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藤生 克仁
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
140_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
心筋梗塞、心房細動などの心疾患は突然発症し、最終的には心臓から血液を全身に送り出せなくなる心不全に至り死に至る。これらの疾患は一度発症すると突然死してしまうものや、不可逆的なダメージが発生することも多い。そのため、これらの疾患を早期に発見し、早期に対応することが重要であるが、それは現時点では困難である。我々は様々な生体情報を用いて、心臓病の危険因子である高血圧や糖尿病などを早期に検出したり、心不全の程度を早期に検出する方法を検討している。今回は、スペクトルカメラを用いた非接触検査による高血圧、糖尿病の早期検出や在宅の心電図から心不全を早期に検出するアルゴリズムを紹介する。
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芦原 貴司
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
141_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
心房細動は,わが国だけでも患者数が100万人を超えるほどに有病率が高く,脳梗塞や心不全の主な原因とされる.持続性の低い発作性心房細動には,カテーテルアブレーションによる肺静脈隔離術が標準術式で第1選択とされるが,持続性の高い非発作性心房細動には,それでは不十分で,追加的に行うべき術式も確立していない.そのような状況で,我々はこれまで臨床不整脈映像化システムExTRa Mappingを開発し臨床応用してきた.ExTRa Mappingは,心臓内に挿入した多電極カテーテルで記録した心内心電図に基づき,失われた心臓電気生理学的情報をin silicoで時空間補間することで,非発作性心房細動における複雑な興奮伝播様式をオンラインかつリアルタイムで映像化するものである.本システムの実臨床への導入により,心房細動の持続機序である機能的興奮旋回ローターの動態や心房内分布が患者毎に異なるためテーラーメイド治療が必要であること,いわゆる低出力短時間高周波アブレーションにより,ローター制御が長期的な治療予後に追加的効果を示すことなどが徐々に明らかとなった.本講演では,ExTRa Mappingの開発後,この10年において非発作性心房細動そのものの理解がどのように変化し,それに対するアブレーションの戦略がどのように理解されるようになったのか,その変遷について概説したい.
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西川 拓也
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
141_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
循環動態―心臓と血管が織り成す、血圧や心拍出量などの物理的現象―は、私たちの生命を支える基盤である。これらの動態は心臓の収縮性や血管の抵抗といった生理的性質によって制御され、その複雑さは従来の手法では完全には理解しづらい。しかし、制御工学の視点を取り入れることで、この複雑なシステムを新たな目で見ることが可能になる。
我々は、循環生理学の巨人であるACガイトンの循環モデルを発展させることにより、循環動態の包括的なモデル化を行い、大動物を用いた実験によりモデルの妥当性を確認してきた。この進歩により、心血管作動薬の投与や機械的補助循環を含む臨床治療を、精度と速度をもって自動制御することが可能となった。これは、循環動態の負帰還制御を通じて達成されるもので、β遮断薬の安全な投与や機械的補助循環流量最適化による心臓の酸素需給バランスの改善など、具体的な臨床的課題に対応する自動循環管理システムを実現した。
この企画セッションでは、循環生理学と制御工学を融合し、臨床課題の解決を目指す研究の紹介を行う。私たちの取り組みは、循環動態を迅速、厳密、かつ安全に管理する新たな自動循環管理システムの開発につながり、このシステムは臨床現場での課題に対して革新的な解決策を提供する可能性を秘めている。私たちの研究が、循環動態管理の未来を形作る一石となることを願っている。
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網野 真理, 株木 重人, 国枝 悦夫, 橋本 順, 山下 高史, 柳下 敦彦, 伊苅 裕二, 下川 卓志, 吉岡 公一郎
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
142_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
心臓突然死の要因となる心室頻拍(VT) に対する治療は、抗不整脈薬、植え込み型除細動器、高周波カテーテルアブレーション(RFCA)の3つが主体である。従来治療に治療抵抗性の患者に対する救済治療として心臓定位放射線治療 (Cardiac-SBRT) の手法が2017年にワシントン大学から報告され (NEJM)、米国と欧州を中心に症例数が蓄積されてきた。米国では現在, RFCAとCardiac-SBRTを直接比較する治験が開始されている。欧州では10億円相当の研究費を有した “STOP STROM” と呼ばれる多施設研究プロジェクトに8カ国30施設が参加している。残念ながらアジアおよび我が国の大幅な研究立ち遅れは否めない。
