-
遠藤 達郎, 小林 奈緒, 川崎 大輝, 山田 大空, 末吉 健志, 久本 秀明
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
219
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
ナノメートルサイズの周期性で屈折率分布を有する光学素子であるフォトニック結晶は、周期や周辺屈折率分布が変化に依存した特定波長光を回折・反射させる特徴を有する。この特徴からフォトニック結晶は、センサとしての応用も可能である。これは、抗原抗体反応等種々の生化学反応によって誘起される周辺屈折率変化を光回折・反射ピーク/強度変化として測定するものである。しかしフォトニック結晶を用いたセンサは、これまで抗原抗体反応やDNAハイブリダイゼーション等の結合を検出することができているが、酵素反応を検出することは困難であった。これは酵素反応によって生成された生成物が試料溶液中へ拡散してしまい、周辺屈折率変化として測定することが困難であったためである。前述した課題を解決するため、本研究ではフォトニック結晶表面へ酵素含有刺激応答性ハイドロゲルを被覆させたハイブリッド構造を作製した。これは、刺激応答性ハイドロゲル内の酵素が反応し、ハイドロゲルが膨潤・収縮することによって誘起される屈折率変化を測定するものである。本研究では、酵素としてグルコース酸化酵素を含有させた刺激応答性ハイドロゲルを被覆させたハイブリッド構造を作製し、グルコースの検出・定量を試みたので報告する。
抄録全体を表示
-
Yuki Katanosaka
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
220
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
Mechanical forces provide essential information for homeostatic regulation and functional adaptation at the level of myocytes and hearts. Transient receptor potential cation channel vanilloid-family type 2 (TRPV2) is a candidate of myocyte mechanosensor. Here, we present an overview of current knowledge concerning the physiological and pathological role of TRPV2. With the use of temporary-controlled cardiac-specific TRPV2-deficient mice, we have revealed that TRPV2 is crucial for the maintenance of structure and function in adult mice. The elimination of TRPV2 from juveniles showed the reduction of IGF-1 receptor/PI3K/AKT pathway signaling, mild impairment of contractile function in adult stage, and less hypertrophy to pressure overload. In prolonged pressure-overload, the elimination of TRPV2 from smooth muscle cells significantly prevent the progression to heart failure. Thus, TRPV2 play and essential role in regulating fundamental cell functions such as contraction, differentiation to matured myocytes, coupling with neighbouring myocytes and remodelling to mechanical-road.
抄録全体を表示
-
須藤 亮, 池上 直希, 植林 葵, 山下 忠紘
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
221
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
グリオブラストーマは、致死率の高い悪性脳腫瘍である。間質流はがん細胞の浸潤調節因子の1つであることが知られているが、グリオーマ幹細胞とその子孫細胞で構成される不均一な細胞集団の浸潤に対する間質流の影響は明らかになっていない。そこで、本研究では間質流に誘起されるグリオーマ幹細胞の3次元的な浸潤のメカニズムを検討した。その結果、分化培養条件における細胞の浸潤および突起形成は、間質流の下流方向にのみ増強された。さらに、細胞外基質との接着関連分子の発現が上昇していることが明らかになった。また、Src阻害剤によって浸潤が有意に抑制されることを見出した。さらに、最近の研究において、腫瘍環境を模擬した間質流によってカルシウムシグナル伝達がメカノセンサーの下流で起こり、最終的に浸潤が促進されることを示唆する結果が得られている。これらの結果は、間質流によって誘起されるグリオーマの浸潤を阻害するための新しい治療戦略の開発において重要な知見となる。
抄録全体を表示
-
長瀬 美樹
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
222
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
腎糸球体ポドサイト障害は蛋白尿や糸球体硬化の病態において重要な役割を果たす。ポドサイトは血行動態に基づく機械的刺激を受けやすいが、そのメカノトランスダクション機構は十分解明されていない。本研究では、正常マウスにおけるメカノ感受性イオンチャネルPiezo1の発現と局在、および高血圧性腎硬化症モデルにおけるその変化を調べた。Piezo1は糸球体(ポドサイト、糸球体内皮細胞)、近位尿細管、遠位尿細管、集合管で発現していた。片腎摘・アルドステロン・食塩負荷マウスは高血圧、アルブミン尿、ポドサイト障害、糸球体硬化症を発症した。Piezo1の発現は、対照群と比較して、糸球体(ポドサイト、メサンギウム細胞)、尿細管細胞で増加していた。糸球体におけるPiezo1の過剰発現は、PAI-1、Sgk1遺伝子発現の誘導を伴っていた。次に、Piezo1を発現する培養ポドサイトを用いた検討を行った。ポドサイトに機械的伸展刺激を負荷すると、PAI-1、Sgk1の発現が上昇し、これらはGsMTx4によって抑制された。Piezo1アゴニストYoda1の投与は、ストレッチ刺激と同様の変化を生じ、それはYoda1特異的阻害薬Dooku1によって抑制された。以上より、高血圧性腎硬化症モデルや伸展負荷培養ポドサイトにおいて、メカニカルストレスによって引き起こされるポドサイト障害にPiezo1が関与する可能性が示唆された。
抄録全体を表示
-
青木 友浩
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
223
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
Intracranial aneurysm can cause a lethal subarachnoid hemorrhage as a major cause of it. Because intracranial aneurysms occur mainly at bifurcation sites of intracranial arteries, a specific hemodynamic force might regulate molecular events mediating the pathogenesis. Indeed, experimental studies have clarified the mutual interdependency among hemodynamic force, morphological changes and inflammation in the process leading to the initiation or the progression of the disease. High wall shear stress or mechanical stretch activates endothelial cells or adventitial fibroblasts to express chemoattractant for macrophages, respectively, and thus coordinately facilitates the migration of macrophages in situ. Also, significant low wall shear stress and turbulent flow loaded on the dome of lesions synergistically induces expressions of chemoattractants for macrophages from endothelial cells and sustains the infiltration to form macrophage-mediated inflammatory microenvironment. In addition, high wall shear stress loaded at the neck portion functions to form the intimal hyperplasia as another focus of inflammation.
