生体医工学
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Annual59 巻, Abstract 号
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  • 中道 友
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 269
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    皮膚は健康状態を維持するための様々な生理機能を有しており,血液から栄養や酸素を受け取ることでその機能を維持している.実際に,皮膚の微小循環系に構造変化が生じることにより,加齢による皮膚老化(機能低下)が引き起こされるという報告がある.このため,表皮,真皮,皮下組織より構成される皮膚において,毛細血管分布や血流動態を3次元イメージングすることは,皮膚生理機能の評価や診断に重要な知見を与える.一方,生体組織のマイクロ断層画像法に光干渉断層法(OCT)があり,網膜や循環器の断層画像診断に効果を挙げている.近年では,OCTを利用し血管網を断層可視化する手法(OCT Angiography;OCTA)も開発され,OCTAを用いた毛細血管分布および血流速の計測による診断性能の向上が期待されている.本研究では,OCTAを用いた皮膚生理機能の3次元イメージング手法を提案する.これは皮膚に何らかの刺激を与え,OCTAにより得る3次元の毛細血管分布と血流速分布の生理応答を経時記録することにより,皮膚生理機能を計測する手法である.本発表では,皮膚にアルコール塗布よる薬液刺激を与え,毛細血管分布と血流速の応答を計測することにより提案手法の妥当性を検討する.また,得られた生理応答と計測対象者のアルコール耐性を比較し,提案手法の皮膚生理機能計測に対する有用性について検討する.

  • 古川 大介, 佐伯 壮一, 近藤 宏樹
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 270
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    皮膚組織は,主に表皮,真皮,皮下組織から構成されている.肌のシワやタルミは,真皮のコラーゲン繊維の変性が原因となり,皮膚組織のレオロジー特性を変化させると考えられている.このため,皮膚組織のレオロジー特性をマイクロ領域にて断層可視化することでスキンメカニクスの解明が可能と考えられる.本研究では,皮膚組織レオロジー特性をリアルタイムに断層可視化し,スキンメカニクスを評価する手法の確立を目指す.本稿では皮膚組織をマイクロスケールにて断層可視化する光干渉断層法Optical Coherence Tomography(OCT)を用い,陰圧吸引システムから皮膚組織内部のひずみ速度をマクロ断層可視化するOptical Coherence Straingraphy(OCSA)により皮膚組織レオロジー特性をマイクロ断層可視化する.本手法の妥当性について検討するため,前腕屈側部にて陰圧吸引試験を実施した.吸引から解放後のクリープ回復時に対してOCSA法を適用した結果,ひずみ速度の時系列変化から表皮は真皮層に対して,クリープ回復時間が短く弾性的であった.これより,皮膚内部のレオロジー(力学)特性をマイクロスケールにて断層可視化が可能であり,スキンメカニクスの評価可能であることを示した.

  • IRFAN DHARMA, Daisuke Kawashima, Marlin Baidillah, Panji Darma, Masahi ...
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 271
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Hydraulic permeability κ estimation method of human subcutaneous adipose tissue (SAT) has been proposed by integrating poroelastic-transport model (pe-TM) to wearable electrical impedance tomography (w-EIT). In-vivo experiments were conducted by applying external compressive pressure -P on human calf boundary to induce interstitial fluid flow and ion movement in SAT. pe-TM predicted the ion concentration distribution cmod by coupling poroelastic and transport model to describe the hydrodynamics and transport phenomena inside SAT. w-EIT measured the time-difference conductivity distribution δγ in SAT resulted from the ion movement. κ was estimated by applying an iterative curve-fitting between cmod predicted from pe-MTM and experimental ion concentration distribution cexp derived from w-EIT. As a result, κ of SAT was range from 1.45-1.63 x 10-11 m/Pa.s, which were correspondent to the other soft tissues κ (such as mice subcutaneous, rabbit aorta, etc.) from literature which were in range of 1-10 x 10-11 m/Pa.s

  • 関戸 耀太, 中山 泰秀, 田地川 勉 
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 272
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    我々の研究グループでは,生体内組織形成術(iBTA)を用いて心臓弁様組織体(バイオバルブ)を開発してきた.先行研究においては,iBTAで作製される膜状組織体(バイオシート,以下BS)を弁尖として,僧帽弁の人工弁輪を模倣した楕円状リングを土台として縫い付けた新しい概念の人工弁を試作し,弁機能を評価してきた.しかしながら,弁の構造により弁開口性能と閉鎖性能を両立させることが難しかった.本研究は,新たに異方性を有した膜状の弁尖を試作し,先行研究と同様の簡易型人工弁を作製することで,弁尖の力学的異方性が弁機能におよぼす影響を調べた.

    弁機能評価では,作製した生体外模擬実験装置を使い,実験条件はヒト生理条件とした.BSの作製には約2ヶ月必要なため,BSを使って実験することは効率が悪い.そこで今回はBSと力学特性が違いポリウレタン製シート(以下PS)を使用し,等間隔かつ平行にならべたNi-Ti線を2枚のPSで挟み込み,熱加工でPS同士を融着させ,それを所望の形状と大きさに切り出すことで異方性を有する弁尖モデルとした.実験では,弁尖の曲げ剛性が高い向きとそれを縫い付ける弁輪の位置関係および,人工弁輪を模したリングに対する弁尖はみ出し量e=0~3mmを変化させ,各条件において左心房圧と左心室圧,僧帽弁位流量を測定し,人工弁の国際規格であるISO5840に基づき,弁閉鎖性能として逆流率Rf,弁開口性能として平均圧較差Δ p,有効開口面積EOAを評価した.

  • 金子 征太郎, 石塚 裕己, 梶本 裕之
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 273
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    物体接触時の皮膚にかかる力を計測するためにロードセルなどの力センサが用いられているが,これらのセンサでは皮膚内部にかかる応力を分布的に計測することは非常に困難である.この解決のため,皮膚に圧力がかかった際の色変化を利用して皮膚内部応力を計測する手法を提案する.本手法は物体接触時の皮膚色変化をカメラによって撮影することで皮膚内部応力を分布的に計測することを可能とする.本手法が有効であることを調査するため,指先で円柱形状の凸を押下した際の皮膚色変化と有限要素法を用いた皮膚内部応力分布をそれぞれ計測し,色変化量と皮膚内部応力の対応関係を求めた.本手法を用いることによって体圧計測を非接触にかつ内部応力を含めた計測が可能となることが期待される.

  • 北中 宏明, イワン セレズノフ, 金子 美樹, 重松 大輝, 清野 健
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 274
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    生体システムでは,長時間相関やフラクタル性と呼ばれる特性をもつゆらぎが多く観測されてきた.最近我々は,2次元軌道のゆらぎについて,非等方的なフラクタル特性を示すモデルを提案した.このモデルでは,異なる2方向のそれぞれで異なるフラクタル性をもつ変動の合成として,2次元軌道が記述される.さらに,指向性フラクタルスケーリング成分分析(oriented fractal scaling component analysis:OFSCA)と呼ばれる解析法を導入し,2次元軌道データから元の独立な2成分を抽出できることを示した.OFSCAでは,2次元軌道を特定の方向に射影し,その方向と推定されたスケーリング指数の関係から,元のフラクタル成分がなす角度を推定する.この方法は,独立成分分析では分解できない,正規分布に従う変動にも適用可能である.本研究では,OFSCAを用い,静止立位姿勢時の足圧中心動揺を解析した.ここでは,健常人男性3人を対象とし,開眼状態で足圧中心動揺を計測した.足圧中心動揺の解析結果から,異なるスケーリング特性をもつ非直交成分の存在が確認できた.さらに,このような非直交性が利き足を中心とした姿勢制御と関連することが示唆された.

  • 田脇 裕太, Takuichi Nishimura, Toshiyuki Murakami
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 275
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Static posturography tests are conducted to assess the balance ability of patients. Existing descriptive statistics yield higher index values for older people than healthy younger ones. It is important to reveal the mechanism of the postural control system and utilize the system parameters for balance ability assessment. For this purpose, a mathematical modeling of the center of pressure was conducted. We introduce linear stochastic differential equations to reproduce the center of pressure trajectories and verified them in terms of the descriptive statistics reproducibility. The model equation comprises viscosity, stiffness, and stochastic terms to express the center of pressure movement during the posturography test. The experimental results show that the mathematical model has high descriptive statistics reproducibility, and the balance ability can be assessed using a small number of model parameters with a clear physical meaning.