治療の実際は、心電図情報とCT, SPECTなどの画像データを使用して治療計画を作成し、体外から心臓局所に放射線照射を行う。諸外国の臨床研究をまとめたメタアナリシスでは、治療後6か月間のVT抑制率は92%, 1年後の生存率は82%と優れている。照射時間は10分程度と低侵襲性であり、疼痛などの苦痛も生じない。いっぽう、ターゲット設定に関する医師間のVTターゲットの描写にばらつきが多く、基本的ワークフローを用いたターゲティングの標準化が喫緊の課題となっている。ひとつの要因として、放射線腫瘍医にとっては体軸断面CT撮像が一般的であり、循環器内科医は心軸断面像での評価が見慣れていることから、解剖学的オリエンテーションのすり合わせに困難を生じていることが挙げられる。われわれは心臓核医学とCTの同時撮影によりこうした問題点の糸口を提案したい。
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平田 雅之, 鈴木 隆文, 海住 太郎, 藏富 荘留, 田口 美紗, 吉田 翔平
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
143_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
神経電極の重要な応用分野としてブレインマシンインターフェース(BMI)が挙げられる。我々は脳神経外科臨床においててんかん焦点同定等に利用されている硬膜下電極を高密度化し、これを体内植込み型BMIの脳波計測に用いることにより、正確でノイズ混入の少ない頭蓋内脳波を計測し、性能の高いBMIの実用化を目指している。
硬膜下電極を用いると、高周波帯域成分も加算することなく計測できるだけでなく、頭蓋骨の内側に電極を留置するので、外乱ノイズの混入を容易に低減できる。この高周波帯域成分には、脳機能情報が豊富に含まれており、これを用いると脳信号の解読を高い精度で行うことが可能になり、フリック操作による会話やロボットアームの3次元制御が可能となる。
硬膜下電極をブレインマシンインターフェースに用いるためには、電極だけでなく、計測や電源も体内に植込み、無線化する必要があり、ワイヤレス体内植込み型脳波計の開発が必須となる。我々は15年間にわたってワイヤレス体内植込み型脳波計の開発に取り組み、まもなく臨床試験を行うに至った。
ワイヤレス体内植込み型脳波計が臨床応用されれば、正確な脳波データが大量に取得できるようになるため、BMIの性能も飛躍的な進歩が期待される。
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西澤 松彦
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
143_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
高齢社会に対応する高効率・低コストなIT化医療システムの開発が全世界の英知を結集して急ピッチで進められており,その鍵を握るウェアラブル及び埋め込み型デバイスの生体親和性を追及する開発競争が激化している。電気的な診断・治療(計測・刺激)を担う電極デバイスは,素子の微小化および基材の薄膜化が生み出したフレキシブルなウェアラブルデバイスとして製品化が進んでいる。さらに近年では,極薄のプラスチックフィルムを基材とするエレクトロニクス技術が進展し,体表および臓器表面の微細な凹凸にも対応して密着するフィルムデバイスの研究が盛んである。しかしながら,極薄とはいえプラスチックは硬い材料であり(ヤング率:数GPa),柔らかい組織(ヤング率:数10KPa)とは明らかに異質である。また,体液の循環を遮るため生理環境を乱してしまう。本研究では,電極デバイスの構成材料を見直し,金属やプラスチックなどの硬い材料を,ソフトウェット材料であるハイドロゲルで置き換えるチャレンジを進めている。本発表では,ハイドロゲルの膨潤によるサイズ・形状の変化を活かしたデバイスの「体内患部への密着固定」,電気刺激による神経・筋組織のモジュレーション,並びに局所にも適用可能なハイドロゲル製の送液システムについて現況を報告する。
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鈴木 郁郎
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
144_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
動物実験廃止の国際的な潮流やFDA近代化法2.0の制定により、化合物の毒性や効能評価において、in vitro試験法の導入が期待されている。In vitroで神経や心筋の電気活動を非侵襲に計測できる微小電極アレイ(MEA)計測法は、機能を指標とした化合物評価法の一つであり、国内外で使用されている。我々は、次世代MEAである24万電極から構成されるCMOS-MEAを用いたField potential imaging(FPI)法を開発してきた。ヒトiPS細胞由来中枢神経、感覚ニューロン、脳オルガノイド、脳スライス、心筋細胞から得られる高時空間分解能を有するFPIデータおよび化合物応答を紹介する。本会では、従来のMEAでは難しかった化合物の作用機序予測への展開等、FPIのアドバンテージをビックデータ解析と合わせて紹介し、FPIの基礎研究への展開も議論したい。
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Yan Tianfang, Liu Lingjun, 平田 雅之
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
144_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
Functional electrical stimulation (FES) is widely used to assist in restoring and rehabilitating upper function in patients with neurological impairments. In this study, we aim to validate the ability to innervate the target muscles of the upper extremity with an epineural cuff.
