土木学会論文集F1(トンネル工学)
Online ISSN : 2185-6575
ISSN-L : 2185-6575
78 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
和文論文
  • 細野 賢一, 福田 毅, 藤野 晃, 江島 武, 若井 明彦
    2022 年 78 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

     トンネルなどの地下構造物の掘削工事で発生する坑内湧水量は,その大きさによっては施工の安全性や工事全体の進捗に対して影響を及ぼす場合がある.坑内湧水量を予測する手法には,表計算ソフトで行う簡易的な方法や3次元浸透流解析が挙げられる.3次元浸透流解析による湧水予測に関しては,トンネル形状や掘削の進捗を反映した要素分割や境界条件の設定が必要となり,解析作業に多大な労力が必要となる.この課題を解決するためにトンネルをモデル化せずとも,この存在を考慮できる3次元浸透流解析手法「仮想ドレーンモデル」を考案した.これを用い,均質および不均質な地質構造を想定して従来のモデリング方法との比較検証を行った.また,実現場のモデル化を行い,実測の坑内湧水量を再現対象とした実証解析を実施し,いずれも良好な結果を得た.

  • 掛谷 幸士朗, 林 久資, 鷹屋 光俊, 山田 丸, 大塚 輝人, 吉川 直孝, 進士 正人
    2022 年 78 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,トンネル建設時の合理的な換気設計を目的に,トンネル坑内の高濃度粉じん領域や,粉じん濃度の経時変化を精度よく把握するため,非定常乱流モデルによる3次元数値流体力学解析(Computational Fluid Dynamics Analysis)による数値シミュレーションを行った.その結果,著者の一部が実施した拡散希釈方式を採用したトンネル換気実地試験結果においてトンネル建設中の坑内粉じん濃度の経時変化を精度よく再現できることがわかった.さらに,計測結果や解析結果をトンネル坑内の粉じん飛散状況の経時変化および算術平均をもとに評価することで,換気方式の違いや坑内換気位置,換気量の違いによる坑内粉じん濃度環境の変化を明らかにすることができた.

  • 齋藤 隆弘, 浜田 元, 目黒 緑, 千々和 伸浩, 岩波 光保
    2022 年 78 巻 1 号 p. 40-54
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     山岳トンネル覆工コンクリートの急速施工を目的として,施工スパン長を延長する工法の開発に取り組んだ.本工法では1施工スパン長が通常より長いため,温湿度変化に伴うひび割れ発生リスクの増大が懸念された.このため,セントル中央部にひび割れ誘発目地を形成し,ひび割れ発生リスクの低減を試みた.実大施工実験を実施して,ひび割れ誘発特性を確認するとともに,ひび割れの誘発状況を解析により再現した.さらに実際のトンネルをモデルとして,ひび割れの誘発とひび割れ抑制効果を解析により検証した.この結果,材齢4日程度以内でひび割れ誘発目地にひび割れが誘発され,目地における挙動を解析により再現でき,実際のトンネルでも目地においてひび割れが誘発され,目地以外の箇所におけるひび割れ抑制に有効であることを解析により確認できた.

  • 佐藤 岳史, 中原 史晴, 青木 智幸, 林 為人, 岸田 潔
    2022 年 78 巻 1 号 p. 55-73
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     異方性を持つ初期地圧は,大土被り下での硬質堆積岩の掘削時に特定のトンネル変位を誘起する.異方性を持つ地圧の主応力方向と掘削方向とが相関し,切羽前方に地山応力の非対称的な分布や局所的集中を生じ,切羽通過前後における変位を発生させる.赤石山脈で土被り700m以上の,弾性的性状を示す堆積岩を掘削した箇所で初期地圧を調査し,その主応力方向は調査地域を含む広域的な東西圧縮応力場に整合することを把握した.その上で,トンネル変位計測データから切羽近傍の非対称的な応力状態が変位に一定の影響を与えることを確認し,また,地圧と掘削方向が相関して変位が発生し得ることを数値解析で明らかにした.本研究では,広域的応力場における掘削時の挙動分析評価に際し,初期地圧の異方性が変位に及ぼす影響を考慮することの重要性を示す.

  • 佐藤 克晴, 阿南 健一, 吉本 正浩, 岩波 基
    2022 年 78 巻 1 号 p. 74-87
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     経年劣化により曲げ耐力が不足した鉄筋コンクリートに対する補強対策として,連続繊維シートは一般的な工法である.しかし,シールドトンネル用セグメントのような円弧状の部材に対して適用した場合の補強効果には未解明な部分がある.したがって,本研究では連続繊維シートにより補強したセグメントの単体曲げ試験を再現した構造モデルにより,補強効果への影響を分析した.この結果,円弧状の部材では,繊維補強シートに対しトンネル半径方向への付加応力が発生しており,内径が小さく曲率が大きいほど補強効果が低減されることがわかった.本論文では,曲率の影響を受ける場合の連続繊維シートの剥離破壊強度の算定方法を示し,同工法の補強設計法を提案する.