  • 長崎 光弘, Hoang Dinh Loc, 西村 多寿子, 峯松 信明, 水口 一, 窪木 拓男
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 276
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    強く噛み締めたり擦り合わせて歯に非常に強い力を加えるブラキシズムは、歯が欠けたり顎関節症を引き起こす恐れがある。また、開閉口筋の同時緊張により、上下の歯が接触せず筋肉に負荷を及ぼす擬似クレンチングと呼ばれる状態も存在する。これらは生体への為害作用が異なるため、簡便で正確な自動検出が望まれている。そこで本研究ではこれらについて、開閉口筋の筋電信号と口腔内の生体音を特徴量として機械学習を用いた自動検出を試みた。被験者は健常な成人男女12名であり、咬筋部、顎下部、オトガイ部、輪状軟骨部の筋電信号及び右側の下顎角部における生体音を計測した。これらの信号のメル周波数ケプストラム係数を特徴量とし、ブラキシズム、擬似クレンチング、その他の3クラスの隠れマルコフモデルを作成した。単一の特徴量を扱うモデルと複数同時に扱うモデルの両方を作成し、モデルごとに交差検証によりブラキシズムと擬似クレンチングの検出に対するF値を算出した。ブラキシズムのF値について、筋電を個別に用いたモデルでは咬筋部で高く77.2±8.1%であった。音響信号を個別に用いたモデルでは60.1±16.0%であった。また、複数の特徴量を同時に扱ったモデルのうち最も高かったものは81.7±8.5%であった。この結果から被験者間のばらつきは大きいものの、ブラキシズムや擬似クレンチングについて適切に特徴量を組み合わせることで自動検出が凡そ可能であることが示唆された。

  • 古居 彬, 辻 敏夫
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 277
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】筋収縮時に発生する表面筋電位信号は,人の動作意図の情報を含んでいることから,ロボット義手やリハビリ機器の制御信号として利用されてきた.一方,筋電位信号の分散には,筋活動の不確実性に起因するばらつきが含まれることが知られている.著者らはこれまで,この分散の不確実性を考慮可能な尺度混合モデルを提案してきた.本研究では,このモデルをベイズ確率モデルとして拡張するとともに,これを内包したパターン識別法を提案することで,分散の不確実性を考慮した高精度な動作識別を目指す.【方法】提案法では,筋電位信号の分散を潜在的な確率変数と仮定することで,筋活動に応じた不確実性を表現できる.また,変分ベイズ推論に基づく学習法を導入することで,学習過程でモデルの複雑さをデータから自動的に決定可能である.実験では,被験者3名から計測した6動作時の筋電位信号を用いて提案法の識別特性を調査した.さらに,筋電位の公開データセットを用いた識別実験を行い,複数の一般的なパターン識別器と精度の比較を行なった.【結果】被験者3名に対する実験の結果,提案法は90%以上の高い精度で動作識別が可能であることが確認された.また,公開データセットに対する識別実験の結果,提案法が一般的な識別器よりも優れた識別能力を有することが示された.【結論】筋電位信号の確率的特徴を考慮した識別器を構築することで,高精度なパターン識別が可能である.

  • 熊谷 遼, 畑元 雅璃, 李 佳キ, 大西 亮太, 古居 彬, 辻 敏夫
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 278
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】上肢切断患者に対する生活支援の一環として,筋電信号によって随意的に制御可能な電動義手の処方が行なわれている.使用者にとって義手の外観や挙動の人間らしさは重要であり,従来から数多くの研究がなされてきた.しかしながら,振戦と呼ばれる人の不随意的な生理現象を義手制御に導入した試みは存在しない.本研究では,筋電信号の確率的性質に基づき振戦を推定・再現する方法を提案し,義手制御へと応用することで人間らしい義手動作の実現を目指す.【方法】提案する人工振戦生成法では,随意動作時に発生する動作時振戦成分と,不随意的な機械反射に由来する生理的振戦成分をそれぞれ再現可能である.計測した筋電信号からその分散に重畳するノイズを推定することで,動作時振戦成分を再現する.機械反射に伴う微弱な筋電信号を皮膚表面から計測することは困難であるため,正弦波の合成波形を生成し生理的振戦成分の再現に利用する.両振戦成分の振幅・周波数成分を決定後,足し合わせることで人工振戦を生成し,これを義手の制御指令に加えることで振戦を伴う義手制御を実現する.実験では,義手の関節角度からパワースペクトルを算出し,人体から計測した振戦との比較を行った.【結果】生成した人工振戦が人体から実測した振戦に近い特徴を有していることを確認した.【結論】提案法により筋電義手で振戦動作を実現することに成功した.

  • 内藤 勇成, 田中 明, 吉澤 誠
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 279
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    動脈の脈波伝播速度(以下,PWV)は血圧や動脈硬化などの重要な情報を含んでおり,PWVを利用した循環指標の評価は非侵襲的な手法として期待されている.一般に,PWVの計測は心電図と末梢の脈波を利用することが多く,離れた異なる部位に複数のセンサを装着する必要がある.末梢の比較的近い2点間の光電脈波で計測できることが理想であるが,計測点の距離が近い場合は精度が低くなること,血管から組織までの伝播特性を無視できないことなどから,比較的近い2点間において距離と脈波の時間差の比からPWVを算出することは困難である.そこで本研究では,手の昇降を利用して末梢の脈波からPWVを推定することを目的とした.末梢で計測される脈波は動脈からセンサが装着されている組織までの伝播特性の影響を受けており,動脈における正確な脈の到達時間を得ることは困難である.一方,スティフネスパラメータβを考慮すると,末梢におけるPWVの二乗は血圧変化と比例することが知られている.本研究ではこのことを利用して,末梢における脈の伝播時間差を補正してPWVを推定した.検証実験の結果,提案方法によるPWVの推定値と心電図と末梢の脈波から算出したPWVとの間に正の強い相関があり,手の比較的近い2点の脈波からPWVを推定できる可能性が示唆された.

  • 大野 裕哉, 岩井 守生, 孫 文旭, 小林 宏一郎
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 280
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    心臓の電気的活動によって発生する磁界を非侵襲的に測定する方法として心磁図(MCG : Magnetocardiography)がある。心磁図による心臓活動の3次元的信号源推定は臨床応用に有用な技術である。現在、脳波や脳磁図を用いた脳活動の信号源推定手法には、最小ノルム法、ビームフォーマー法、LORETA法、eLORETA法など様々な空間フィルタ法が提案されている。しかしこれらの推定方法を心臓の信号源推定に応用した場合、同じ強度の信号源であっても深い信号源は浅い信号源よりも推定解が大きく広がる傾向にある。本研究では、心磁図を用いた心臓の電気的活動の推定として、推定信号源の局在化に優れたeLORETA法を用いた。我々は、信号源の深さによる推定解の広がりを抑制するため、複数測定面で計測したデータを用いて推定を行う手法を提案した。複数測定面で計測したデータを利用する2種類の空間フィルタ作製法を検討した。この結果、それぞれ異なる推定精度となり、提案方法により深い信号源の広がりを抑制できた。

  • 岩井 守生, 成田 青峰, 小林 宏一郎, 孫 文旭
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 281
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    近年,心電図(MCG : Magnetocardiogram)は心臓病の早期発見が可能性であるため,臨床研究が盛んになっている.ただし、現在の空間フィルタ法をMCGに適用すると,深い位置での信号源の推定解は,浅い位置での推定解よりも拡大する傾向がある.その理由の1つとして,通常はセンサ平面が解析領域よりも大きく設定されているため,両端にあるセンサの情報が失われることが考えられる.そこで本研究では、センサ面よりも広い解析領域を設定することを提案し,実計測MCGを用いてシミュレーションを行い,各センサの情報量が均等に使用できることを確認しました.その結果,得られた推定解の位置とサイズは、CT画像に示されている領域と同様であり,適合度(GOF : Goodness of fit)は約0.996でした.これらの結果より,本研究における提案が有効であるため報告する.