We implanted two cuff electrodes on median and radial nerves at distal brachial plexus segment of left arm in a Japanese macaque monkey. Electrical stimuli were used to produce movement contraction patterns of muscles relevant to the innervated peripheral nerves. We tested three types of stimulation patterns: traditional longitudinal tripolar, tripolar with steering and transverse tripolar. In addition, to assist in quantifying the outcome, evoked potentials were simultaneously recorded from six extrinsic forearm flexors during stimulation.
This study demonstrated that distal brachial plexus epineural stimulation has potential to innervate muscles of upper limb with different selectivity.
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鈴木 隆文, 海住 太郎
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
145_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
脳と機械を接続しロボットハンド操作などを可能にするブレインマシンインターフェース(BMI)技術が期待と注目を集めている。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄損傷など運動障害のサポートに加え、近年では感覚機能の障害や精神疾患などにも幅広い応用が示されている。
BMI技術の核となるのは脳活動を読み取るための神経電極であるが、これまで主流であった剣山型電極は脳組織への侵襲性が高く臨床応用の妨げとなっていた。我々は電極を脳に刺しこむことなく、脳の表面にシート状の電極を配置することにより計測する手法(皮質脳波法)を利用したBMIに注目しており、従来水準の約10倍となる1000点超の計測点を有する高密度の多点皮質脳波電極を開発し大幅な空間分解能の向上に成功した。本講演では我々の開発した高密度電極に関して紹介を行う。
一方で現在の脳神経インターフェースデバイスの共通の課題は長期安定計測であり、経時的に計測信号の劣化が生じ、ひいては情報解読性能の低下に繋がることが問題とされており、生体適合性の向上がその解決の鍵と考えられている。BMIが生涯にわたって使用される可能性を考慮すると、この問題は、優先的に取り組むべき緊急の課題である。電極性能の経時的検証手法、電極の生体内可視化を主とした生体適合性向上への我々の取り組みについても紹介を行う。
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加藤 瑠晟, 岩井 愛弥, 福山 祐人, 野呂 文音, 佐伯 壮一
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
146_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
近年,超高齢化社会におけるロコモティブシンドロームとして変形性膝関節症(OA)の患者数増大が懸念されている.治療法の一つとして自家培養軟骨移植術の臨床適用が進んでいるが,正常軟骨採取の手技は術者の経験に依存しており定量的な術中評価ができていない.著者らはドップラーOCTを用いて,圧縮荷重負荷における軟骨組織内の組織変位及び組織液流動をひずみ速度としてマイクロ断層可視化する多機能OCT(OCDS)を開発した.本研究では,多機能OCTにロボットマニピュレータを導入したRAI-OCTを提案する.これは多機能OCTの有する高感度検出能の弊害となる体動ノイズを払拭したシステムである.さらにDepth Cameraにより軟骨表面形状を考慮した関節鏡の姿勢制御を実現し,垂直荷重負荷によって組織力学特性評価を可能とした術中診断システムである.本稿ではブタ関節軟骨への適用結果から術中診断法としての有効性を確認する.検証実験のため正常軟骨とコラーゲン分解酵素処理を2時間施した初期変性軟骨をサンプルとして姿勢制御を行った後,圧縮荷重負荷をかけた.その結果圧縮荷重負荷時において正常軟骨に対し初期変性軟骨で高い圧縮ひずみ速度の発生が確認できた.これは酵素処理によってコラーゲン線維の破綻により引き起こされたと考えられる.これにより多機能OCTを用いた整形外科術中ロボット支援診断システムの有効性が示唆された.