抄録全体を表示
-
山本 希美子, 安藤 譲二
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
224
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
血管内皮細胞は血流や血圧に起因する力学的刺激であるせん断応力(shear stress)や伸展張力(stretch)を常に受けている。内皮細胞には力学的刺激をセンシングし、それを血行動態の情報として細胞内部に伝達(メカノトランスダクション)することで細胞応答を起こす働きがある。こうした内皮細胞の力学応答は循環系の恒常性の維持に重要な役割を果たすが、それが障害されると、高血圧、血栓症、粥状動脈硬化、動脈瘤等の心血管病の発生に繋がる。これまで、メカノトランスダクション機構の1つとして、内皮細胞からの内因性ATP放出と細胞膜に発現するATP作動性カチオンチャネルP2X4を介するカルシウム(Ca2+)シグナリングの存在を明らかにしてきた。内皮細胞にshear stressが作用するとATPが細胞外へ放出され、特に脂質ミクロドメインのカベオラから放出されたATPがP2X4を活性化することで、細胞外Ca2+の細胞内への流入が起こる。Ca2+シグナリングは血管内皮からの一酸化窒素産生を制御することで、血圧や血流依存性の血管拡張反応や血管のリモデリングなど、循環系の機能を調節する。最近、shear stress依存的に細胞膜コレステロールが減少すること、さらにそれに引き続いて、ミトコンドリアでATP産生し、カベオラからのATP産生を惹起することをライブイメージングで明らかにした。以上の結果から細胞膜メカノセンサーがATP代謝経路を修飾することで血管リモデリングを制御することが考えられる。
抄録全体を表示
-
小田 裕香子
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
225
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
タイトジャンクション(TJ)は、病原体の侵入や脱水を防ぐバリアとして働く。TJの破綻は、様々な炎症性の疾患を引き起こすことが知られる。しかしながら、TJが生体内でどのようにして形成されるかについてはほとんど不明である。最近我々は、マウス上皮・中皮組織由来の分泌液中にTJの形成を誘導する液性因子が存在することを発見した。さらに、この因子は新規ペプチド(JIP)であることを突き止め、その配列の同定に成功した。このペプチドJIPは細胞膜を貫通して機能することでTJを誘導することを見出した。また、DSS誘導性の腸炎モデルマウスを用いた実験から、JIPの投与によって腸炎が抑えられることを見出した。さらに、DSS誘導性腸炎に対してJIPの中和抗体を用いたところ、TJバリアの再構築が遅れることがわかった。これらの結果よりペプチドJIPは、生体組織由来の初めてのTJ形成誘導因子として炎症などに対する創薬に展開可能であると考えられた。
抄録全体を表示
-
中嶋 洋行, 望月 直樹
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
226
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
-
本藏 直樹
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
227
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
生物は食物を摂取することで栄養素を補給し生命を維持している。その吸収した栄養素を、全身に存在する細胞へ隈無く、また適切に運搬することが必須である。これを一手に担っているのが生体で唯一の物質輸送路、血管のネットワークである。すなわち血管を介した物質のやり取りが生命維持機構の根幹となり、それが崩壊すると個体の死を招く。本研究では、生体内の血管および組織を可視化し、血管からどのように栄養素が組織内の細胞に輸送され、その輸送の結果、変動する代謝活動を単一細胞ごとにリアルタイム計測する。これによって“いつ・どこで・どのように”エネルギーが消費され、細胞機能がどのように変動するのかを解明し、物質供給と生体細胞生理学の因果律を見いだす研究を提案し、その装置およびプレデータを提示し、議論をおこないたいと考えている。
抄録全体を表示
-
島本 勇太
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
228
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
Despite recent progress in elucidating cells' mechanical properties, how their internal structures, such as cytoskeletal networks and organelles, generate and respond to forces remains elusive. This is mainly due to difficulties in applying and measuring forces in the cells. Our lab tackles this challenge by using our biophysical micromanipulation expertise, integrating with biochemistry, engineering, and materials science. Using force-calibrated microneedles and Xenopus egg extracts, we have recently revealed that the meiotic spindle has a considerable mechanical heterogeneity originated from force-generating motor proteins, allowing us to explain how this dynamic structure controls its length while robustly exerting forces for chromosome segregation. Our microneedle-based approach also revealed the viscoelastic nature of human cell nuclei and its regulation by chromatin (e.g., via post-translational histone modifications). We anticipate that our tool is beneficial for examining other intracellular structures and establishing a quantitative understanding for designing and controlling cellular mechanics.
抄録全体を表示
-
橋本 謙, Yuu Usui, Yoshihiro Ujihara, Akira Hanashima, Satoshi Mohri
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
229
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
Postnatal loss of cardiomyocyte proliferation hinders heart regeneration in adults. We and others have shown that postnatal elevation in oxygen tension by the onset of breathing halts cardiomyocyte cell cycle. We explored the importance of hypoxic intrauterine environments and identified two genes, Fam64a and connectin Novex3, as a fetal-specific proliferation-promoting gene that contributed to adult heart regeneration. In addition, we set out to decipher the significance of this specialized environments from a variety of viewpoints including nutritional condition, placental regulation, and hemoglobin homeostasis. We propose a new concept that feto-placental system has been evolutionarily optimized to provide a strict low oxygen condition with minimum fluctuations in utero by using high oxygen affinity fetal hemoglobins as a buffer. Many organisms share the common feature of transition from low-to-high oxygen usage during ontogeny, which is linked to reduced regeneration. We will further discuss the oxygen-dependent phylogenetic tradeoffs between energy production and regeneration.
抄録全体を表示
-
奥田 覚
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
230
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
多数の細胞からなる組織の形作りは、生命における自己組織化現象の一つである。これまで、組織形成に関わる多くの分子が明らかにされてきた一方で、個々の分子の動態がどのように統合されて適切な組織の構造を形成するのかについては未知であった。組織形成には、細胞が生じるアクティブな力が重要な役割を果たしている。特に、複雑な器官の形態形成では、個々の細胞が組織全体の変形を感知し、空間スケールを超えて器官全体の構造を調節すると考えられる。このようなマルチスケールな現象を理解するため、我々は3次バーテックスモデルを用いた新しい計算力学手法を開発し、幹細胞オルガノイドの培養実験と組み合わせた多角的な解析を行ってきた。このアプローチにより、1細胞レベルにおいて多細胞の動態を定量的に予測し理解することが可能となった。本講演では、幹細胞から誘導した眼杯オルガノイドの形態形成おける力学フィードバック機構について議論したい。
抄録全体を表示
-
山城 義人
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
231
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
生体組織や細胞は、力学環境の認識(センシング)と応答(レスポンス)によってその機能を制御している。また、力学的な均衡がとれている状態をテンセグリティ(tensegrity, tension integrity)と呼び、テンセグリティの維持が生体組織の恒常性維持に必須である。生体の力学応答とそのテンセグリティを解明する学問として「メカノバイオロジー」が脚光を浴びているが、将来的な応用を見据えるのであれば、仕組みを理解するのみにとどまらず、その仕組みを制御する術の開発が必須である。本セッションでは、最先端のメカノバイオロジーを推進する研究者にご講演いただき、血管リモデリング、多視点イメージング、上皮バリア、心筋再生や力の動的ゆらぎに基づく数理モデル、力学感受メカニズムに焦点を当てた最新の話題を提供する。さらに、其々の研究者が考える、機能制御の方法論や医工学分野との連帯について議論する。会場の方々と共に多角的な視点から議論することを目指し、医工学の連帯が生まれるきっかけとなることを期待したい。
抄録全体を表示
-
小﨑 慶介
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
232
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
重度の肢体不自由のある子どもとその家族にとっての生活上の困難さは単に運動機能障害に止まるものではない。合併する疾患や障害(知的、視聴覚、音声言語・咀嚼、発達障害など)によって様々な内容と程度の困難さを呈する。しかし、たとえ障害が当初肢体不自由のみであったとしても、生じうる日常生活活動上の制約が本人や家族の社会参加の機会を日常的に制限し、結果として生じる経験不足から知的発達や対人コミュニケーション能力の発達を阻害する可能性がある。最近になって開発の進展が著しい各種の移動支援機器、コミュニケーション支援機器、入力支援機器などを、従来の制度運用上支給が認められてきた年齢よりも低年齢時から積極的に活用することにより、重度肢体不自由児の社会参加の機会が増加して従来よりも高い知的発達や対人コミュニケーション能力を獲得することが期待されている。これにより、当事者の意思決定支援が本人を取り巻く多くの関係者にとって容易になり、在宅生活を送ることを選択しやすくなるのではないだろうか?このような支援には、医療・福祉・教育・就労支援などの多角的な関わりが求められるが、2019年12月に施行された成育基本法がそのプラットフォームの役割を果たすものと期待される。また、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によってもたらされた「新しい生活様式」は、重度肢体不自由児とその家族に良くも悪くも様々な影響を及ぼしている。
抄録全体を表示
-
中川 誠司
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
233
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
聴覚は視覚と並んでコミュニケーションに重要な感覚であり,特に言語コミュニケーションにおいては主要な役割を果たす.とりわけ乳幼児期の聴覚環境は言語能力の発達に重要であり,乳幼児期に十分な聴覚情報が入力されない場合は,発話能力も十分に形成されないことが多い.一方,乳幼児においては成人と同様の手法による聴覚検査や聴覚補償が困難であり,独特の技術やノウハウが必要となる.本発表では,新生児や乳幼児を対象とした聴力スクリーニングや聴力検査の手法や,聴覚補償技術を紹介する.