  • 藤本 雄大, 金子 美樹, 重松 大輝, 清野 健
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 282
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    心拍変動時系列には、自己相関が時間とともにゆっくりと減衰する長時間相関と呼ばれる特性が見られる。長時間相関は、時系列のパワースペクトルや平均二乗偏差 (フラクタル解析)の両対数プロットの傾きから推定されるスケーリング指数によって特徴付けられる。心拍変動時系列には、スケーリング指数が異なる領域が存在するクロスオーバー現象が見られる。これまで、心拍変動の長時間側のスケーリング指数が年齢や疾患によって変化することは報告されてきたが、クロスオーバー現象については十分に明らかになっていない。そこで本研究では、高次のSavitzky-Golayフィルターを用いて時系列に含まれる非定常トレンド成分を除去する高次フラクタル解析 (detrending moving average analysis: DMA)を用いて、心拍変動のクロスオーバー現象を解析した。生体信号の多くは非定常なトレンド成分を含むため、正確なスケーリング指数の推定にはトレンド除去が不可欠である。しかし、高次DMAに含まれるようなトレンド除去演算は時間スケールの歪みを生じさせるため、クロスオーバー現象の正確な評価ができない。そこで本研究では、そのような時間スケールの歪みを補正する方法を新たに導入することで、心拍変動のクロスオーバー現象を詳細に解析した。講演では、心拍変動に見られるクロスオーバー現象が生理学的にどのような意味を持つのかを議論する。

  • 吉野 朱香, 中村 晴信, 沖田 善光
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 283
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】γアミノ酪酸(GABA)などの機能性食品による自律神経活動への影響が,心電図から得られる心拍変動性を解析することによって調べられている.心拍変動性の周波数解析には主に高速フーリエ変換(FFT)が用いられている.しかし,FFTはデータに対して線形性と定常性を前提としている.そこで本研究では,GABA摂取時の心拍変動性に対して,非線形解析に使用される経験的モード分解(EMD)を用いた解析を行い,その結果とFFTによる解析結果を比較した.【方法】健常成人男性を対象に,GABAまたはプラセボ摂取の2回の実験セッションを行った.心電図は,摂取前,摂取7,30,45,60分後に各6分間ずつ計測した.心電図からRR間隔の時系列データを得た後でFFT解析とEMD解析を行い,自律神経活動の指標として,低周波数帯域(LF:0.04~0.15 Hz),高周波数帯域(HF:0.15~0.4 Hz)の指標およびLH/HF比を算出した.【結果】EMD解析の結果,プラセボ摂取と比べてGABA摂取では45分後でLF/HF比が小さくなる傾向が見られたが,一方,FFT解析では差が見られなかった.【結語】EMD解析は,FFT解析と比べて機能性食品摂取による自律神経活動の変化をより詳細に捉えられる可能性が示唆された.

  • 中川 翔, 緒形 ひとみ, 清野 健, 金子 美樹, 重松 大輝
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 284
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    睡眠は生命活動の維持に必要不可欠であるため、日常的に睡眠の質を把握し、睡眠に関連した問題の発見と改善に取り組むことには重要な意義がある。先行研究において,各睡眠段階の発生割合は睡眠経過とともに変化することが報告されている。しかし、睡眠経過に伴い心拍変動の特性がどのように変化していくのかについては十分に明らかになっていない。そこで本研究では、脳波分析に基づく睡眠段階の評価結果と、睡眠中の心拍変動のデータを合わせて分析することで、この関係を検討した。本研究では、ウェアラブル生体センサにより計測した男性健常者15名(20.7±0.6歳)の睡眠時の心拍変動時系列から代表的な心拍変動指標を算出し、その経時的特性変化を分析した。睡眠実験では、自宅での睡眠と車中泊を模擬した睡眠の2条件で計測を行い、脳波計測に基づき睡眠段階を評価した。心拍変動指標の分析の結果、睡眠経過に伴う各睡眠段階の出現割合が異なる2つの睡眠環境下で、副交感神経活動を反映する心拍変動指標である高周波数帯パワースペクトル(HF.nu)の経時的変化に違いが見られた。この結果は、睡眠経過に伴う各睡眠段階の割合の変化に関連して、心拍変動も変化することを示している。本研究で得られた知見は、心拍変動を用いた睡眠分析を行う際に、睡眠経過に伴う心拍変動の変化を考慮することが有用であることを示唆している。

  • 前島 未季, 吉野 公三, 清野 健, 渡邉 英一
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 285
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    うっ血性心不全(CHF)患者の死亡リスクを評価し,予後を予測することは臨床上重要である.清野らはCHF患者の25秒のスケールで粗視化した心拍変動の分布の非正規性を特徴づけたλ25secが死亡リスク予測に有効であることを報告した.藤井らは心拍変動のLF帯域成分の瞬時振幅の対数値の標準偏差(SDAMPLF)が有効であることを報告した.本研究では,新たなに,心拍変動のLF帯域成分の瞬時振幅の情報エントロピー(IEAMPLF)がCHF患者の有効性を検証した.解析対象は,CHF患者108名の24時間ホルター心電図(RR間隔)データとした.臨床指標にλ25secとIEAMPLFを加えた場合のCox回帰モデルの回帰係数は,λ25secは統計的有意であったが,IEAMPLFは有意ではなかった.臨床指標にλ25secを加えた場合とIEAMPLFを加えた場合のロジスティック回帰モデルの交差検証の判別的中率は同等(66.2%)であり,SDAMPLFを用いた場合(62.6%)を上回った.以上の結果より,予測精度はλ25sec,IEAMPLF, SDAMPLFの順に高いが,相乗対数正規過程を仮定せずに,心拍変動のLF帯域成分の瞬時振幅の情報エントロピー(IEAMPLF)を用いることで,λ25secと同等の予測精度を保つことが出来る可能性が示唆された.さらに,λ25secとIEAMPLFには比較的強い相関(ρ=-0.68)があることから,死亡群の情報エントロピーの低さはλ25secの特徴である非ガウス性を反映している可能性が示唆された.

  • 中原 英博, 河合 英理子, 伊藤 剛, 宮本 忠吉
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 286
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【背景】灸は,皮膚上の部位で艾を燃焼させ温熱刺激を生体に与える代替療法である。しかしながら,定量的なデータが不足しており、根拠に基づく医療手段として確立していない。【目的】本研究では,ヒトに対して灸刺激を行った際の心拍数及び血圧応答を明らかにすることを目的とした。【方法】被験者は,20名(男性13名 女性7名)の健常学生を対象とした。被験者は,実験室入室後,心電図用電極,血圧計及び皮膚温度計を取り付け,十分に安静にした後測定を行った。実験は,測定開始後2分間の時点で灸に点火し,その後6分間の心拍数,血圧及び皮膚温度を計測した。灸の施術部位は,右足の足三里穴を用いて行い,皮膚温度計の先端が足三里穴の中心部に位置するように医療用テープで固定した。灸点火前と後の比較は対応のあるt検定を用いた。【結果】心拍数は,灸に点火した後,皮膚温度が上昇するにしたがって緩やかに低下し,皮膚温度が低下するにつれて増加した。心拍数の値は,点火前(皮膚温度:平均30℃)の平均値64.3±7.5拍/分から皮膚温度が最高に達した際(皮膚温度:平均45度)に平均値62.3±1.3拍/分へと有意に減少した(p=0.005)。平均血圧には有意な変化は認められなかった。また,皮膚温度が38度に維持される温灸器を利用した場合においても,同様の徐脈効果が認められた。【結論】灸がもたらす局所的な温熱刺激は,ヒトの心拍数減少効果をもたらすことが明らかになった。

  • 日夏 俊, 鈴木 大輔, 石塚 裕己, 池田 聖, 大城 理
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 287
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    顔認証や指紋認証をはじめとする生体認証手法は,PCやスマートフォンなどの端末にも搭載されており,幅広く普及している.しかし,各手法における脆弱性を利用した攻撃例が報告されている.特に,偽造した生体情報を提示するなりすまし攻撃により,各手法を突破できる可能性が示されている.一方で,血流を光学計測して得られる光電容積脈波(PPG: Photoplethysmogram)を利用した認証手法(PPG認証)が研究されている.PPGは他の生体情報と比較すると計測部位や姿勢などの制約が少ないことや,PPG計測機能を搭載したスマートウォッチが普及していることから,PPG認証も今後普及する可能性がある.したがって,PPG認証に関しても事前に脆弱性を調査して,起こり得る攻撃を予測するとともに,同攻撃への対策を検討することが求められる.対策を備えたPPG認証を実現するため,我々は現在までPPG認証の脆弱性を調査し,様々な部位で計測可能なPPGの利点に着目した攻撃を提案した.同攻撃は,PPG認証に使われる本来の計測部位とは別の部位において,対象者に気づかれないように不正計測したPPGを利用して認証を突破する.我々は被験者実験を行い,既存のPPG認証が同攻撃により突破される可能性を示した.本発表では,同攻撃への対策として,計測部位特有の情報を利用する手法を提案し,被験者実験により同対策の有効性を検証した結果を報告する.

