土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 5 号
通常号(5月公開)
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 村上 登久太郎, 伊津野 和行
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00220
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     橋の洪水被害が近年頻発しており,中でも桁の流失は大きな問題となっている.現行の設計では桁が水没することは考慮されておらず,対策工についても検討が進んでいないのが現状である.本研究では,橋梁の洪水対策として常設足場として利用されているプレートをフェアリングとして活用することを検討し,流体力の軽減効果を数値解析的に検証した.桁流失に抵抗する部材である支承の諸元が設計地震力で決まるとすると,橋の固有周期によってその抵抗力が異なる.数値解析の結果,想定した洪水流によって生じる抗力は,フェアリングを設置していないモデルの67%に軽減でき,フェアリングによって支承の水平耐力のみで対応可能な橋の固有周期範囲が増えることを示した.一方,揚力は増加したが,支承に設計耐力以上の負反力が生じることはなかった.

  • 丹羽 雄一郎, 舘石 和雄, 判治 剛, 清水 優
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00234
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     鋼橋のソールプレート溶接部には疲労き裂の発生例が多く報告されており,過去からき裂発生原因や対策方法が検討されてきた.ただし,従来は事後保全対策の検討が中心であり,これまでのところ実用的な予防保全対策は確立されていない.本研究では,ソールプレート溶接部前面に発生する止端き裂およびルートき裂に着目し,有限要素解析および疲労試験により,ピーニング処理およびタップボルトを用いた予防保全対策の検討を行った.その結果,ソールプレート溶接部に圧縮の変動応力が作用する条件下において,ピーニング処理による止端部の疲労強度改善効果,および,タップボルト工法によるルート部の疲労寿命延伸効果が得られることを明らかにした.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 中渕 遥平, 中北 英一
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     鉄道では大雨時の列車運行の安全を確保するために,沿線雨量計の実況値に基づき列車運転規制を行っている.これに短時間降雨予測を活用することで列車運行の安全性をさらに高められる可能性がある.本論文では,地形性降雨算定手法と移流モデルを組合わせた降雨予測手法を取り上げ,地上雨量の推定精度と規制発令時刻の予測精度の検証,および補正による精度向上の検討を行った.2019年台風19号通過時の東日本の広範囲の鉄道雨量計を対象に検証した結果,地形性降雨算定手法の導入により地上雨量推定精度が向上すること,地形性降雨を考慮した予測値をリアルタイムの誤差を反映して補正することで高い精度で規制発令時刻を予測でき,かつ移流モデルのみの場合よりも早めの予測が可能で安全確保の観点からも優位な予測ができることがわかった.

  • 間瀬 肇, 武田 将英, 由比 政年, 金 洙列, 原 知聡, 水谷 英朗, 安田 誠宏
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00185
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,うねり性波浪やうねりと風波が重畳した二山型スペクトル波といった長周期波浪による港湾構造物の被災事例が増加しているが,耐波設計におけるその取り扱い方法は十分に検討されていない.本研究は,二山型スペクトル波の代表波の諸量を設定するにあたり,風波とうねりのエネルギースペクトルを用いて代表波を表現するGodaのモデルを精緻化し,その代表波を入力条件として従来の打上げ・越波流量算定式IFORMを用いる算定方法を提案する.続いて,二山型スペクトル波の越波流量を調べた既往研究の実験結果(Hawkes, van der Werf and van Gent, Orimoloyeら)と本モデルによる算定結果とを比較して,両者は良く一致することを示す.

  • 田中 真史, 三井 順, 久保田 真一, 柴山 知也
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00241
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     防波堤港内側腹付工の越波に対する安定性評価方法の標準化の端緒として,天端が静水面近傍に設けられた腹付マウンドを対象として,マウンド天端幅,防波堤天端高および防波堤形式が異なるときの二層被覆形式の消波ブロックの安定性を検討した.水理模型実験の結果,被覆材の安定性はマウンドの法肩が保持されるか否かにより大きく異なることが分かった.また,マウンド周辺流速場の再現計算により,被覆材の直接的な被災要因は越波水の打ち込みにより被覆層内に生じる流れであることが示唆された.被害特性を踏まえ,マウンド天端幅により区分した安定性評価式を用いることにより,被覆材の安定性を評価できることが示された.これにより,マウンド天端幅,防波堤天端高および2種類の防波堤形式によらず当該マウンドを設計することが可能となった.

  • 中村 菫, 川端 雄一郎, 岩波 光保
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 24-00024
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     港湾構造物の建設に伴う環境負荷の削減に向け,設計段階において,経済性(建設コスト)に加え環境性も考慮し,構造形式や断面を検討することが望まれる.一方,環境負荷削減の観点における最適な構造形式や断面の設定に関する知見は乏しく,経済性の観点での最適な構造形式や断面との関係性も十分に分かっていない.