抄録全体を表示
-
小谷 博子
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
234
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
近年、新生児医療の発展に伴い、NICU退院後も医療的ケアを必要とする子どもが増えており、その数は全国で約 2万人と推計されている。医療的ケアとは、人工呼吸器、気管切開、喀痰吸引、経鼻栄養等であり、通常医療行為として医師や看護師が行うべき処置を、日常生活の援助として家族が行う処置のことである。これまで医療的ケアを必要とする子どもたちが利用できる保育・教育サービスを提供する施設や機関は極めて少なく、保護者の個人的な努力と熱意によって、一部の子どもたちだけがその機会を得るに留まっていた。しかし2016年に児童福祉法が改正され、地方公共団体において、医療的ケア児の支援に関して保健、医療、障害福祉、保育、教育等の連携の一層の推進を図るよう努めることとなり、医療的ケア児の状況が大きく変化した。今後、保育園や学校の通園(学)において医療的ケア児の受け入れ体制の拡充により、医療機器を操作する非医療者(教員や保育士など)が増加していくと予想される。医療ケアにおいて、乳幼児と成人では処置の仕方が異なるケースや、処置を正しく行わないと効果がないばかりか、病状を悪化させてしまうこともあり、正しい知識と理解が必要である。非医療者のための研修はもちろんであるが、事故防止の観点からも小児用医療機器のユーザーインターフェースの標準化が期待される。本OSで医療的ケア児の支援に向けて育児工学ができることについて考えてゆきたい。
抄録全体を表示
-
伊藤 明良, 河合 秀紀, 黒木 裕士
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
235
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
再生医療技術の発展により、細胞移植治療を中心とした再生医療が患者に届き始めている。しかしながら、細胞等の移植だけでは十分な機能的回復には至らないことがあり、移植術前後のリハビリテーションの重要性が認識されてきている。そこで、再生治療効果とリハビリテーション治療効果を相乗させることで、組織再生および患者機能の最大化を目指す再生リハビリテーション分野が萌芽している。リハビリテーション介入法の一つとして、物理療法がある。物理療法とは、物理的なエネルギーを生体に作用させ、生体の神経生理学的反応や化学的反応を引き起こすことにより、損傷部の治癒促進や疼痛抑制および神経筋機能の賦活を促す治療法である。古来より火、水、風、光などの自然環境から受ける恩恵を利用してきた物理療法であるが、生体医工学分野の発展の恩恵を受け、現在では電気、磁気、音波などを利用した物理療法機器も広く用いられるようになった。物理療法の利点として、非侵襲的に定量的な物理的刺激を比較的深部組織まで届けられることが挙げられる。この利点を活用し、細胞移植術前後における物理療法が再生治療効果を高めることが示唆されている。本演題では、物理的刺激を活用した再生リハビリテーション研究について自験例を交えて概説し、生体医工学分野とリハビリテーション分野の連携強化の一助としたい。
抄録全体を表示
-
河合 秀紀, 伊藤 明良, 王 天舒, 黒木 裕士
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
236
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
末梢神経損傷は運動機能障害を引き起こし生活の質を低下させる。損傷した末梢神経は自己再生能をもつが、再生速度は1日に1-2mmと遅く、神経再支配が遅延すると筋や神経筋接合部の変性が原因となって運動機能回復は妨げられる。そのため、損傷後の末梢神経再生を促進させる治療方法の開発が必要である。末梢神経損傷に対する治療として、運動介入や物理的刺激を用いた介入は不動による筋萎縮や関節拘縮を予防するだけでなく、末梢神経再生や運動機能回復を促進することが報告されている。物理的刺激の中でも、超音波刺激は非侵襲的で痛みを生じない介入方法として注目されており、骨折治療をはじめとして臨床においても用いられている。損傷した末梢神経に対しても超音波刺激が再生を促進すると動物実験において認められているが、その刺激条件や介入時期といった末梢神経再生に最適な介入方法は明らかになっていない。更なる末梢神経再生促進のためにも最適な超音波刺激介入方法を解明する必要がある。我々は坐骨神経挫滅損傷モデルラットを用いて超音波刺激の強度や介入開始時期の検証研究を行ってきた。本演題では、末梢神経再生に最適な超音波刺激方法の開発に向けた研究結果を紹介する。
抄録全体を表示
-
喜屋武 弥, 伊藤 明良, 中川 泰彰, 向井 章悟, 黒木 裕士
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
237
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
変形性膝関節症(膝OA)は,膝関節軟骨および軟骨下骨の変性にはじまり,進行すると著しい運動機能低下をもたらす.そのため,早期の診断と適切な治療が重要である.早期の軟骨変性特徴としては,軟骨表層コラーゲン線維の配向度の変化や軟骨表面粗さの増大がみられる.軟骨下骨においては,変性とともに軟骨下骨プレートの厚さの変化,空孔率の増大といった骨形態変化が報告されている.我々は,超音波を用いてこうした軟骨および軟骨下骨変性の簡便な検出技術の確立を目指している.これまでに,人工関節置換手術で摘出される軟骨を用いたex vivo実験により,軟骨表面粗さおよびコラーゲン配向度と軟骨表面エコー振幅の関係を明らかにした.さらに,軟骨下骨の形態特徴と軟骨下骨エコーの空間分布から算出されるテクスチャ特徴量との関係を調査し,テクスチャ指標の有効性を見出した.In vivo評価においては,被験者間で異なる軟部組織での超音波減衰がエコー振幅に影響を与えることが課題となる.そこで,軟骨部エコー振幅を軟骨下骨からのエコー振幅で規格化し軟部組織の影響を低減することを試みた.関節鏡視下での直接的な軟骨変性評価と,軟部組織が介在する体表から取得したエコー指標との対比を行い,提案エコー指標の有効性について示した.本発表では,超音波を用いた変形性膝関節症評価についてのこれまでの取り組みと今後の課題について報告する.