  • 山家 智之, 白石 泰之, 山田 昭博, 佐原 玄太
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 288
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Sars-cov-2のアウトブレイクは世界中でなかなか収まることはなく、医療従事者は感染のリスクを恐れながら日常の診療を進めている。マスクやフェイスシールドなども普及したが、先日も濃厚接触者であることが後で判明し、対応を与儀なくされたところである。Sars-cov-2の感染は主として咳嗽による飛沫感染である。接触感染は、数は少ないと報告され始めている。すなわち、「咳」の発生を予測できれば、Sars-Cov-2感染の蔓延は抑えられる原理となる。東北大学は、三次元ステレオカメラ、あるいは、二次元カメラの表面形状再構築のモーション解析により咳嗽の予測システムを発明した。「咳嗽」が発生する時には、吸気相・圧縮相・呼気相があり、この現象を応用すれば、映像から、咳を予測し、対策を取ることも出来る。すなわち本発明により咳によるSars-Cov-2の飛沫感染を予測することが出来、アクティブパーティションなどの手法でSars-Cov-2の蔓延を予防することが出来る。また、本発明を応用すれば、頸部表面の映像情報から、頚部の表面皮膚内の血流をRGBカラー映像解析から血流解析装置で解析できるので、更に高精度に「咳嗽の発生を予測」することが可能になる本発明により、体表面の映像情報から、咳嗽の発生の定量診断と予測が可能となった。すなわち、本システムを応用すれば、Sars-Cov-2の感染拡大における咳嗽の飛沫感染を予測することが出来、対策を取ることが出来る。

  • 中井 康平, 黒沢 正樹, 桐本 哲郎, 松井 岳巳, 孫 光鎬
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 289
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に流行している。本研究グループでは、光学カメラとサーモグラフィーを併用した非接触バイタルサイン計測手法による、高感度な感染症スクリーニングシステムを開発している(T.Negisi & G.Sun, Sensors, 2020)。同システムは呼吸数の推定のため、CCDカメラとサーモグラフィーのセンサフュージョンを行っている。しかし、CCDカメラで特定された鼻孔の位置座標をサーモグラフィー画像に座標合わせした際に誤差を生じるなどの課題がある。本研究ではサーモグラフィーの(Histograms of Oriented Gradients)HOG特徴量のSupport Vector Machine(SVM)機械学習手法と鼻周辺の温度特徴を利用して自動的に両鼻孔を特定し、鼻全体の特徴点を利用して両鼻孔の追跡を行い、呼吸数を算出する手法を提案する。提案手法の計測性能を評価するため、安静時と体動時の呼吸数を算出した。リファレンスとして呼吸バンドと同時計測を行い、Bland-Altman解析・記述統計により結果を評価した。安静時のBland-Altman解析の95%信頼区間は-2.7~2.7bpm、体動時の、Bland-Altman解析の95%信頼区間は-1.8~3.0bpmの範囲となった。よって、本呼吸推定法が安静時と体動時の計測において高い精度での呼吸数の推定可能性を示した。

  • 北岡 裕子, 木島 貴志
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 290
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】 吸気呼気CT画像に非剛体画像位置合わせ技術を施して、COPDにおける低吸収領域を気腫病変と末梢気道閉塞によるガストラップ(functional small airway disease; fSAD)に分類する方法が提案されている(Nat. Med, 2012)。しかし、肺実質には微小血管などの組織があり、わずかの位置ずれによって誤った分類がなされる可能性がある。計算機内に疑似的な吸気呼気CT画像を作成し、位置合わせの精度が分類結果に及ぼす影響を調べた。【方法】右上肺野(厚さ5 cm)の疑似CT画像を作成した(ボクセルサイズ:0.5 mm)。呼気CT画像の位置合わせが完璧になされたとして、肺実質のCT値だけを変更した画像データを変形後呼気CT画像とした。気腫モデルとして、肺実質にべき分布をなす大小さまざまな気腫ボクセルをランダムに配置した。ガストラップモデルとして、呼気時CTにのみ3-4 mm 大の低吸収クラスタを配置した。呼気CT画像全体を1~5ボクセル移動させて位置ずれを模擬し、気腫ボクセルとfSADボクセルの変化を調べた。【結果】 気腫モデルでは、わずかな位置ずれで気腫ボクセルの多くがfSADボクセルに誤分類された。ガストラップモデルでは、設定したボクセルがそのままfSADボクセルに分類された。実画像解析論文で示されたfSADボクセルは多面体を呈さない不定形な分布で、気腫モデルにおけるfSADの分布に類似していた。【結論】本法は不適切と判断された。

  • Haruka HORIUCHI, Takaaki SUGINO, Masashi KOBAYASHI, Yohei WADA, Yasuro ...
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 291
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Automatic and long-term monitoring of respiratory is in great demand for lung diseases. It gets required greater in these years due to COVID-19 pandemic to reduce medical staff fatigue for checking patient conditions frequently for long time. Kobayashi et al., in our team, developed a device measuring respiratory condition by quantizing the displacement between the 6th and 8th ribs. We introduce long short-term memory (LSTM) neural network to classify patient respiratory signals into the two states of normal and low-functional respirations. The signals were checked by a medical doctor manually for classified into the two states. In the process, they were transformed to frequency-domain spectra with complex-valued wavelet transform, and then quantized the respiratory wavelet spectra due to the large number of spectra patterns. After that, the LSTM learned and classified the processed respiratory signals. The experimental results showed the feasibility to detect the two states.

  • 伊藤 剛, 澤井 亨, 大槻 伸吾, 仲田 秀臣, 嶋田 愛, 中原 英博, 宮本 忠吉
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 292
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    先行研究で異なる強度での運動開始前後の経時的な心肺反応が、運動形態とそのトレーニング強度の違いに依存することを明らかにした。しかし、短・長期的な生理的適応の発現に対するトレーニング強度の差が運動中の呼吸循環機能にいつ・どの程度影響を及ぼすのかは明らかではない。被験者は大学生アスリート16名、 大学生アスリート16名を対象とし、95%および80%強度のトレーニング群に振り分けた。HIT後、最大酸素摂取量は両群で有意に増加した。ステップ負荷運動時の最高心拍数はTr6以降95%TGにおいてのみ有意に増加し、Tr8後には運動開始直後の心拍増加反応が認められた。運動時の呼吸循環代謝系におけるHITトレーニング強度依存性の適応変化は、主に循環調節系を中心にTr6以降に発現することが判明した。

  • 兒玉 浩希, Katsuhiro Ishida, Haruyuki Hirayama, Keita Kishi, Takeshi Miyaw ...
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 293
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Flap ischemia and consecutive flap loss is an innate complication in reconstructive free flap surgery. With the development of machine learning, time series analysis based flap failure prediction has become possible. With the laser doppler flowmetry pocket device (PocketLDF) by JMS it has become possible to measure skin perfusion every second. In this trial skin perfusion in addition to blood pressure, pulse and respiratory rate were measured in 3 patients and flap failure prediction based on the Auto-Regressive Moving Average (ARMA) model and the Long Short Term Memory (LSTM) network was conducted.Accurate perfusion prediction with the ARMA model for stationary processes and with the LSTM network for non-stationary processes was possible. In comparison with real time observation by the attending doctor, the ARMA model was able to predict flap ischemia ahead of time.