  • 木下 果穂, 牛田 貴士, 津野 究, 細田 暁
    2022 年 78 巻 1 号 p. 88-101
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     臨海部や感潮河川付近に位置する鉄道シールドトンネルでは,RCセグメントに塩化物イオンの影響による鋼材腐食が見られることがある.本研究では,まず,腐食促進実験による塩化物イオン浸透状況の観察により,継手付近に特徴的な塩分浸透特性を把握した.次に,塩害劣化を想定したセグメント覆工模型の載荷実験を行い,継手鋼材の腐食により継手部の回転剛性が低下する等,力学的挙動への影響を確認した.さらに,継手鋼材の腐食の影響を考慮できる有限要素解析法を提案するとともに,三次元FEMによる解析結果を実験結果により検証し,手法の妥当性を確認した.

  • 山口 貴浩, 水谷 司, 山本 和朋, 石田 哲也, 永田 佳文, 川村 日成, 得能 智昭, 鈴木 清, 山口 裕哉
    2022 年 78 巻 1 号 p. 112-131
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     近年,膨大なインフラストックの老朽化が問題となっている.本研究では,道路利用者の安全性に影響を及ぼすトンネル覆工コンクリート壁面の浮き・剥離,舗装路面のポットホールについて,MMSレーザー点群データを用いて全自動,リアルタイムかつ高精度に損傷を検知する新たなアルゴリズムを提案した.時系列解析によりトンネル・路面の断面形状・プロファイルを推定した.信号・画像処理により損傷候補領域を特定後,三次元形状抽出手法と特徴量によりトンネルの損傷・付属物を峻別し,損傷を三次元マップ上に可視化した.異なる形式・年代の複数の実トンネルと,実路面において検証を行い,トンネル覆工の約8割の浮き・剥離を検知でき,提案手法の有効性を実証した.

  • 牛田 貴士, 仲山 貴司, 寺田 賢二郎
    2022 年 78 巻 1 号 p. 132-149
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

     感潮河川付近の地下構造物の維持管理では,漏水中の塩分に起因する外的塩害,繰返し補修が課題であり,予防保全への転換によって維持管理の省力化が期待される.そのためには,漏水発生前から劣化環境を反映して劣化進行を予測する手法が重要となる.本研究では,感潮河川からの塩水移動に基づく地下構造物の劣化予測法を提案した.具体的には,まず非一様な地層構造を考慮した地盤中の塩水分布予測法を提案した.次に,漏水の季節変動に起因する酸素供給や乾湿繰返しの影響を反応拡散解析で考慮する鉄筋腐食の予測法を提案した.さらに,これらを組み合わせた感潮河川からの塩水移動に基づく地下構造物の劣化予測法を提案するとともに,モデル路線に適用し,塩水移動を考慮した劣化予測の有用性を示した.

和文報告
  • 前川 和彦, 八木 弘, 伊藤 哲男, 國村 省吾, 奥井 裕三, 桑島 滉, 蒋 宇静
    2022 年 78 巻 1 号 p. 26-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     トンネルの安定を二次元数値解析で検討する場合には,本来は三次元現象である問題を疑似的に表現するために応力解放率という概念が用いられている.NEXCOでは,現場計測結果をもとに数値解析マニュアルを整備しており,応力解放率は,それらに基づき設定している.しかし,近年採用事例が増えてきている補助ベンチ付き全断面工法で早期閉合する場合については,特に定まったものがないのが現状である.本論文では,全断面早期閉合に対して,二次元数値解析の応力解放率を変化させて,三次元数値解析による地山変位特性曲線との相関により,適切な応力解放率の設定法を提案し,検証を行った.

  • 宮嶋 保幸, 戸邉 勇人, 山下 慧, 楠見 晴重
    2022 年 78 巻 1 号 p. 102-111
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     山岳トンネルの建設では肌落ち災害防止のため,鏡吹付けコンクリートの施工がされている.しかしこれらの施工は,切羽ごとに地質状況に応じた厚さを決定されず,支保パターンに応じて3~5cmの吹付けが推奨されており,肌落ち事故が発生しているのが現状である.本研究では,画像解析技術やコンピュータジャンボの穿孔データによる切羽の地質定量評価結果と当該切羽の鏡吹付け厚および剥落情報を収集し,ロジスティック回帰を利用して地質状況に応じた鏡吹付け厚を提示するモデル構築について検討を行った.その結果,75%程度の精度で鏡吹付け厚を提示できることが分かった.また,ロジスティック回帰は隠れ層のない機械学習手法のため,地質状況や鏡吹付け厚と剥落の関係性を明確に示すことができることを明らかにした.

feedback
Top