土木学会論文集F1(トンネル工学)
Online ISSN : 2185-6575
ISSN-L : 2185-6575
77 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
和文論文
  • 野城 一栄, 嶋本 敬介, 大原 勇, 水谷 真基
    2021 年 77 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/20
    ジャーナル フリー

     供用後の山岳トンネル補強工の設計体系を確立することを目的とし,数値解析により補強工の変形抑制効果を評価した.裏込注入工は単独では効果は限定的であることがわかった.ロックボルト工は,単独でも効果があり,本数が増加すると効果も増加すること,また,効果が頭打ちとなる長さがあり,それは塑性領域の大きさと関係があることがわかった.内巻工は,単独での効果は小さいこと,裏込注入工と組み合わせて用いると効果が顕在化することがわかった.内巻工は,大きな効果が必要な場合に,裏込注入工やロックボルト工と併用して用いるとよいと考えられる.これらの結果に基づき,実務で活用できるよう,補強工の選定の考え方と,補強工の効果を事前に簡易に予測する手法を示した.また,実際の変状トンネルで検証解析を行いその妥当性を確認した.

  • 佐藤 岳史, 中原 史晴, 青木 智幸, 岸田 潔
    2021 年 77 巻 1 号 p. 17-31
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     トンネル掘削時に実施する変位計測は,切羽近傍地山の評価や予測,支保の選定とその妥当性を検証する際に有益な情報を提供する.事前の地質調査に限界のある大土被りトンネルにおいては,内空変位計測データが持つ特性を最大限有効活用することが望ましい.計測データの活用方法の一つに,掘削時の初期変位と最終変位の相関性を把握し,切羽開放後の初期段階で最終変位を予測することがある.本論文では,計測データと実際のトンネル支保の挙動分析を行い,初期変位計測の意義を明らかにするとともに,硬質層状の堆積岩地山での掘削を対象に,最終変位量を施工管理基準値とするための新たな提案を行った.この分析的アプローチを南アルプストンネルの施工に適用することで,その妥当性を実証した.

  • 保田 尚俊, 島田 義則, 江本 茂夫, 金田 道寛, 田中 幸司, 武岡 学, 石田 信孝, 御崎 哲一, 岡 義晃, 桶谷 栄一
    2021 年 77 巻 1 号 p. 32-43
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

     欠陥部の振動特性と覆工コンクリートのはく落に対する健全度の関係について考察するため,供試体を用いて室内実験を行った.その結果,はく落のおそれがある欠陥部の低次モードの振動数の目安値,およびある振動数よりも低い欠陥部の振動音はハンマー打撃時にはあまり聴こえていないことが明らかとなった.また,室内実験の結果を踏まえ,鉄道トンネル内の要注意(β判定)箇所での振動計測結果を考察すると,はく落が生じるおそれはないと判断できる箇所が多数存在することが明らかとなった.検査員による判定は基準や根拠が曖昧でばらつきがあるので,欠陥部の最低次モードの振動数を指標としてスクリーニングするだけでも,人による打音調査が必要な箇所を選択,集中することができ,検査の効率化が期待できる.

  • 猿渡 隆史, 吉川 登代子, 吉田 晋, 山田 孝弘, 丸山 達彦, 稲垣 祐輔, 山内 雅基, 譽田 孝宏
    2021 年 77 巻 1 号 p. 44-59
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

     土留め設計では,土留め壁を梁に,支保工を弾性支承に,地盤をばねに仮定した土留め弾塑性法を通常採用している.ここで使用する掘削側地盤の水平地盤反力係数は,原位置試験等から想定した変形係数を利用しており,設計上,一定値として設定している.ただ,軟弱な沖積粘性土層が分厚く堆積した開削現場において,計測値に基づいた逆解析により,土留め壁の変形増加に伴って水平地盤反力係数が小さくなることを確認しているが,その具体的なメカニズムの解明には至っていない.

     ここでは,水平地盤反力係数の土留め壁変位依存性について,現場計測結果と原位置試験結果から分析した.その結果,当該現場では,掘削底面付近における初期の水平地盤反力係数を30%程度まで低減することにより,土留め壁変形量を適切に表現できること等が検証できた.

  • 遠藤 啓一郎, 赤木 寛一, Alireza AFSHANI , 土橋 浩, Grant HASAN
    2021 年 77 巻 1 号 p. 60-75
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー

     本論文は,2020年2月に開通した首都高速神奈川7号横浜北線の馬場出入口トンネルの掘進が,近接する横浜北線の本線トンネルへ及ぼす影響を三次元解析によって検討している.横浜北線の本線トンネルおよび馬場出入口は,それぞれシールド工法によって構築されており,本線トンネル構築後に掘進する馬場出入口トンネルの既に供用しているトンネルに対する影響を把握することが大きな課題であった.本研究では,馬場出入口トンネルと本線トンネルの離隔が近接かつ三次元的に変化していることに着目し,三次元有限要素法解析により,出入口シールド掘削が本線トンネルに及ぼす影響を三次元的な離隔距離に基づいて解明し,近接施工における影響範囲の考え方について具体的な事例をもとに検討した.

  • 坂井 一雄, 谷 卓也, 青木 智幸, 岸田 潔
    2021 年 77 巻 1 号 p. 76-91
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー

     山岳トンネルの安全かつ経済的な施工には,切羽前方の地山状況を精度よく予測して,必要に応じて予防保全的な対策工を講じる事が重要である.これまでに筆者らは,日常の施工管理の一環として,簡易に実施できるトンネル天端部の傾斜計測によって,切羽前方地山の硬軟変化を予測する手法を考案し,数値解析や現場計測試験で妥当性と有効性を確認してきた.本論文では,提案手法によって切羽前方地山予測を実現できる条件を明確化する目的で,土被りや地山剛性をパラメータとした感度解析を実施した.また,傾斜計測による地山状況予測結果を,変形余裕量の設定や補助工法の検討に対して実務的に活用することを目指して,傾斜角度から天端沈下量を定量的に推定する方法を検討し,現場実装試験の事後評価で有効性を確認した.

和文ノート
  • 岡崎 泰幸, 林 久資, 津田 愉大, 田村 大智, 青木 宏一, 進士 正人
    2021 年 77 巻 1 号 p. 92-97
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     山岳工法によるトンネル施工では,トンネル切羽付近において岩石等が崩れ落ちる「肌落ち」と呼ばれる現象が発生し,それによって労働災害が生じる場合がある.そのため,肌落ちの発生要因等を踏まえて肌落ちのリスクに対する様々な評価方法が提案されているが,肌落ちの発生要因の1つと考えられる切羽面の凹凸に着目した評価方法は提案されていないのが現状である.

     そこで,本研究では,切羽面の凹凸に起因する肌落ちのリスクを評価することのできる解析方法を提案することを目的とし,切羽の写真測量結果からボクセル法を応用することにより切羽面の凹凸を考慮した三次元数値解析モデルを生成し,基礎的なトンネル掘削解析を行った.その結果,本研究で提案した解析方法が切羽面の凹凸に起因する肌落ちのリスク評価に対して有用であることが示された.

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