  • 菊池 紗瑛子, 白上 新, 下野 昌宣
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 294
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病(PD)では、運動症状以外に認知機能障害や精神症状、自律神経症状などの多岐にわたる非運動症状が認められ、画像を用いた研究から皮質の菲薄化が認められることも知られているが、この多岐にわたる見られる症状について、皮質の菲薄化との関連性は十分に分かっていない。ここで、我々はPD患者の大脳の皮質菲薄化パターンからPD症状を予測することを試みた。京都大学医学部附属病院にて診療を行っているPD患者181名を対象として、運動症状、非運動症状に関して、神経学的検査、神経心理学的検査、および質問紙などを用いて評価を行った。さらには、頭部MRIも撮像し、T1強調画像(MPRAGE)を得た。まず、運動症状、非運動症状課題に対し、行動成績の個人差の課題間での類似性を評価したスピアマン相関に基づいて、樹形図を描いたところ、既知のドメインに近い臨床課題が自然と分類された。さらに、T1強調画像に対して、HCP-MMP1アトラスに基づき、片側180領域(両側360領域)に分割し、FreeSurfer(ver.6)を用いて皮質厚を求めた。全皮質領域での皮質厚の組み合わせからLightGBM手法を用いて、臨床課題のスコアを予測した。

  • 河村 祐貴, 岡田 直, 山田 大輔, 光野 優人, 松橋 眞生, 高橋 良輔, 池田 昭夫
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 295
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    背景:難治性てんかんでは脳磁図で棘波をもとに電流源双極子を推定することが一般的である。その一方で棘波を認めず鋭一過波のみであった報告例は乏しい。目的:脳磁図で発作間欠期の鋭一過波のみ認めた例で他の検査結果、転帰との関連をあきらかにする。方法:2015年から5年間に術前評価目的に脳磁図を施行したうち、棘波を認めず鋭一過波のみであった15例(男:女7:8、平均年齢29.0歳)のビデオ脳波モニタリング、頭部MRI、PET、手術の有無、直近の発作の有無を後方視的に調べた。脳磁図は306チャンネル全頭型脳磁計 Neuromag Systemを用い、発作間欠期60分以上記録した。結果:脳磁図施行時の臨床診断は、前頭葉てんかん3例、側頭葉てんかん11例、その他1例であった。6例で鋭一過波の双極子が集簇した。そのうち4例で画像上病変を認め、3例でその病変近傍に双極子が求まった。非集簇例では、全例で画像上病変を認め、1例で病変近傍に双極子が求まった。集簇4例と非集簇5例で画像病変を含んだ切除術が行われ、全例で発作が消失した。結論:MEGの鋭一過波に基づく焦点検索は特異度が棘波に劣ると考えられるが、画像など他の検査手法と組み合わせることで良好な治療成績を期待できる。

  • 山本 侃利, らしぇどぅーら らーまん, 八木 直美, 林 圭吾, 丸尾 明宏, 村津 裕嗣, 小橋 昌司
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 296
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    超高齢化社会である日本では,骨粗鬆症に伴い脆弱性骨盤骨折(FFP;fragility fractures of the pelvis)の症例は増加している.FFPは患者の臥床に繋がりやすく,合併症を引き起こしやすい.また,骨折診断は主に3次元CT画像の目視で行われるが,FFPは画像では捉えづらく,診断に時間を要する.本研究では,3次元CT画像上でのFFPを自動検出する手法として,ボーリング調査による骨折検出(BSFD;Boring survey based fracture detection)法を提案する.本手法では骨盤表面から深部にかけてボーリング調査を模して探索することで,骨表面に現れづらいFFP等に関しても差異を抽出できる.BSFD法は,初めにCT画像から骨盤表面を抽出する.次に,骨表面に直交した骨内部の四角柱を抽出する.四角柱内部は対応する箇所のCT値を有し,各骨表面の特徴を表現する.学習済み3次元畳み込みニューラルネットワークモデル(CNN)を用い,抽出した四角柱から骨折確率を予測する.これをすべての骨表面点に適用し,骨盤全体でFFPの自動検出を可能とする.本研究では,骨盤骨折を有する被験者110症例のデータを用いた.AUCは訓練データで0.84,評価データに対して0.77となった.さらに,予測した骨折確率は3次元データ上に表示することで,医師の診断補助が可能である.

  • 木村 正, 窪田 誠, 木原 匠, 服部 麻木, 鈴木 直樹, 斎藤 充
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 297
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    外反母趾足では,第1中足骨頭は回内位にあるとされ,術後の再発の原因としてこの回旋変形の矯正不足が挙げられる.しかし,第1足根中足関節の固定術を施行し,回旋を十分に矯正しても,再発する症例が散見する.我々は,外反母趾では,第1中足骨の回内や足部全体の回内と同時に,「第1中足骨自体の捻れが存在する」ためであると仮説を立てた.今回の研究の目的は,外反母趾と健常足の中足骨の捻れを3次元的に評価することである. 健常足10足,外反母趾足10足に対し,足部CTを撮影した. ICPアルゴリズムを用いて比較するために,健常足の中から無作為に選択したものを基準足と定めた.3次元画像を構築した後,基準足に被験者の第1中足骨の近位部35%と遠位部35%を近似的に重ね合わせた.基準足と遠位部の近位部に対する骨軸周りの回転角度を,第1中足骨の捻れ角と定義し,第2~5中足骨についても比較を行った.外反母趾足では,第1中足骨は健常足と比較して平均14°回内方向に捻れていた(p < 0.01).第2~5中足骨では有意差は認められなかった.本手法では,単純X線像などでは困難であった中足骨の捻れを3次元的に詳細に評価することができた.手術後に中足骨の回内が残存すると,外反母趾変形を再発させる可能性があり,矯正に際しては第1中足骨自体の捻れも考慮する必要があると考えた.我々は,この結果をもとに術中の回旋矯正を高める方法を改良し,実践している.

  • 山口 隼弥, 松延 佑将, 奥村 美紀, 池田 典昭, 徳安 達士
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 298
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    ご遺体の死因究明に画像診断を用いる死亡時画像診断(Autopsy imaging: Ai)は,日本のCT装置の普及率の高さも相まって多くの施設で実施されてきている.現在,生体のCT画像に対する臓器抽出に関する報告は多数あるが,Aiに対する報告は少ない.本研究は,特に死後変化が大きいとされる肺領域を対象とし,生体の領域抽出法がAiに適用可能か確認するとともに,Aiにおける肺野領域を緻密に抽出することを目的とする.肺領域の抽出には,3D U-Netを用いた.学習データは,[A]生体のCT画像55症例と,[B]生体のCT画像41症例に死後CT画像14症例を追加した2パターンを用意した.また,抽出精度はDICE係数を用いて評価した.DICE係数とは,0から1までの値をとり,抽出精度が高いほど高い値を示す.死後変化の小さいCT画像と死後変化の大きいCT画像に対して肺領域を抽出したところ,死後変化の小さい方では[A]0.79,[B]0.90,死後変化の大きい方では[A]0.69,[B]0.84であった.生体のCT画像のみを学習した[A]では,特に死後変化の大きなCT画像に対して精度よく抽出することが出来なかった.一方,変化の小さいCT画像,変化の大きいCT画像どちらに対しても[B]の方が精度よく抽出されていることが示され,学習データに死後CTを増やすことで死後変化に対応することが確認できた.

  • 牟田口 淳, 小田 昌宏, 小林 聡, 猪口 淳一, 森 健策, 江藤 正俊
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 299
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【背景】膀胱癌は経尿道手術後に再発が多い腫瘍であり、膀胱鏡での腫瘍の見落としが原因とされている。従来の白色光(WLI)に加え、NBIは腫瘍検出の精度が改善する報告があるが、検者の経験に依存するため、再現性・客観性が乏しいことが課題である。近年、客観的な診断ツールとして人工知能(AI)が活用されているが、膀胱鏡においてAIによる腫瘍検出の研究はあまり行われていない。今回、我々はWLI/NBI膀胱鏡画像を用いて、AIによる腫瘍検出の精度を検証した。【方法】2019年12月から2020年11月まで、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の際に、WLI/NBIを用いて観察を行った症例の手術動画から膀胱鏡画像を作成し、腫瘍を含む画像を腫瘍画像、腫瘍を含まない画像を正常画像と定義した。腫瘍画像を学習データ、テストデータに分類し、AIによる感度、特異度、陽性的中率を評価した。AIでの物体検出はtiny-YOLOを用い、医師個人のコンピューター上で環境構築を行った。【結果】腫瘍画像(WLI:809枚、NBI:684枚)をそれぞれtiny-YOLOで学習を行い、腫瘍画像(WLI:280枚、NBI:87枚)と正常画像(WLI:104枚、NBI:104枚)で精度検証を行った。AIによる物体検出の感度/特異度/陽性的中率は、WLIで84.6%/76.9%/90.8%、NBIで78.1%/97.1%/95.8%であった。【結論】膀胱鏡画像において、AIにより比較的良好に腫瘍検出が可能であった。更なる精度改善、リアルタイム検出への課題について、文献的考察を加え報告する。

  • 橋本 悠己, 川野 晃輔, 飯島 直也, 古居 彬, 島谷 康司, 辻 敏夫
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 300
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】自発運動の一種であるgeneral movements(GMs)は新生児の神経状態の正常・異常を評価することができ,神経学的検査と同等以上に障害の予後予測が可能とされているが,目視による長時間の観察を伴うため検査者の負担が大きい.そこで本稿では,撮影した動画像から深層学習に基づきGMsを定量評価・自動識別するシステムを提案する.【方法】提案法では,2つの畳み込みニューラルネットワークで構成されるtwo-stream CNNを用い,動画像から身体の位置や姿勢に関する空間的特徴量と運動に関する時間的特徴量をそれぞれ抽出する.得られた特徴量を結合し,リカレント型確率ニューラルネットワークに入力して各GMsの事後確率を推定することで,GMsの自動識別が可能となる.実験では,専門家により代表的な3種類のGMs(正常なGMs:writhing movements(WMs)35名,fidgety movements(FMs)38名;異常なGMs:poor repertoire of GMs(PR)27名)が確認された新生児100名を被験者とした.また,領域依存知識に基づいて設計された従来のGMs評価法と比較した.【結果】F値により識別性能を比較したところ,提案法は従来法よりも高精度にGMsを識別可能であることが確認された(従来法:0.62,提案法:0.70).【結論】two-stream CNNを用いて自発運動の空間的・時間的特徴を評価することがGMsの自動識別に有効であることを示した.