抄録全体を表示
-
北岡 裕子, 緒方 健一
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
238
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
【背景】IPVは高速のジェット気流を高頻度で噴出する人工呼吸器の一種で1980年代にBirdによって開発された。近年は排痰補助装置として臨床的な有用性が認められているが、そのメカニズムはよくわかっていない。【方法】マウスピースを介して流出入する気流量を外付けの流量計(CITREX H5、 IMI社)で計測した。Kitaokaの4D肺モデルの口腔端から当該気流量を与えたときの流速分布を計算流体力学を用いて算出した(使用ソルバ:AcuSolve、Altair社製)。【結果】口腔端から流入したジェット気流は喉頭腔を経て気管に流入するまでに高速域が消失し、通常の吸気流と同様の流速分布になった。気管壁に沿った逆向きの流れは生じなかった。呼気流においては気道分岐の影響で、吸気流の分布とは全く異なる流速分布になった。このことが末梢気道から口側に向けて異物が輸送されるメカニズムの一つと考えられたが、IPVに特有ではない。IPVが他の高頻度換気と異なる点は、ジェット噴出中に呼気弁が閉鎖することであり、健常ボランティアの呼息中に呼気流が断続することを実測にて確かめた。【結論】装着者の呼息中に高頻度の微小咳嗽と類似の状態が外力によって生成され、数分間持続することで、肺末梢部の分泌物が中枢まで移動しうると考えられた。気流量をモニタして設定モードを調整することで、より効果的かつ安全な気道クリアランスが実現すると期待される。
抄録全体を表示
-
井上 翔太, 畠山 隼平, 青木 仁, 黒木 裕士, 新倉 隆宏, 大江 啓介, 福井 友章, 黒田 良祐, 秋末 敏宏, 森山 英樹
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
239
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
骨粗鬆症は閉経後の女性に高率に発症する。骨粗鬆症に起因する脆弱性骨折は、若年者の骨折よりも骨癒合に要する期間が長く、また生命予後にまで影響を及ぼす。超高齢社会の到来により、骨折患者数の増加が確実視されており、骨折の治癒期間短縮と根本的な原因である骨粗鬆症の革新的な治療法の開発が強く望まれている。我々は以前に、脊髄損傷後の過剰な筋収縮(痙縮)による骨に対する物理的な刺激、すなわちメカニカルストレスが骨形成を促進することを明らかにした(Calcif Tissue Int., 2017)。そこで、骨へメカニカルストレスを加えることで、骨粗鬆症と骨折の新規治療法の開発につながると着想した。その手段として超音波、拡散型体外衝撃波、電気刺激の3つの物理療法を活用し、動物実験にてそれらの治療効果を検討した。その結果、高強度の超音波と拡散型体外衝撃波が骨粗鬆症と骨折の治療に有効であることを見出した(Ann N Y Acad Sci., in press; Calcif Tissue Int., in press)。これらの治療法は、大腿骨や腰椎など骨折好発部位の骨粗鬆症を局所的に治療可能であり、さらに骨折の治癒を促進できる簡便で非侵襲的な医療技術となる可能性を秘めている。本発表では、これまでに我々が得た知見について、形態学的・組織学的・分子生物学的な観点から報告する。
抄録全体を表示
-
前重 伯壮
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
240
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
Ultrasound and electrical stimulation have been used for pressure ulcer healing, and the effects were reported in several original papers and systematic reviews. We investigated the effect of microcurrent stimulation on fibroblasts migration, and revealed the facilitatory effect of 100 uA as well as the therapeutic effect on pressure ulcer healing in pressure ulcer patients. Besides, we reported the therapeutic effect of ultrasound on pressure ulcer healing in a case series study, which was followed by RCT showing the significant facilitatory effect. Recently, we elucidated M1 gene inhibition (anti-inflammatory effect) in macrophages, typical innate immune cells by exosomes from cultured myofiber, and the facilitatory effects of ultrasound or electrical stimulation on exosome release from myofiber as well as the enhancement of M1 gene inhibition by ultrasound stimulation to myofiber. In future, immunoregulation by skeletal muscle stimulation using physical agents could be a key point to control tissue repairment and inflammation.
抄録全体を表示
-
下川 大輝, 植田 琢也
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
241
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
現在、機械学習・人工知能(AI)の医療分野への応用が急速に進んでいる。とりわけ医用画像診断領域は深層学習のひとつである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)との親和性が高く、画像認識や高画質化などへの積極的な導入が行われている。その一方で、高度なテクノロジーの技術面に囚われてしまうあまり、医療へ応用する本質を見失い研究の出口を見誤ってしまうというケースも散見されつつある。今後AIの臨床応用を考える際には、医療者・患者のニーズを解決するような研究デザインの設定がまずは重要ではないだろうか。そのためには、誰の、どんな課題を、どのように解決するのかという「デザイン思考」の考え方が有用だと考えられる。臨床学的視点を理解し、医療においてどのようなニーズが必要かを吟味したうえで、AIという圧倒的な技術が適合する領域を見つけていくことが重要となってくる。本講による、医療課題を正しくキュレーションし、AI解決まで正しくデザインされた研究の紹介が、今後の臨床課題を鮮やかに解決できるAI開発への道しるべとして一助となれば幸いである。
抄録全体を表示
-
平原 大助
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
242
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
【背景】MRI検査はコントラスト分解能に優れ、放射線被ばくがなく繰り返し検査可能であることから、確定診断に利用される重要な画像検査法である。MRI検査は放射線を利用した画像診断装置と比べて信号収集に時間を要することから、撮像時間を短くすることが難しく高いシグナルノイズ比の画像を取得するには長時間の撮像が必要となる。限られた医療資源を有効に活用するには、短時間で得られたノイズを含んだ画像からノイズを除去し診断可能な画像を短時間で提供することで実現する。【方法】MRI検査のDWIBS画像の516画像を対象とした.深層学習モデルはU-Netを利用し、ノイズ画像のみから学習しノイズ除去画像を推測するnoise2noiseと一般的に利用されるノイズがないきれいな教師画像を準備してノイズ除去画像を推測するnoise2clearの2モデルを使用した。モデルの訓練に456画像を用い、テストとして60画像を用いた。テスト画像におけるSSIM値で評価を行った。【結果】テスト画像におけるSSIMの結果は,ノイズあり画像SSIMの0.4が、noise2clearモデルでは0.804となり、noise2noiseモデルでは0.907となった。【結語】noise2clearでは事前に高品質の画像の教師データを大量に準備する必要があるが、noise2noiseではノイズを含んだ画像からノイズ成分を学習することでノイズ除去を行うが、MRI画像のDWIBS法の画像においてもノイズ除去を行うことが可能であった。
抄録全体を表示
-
菅野 彰剛, 大兼 幹彦, 藤原 耕輔, 松﨑 斉, 安藤 康夫, 中里 信和
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
243
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
【背景】従来の脳磁計は超伝導量子干渉素子(SQUID)を液体ヘリウム容器に格納する必要があり、センサと頭皮との距離が離れる欠点があった。我々は室温で体表に接した生体磁気計測を可能とすべく、トンネル磁気抵抗(TMR)素子を用いたセンサを開発し、すでに健常被験者における心磁図や脳磁図アルファ波の計測に成功している。今回、正中神経刺激による体性感覚誘発磁界の第1波N20mを再現性よく計測できたので報告する。【方法】健常被験者の左手首の正中神経刺激を、通常の臨床検査と同様に、持続時間は0.3 ms、刺激頻度は2.9 Hz、刺激強度は母指外転筋運動閾値の1.5倍で刺激した。磁気シールド室内で、1チャンネルのTMR素子(JST S-イノベプロジェクトで製作)と磁束集束構造を組み合わせた磁気センサを、被験者の右頭頂部に固定し、頭皮に水平な磁界成分を計測した。得られた信号は16ビットでサンプル周波数2,000HzにてA/D変換し、帯域フィルタ5-250Hzで処理後に、波形が明瞭になるまで合計1,000から5,000回の平均加算を行った。【結果】刺激から潜時約20msに頂点をもつ第1波と、その後の第2、第3波が明瞭に記録され、同一被験者でSQUID脳磁計にて測定した波形と同一成分と確認できた。【結語】今回の結果は、TMR脳磁計の実用化に大きく寄与するものと期待される。
抄録全体を表示
-
吉田 豊, 金子 格, 湯田 恵美
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
244
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
本研究では,遊園地アトラクションのVRを活用した高齢者の鼓膜温度,心拍変動,およびをPVT(Psychomotor Vigilance Task)により手足の反応時間を評価した。被験者は8名(男4名,女4名,75±7歳),視力は右0.6±0.3,左0.4±0.2である。VR活用前に手足のPVTをそれぞれ5分行い,安静5分を挟みアトラクションを3分30秒実施した。その後,安静5分,主観評価1分(SSQ),再度手足のPVTテストを行った。アトラクションはジェットコースター,回転ブランコ,回転カートでランダムに1回ずつ行う。実験中の姿勢は座位で,VRは無音とした。鼓膜温度時系列と拍動間隔時系列から30秒ごとに平均鼓膜温度と心拍変動指標を算出した。PVTの結果,回転ブランコ後の方が手の反応時間が有意に早くなった(P=0.023)。また,回転カート後の方が足の反応時間が有意に早くなった(P=0.034)。SSQの結果,ジェットコースター,回転ブランコ,回転カートの順で気持ち悪さに傾向が出た(P=0.084)。鼓膜温度と心拍変動ともに,3群間のアトラクションに対して有意差は認められなかった。鼓膜温度の時間変化は有意差が認められた(P=0.008)。ジェットコースターは鼓膜温度が激しく変化し,回転ブランコは徐々に鼓膜温度の上昇が観察された。回転カートは大きな変化は観察されなかった。
抄録全体を表示
-
早野 順一郎, Emi Yuda
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
245
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
Holter ECG is the most popular and successful wearable sensor, which records continuous ECG under daily activities. Many parameters, including heart rate variability (HRV), have been proposed to extract the various features contained in Holter ECG signals, but there would still be a lot of unused information. In 2010, we started the Holter ECG database construction project called the Allostatic State Mapping by Ambulatory ECG Repository (ALLSTAR) to mine and utilize the information of Holter ECG. So far, more than 600,000 Holter ECG data have been registered from all over Japan. Since the data collection period exceeded 10 years, we analyzed the changes in Japanese HRV over time in the past 10 years. After adjusting for the effects of age and season (month) and place (prefecture) of recoding, we observed slight but progressive shortening of mean N-N interval, increase in low-frequency power, and decrease in high-frequency power in both sexes.