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淺野 航太
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
146_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
リンパ浮腫治療の治療には弾性ストッキングの着用が有効とされているが、その効果の可視化計測は着用前後にとどまり、着用中の計測は現在に至るまで達成されていない。本研究では、電気インピーダンストモグラフィ(EIT)法により、弾性ストッキング着用中の健常者脹脛における体液分布の変化を電気的に解析することを目的とした。
実験対象は健康な男女各3名であり、ストッキングについては圧迫圧力の異なる弾性ストッキング2種類と、圧迫を目的としない一般的なストッキングの計3種類を各被験者に使用した。実験装置はEIT計測装置、脹脛用ストッキング、比較対象として体成分分析装置であり、被験者はEIT計測用電極の上から弾性ストッキングを着用し、60分間の立位維持において5分ごとにEIT計測と体成分分析装置での計測を行った。
計測インピーダンスより算出された空間平均導電率は、起立時間の増加に伴い増加傾向を示し、より圧迫圧力の大きいストッキングを使用した場合の方が導電率の増加率は小さくなった。これは圧迫圧力の大きいストッキングの方が細胞外液の廃液を促進し、生理的むくみを抑制することを示唆している。また、EIT計測による導電率変化は体成分分析装置により測定されたインピーダンス変化と相関を示し、SBL-EITは特に皮下脂肪組織(SAT)の過剰な細胞外液を画像化するため、導電率分布を十分に再構成した。
今後EITの測定精度向上に向け、ストッキング圧迫がEIT計測に及ぼす影響のさらなる検証が必要である。
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菊島 有二郎, Kiagus aufa Ibrahim, 武居 昌宏
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
147_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
胃機能モニタリングによる胃排出の評価は、機能性ディスペプシア(FD)、胃下垂、逆流性食道炎、手術後の食事再開など、多くの臨床症状において不可欠なパラメータである。本研究では、13C酢酸呼気試験で胃機能を計測しながら、非侵襲的に胃体積を測定することで、胃機能モニタリングへの胃電気インピーダンストモグラフィ法(gEIT)の有用性を示すことを目指す。提案手法は,(1)胃伝導度分布σに基づく胃体積Vの推定、(2)液体食料と胃体積変化によるgEITの評価の2段階から構成されている。5人の被験者が8時間以上の断食後に200mLの液体食料を飲む実験と600mLの液体食料を飲む実験を行った.gEITによる計測は32個の医療用電極を4層に分けて腹部に配置して行い,計測結果を基に導電率分布を算出した.計測時間は13C呼気試験の簡易法に基づいて設定し,2実験はともに90分間で行った.呼気試験を同時に行うことにより、被験者における胃の機能的問題の有無を確認した。1被験者においては軽度の亢進が見られたが,それ以外の被験者は健常者であると判定された.gEITによる胃画像再構成を行い,2段階のファジークラスタリングによる胃体積の推定をした結果,液体食料を増加させたことによる有意な胃体積の増加が計測された.また,経時的な胃容積減少量の増大が計測されたが,有意な増加は認められなかった.
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森田 康之, 小俣 誠二, 野下 渉, 小原 裕汰, 大内田 研宙
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
147_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
近年,がん微小環境の主要な構成要素である,がん関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast: CAF)は,がんの悪性化に影響を及ぼすことが明らかになりつつある.近年の研究により,成長因子の分泌などによる生化学的作用や,CAF自身の収縮力による細胞外マトリックスのリモデリングなどの物理的作用が報告されている.このため,がん細胞の浸潤や遊走が影響を受ける.したがって,CAFの作用を詳細に理解することは喫緊の課題となっている.本研究ではCAFの物理的作用が,がん細胞への影響を明らかにすることを考えた.ここで,実際のCAFを用いてしまうと,CAFの物理的作用と生化学的作用が同時に生じてしまい,CAFの物理的作用のみによる,がん細胞への影響を明らかにすることができない.そこで,CAF自身の収縮変形に着目し,CAFと同様に収縮することで物理的作用のみを与えることのできる模擬CAF粒子の開発を試みた.この方法は,3次元で細胞スケールの物理的作用を,がん細胞に与えることができ,両者の物理的相互関係を明らかにできると考えた.本研究の目的は,CAFを模擬した局所的強制変位場を生成する技術の開発である.本研究は,局所的強制変位を負荷することが可能な模擬CAF粒子を作製し,模擬CAF粒子がECM構造にもたらす影響を評価した.