  • 村上 遥, 野田 明里, 森川 貴迪, 高野 正行, 尾上 恵美子, 柴原 孝彦, 星 和人, 松尾 豊
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 301
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    近年、深層学習により医療画像診断では精度が専門医を超える分野も出るほど、目覚ましい成果を上げている。しかし、現状画像診断が行われている医療画像はいずれも撮影機器や方法などが決められたフォーマットが整ったものである。口腔外科および歯科領域において最も頻繁に撮影されるのは、多様な種類の一眼レフカメラを用いた、撮影範囲、撮影角度、撮影条件、光量、画素数などが全く統一されていない撮影画像であり、フォーマットが整った医用画像に比べノイズが大きいものであるため、少数のデータセットでは診断精度の向上が難しいという問題がある。その中で、口腔画像は歯列や口腔内の状態から個人特定、健康状態の推定ができるという個人情報が多く含まれたものであるため現在オープンデータセットがなく、少数で精度を上げる工夫も必要である。本研究では撮影フォーマットのうち撮影機器が与える影響を検証するため、1.一眼レフカメラで撮影した画像と2.蛍光観察機器を用いて撮影した蛍光画像をそれぞれ1000件使い、CNNを用いたモデルで学習させた際精度等でどのような違いが出るのかを検証した。

  • Xiaoxi Zhou, Misato Shimizu, Takaaki Sugino, Toshihiro Kawase, Shinya ...
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 302
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    This study discusses mandibular-shape features specified on two-dimensional (2D) cephalograms and three-dimensional (3D) CT volumes. The feature points were specified on cephalograms with a house-developed software. Then, the points on frontal and lateral cephalograms were projected into the 3D space, which we had calibrated the imaging coordinate systems, and given 3D geometries. The calibration corrected geometrical incorrespondence between ear pads on the frontal and lateral images. The 3D point reconstruction was done considering projection scaling. In addition, 3D feature points were specified on the CT volumes. Then, we compared these three-type feature point sets for each mandibular landmark and tried to give them some clinical meanings. Comparison among the three point sets resulted that the 3D reconstruction with projection worked well and correctly provided the 3D geometries of feature points. As well, the difference between the 2D and 3D points showed some trends relative to the curvature of bone surfaces.

  • 梅本 朋幸, 平野 朝士, 岡安 健, 酒井 朋子, 笹野 哲郎
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 303
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    心不全を含む循環器病の患者にとって,心臓リハビリテーションは短期予後だけでなく長期予後を改善する報告があり,実臨床ではその重要性が認識されている.特に急性期のリハビリテーション施行時には,不整脈や血圧の変化,酸素飽和度の低下などのバイタルサインの変化が起こりやすく,医療従事者が患者の状態変化を注意深く観察しながら行う必要がある.しかしながら,患者の歩行状況を観察しつつ,バイタルサイン変化を同時に把握することは困難であるケースが多い.今回,我々は,患者の生体情報(酸素飽和度,脈拍数,心電図)をリアルタイムにモニタリングを行い,インターネット回線でサーバに保存し,ネット接続されたスマートグラスを用いて医療従事者がバイタルサイン変化を容易に把握できるシステムを開発した.このシステムにより,歩行中の患者の転倒リスクなどに注意を払いつつ,バイタルサインの変化を同時に把握することが可能になり,より安全な心臓リハビリテーション環境を提供することが可能になる.

  • 上村 和紀, 西川 拓也, 川田 徹, 鄭 燦, 李 梅花, 朔 啓太, 杉町 勝
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 304
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    周術期や集中治療における循環動態の把握のために、経食道エコードプラー(TED)による心拍出量(CO)モニターが行われ、患者成績の改善に貢献してきた。従来より、簡便に計測できる下行大動脈のTED血流速度信号をCOモニターに用いてきたが、大動脈断面積や上下半身の血流比が大きく変化すると不正確になるという問題があった。この問題を克服するため我々は、機械学習を応用した新たなTED COモニター法を開発した。開発した方法は、下行大動脈TED信号を末梢動脈血圧値による動脈断面積変化で補正した後、上下半身の血流比を機械学習(サポートベクターマシン)により補正しCO(COest)を推定する。麻酔下犬8頭において血行動態を広範に変化させた際に、COestをCOの絶対参照値(COref)と比較した。COestとCOrefの4象限解析法における相対的変化の一致率は93%であり、極座標解析法における相対的かつ絶対的変化の一致率は94%と良好であった。我々が開発した方法は、機械学習を利用することで極めて信頼しうるTED COモニターを可能にすると期待される。

  • 渡邉 綾, 山田 誉大, 渡辺 翔吾, 永岡 隆, 根本 充貴, 宮崎 晃一, 花岡 宏平, 甲斐田 勇人, 石井 一成, 木村 裕一
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 305
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    認知症CADでは、DLB, FTLDといった少数認知疾患に対する学習症例として使用できる数の確保が問題である。我々は、画像生成系の深層学習手法であるCycleGANを用いてPET画像を合成し、認知症CADへの学習データ加増の可能性を報告した(Kimura, Ann Nucl Med, 2020)。そこで本研究では、生成したPET画像と実画像の一致性を定量的に評価する。CycleGANを使用して再合成した画像と合成前の実画像に5箇所のROIを置き、その平均値の一致性を調べた。また、実用化する際、実画像と合成画像を混合して学習することを想定し、健常114例とアルツハイマー病82例を使用したロジスティック回帰による判別器の性能比較を行った。判別器のモデルは、十分な数の実画像、3例の実画像のみ、合成画像と実画像を混ぜたものの三種類を比較した。実画像と合成画像は、散布図及びBland-Altman解析において一致した(p<0.05)。また、判別器の性能比較を行ったところ、少数の実画像のみが76%、多数の実画像のみが94%、合成画像と実画像を混ぜたものが91%となった。CycleGANにより合成されたPET画像と実画像との一致性が認められ、合成画像による学習性能が実画像のものと同等まで改善したことから、CycleGANの認知症自動診断AIへの学習データ生成器としての可用性が示唆された。

  • 小松 陽子, 古賀 賀恵, 篠崎 亮, 清水 祐輔, 功刀 浩
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 306
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    加速度計と心拍計を備えたウェアラブル心拍センサを装着すれば、加速度から活動量や睡眠時間帯を推定することができ、R-R間隔から自律神経系活動の指標を求めることができる。うつ状態では活動量の低下や自律神経不全などを伴うことが報告されているため、ウェアラブル心拍センサを用いたうつ状態の客観的な評価が診断や経過判定等の支援に役立つことに期待が寄せられている。本研究では、ハミルトンうつ病評価尺度8点以上の気分障害患者53名(平均年齢39±12歳、双極性障害19, 大うつ病性障害34)と健常者58名(平均年齢36±12歳)を対象として、15時~連続3日間、ウェアラブル心拍センサ(myBeat WHS-1、ユニオンツール(株))を前胸部に装着させ、R-R間隔と加速度を測定した。加速度から推定した覚醒時間帯、睡眠時間帯ごとの心拍変動値、活動量をMann-Whitney 検定を用いて比較した。健常者群と比較して患者群は、どちらの時間帯もR-R間隔が短かく、睡眠時間帯において副交感神経系活動指標であるHFは抑制されていた。患者群の覚醒時間帯の活動量は小さかった。以上から、ウェアラブル心拍センサを用いて測定された覚醒時間帯、睡眠時間帯ごとの心拍変動や活動量が診断や経過判定のための客観的指標となる可能性が示唆された。本研究は国立精神神経医療研究センター倫理委員会の承認を得て行われ、被験者の研究参加に際しては書面での同意を得た。