抄録全体を表示
-
横山 仁史, 山脇 成人, 岡田 剛, 岡本 泰昌
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
246
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
新型コロナ感染症拡大は、従前から国家的社会課題であったうつ病や自殺などを増加させており、その脳科学に基づく治療法開発は喫緊の課題である。近年、fMRIなど脳機能解析研究により、うつ病の神経回路異常などの病態解明が進んでいる。演者らはうつ病患者のfMRI脳機能解析から、意欲低下に関連する背外側前頭前野(DLPFC)の機能低下、反芻症状(くよくよと反復考える)に関連する後部帯状回(PCC)の機能亢進を認め、これが抗うつ薬(SSRI)治療によって改善すること、およびDLPFC-PCCの機能的結合がうつ病のバイオマーカー候補となることを報告した。一方、DLPFCとPCCの機能が拮抗関係にあることに注目し、DLPFCを標的とするfMRIニューロフィードバック(NF)によりその活動を上昇させることで、PCC機能を抑制し、抗うつ作用があるかを調べるために探索的臨床試験を行った。その結果、抑うつ症状や反芻症状などが改善され、うつ病の非薬物治療法となりうることを示唆した。次に、より簡便で実用化可能なうつ病のNF治療開発のために、健常人を対象に、DLPFCを標的とするfNIRS-NFを行い、抑うつスコア(BDI)、反芻スコア(RRQ)の改善度、安全性およびNIRS-NF前後のfMRIによる脳機能変化を解析した。本セッションではこれらの研究成果を紹介するとともにfNIRSの将来展望について私見を述べる。
抄録全体を表示
-
田邊 宏樹
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
247
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
ヒトの社会性に関わる脳機能研究はこの20年の間に膨大な研究がなされ,次々とその神経基盤を明らかにしてきた。これらの研究のほとんどは当初から現在に至るまで個人の脳を対象としているが,一方コミュニケーション場面でのやりとりはリアルタイム性を持ちダイナミックで相互作用的である。その点重視する研究者を中心に,リアルな相互作用をしている複数の人間を対象としたハイパースキャン研究が急速に広まっている。そこで用いられる脳活動計測装置はMRIやMEGを含めさまざまであるが,最近では二者相互作用の実験環境を容易に構築できるNIRSやEEGを使った研究が爆発的に増加している。ただし,現状のハイパースキャン研究を一括りにはできず,むしろ研究が増えるにしたがって混迷しているようにも見える。その理由として,計測パラメータの時空間特性が大きく違いデータの持つ意味が異なること,さらに解析手法もバラバラで着目する点も異なり統一的な見解を得にくいこと,が挙げられる。そこで本演題では,まずそれぞれの脳機能計測装置を用いたハイパースキャン研究の現状を幾つか例を挙げて紹介し,次にこの研究領域の今後の展開について議論する。
抄録全体を表示
-
江田 英雄
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
248
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
近赤外分光法(NIRS)の1chの装置が製品化されたのは1990年代初頭であった。脳イメージングに使うNIRSは、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)と同様の名称として、fNIRSと呼ばれる。fNIRSのISO/IEC国際規格は、日本が主導して議論をすすめ2015年に発行された。本発表では、脳イメージングにあたってfNIRSのメリットを振り返るとともに、今後の課題をまとめる。
抄録全体を表示
-
谷川 ゆかり, 川口 拓之
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
249
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
fNIRS装置の安全と性能に関する国際規格:IEC/ISO80601-2-71:2015の開発において、装置の較正・性能検査法の確立は必要不可欠である。その較正・性能検査法の開発においては、定量性・再現性が必須である。一方で、生体は構造が複雑で、光学特性値の分布が一様ではなく分布があり、それを実現するのは非常に困難である。そこでfNIRS装置の国際規格の装置較正・性能検査法の開発においては、定量性・再現性を確保するため、生体組織と類似した光学特性を有する生体模擬試料(光学ファントム)が主として用いられてきた。我々のグループでは、定量的で再現性の高いfNIRS国際規格における光学ファントムの現状,将来展望について報告する.
