から検出した車両画像をぼかすことで画像の乱れやくすみの特徴を除去可能な点に着目し,車両の特徴のみを用いて車種を分類する手法を提案する.実証実験では,SD画質とHD画質の動画像を対象に提案手法を適用し,既存手法よりも高精度に小型車と大型車の計数ができることを示した.

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