  • 江 城, 鶴岡 典子, 芳賀 洋一
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 307
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    近年、体内の様々な部位に対し内視鏡手術が行われるようになった。内視鏡を使用した手技は体への負担をできるだけ少なくしながら、手術に匹敵する精密な手技を行えることから、術後の合併症を最低限に抑え、早期離床を可能にする。内視鏡の小型化、低侵襲化、高機能化・多機能化の需要が高まっていることから、本研究では内視鏡の挿入性や柔軟性などの既存の機能を損なわずに、内視鏡の先端部に実装可能な、内部に立体配線、電子部品を有した非平面微細部品の開発を目指す。本研究では、分解能が優れたフォトファブリケーション技術を利用し、付加機能の一例として、側面発光できる非平面微細部品の作製を行った。具体的には、切削加工で非平面の土台を作製し、その上に、エポキシ系永久レジストであるSU-8フィルム(日本化薬株式会社)の貼り付け、パターニング、電解めっきを行い積層することで、立体的な内部配線を形成し、側面にLED(Light Emitting Diode)を内蔵した。作製した非平面微細部品を模擬内視鏡に実装し、動作確認として、発光できることを確認した。今後、より小型で複雑な内部配線構造及び電子部品を有した高機能・多機能な部品を実現し、具体的に実現したい機能に適した非平面部品を作製し、より高機能・多機能な内視鏡、更に高機能・多機能なカテーテルを実現することで、患者及び医師の負担を低減できると期待される。

  • BOCHONG LI, Toshiya Nakaguchi, Yuichiro Yoshimura, Ping Xuan
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 308
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Prostate cancer is the second leading cause of cancer death in men. At present, the methods for classifying early cancer on MRI images are mainly focused on single image modality and with low robustness. Therefore, this paper focuses on the method of classifying prostate cancer grade on multi-modality MRI images and maintaining robustness. In this paper, we propose a novel and effective multi-modal convolutional neural network for discriminating prostate cancer clinical severity grade, i.e. robust multimodal feature disentanglement attention net(RMDANet), and greatly improve the accuracy and robustness. T2-weighted(T2) and Diffusion-weighted imaging(DWI) are mainly used in this article. Experiments were conducted on the ProstateX dataset and augmented with hospital data, By comparing with other baseline methods, multi-modal dual input methods, SOTA methods, the AUC values obtained by the proposed model in this paper after the test set are higher than those of other classical models, the AUC value reached 0.835.

  • 中前 有香子, 根本 充貴, 木村 裕一, 永岡 隆, 山田 誉大, 出口 龍良, 山下 真平, 柑本 康夫, 原 勲
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 309
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】結石治療術の中で人体への侵襲が最も低い体外衝撃波結石破砕術(ESWL)の治療結果を予測することは,臨床的に有意義である.本研究では,CT画像テクスチャ特徴量解析によるESWL治療結果予測法を提案する.【手法】本研究では,尿路結石を持つ症例171例の術前CT画像を用いる。うちESWL治療が成功したstone free (SF) 症例は97例である. 提案するSF症例分類法は,半自動抽出した結石領域内から測定される複数のCT画像テクスチャ特徴量の分析に基づいてSFか否かを識別するものである.今回用いる画像の特徴量セットは,結石の体積,結石領域内CT値の統計量6種,結石領域中心へのCT値勾配集中性を示す特徴量12種である.勾配集中性特徴量は,結石中心方向と結石領域内CT値勾配との重み付き偏角確率ヒストグラム各ビンの高さである.ビン幅は15度であり,ヒストグラム作成における重みは結石中心方向のCT値勾配強度とする.SF識別には放射状基底関数カーネルを適用したサポートベクターマシンを用いる. 【結果】5-fold 交差検証によりSF識別精度を評価したところ,識別精度は平均で56.8%であった. またROC曲線の下面積は0.612となった.この結果から提案法の有用性が確認された.【結論】今後の課題は,多様な特徴量の追加によって性能を向上させることである.

  • 長谷見 航平, 草野 紘平, 孫 光鎬, 阿部 重人, 松井 岳巳
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 310
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    COVID-19の蔓延防止のため,高精度な感染症スクリーニングシステムが求められている.空港検疫で用いられる体温は解熱剤服用などの影響を受けるため,体温に加え,全身性炎症反応症候群(SIRS)の診断項目である心拍数,呼吸数を非接触で計測して感染の有無を判定するシステムの開発を行ってきた(Sun G. et. al., Crit Care.2020).立位呼吸計測時の体動除去のため,Time-of-Flight(ToF)センサで求めた胸腹部動画像を6分割し,独立成分分析を行うことで, 呼吸運動と異なり周期性を持たない体動の影響を抑えた.健常な男子大学生6名に対し検証を行い,リファレンスとの相関係数0.86,二乗平均誤差1.98bpmとなり,高い精度を得た.心拍数はCCDカメラで求めた心拍に伴う顔の輝度変化より求めた.体温は研究室において前額に装着した熱流補償型・深部温度プローブで求めた前頭前野の温度を学習データとし,サーモグラフィーから求めた顔表面温度から前頭前野の温度を推定する手法を実装した.また実用性を高めるため,バイタルサインの基準値が異なる小児と大人を顔パーツ比から判定する機能,コロナ専用病棟で同一患者を毎日測定することを想定しQRコード認証機能を実装した.COVID-19の重症化原因の第2位である慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)のスクリーニングも可能なToFセンサ(Takamoto H. et. al., Front. Physiol.2020)を用いた提案システムは,コロナ専用病棟での試験運用を予定している.

  • 永岡 隆, 小塚 健倫, 根本 充貴, 波部 斉, 山田 誉大, 吉田 久, 木村 裕一, 石井 一成
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 311
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    現在においても、COVID-19の世界的な感染拡大は深刻な問題となっている。本報では胸部CT画像がCOVID-19性肺炎か否かを鑑別するための深層学習を用いたシステムKindAI-COVIDの開発について報告する。本システムでは多くの訓練画像を確保するため、CTのスライス画像毎にCOVID-19性肺炎か否かを判定することが特徴である。まず、診断に必要なスライスの範囲を読影医が指定する。次にU-netを用いて肺野が抽出される。深層学習による鑑別には、ImageNetで学習済みのGoogLeNetをfine-tuningしたものが用いられる。本研究では、近畿大学病院で撮影されたCOVID-19性肺炎患者39名の70検査、2925スライスと、非COVID患者91名の101検査、2311スライスのCTデータ(DICOM形式)を対象とする。スライスごとの正診率としては83.1%、各スライスの最頻値によって判定される検査ごとの正診率としては87.2%が得られた。比較的高い精度でCOVID-19性肺炎を診断することが可能であったことから、問題を診断に必要なスライスがCOVID-19性肺炎か否かに単純化したことや、訓練データ数を確保するためにスライス毎に訓練したことなどの有効性が確認された。

  • 神田 雅大, 大竹 裕介, 伊藤 諒, 小林 剛, 孫 光鎬, 箱崎 幸也, 松井 岳巳
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 312
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    世界で猛威を振るっているCOVID-19由来およびその他の肺炎の早期発見は、重症化や感染拡大を防ぐ観点から特に重要となる。そこで、肺炎の早期発見を目的としたリアルタイム肺炎モニターの開発と臨床応用を行った。提案システムは、ベッドのマットレス下に設置した体表面の振動を捉えることが可能な2台のマイクロ波ドップラーレーダーを用い、呼吸数、心拍数、心拍数変動指標HRVのうち副交感神経活性指標HFを求める。ナースステーションモニターには呼吸数や心拍数に加え、呼吸低下や心房細動、肺炎の発症を表示可能である。肺炎患者の多くは高齢者であり、安静時の呼吸数や心拍数の個人差が極めて大きく、個人に合わせたオーダーメイド型の判定アルゴリズムの構築が必須である。このため、呼吸数、心拍数、HFの急激な変化に着目し、過去10時間分の呼吸数、心拍数、HFを前半5時間と後半5時間の2群に分けた際の両群の重心間のマハラノビス平方距離の大きさと、前半5時間から後半5時間にかけて呼吸数と心拍数が増加し、HFが減少するとき、肺炎の疑いと表示するシステムを構築した。研究倫理委員会の承認を得た後、元気会横浜病院の入院患者20名(男性8名、女性12名、平均年齢74±14歳)を対象に肺炎スクリーニング精度検証を行った。20名中2名が検証期間中に肺炎を発症し、提案システムにより感度100%、陰性的中率100%の結果が得られた。