抄録全体を表示
-
東 真弓
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
250
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose; SMBG)は、常に変動している血糖の高低を患者自身が知るだけでなく、収集したデータから血糖の変動パターンを把握し、血糖変動の要因(食事の量や質、タイミング、インスリン注射の種類や量、身体活動量など)を分析することで糖尿病治療に反映させることのできる管理方法である。従来は日本糖尿病協会が発行しているSMBG手帳(自己管理ノート)に測定した血糖値を手入力し、外来受診時には手帳に記載された血糖値を元に療養指導や治療の調整を行っていた。最近は、糖尿病に関するデータ管理を目的とした専用ソフトウェア(アプリ)が個人のスマートフォンで利用できるようになり、自社の管理アプリへ血糖測定結果を自動転送できる血糖測定器も登場した。これらの管理アプリでは血糖値だけでなく食事の写真や歩数なども同一画面でグラフ化できるようになっており、日常生活の振り返りが容易になった。服薬アラームやカーボカウントの計算など、様々な機能も搭載しており、個別の需要に応じた使い方ができる。クラウドサーバー上でデータ共有することも可能になっているので遠隔診療にも利用され始めている。インターネットテクノロジーを活用した糖尿病管理の現在について概説する。
抄録全体を表示
-
西村 亜希子
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
251
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
持続血糖モニター(Continuous glucose Monitoring: CGM)とは、センサーを皮下に留置することにより間質液中のグルコース濃度を24時間数日間に亘って5~15分おきに連続的にモニタリングする方法である。1999年に世界初のシステムが発売され、日本では2009年に使用が認可され、2010年に保険適用となった。現在使用できるCGMシステムは大きく分けて3種類あり、目的に応じて使い分ける必要がある。1つめは、レトロスペクティブCGMといわれるもので、主に検査目的で使用される。センサーを一定期間装着し、後から医療機関でデータの取り込みや解析を行うため、日常生活を反映したグルコースデータが得られやすくなる。2つめは、リアルタイムCGMといわれ、センサーから専用のデバイスやペアリングしたモバイル機器に5分ごとの測定値が自動送信、表示され、リアルタイムにグルコース値やその変化の速さと向き、更にグラフ化した過去数時間の変動を表示することができる。アラート機能を用いることで無自覚の低血糖や高血糖を警告することもできるため、安全な血糖管理に役立てることができる。3つめに、間歇スキャンCGMがあり、間質液中のグルコース濃度を15分おきに連続測定しセンサーキットに記録する。データは患者が専用のリーダーでスキャンした時のみ送信、表示され、アラート機能がない点でリアルタイムCGMと異なる。本セッションではそれぞれのCGMの特徴と臨床への応用について紹介する。
抄録全体を表示
-
廣田 勇士
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
252
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
インスリンポンプ療法(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion: CSII)は、携帯型のインスリン注入ポンプを用いて、インスリンを持続的に皮下に注入する治療法である。健常人のインスリン分泌パターンに近づけるように、基礎インスリンの設定を調整することが可能であり、主に1型糖尿病患者に対する治療法として用いられてきた。また食事前の追加インスリン投与を簡便に行うことができ、必要なインスリン量の自動計算機能も備わっている。様々な機能を用いて、生活パターンや食事内容にあわせたインスリン注入が可能となり、血糖コントロールの改善のみならず、患者のQOL改善に寄与することも知られている。一方で、カニューレ刺入部位の折れ曲がりなどの理由でインスリン注入が途切れると、容易にケトアシドーシスに陥るため、安全に使用するための知識を持っておくことも重要である。2015年には、持続血糖モニター(Continuous Glucose Monitoring: CGM)機能を併用するインスリンポンプ療法であるSensor Augmented Pump(SAP)療法が本邦でも可能となり、2018年には、予測低血糖自動停止機能(predictive low glucose management: PLGM )のあるSAP療法が可能となった。さらに日本初のパッチ式インスリンポンプが2018年に発売され、インスリンポンプ療法の選択肢が増えている。Artificial Pancreas(AP;人工膵臓)の実現を目標に、新たなインスリンポンプの開発はさらに進んでいる。
抄録全体を表示
-
原島 伸一
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
253
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
糖尿病薬物治療は進化を続け、経口薬では8系統、注射薬では2系統の製剤が開発されている。注射薬は、インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬に分けられ、インスリン治療は1型糖尿病では必須である。インスリンは100年前の1921年に発見され、すぐにウシの膵臓から抽出されたインスリンをヒトに試すことが始まった。多くの過程を経て、1983年には遺伝子工学によるヒトインスリン製剤が発売された。さらに、生理的インスリン分泌に近づけるよう、インスリンアナログ製剤が開発され、1996年から使用されるようになった。現在では、追加インスリンとして超速効型インスリン製剤が5種類、基礎インスリンとして5種類が使用可能であり、とくに後者で1日1回の注射で24時間作用する製剤は、持効型溶解インスリンと呼ばれている。一方、食事を摂ると主に小腸からインクレチンと呼ばれる消化管ホルモンが分泌される。インクレチンはGIPとGLP-1の2つがあり、主に血糖値依存的にインスリン分泌を促進する。2型糖尿病音治療では2005年からGLP-1受容体作動薬が使用され、2012年には週1回製剤が承認された。現在では、3種類の週1回型製剤が使用でき、一部は経口薬にもなっている。さらに、持効型溶解インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬製剤の配合注も登場し、2種類が上市されている。本セッションでは、それぞれの注射薬の特徴をまとめ、対象となる患者像や治療方法について紹介する。
抄録全体を表示
-
千草 義継
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
254
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
糖代謝異常合併妊娠では、妊娠中および分娩期の血糖コントロール不良によって、妊娠高血圧腎症、ケトアシドーシス、巨大児、胎児先天異常、子宮内胎児死亡などの深刻な母児合併症が生じる。特に分娩期(陣痛発来後)には血糖コントロールが不良になりやすく、母体の持続高血糖が胎児低酸素症、新生児低血糖を引き起こすため厳格な血糖コントロールが必要とされるが、その最適な血糖管理方法は定まっていない。これまで様々なインスリン製剤が開発されているが、糖代謝異常合併妊娠のなかでも1型糖尿病(type 1 diabetes mellitus: T1DM)合併妊娠の妊娠・分娩期血糖コントロールは今なお難渋を極めることが多く、重篤な母児の転帰をとることもある。近年、continuous glucose monitoring、sensor-augmented pumpといった機器がT1DM合併妊娠の妊娠・分娩期血糖管理に応用され、有効性が報告されつつある。さらに、closed-loopシステム(人工膵臓)を用いることでT1DM合併妊娠の管理に劇的な変化がもたらされようとしている。血糖管理機器の進化は目覚ましく、医工学の発展は、糖代謝異常合併妊娠における母児の予後改善に直結するといっても過言ではない。本セッションでは糖代謝異常合併、特にT1DM合併妊娠における妊娠・分娩期の血糖管理方法の現状と、最新の血糖管理機器の果たす役割および展望とを概説したい。
抄録全体を表示
-
中島 義和, Takaaki SUGINO, Toshihiro KAWASE, Shinya ONOGI, Masumi AI
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
255
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
We have been developing artificial intelligence (AI) systems for medicine. Our university, Tokyo Medical and Dental University, launched AI Hospital Development Unit in our Medical Innovation Consortium in 2018. It might be an advanced organization for the collaboration between medical engineering and clinic. The AI systems we have developed consist of inductive, deductive, and abductive inferences. Inductive inference includes statistics and deep neural networks, which might be the systems capturing frequently-occurred data patterns. Deductive inference has the capability to integrate their tasks with theoretical manners. Abductive inference is needed to integrate the knowledge, which was stored with inductive and deductive inferences, and the measures of patients. Our systems direct to be integrated monolithically and work cooperatively, which we call intelligently orchestrating network of AIs (iON-AI). We will present these AIs and their feasibility with practical evidence.
抄録全体を表示
-
小田 昌宏
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
256
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
深層学習は医用画像処理において重要な手法の一つとなった.医用画像処理に含まれる画像分類,検出,セグメンテーションにおいては深層学習が多くの問題を解決し,高い成果を挙げている.画像モダリティに着目すると,眼底画像や放射線画像を対象とした深層学習の適用例が多く,実用化レベルに達したものもある.本発表では,手法や画像モダリティの面から深層学習を用いた医用画像処理を概観し,応用例を紹介する.また,深層学習の新たな応用についても紹介する.深層学習は画像に限らず様々なデータを説明変数と目的変数とすることが可能である.この性質を利用し,画像,テキスト,センサ計測データ等を用いる新たな手法を構築できる.応用例と共に深層学習の新たな可能性について考える.