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穂刈 一樹, 小野 寛就, プラムディタ ジョナス
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
148_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
近年,「握り心地」という感性価値を付加した製品が開発・販売されている.そのため,「ヒトはどのような過程を経て,握り心地を評価しているのか」の理解は,製品の握り心地をさらに向上させるために重要である.一方で,把持してから握り心地を評価するまでの過程において,接触による「皮膚内の機械受容器の反応」および「素材の知覚」が生じる.素材の知覚と握り心地の関係は個人によって異なるため,握り心地評価の過程を理解するためには,素材の知覚機序を明らかにする必要がある.そこで,本研究では,把持対象物のマクロ粗さに焦点を当て,把持により生じる指尖内部の力学的応答をもとに粗さ知覚機序を明らかにすることを目的とした.
粗さ知覚は溝付きの丸棒を用いた実験により評価し,指尖内部の力学的応答は有限要素解析により取得した.実験において,実験参加者10名は,把持対象物である9種類の山幅と溝幅が異なる溝付き丸棒を把持し,マグニチュード推定法により把持対象物の粗さを評価した.また,有限要素解析において,示指指尖部有限要素モデルを構築し,把持における示指指尖部と把持対象物の接触を再現した.
結果として,把持対象物の溝幅の増加とともに,粗さ知覚も増加した.また,溝幅の変化に伴う皮膚内部のひずみエネルギー密度分布の変化が確認された.以上より,異なるひずみエネルギー密度分布が粗さ知覚の違いに寄与したと考えられる.
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花之内 健仁
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
148_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
本研究は、関節軟部組織の力学的特性を定量的磁気共鳴画像(MRI)データから算出できるかどうかを調べるために
人工関節置換手術の際に切除廃棄される関節軟骨と半月板の組織を用いて、それらの力学的特性が、MRI(磁気共鳴画像法)の定量的パラメータと
相関するかどうかを調査した。から計算できるかどうかを調べた。
対象は、人工膝関節置換術を受けた患者6名と人工股関節置換術を受けた患者7名であった。を対象とした。膝関節については
膝関節では大腿骨遠位外側顆と脛骨近位外側顆の関節軟骨と外側半月板を、股関節では、大腿骨頭上の関節軟骨が調査された。
術前に撮影したMRIの計測位置を切除組織上でマーキングできるような患者個別テンプレート技術を用いて、2つの測定部位の位置合わせを行った。
その結果変性ないし損傷の少ない関節軟骨と半月板では、負の相関(-0.30~-0.35)を示した。
この結果から、軟部組織の力学的特性がT2緩和時間から計算しうることが示唆された。
定量的MRIで計測される緩和時間が、高齢患者の健康のための運動管理や、軟骨組織に対するインターベンション手術後の荷重開始時期の決定、
代替材料で置換ないし充填する際の材料の機械特性決定に有用であることが示唆された。
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鮎澤 純子
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
149_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
医療機器の管理は医療安全における重要な領域と認識されているが、いまなお繰り返し、医療機器に関連する医療事故やヒヤリハットの再発事例が報告されている。その背景にはさまざまな事情と課題がある。医療機器ならではの事情として、あまりにも多くの多様な医療機器が存在していること、安全な使用と管理がユーザーの「注意」と「確認」に委ねられていること、実際に使用する多職種に対して必要な知識と技術を担保するシステムが未整備であること等が挙げられよう。また、医療機器の管理ならではの課題がある。現場に分散している医療機器の管理体制の整備、組織における臨床工学技士や「医療機器安全管理者」の役割の明確化等である。
エビデンスに基づいた医療機器管理を実現するには、まずは、質の高いエビデンスが必要である。研究によって得られるエビデンスと実務におけるそれの違いを整理したうえで、質の高いデザインに基づく「結果」「成果」が欲しい。DXが進むなかでより高度なデータ・マネジメントが求められていることも、期待とともに認識しておきたい。実現に向けては、院内外を問わず、制度の改革や資源の投入が必要なことがある。目指すべき医療機器管理をイメージし、短期・長期的バックキャスト型の研究・実践も必要である。
エビデンスを活用した医療機器の管理、臨床工学技士のさらなる活躍、そして、医療機器に関連する事故が減っていくことを期待したい。
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本田 大輔
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
149_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
医療機器の安全管理は第5次医療法改正(平成19年施行)において実施が義務づけられ、全ての医療機関で対応が求められているところである。