  • 神山 英昇, 北間 正崇, 清水 久恵, 山下 政司, 小島 洋一郎, 菊池 明泰, 清水 孝一
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 313
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    人工透析療法では,高流量での体外循環が必要となるため,動静脈を吻合した内シャントが一般的に不可欠である.しかしこの内シャントは,種々のストレスにより狭窄や閉塞を生じやすく日常的な管理が重要となる.これに対し我々は,近赤外光を用いた生体透視法により,非侵襲かつ定量的,簡易に内シャントの内径を観測可能な内シャント光イメージングの実現に向け検討を行ってきた.これが実現すると,血管内径の継続的な経過観察が可能となり,狭窄・閉塞の早期発見や長期管理につながる.これまでの検討では,生体模擬試料を用いた実験を通して提案手法の可能性を示してきた.しかし実際の臨床計測では,患者毎に前腕表面の状態が異なるため,撮影画像の品質は必ずしも一定ではない.また血管内壁境界を特定するためには,検出感度の更なる向上が望まれる.これらの対策として,本研究では差分原理を導入した.つまり,血液部と血管壁部の光吸収特性の差異に着目し,2波長で撮影した2画像間の輝度差分画像を求める.これにより,体表条件等の個体差は低減される.また,血液の吸光度差が大きい2波長を選択することにより,画像中の血管壁部と血液部の違いが強調される.局所的な血管狭窄を有する試料を対象に検証を繰り返した結果,血管径 2.0 mmであっても誤差20 %で狭窄部の内径計測が可能であった.これにより,臨床計測に利用可能な程度の内径計測精度が確認された.

  • MINGNAN HE, Mrio IWAI, Koichiro KOBAYASHI, Takaaki NISHINO, Reina WATA ...
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 314
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    Due to the labor shortage at Long-Term Care Health Facilities, the number of fall accidents is increasing at night. Therefore, to make up for labor shortages and assist with operations, it is necessary to construct a monitoring system that can detect the getting up action of the people requiring nursing care. So, in this study, we proposed a monitoring system that can detect the getting up using the infrared camera. As a verification result, we found that by using the near-infrared reflective sheet, it became easy to detect and track the actions and the features of the actions could be obtained. In addition, we proposed an algorithm that is a novel and specific to the body movement that proceeds to bed fall.

  • 伏木 涼馬, 秋山 庸子, 真鍋 勇一郎, 佐藤 文信, 藤田 和樹
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 315
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    運動器の障害の初期症状として「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と呼ばれる症状がある.ロコモの判定方法として,「ロコモ度テスト」という移動能力の定性的な目安があるが,安全性と簡易性に課題がある.そこで,本研究では移動能力を安全かつ簡易に評価するため,加速度センサーと機械学習を用いて,ロコモ度テストの前段階として,ロコモ度を判定する手法を開発することを目的とした.ここでは基礎的検討として,ロコモ該当の有無を安全かつ簡易に判別する機械学習モデルの開発を行った.機械学習で用いる独立変数の新規指標の検討のため,片脚立ちテスト,交互片脚立ちテストを行った.これらのテストの結果と,BMIや年齢などの被験者の情報を独立変数の候補とし,統計的手法である多変量ロジスティック回帰分析と機械学習の手法である勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree:GBDT)の2種類でロコモ該当の有無の予測を行った.その結果,GBDTの手法を用いた場合,判別的中率と,判別能の指標であるROC曲線下面積(Area Under the Curve:AUC)が我々の先行研究の性能を上回った.このことから,GBDTの手法がロコモ該当の有無の判別に有効であり,今後のデータの増加に伴って,さらに判別性能を向上できる可能性が示された.

  • 山口 明乃, 根本 充貴, 甲斐田 勇人, 木村 裕一, 永岡 隆 , 山田 誉大, 花岡 宏平, 北島 一宏, 槌谷 達也, 石井 一成
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 316
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】より少ない誤検出(FP)数でFDG-PET/CT画像上の骨転移を検出するための,2種類の教師無しAI異常検知によるカスケード型画素分類に基づいた骨転移自動検出手法を提案する。【手法】初めに,それぞれの骨画素に対して正常骨画素データからのマハラノビス距離を用いた線形的な異常検知処理を適用し,異常なCT値とSUVの画素値を持つ骨画素を粗抽出する。次に、各骨転移粗抽出画素について、one-class support vector machine (OCSVM)を用いた非線形的な異常検知処理を施す。OCSVMは、画像輝度値曲面の曲率などの7つの局所テクスチャ特徴量を用いて骨転移に類する画像パターンを強調した画像を作成する。最後に、得られた骨転移パターン強調画像の極大点を転移病変候補として検出する。【結果】19の骨転移病変を含む画像10症例を用いた実験の結果、骨転移の検出感度89.5 %のとき、過検出数は59.5個/症例であった。提案法によるFP数は、OCSVMによる異常検知処理のみ用いた場合の骨転移検出結果より、93.9 %減少してした。【結論】この結果より、提案手法の有効性が確認された。

  • 緒方 元気, 齋木 琢郎, 澤村 晴志朗, ラズビナ オリガ, 渡邉 航太, 加藤 理都, 浅井 開, 花輪 藍, 松本 吉史, 森山 雅人 ...
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 317
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    経口分子標的薬の抗がん剤は、従来の殺細胞薬に比べ毒性が軽微であるが、治療早期から有害事象が出現することがしばしばある。これらの薬剤は体表面積などによる投与量を調整せず、固定用量で投与される。一方、患者間の血漿中濃度の多様性や、濃度と治療効果・有害事象との関連が、近年、着目されている。これらの知見から、患者一人ひとりに対し、血漿薬物濃度に基づいて投与法を個別化・最適化する気運が高まっている。しかし、臨床現場での迅速かつ簡便な測定法が確立していない点が、ボトルネックである。そこで本研究では、この困難な課題の解決を志向した、計測系を構築した。センサには最先端のダイヤモンド電極を搭載した。標的薬物としてチロシンキナーゼ阻害薬パゾパニブを選択した。ここでは、採取したラット血漿に濃度の異なる分子標的薬を単独で添加し、測定法を検証した。その結果、推奨治療濃度域に対応しうる範囲の計測が可能であった。測定は約35秒で、サンプル処理を含む全工程が10分以内で完了した。次に、ラットにパゾパニブを経口投与したのちに採血し、同様の手順により血漿中濃度の経時変化を測定した。Tmaxは約4時間となり、先行研究と類似していた。さらに手のひらサイズの改良版デバイスも試作した。迅速、簡便、安価な本計測法の展開により、効果的かつ安心・安全な経口分子標的薬のテーラーメイド治療が可能になると期待される。

  • WU JIANI , 秋田 新介, 篠崎 真良, 中口 俊哉
    2021 年Annual59 巻Abstract 号 p. 318
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/17
    ジャーナル フリー

    本研究は,慢性下肢静脈不全の早期診断に向けた非侵襲的な静脈圧測定を目指している.慢性下肢静脈不全患者は、弁機能不全などにより筋ポンプ作用で収縮時に静脈血が逆方向にも駆出され、下肢静脈圧が正常人のように下降せず、高圧のままとなる.この高圧所見に着目し,非侵襲的な静脈圧測定に向けたペン型圧迫装置の開発と血管領域抽出法を検討した.先行研究として,超音波装置を使用した非侵襲的静脈圧測定法がある.先端に圧力計を付属した超音波プローブを使用し,皮下に存在する表在静脈の状態を観察する.圧迫装置により静脈を徐々に強く圧迫し,静脈が完全に押しつぶされた時の圧力を静脈圧として測定する.この装置はプローブと圧力計を一体化しているため,圧力計を取り換える場合プローブもあわせて変える必要があり,汎用性が低いという欠点がある.本研究では,圧力測定装置と超音波プローブを分離することで汎用性を高め,コスト低減を目指す.まず圧迫力を計測できるペン型圧迫装置を開発し,新しい非侵襲的静脈圧測定法を提案した.血管の状態から静脈圧を分析するため,超音波画像におけるリアルタイム血管領域抽出法を検討した.また,ペン型圧迫装置で計測した外部圧力と超音波画像を同期計測するシステムを開発した.実験として健常者で提案手法による静脈圧測定を行い,システムの安定性を確認した.

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