抄録全体を表示
-
徳安 達士, 松延 佑将, 篠塚 賢一, 上山 都士也, 坂口 誠一郎, 石掛 真人, 江部 康平, 中沼 寛明, 藤永 淳郎, 白坂 美哲 ...
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
257
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
腹腔鏡下胆嚢摘出術における胆道損傷の原因究明あるいは予防策については,今日までの約30年間に亘って多くの議論がなされてきた.2018年9月には,日本医療安全調査機構が同手術における死亡事例の分析結果をまとめ,医療事故の再発防止に向けた提言を発した.その中で,同機構は同手術では良好な視野を保ち,解剖学的構造を認識しながらCritical View of Safetyの確認を求めている.しかしながら,胆道損傷の主な要因には,術者らによる解剖学的構造の誤認が考えられることも報告されている.人間の認知メカニズムにおいては,目で見た情報は過去の体験や記憶と照合され,ものとして認知される.また,私たちは一度認知した情報が誤りであったとしても,他者からの介入なしに,認知情報を改めることは難しい.そこで我々は,胆道損傷の回避に有効な解剖学的ランドマークを正確に認知する熟練外科医の暗黙知をデータ化し,これを人工知能に学習させた.講演では,同システムの概略および臨床性能試験などを通して我々が得たいくつかの知見について報告する.
抄録全体を表示
-
菅野 貴皓, 八島 嘉希, 宮嵜 哲郎, 川瀬 利弘, 曽我部 舞奈, 川嶋 健嗣
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
258
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
次世代手術ロボットに求められる機能として、ナビゲーション機能、複数台の協調、自動手術などが挙げられる。これらの機能を実現するためには、体内に挿入された手術器具の位置を正確に計測する必要がある。現在の手術ロボットでは、手術器具の先端の位置はロボットに内蔵されたエンコーダによって計測することが可能である。しかしながら、ロボット用の手術器具は直径10mm以下、長さ300mm以上であり一般的に剛性が低いため、器具の変形による先端位置の誤差が生じてしまう。また、手術ロボットは必ずしも全ての器具がロボット化されているとは限らず、助手が従来の手術器具を使って作業を補助することも多く、このような場合には全ての器具の位置をロボットで認識することができない。本研究では、画像処理を用いた手術器具の先端位置をリアルタイム認識する手法を開発する。本手法では、内視鏡画像とUnityで生成した仮想画像を比較し、それぞれの画像に含まれている器具の位置の誤差が小さくなるように仮想画像側に補正をかける。高速な画像処理を実現するために、まず内視鏡画像と仮想画像をそれぞれ二値化し、輪郭抽出を行う。仮想画像の補正には繰り返し計算を行い、内視鏡画像と仮想画像の輪郭の誤差評価値が収束するまで計算を続ける。
抄録全体を表示
-
鈴木 賢人, サントス ルチアーノ, 劉 暢, 植嶋 大晃, 山本 豪志朗, 岡橋 さやか, 平木 秀輔, 杉山 治, 岡本 和也, 黒田 ...
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
259
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
上肢機能のリハビリテーションにおいて、従来の評価指標は評価の粒度が大きく、評価の得点から患者の正確な症状を把握することは困難である。従来より画像処理に基づく手法は提案されているが、上肢機能のリハビリテーションに特化した定量評価手法の確立には至っていない。そこで本研究は、患者の上肢運動を撮影した映像に対して骨格推定に基づく動作解析を行い、上肢機能評価のための定量的指標の導入を目的とする。提案手法ではまず、対象動作のRGBカメラ映像に姿勢推定を用いて骨格情報を抽出する。次に関節の回転系を用いて体幹の傾きなどを測定し、代償動作を数値化する評価モデルを作成する。実験では、脳卒中の後遺症を持つ患者の上肢機能に対する評価方法であるARAT(Action Research Arm Test)のうち、サブテストの一種である「Grasp動作 (物を掴んで持ち上げ、台に乗せる動作) 」を対象とした。代償動作の度合いが異なる動作を療法士に行ってもらい、従来の評価では等しい得点である動作をより細やかに評価することを試みた。その結果、代償動作が存在する動きと、そうでない動きを分類することができた。また、従来のARATでは同じ評価の動作に対し、代償動作である体幹の傾きの度合いを定量的に評価することができた。
抄録全体を表示
-
南 征吾, 小林 隆司, 青山 朋樹
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
260
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
作業療法士の場面で、様々な先端機器が、評価や治療、生活支援などに使われつつある。しかし、機器のみで療法は完結せず、対象者の生活に役立つ技術としてそれを役立てる技術が必要である。本報告は、人(合目的的活動)とモノ(電気刺激装置)をむすぶための情報通信技術を作業療法でどのように用いていくかについて報告する。我々は、対象者を捉える作業療法の推論を整理し電気刺激装置の活用方法を検討した。作業療法の実践のポイントは、対象者の動機を高める価値や興味から導き出された合目的的活動だと考えた。その動作の一部を電気刺激装置によって促通することで、対象者の生活適応力を高めた。このプログラムを合目的的電気刺激療法(PA-EST:purposeful activity-based electrical stimulation therapy)とした。PA-ESTは、慢性重度片麻痺を患った対象者に、生活適応力を高める効果があった。一方、様々な入力信号(関節角度、筋電、音声、位置情報、加速度等)を受け取り解析し、生活の文脈の中で自然な出力を発揮するような電気刺激装置は見当たらないこともわかった。そこで、人とモノを結ぶための情報通信技術を活用し、対象者の生活行為を高める機器開発を進めている。作業療法の実践技術をICTによってさらに高め、対象者の生活行為の拡大の一助にしたい。
抄録全体を表示
-
坂本 憲太, 橋本 晋吾, 田口 周, 長谷 公隆
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
261
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
認知機能評価および訓練を行うための机上課題は、50年ほど前から変化せず、紙面を利用したものがほとんどである。それゆえ臨床現場では拒絶されることも少なくない。仮想現実を用いた課題提供の優位性は明白であり、モチベーションの維持に加え、有効性においても示唆されてきた。株式会社テクリコは関西医科大学との共同研究によって、複合現実(Mixed Reality, 以下MR)技術による認知課題の開発に取り組んできた。現在はこれまでの研究を生かし最新HMDであるMicrosoft社のHoloLens2での適応を行っている。臨床現場で使用されているTrail Making Testを模して作成した数字抹消課題やデュアルタスクが可能な花道課題、日常生活を取り入れた物探し課題などを作成した。抹消方法も臨床現場で使用しやすいように工夫した。オブジェクトをHMDの正中にカーソルを置くヘッドトラッキング、眼球運動によるカーソル移動が可能なアイトラッキングを利用し、タップ操作に加え注視での選択、ハンドトラッキング機能を利用した「触わる」「つまむ」方法も可能にした。課題実行中の患者の1人称視点(現実空間および仮想現実オブジェクト)を施術者のPCに映し出すことで、患者に助言による指示が入っているのかどうかがリアルタイムでわかるため、アセスメントの補助としても使用できる。
抄録全体を表示
-
大山 潤爾
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
262
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
著者らは、高齢者や障害者にとってアクセシブルな情報デザインの国際標準規格の制定に貢献してきたが、こうした研究には、生活の個別具体的な文脈におけるニーズを考慮することは難しかった。近年、VR(Virtual Reality)を用いて、生活場面を仮想空間に再現し、行動やトレーニングの評価を行う研究が提案されてきた。こうした背景から、本研究では、生活の多くの場面を1つの共通プラットフォーム上でノーコードで開発できる汎用的なマルチモーダルインタラクション実験プラットフォームXperigrapherを提案し、開発したプラットフォームの機能と構造について説明するとともに、プラットフォームで実現できる生活文脈コンテンツの例を示した。COVID-19のパンデミックにより、接触を極力減らすことが求められている社会状況において、本プラットフォームのように、物や他者とのインタラクションを仮想空間でシミュレーションできるサイバー・ソーシャル・ラボ研究手法への需要は、さらに高まると予想される。
抄録全体を表示
-
精山 明敏, Tatsuro Miura, Sayaka Okahashi, Nami Konishi, Cassim Monte
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
263
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
The verbal fluency task (VFT) coupled with near infrared spectroscopy (NIRS) measurement is often used to test cognitive function in elders. However, in NIRS, overlapping of oxygenated hemoglobin concentration in the scalp (δ[oxy-Hb]s) on that of the cortex (δ[oxy-Hb]c) is unavoidable. To better understand effects of δ[oxy-Hb]s on δ[oxy-Hb]c and cortical response per se, this investigation divided δ[oxy-Hb]s and δ[oxy-Hb]c using the hemodynamic separation (HMDS) method, obtaining the following results. 1) the integrated value of δ[oxy-Hb]s during the VFT is three times larger than that of δ[oxy-Hb]c; 2) values of δ[oxy-Hb]c of 11 target males ranged between 0 - 100 mMmm, but that for 14 females was -100 - 100 mMmm; 3) the values ofδ[oxy-Hb]c obtained from 20's showed a tendency towards large deviation compared to other cohorts. These results suggest that NIRS using HMDS is a powerful tool to investigate the human brain function.