     本研究では消波ブロック被覆堤に着目し,地球温暖化抑制,天然資源保全および経済性の観点における最適断面の設定について,事例分析や感度分析による検討を行った.これにより,各観点での最適断面は必ずしも一致しないことを明らかにし,建設コストと環境負荷量の総合評価を行う新たな設計手法の必要性を示した.また,環境性を考慮する新たな設計手法について,環境負荷量の価値設定や設計初期に使用材料の検討を行う必要性を示した.

地圏工学
報告
  • 中島 康介, 藤岡 一頼, 上野 慎也, 八嶋 厚, 山崎 充, 沢田 和秀, 村田 芳信, 小西 千里, 林 宏一, 町島 祐一
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00249
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     盛土などの道路土工構造物の経時的な健全度を評価し,予防保全型の維持管理システムを構築するために,筆者らはアクティブ加振もしくは通行車両振動を用いた2次元表面波探査を実施してきた.そして,計測で得られるS波速度構造を用いて盛土の安定度を評価する手法を提案した.しかし,これらの探査には交通規制が必要であり,安全かつ規制時間等の制約がない計測を行うためには,新たな振動計測手法が必要である.近年,光ファイバによる計測技術の一つである分布型音響センシング(DAS)が注目されている.本研究では高速道路の土工区間において,通行車両振動を用いたリニア微動アレイ計測とDAS計測を行い,その結果を比較した.そして,DAS計測から得られる盛土内のS波速度構造は,リニア微動アレイ計測結果と調和することを確認した.

土木計画学
論文
  • 中山 恵介, 荒谷 太郎, 間島 隆博
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 22-00131
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,我が国では地震や台風をはじめとした自然災害が多発している.特に,被災範囲が複数県に跨がるような大規模災害の場合,被災者の生命を守るためには迅速的かつ効率的な救援活動が求められる.このような自然災害に対して,行政や各自治体ではそれぞれの地域特性を考慮しながら防災計画を策定し,災害の発生に備えている.本研究では,海上・港湾・航空技術研究所で開発された傷病者輸送シミュレータを用いて,高知県を対象とした南海トラフ地震を想定した傷病者輸送シミュレーションを実施した.シミュレーションでは,高知県における地域防災計画や災害時医療救護計画を前提条件として複数のシナリオを作成し,想定されるシナリオ別に救助人数を算出し,より効果的な輸送計画について検討した.

  • 上地 安諄, 神谷 大介, 比嘉 壮太
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 22-00187
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     近年の社会情勢の変化や様々な課題に対応するため,自転車の活用が注目されている.自転車の利用促進を図るためには,利用環境の整備や利用実態の把握が重要であるが,沖縄県内において十分な分析は行われていない.

     本稿では,沖縄本島中南部都市圏を対象とし,シェアサイクルの利用形態別に利用実態を明らかにした.さらに社会統計資料等と組み合わせ需要分析を行うことで,自転車利用の要因を明らかにした.その結果,モノレール駅や官公庁施設がある区間での利用が多いことや,日常的に渋滞している朝方や夕方の時間帯で利用が多いことが明らかとなり,自転車の利用との関係性が高い社会的要因を明らかにした.

  • 何 ロク, ⾼瀬 翼, 春⽊ 孝之, 楽 奕平
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 22-00196
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     運⾏回数が少ない地⽅部の公共交通においては,路線単位で運⾏が⼀覧化された時刻表の必要性が⾼い.複数事業者の時刻表を地域⼀体的に整備するニーズもある.しかしながら,複数事業者横断の運⾏経路別公共交通時刻表の作成には⾮常に⼿間がかかるという⽋点がある.本研究では,近年普及している公共交通オープンデータを活⽤して,複数事業者横断の運⾏経路別公共交通時刻表を効率的に作成する⼿法を提案する.実際にシステム開発と社会実装を⾏い,効率的な作成⼿法として有⽤であることを確認した.こうした取り組みを通して,公共交通オープンデータを多くの分野で活⽤するためのデータ整備⾯での課題も明らかとなった.

  • 大畑 友紀, 小寺 啓太, 氏原 岳人
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 22-00364
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,岡山県岡山市の居住者を対象としたアンケート調査の結果を用いて,職業,通勤,仕事場所を「働き方」の指標とした分析及び考察を行った.都市構造指標による居住地の分類との関連性や生活時間の差異に関する分析を行った結果,次のことが明らかとなった.1)仕事場所により類型化した「在宅ワーク型」には,生活が自宅で完結している人や私的活動を重視し自由な働き方をしている人等様々なライフスタイルの人がいることが確認できた.2)「多様型」は必需行動の代わりに平日の仕事や休日の私的活動に生活時間を費やしている.通勤頻度が少なく,出勤しない働き方を取り入れている人がいることが明らかとなった.

