土木学会論文集F1(トンネル工学)
Online ISSN : 2185-6575
ISSN-L : 2185-6575
76 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集号
  • 大森 禎敏, 岡部 正, 五味 綾子, 砂金 伸治
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_1-I_20
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/19
    ジャーナル フリー

     中央導坑先進工法を適用する場合には,本坑切拡げ掘削時の内空変位量や天端沈下量を小さくし,支保部材の発生力を低減する「いなし効果」を期待することが多い.しかしながら,導坑の大きさや支保剛性の違いによる本坑切拡げ掘削後のトンネルの挙動に関する検討は非常に限られている.本稿では,極めて脆弱な地山条件下で中央導坑先進工法により施工を実施した芳ノ元トンネルの挙動を分析し,いなし効果が得られない場合があることを考察するとともに,地山条件や種々のトンネルの構造諸元をパラメーターとした数値解析を実施し,いなし効果が発現する場合の中央導坑に関する設計指標について検討を行った.

  • 山口 哲司, 板野 貴大, 岩波 基
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_21-I_33
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/19
    ジャーナル フリー

     円形立坑の開口部周辺の応力分布は複雑な為,2次元解析では適切にモデル化することが難しく,過去の実績や経験等から安全側の設計となる鉛直方向の2次元の梁モデルが用いられることが多いが,3次元モデルと比べると合理的な設計方法とは言い難い.また一方で,3次元モデルを用いてのFEM解析は非常に煩雑で,かつ設計の構造解析手法も体系化されておらず,その評価も設計者の判断によるところが大きい.

     そこで本研究では,3次元FEM解析を用いて,開口の有無やかまち梁の有無が開口部周辺の立坑挙動に及ぼす影響について精査することによって,現行の2次元モデルの課題を抽出し,3次元効果を考慮した開口部側壁の合理的な2次元のモデル化手法を提案する.

  • 清水 智明, 東 宏幸, 小田 義也
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_34-I_48
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/19
    ジャーナル フリー

     薬液注入では,遮水性の確保が重要である.筆者らは薬液注入の注入不良により改良体内部に生じた水みちの末端位置の検出方法を考案した.本方法では塩水トレーサーを水みち内に通し,末端から拡散するのを比抵抗トモグラフィでモニタリングする.この時,末端からの拡散は短時間で周囲に広がるため,従来のトモグラフィの逆解析方法ではモニタリングが困難な場合があり,従来とは異なる新しい逆解析方法を用いる.この逆解析方法は,測定中の比抵抗分布の連続的な変化を可視化できることを特徴とし,トレーサーのモニタリングに有効である.考案した方法の有効性検証のために屋外土槽実験を実施した結果,水みちの末端に比抵抗の低下が見られ,末端位置を検知できた.さらに実験の再現のために行った移流拡散解析結果とも整合した.

  • 佐藤 克晴, 嘉賀 大樹, 吉本 正浩, 阿南 健一
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_49-I_58
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/19
    ジャーナル フリー

     東京電力パワーグリッド(株)において,荷重の変動などにより耐荷性能が低下したシールドトンネルの補強構造の検討を行った.補強構造は,トンネル内での施工性などを考慮し埋設型枠工法を適用する方針とし,補強部材を再現した供試体の載荷試験により,補強構造の耐荷性能の特性や算定方法を検討した.試験の結果,曲げ耐力は埋設型枠の厚さを考慮することで,計算結果と同等以上の値が得られた.せん断耐力は,せん断ひび割れが埋設型枠により進展せず,せん断破壊しにくいとの特性が見られた.しかし,せん断破壊となったケースから,せん断耐力は曲げ耐力と同様に埋設型枠の厚さを考慮する必要があると評価した.検討結果から,埋設型枠工法の補強部材の耐荷性能の算定方法について示した.

  • 佐藤 克晴, 嘉賀 大樹, 吉本 正浩, 阿南 健一, 岩波 基
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_59-I_66
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/19
    ジャーナル フリー

     近年,東京電力パワーグリッド(株)が保有する送電用のシールドトンネルにおいて,鉄筋腐食等の劣化が報告されている.この場合,劣化の進行を抑え耐久性の回復を図るために,断面修復工法で補修する事例も多い.しかし,セグメント構造を対象とした断面修復工法の既往研究事例は少なく,耐荷性能への影響の有無に未解明な部分があった.そこで,セグメント構造を再現し,断面修復を行った供試体に対して,載荷試験により耐荷性能への影響を検討した.試験の結果,補修箇所と曲げの方向により,ひび割れや破壊状況等の挙動が変わる傾向が見られたが,断面修復による耐荷性能の低下は見られなかった.このため,断面修復を行った場合のセグメントの耐荷性能の照査は,断面修復を行わない場合と同様に,曲げ耐力やせん断耐力を算定し照査することとした.

  • 阿南 健一, 吉本 正浩
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_67-I_74
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/19
    ジャーナル フリー

     本研究は,軟弱地盤において設計時点では不測であった荷重変動によりトンネルに変状が生じ補強を実施した既設のシールドトンネルを事例として仮想設計を行い限界状態設計法の効果について検討を行ったものである.具体的には許容応力度設計法と限界状態設計法による耐荷性能の照査結果を比較した.まず,当初荷重について既設構造の仕様に対する照査の結果,許容応力度設計法は耐荷性能を満足したが,限界状態設計法は耐荷性能を超過し鉄筋量の増加が必要となり,両設計法の照査の結果は相反する結果となった.つぎに検討対象のトンネルの変動荷重が推定されていたことから,この荷重に対し耐荷性能の照査結果を比較した結果,限界状態設計法による設計は不測の荷重変動に対して有効な設計法であることが示された.

  • 牛田 貴士, 仲山 貴司, 斎藤 達也, 齋藤 諭, 田中 篤史, 新井 泰
    2020 年 76 巻 2 号 p. I_75-I_83
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/19
    ジャーナル フリー

     都市圏の鉄道では利便性向上のための相互直通運転,それにともなう線増のために既設開削トンネルの拡幅事例が増えつつある.これらの事例では既設側壁の撤去延長が大きくなる傾向があり,東京メトロ有楽町線・副都心線の小竹向原駅~千川駅間では中床版をPC鋼棒で吊りながらの側壁撤去が行われた.本研究では三次元有限要素法によるシミュレーション解析を試行し,この中床版変位抑制工のモデル化手法について検討した.また,三次元解析および計測データで確認された縦断方向の変位分布を予測するための二次元解析法を検討した.提案した二次元解析法は側壁撤去範囲の中床版を縦断方向梁で,PC鋼棒を節点ばねでモデル化する手法であり,計測データとの比較を通じて適用性を例示した.

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