抄録全体を表示
-
中尾 恵
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
264
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
データに基づいて生体情報を読み解く方法として深層学習やスパース再構成は広く研究されている.一方,撮像対象が部分的にしか観測できない場合や,少ない学習データしか利用可能でない場合の予測など未探索な研究課題が多く存在する.本発表では,非観測領域の生体画像情報を統計的に再構成する方法を紹介する。生体臓器が持つ統計的性質に基づいて少ないデータから臓器形状や腫瘍位置を予測する試みとその外科手術や放射線治療への応用事例について触れる.
抄録全体を表示
-
武 淑瓊
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
265
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
Obtaining intrafraction 3D organ information is important to localize tumor positions. However, CT (computed tomography) scanning is difficult during beam delivery. Recently, planning CT and cone beam CT prior to beam delivery were used to localize the 3D positions of tumors. Nevertheless, the accuracy of information from planning CT declines when organ deformation exists, and the cone beam CT prior to beam delivery often suffers from artifacts. To address the issue, we propose a parallel U-net architecture, which can achieve super-resolution reconstruction for CT data in the longitudinal direction. The proposed method can also be used to reconstruct 3D CT data from multi-view X-ray images. In super-resolution reconstruction, multiple middle slices are reconstructed from each pair of adjacent slices. In from-2D-to-3D reconstruction, we first interpolate X-ray images from 60 views (every 6 degree) to 720 views (every 0.5 degree), and then reconstruct 3D CT from X-ray images of 720 views.
抄録全体を表示
-
中村 光宏
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
266
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
放射線治療とは,がん細胞と正常細胞の放射線感受性の差を利用して,病変に放射線を照射する治療法である.近年,病変に対して放射線量集中性を高めると同時に,周辺臓器への放射線量低減を可能とする高精度放射線治療が臨床現場で普及している.高精度照射技術を用いる場合,治療計画や品質保証に要する期間を考慮して治療数日前にCT画像を撮影し,治療計画を作成する.ここで治療計画とは,専用のソフトウェアを用いてCT画像から病変と周辺臓器を同定し,それらの空間的位置関係を勘案して,病変に対する照射方向・放射線出力・照射野形状を決定する工程のことを指し,CT値に応じて体内線量分布が計算される.放射線治療装置の高精度化に伴い,計画通りに放射線を照射することが可能になったが,呼吸や腸管蠕動などの影響により体内臓器の状態は時々刻々と変化するため,体内で吸収される放射線量は計画通りにはならない.現在,本学情報学研究科と共同で,放射線治療の各工程に潜む問題点を抽出し,従来の放射線治療の在り方を変えるような取り組みを行っている.本講演では,その成果の一部を紹介する.
抄録全体を表示
-
中井 唱, 國政 裕太, 後藤 知伸
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
267
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
細菌は細胞内に化学物質の受容体を持ち、特定の化学物質の周りに集まる、あるいは遠ざかる性質(走化性)を持つ。べん毛を回転させ遊泳する細菌においては、好ましい環境に向かっている場合は遊泳を続け、そうでない場合は方向転換を行うことで走化性を示す。著者らはこの挙動について、バイアス付きランダムウォークに基づく数理モデルによる予測を行ってきた。本研究では様々な細菌や誘引物質について走化性の観察を行い、モデルの妥当性を検証する。数理モデルにおいて細菌は単位時間に一定距離を移動するが、その移動方向に応じて次の1ステップの行動(直進遊泳/方向転換)が変化する。誘引物質の低濃度側に向かう時は次のステップでは必ず方向転換し、誘引物質の高濃度側に向かう時にはある確率で同じ方向に直進遊泳を続ける。この遊泳を続ける確率を走化性の強さと規定する。空間中の1点から誘引物質が拡散する状況での数値解析では、細菌の空間分布が走化性強さに応じて大きく変化することが分かっており、同様な状況の観測により走化性の強さが計測可能となる。毛細管内に誘引物質(L-セリン)を充填し、先端から拡散するセリンへの細菌の集積度合を計測した。走化性の強さは、セリンの濃度によらずほぼ一定となった。また、前進・後退を繰り返すビブリオ菌と方向転換の向きがランダムなサルモネラ菌とでは、ビブリオ菌の方が短時間で集積することが分かった。
抄録全体を表示
-
井上 敬介, 平田 智之, 佐伯 壮一, 塚原 義人
2021 年Annual59 巻Abstract 号 p.
268
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/17
ジャーナル
フリー
軟骨は自己治癒が困難な組織であり近年,自家培養軟骨の移植による変形性膝関節症(OA)の再生治療が急激に発展してきているが,移植予後における診断法の確立がなされていない現状にある.移植後の組織定着においては,炎症反応等による初期OAと類似した状態とも考えられ,その診断法の確立は重要である.本研究では,ドップラーOCT(OCDV)による組織内透水性評価に基づいた初期OA診断法を提案し,臨床用に実装化するための関節内視鏡診断システム(A-OCDV)を開発し,その妥当性について検討を行う.圧縮試験機を用いて採取したブタ軟骨をサンプルとして,関節内視鏡を用いて応力緩和試験を行い,軟骨内部組織の同一位置における低コヒーレンス干渉信号を連続断層検出した.更に,ドップラー変調周波数を断層検出し,組織変位と軟骨水流動速度の断層可視化を行った.比較対象としてコラゲナーゼ酵素処理を2時間施した模擬変性軟骨を適用した.この結果,模擬変性軟骨では正常軟骨と比較して圧縮中の組織変位およびドップラー速度が大きく,軟骨組織の弾性破綻が検出された.緩和中の正常軟骨では,ドップラー速度がほとんど検出されないのに対し,模擬変性軟骨では長時間に渡って検出されることから,軟骨水の組織内流動が活発であることが検出されたこれにより,透水性評価に基づいたA-OCDVを用いた診断が可能であると示唆された
抄録全体を表示