  • 谷本 圭志
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00159
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     中山間地域における公共交通は,人口減少に伴う旅客の減少に加えて運転手などの担い手の不足に直面している.従来,この課題に対して様々な努力がなされてきたが,その中心は利便性の向上による利用の促進であった.しかし,その効果は限定的であり,担い手の確保にも主だった効果は見られない.このように,利用側に視点を置いた従来の計画論は無力であり,旅客が少なくても供給の持続を目指す計画論のもとでビジネスモデルを再構築することが必要である.本研究では,旅客運送のみならず様々なサービスとの兼業や協業により供給の持続可能性を維持するという「異業種・異分野との統合」に基づくビジネスモデルの再構築が有効との考えのもと,その背景にある理論や関連する事例の類型,有効となる統合の方向性について整理を試みる.

  • 三村 泰広, 山岡 俊一
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00170
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究はゾーン30のこれまでの整備傾向を整理することで,今後のゾーン30プラス推進のための基礎資料を提供することを目的としている.愛知県内のゾーン30を対象に,4市の道路/交通管理者へのヒアリングによる整備検討プロセスの把握と,その結果を受けた整備エリアの特性分析を行った結果,住民発意によるゾーン30のない自治体は,当初目標年(2016年度)以降の整備がないこと,目標年以降に整備を実施した自治体とそうでない自治体のばらつきが大きいこと,児童や生徒が多い市で目標年以降にも整備が継続されていること,整備目標年以降に整備されたゾーン30は,隣接する既設ゾーン30までの平均距離が短いことを示した.

  • 秋元 伸裕, 原田 昇, 冨岡 秀虎, 森田 哲夫
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00180
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本論文は,世帯外のドライバーの送迎による高齢者の自動車利用(世帯間同乗)の実態が,免許の有無,自動車の有無,世帯特性の違いによりどう異なるかを生活目的別に把握し,将来自動車の運転ができなくなった高齢者に対する移動手段としての導入課題を明らかにすることを目的とするものである.

     前橋市城南地区在住の高齢者を対象としたアンケート調査から,趣味・娯楽への移動を中心に,友人・知人の運転への同乗利用が見られるが,一人暮らしの高齢者の利用は少ないことがわかった.今後世帯間同乗活用の拡大を含め,単身高齢者の移動手段の確保が必要である.

  • 杉浦 聡志
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00244
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本稿はODペア間の交通を必ず1度以上観測することを制約とするカウンタ配置問題(SCLP)の効率的解法を提供する.具体的には,グラフカットのアプローチによるSCLPを記述し,カットの列挙と,カットの選択問題で構成される解法アプローチを提供する.すべてのODペアを観測する最小のリンク数を求める問題と,予算制約されたリンク数で最大の観測ODペア数を求める問題の2つに対して,これらの問題が最大重み閉包問題を拡張した簡潔な定式化に帰着できることを示す.カットの性質の洞察より,すべてのODを観測する最小のリンク数を求める問題の優れた上界値を与える.提案手法はSioux-Fallsネットワークで性能検証され,既往研究で発見された最適解と等価な解がごく短い計算時間で導出可能なことを示す.

建設材料と構造
論文
  • 永島 史晟, 佐藤 靖彦, 大島 義信, 松本 直士, 吉田 英二, 大塚 沙季
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00193
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     CFRPシートを側面に貼り付けもしくはU字に巻き付けてせん断補強した,大型の鉄筋コンクリートはりの静的せん断破壊実験を行った.その目的は,鉄筋により補強した場合とCFRPシートにより補強した場合との差異,貼付け方の違いによる差異,さらには,はりの寸法がCFRPシートのせん断補強効果に及ぼす影響を明らかにすることである.本研究において,CFRPシートで補強した方が,斜めひび割れ直後のせん断力の分配がスムーズに行われること,U字巻き付けの方がせん断耐力が大きくなること,寸法が大きくなると積層数が多くなり,剥離しやすくなることを明らかにした.さらに,実験結果と既存式による計算結果を比較し,既存式の課題を明らかにしたうえで,貼付け方法や定着長の違いを考慮できる新しいせん断耐力評価法を提示した.

環境と資源
ノート
  • 髙島 正信
    2024 年 80 巻 5 号 論文ID: 23-00227
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,前加熱下水汚泥の高濃度高温嫌気性消化において,活性炭添加の影響を実験室規模で検証した.下水汚泥は全固形物質(TS)7~8%に調整し,170℃で1時間前加熱処理した.嫌気性消化槽は粉末活性炭添加(1.5g/L,流入TSの約2%)の有無により2系列用意し,温度55℃,水理学的滞留時間20日で運転した.実験の結果,活性炭添加はプロピオン酸代謝に寄与したものの,本実験条件では有機物分解やメタン発生に顕著な影響を及ぼさなかった.消化汚泥脱水では,無薬注でもケーキ含水率約70%が達成され,これは前加熱処理による効果である.活性炭が添加されると,消化汚泥濃度が上昇する反面ケーキ含水率がより低下し,脱水ケーキ量としては添加されない場合とほぼ同等になるという知見が得られた.

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