一方、各医療機関は病床規模や医療機器安全管理に充てる人員数や予算が異なることから、医療機器安全管理の運用には差があると考えられる。そこで当財団では医療機器安全管理の実態を把握するべく、厚生労働行政推進調査事業補助金による「医療機関における医療機器安全管理の実態調査に関する研究」において全国の医療機関(8138施設、診療所を除く)に対して医療機器安全管理の実態調査を実施した。具体的な調査内容は医療機器の安全使用に関する研修や保守点検の実施状況、医療機器安全管理に充てる人員や予算などを幅広く調査した。その結果、2634施設から回答を得ることができ(回答率:約32%)、今後の医療機器安全管理のあり方を検討していく上での基礎資料として有用なものとなった。
医療機器の安全管理は医療機器のトラブルに遭遇する医療従事者が幸いにも少ないことから通常の診療業務が優先されて軽視される傾向にある。しかしながら、いつかは患者に悪影響を及ぼすようなアクシデントに偶発的に遭遇する可能性もあることから現状の医療機器安全管理の課題を抽出し、その解決に向けた取り組みは重要となる。
そこで本講演では医療機器安全管理の実態調査の結果を一つのエビデンスとして今後の医療機器安全管理のあり方を考える場とする。
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新 秀直
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
150_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
医療の高度化に伴い、医療機関内で使用される医療機器は増加し、その管理や安全性を確保することがますます重要になっている。2007年には改正医療法が施行され、全ての医療機関に医療機器安全管理責任者の設置が義務付けられた。しかし、医療法に基づき、医療機関独自の医療機器管理は実践されているものの、エビデンスに基づいた医療機器管理が実践されているとは言えず、医療機器の専門家である臨床工学技士が不在の状況でも医療機器が使用されている現状にある。
このような課題に着目し科学研究費助成事業:医療機器安全管理体制の現状調査と標準モデル化に関する研究の補助を受け、医療機器の保守管理体制の問題点を明確にすることを目的として、アンケート調査を行った。
その結果、臨床工学技士が病院に配置されることにより、医療機器の安全管理の効率化や個別の医療機器の管理や定期的な研修等、きめ細やかな医療機器の保守管理が実施されている一方で、負担も大きくなっていることが明らかとなった。さらに医療機器安全管理を進めるためには、病院管理者が医療機器安全管理体制の重要性を理解し、臨床工学技士が配置されていなくても、最低限の医療機器の安全管理が全ての医療施設で実践できるようにエビデンスに基づく医療機器管理を実現するための環境整備が必要であると考える。本セッションでエビデンスに基づいた医療機器管理の実現のために何が必要か私見を交えて議論したい。
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森 信洋
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
150_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
【はじめに】
臨床工学技士は医療機器の保守点検を業としており,この保守点検は医療機器の安全性の確保から医療の質の向上に繋げるための基本要素である.
今回,医療機器の保守管理データベースに蓄積したデータを有効的に機能させるために,具体的な事例を報告したうえで,私たち臨床工学技士が適正に医療機器管理を実践することで,どのように医療の質の向上に繋がるかについて論理的根拠を概説する.
【方法】
保守管理データベースに保存された医療機器のデータを有効的に利活用するには,管理台帳,貸出台帳及び保守台帳に着目して安全指標(リスク評価)と可用性(耐用寿命)を分析した.
【結果】
医療機器の保守点検のデータを記録している保守台帳に着目してリスクを分析した結果,2023年のリスクは最小値;0.40,中央値;0.75,最大値;1.00を示し,月次報告書によって言語化することにより病院内の職員にデータを共有することができた.
生命維持管理装置である人工呼吸器の耐用寿命は11.5年を示し,人工透析装置の耐用寿命は11.2年を示した.医療機器全体における耐用寿命の中央値は12.4年を示し,添付文書に記載されている耐用期間(6年)の約2倍を示しており,計画的な購入計画を行うことができた.
【結語】
保守管理データベースに保存されたデータを活用することは,臨床工学技士の業務を考慮した医療安全と病院経営に資する適正な医療機器管理を実施することができた.
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荒田 純平, 迎 伸孝
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
151_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
著者らは、脳血管疾患による手指運動機能低下に対するリハビリテーションに用いるためのリハビリテーションロボットSMOVEの開発を行っている。当該装置の特徴は、ばねを層状に配置した特殊な機構により、小型・軽量に手指運動支援を行うことにある。また、高精度な筋電位測定機能を実装しており、患者の微弱な筋電位信号を読み取り、ロボットの運動支援のトリガに用いることができる。
当該研究開発において、当初の最も大きな課題は小型・軽量な手指運動支援機構の開発であった。この技術課題は機構開発により達成したかに考えていたが、その後に脳血管疾患患者に単回の装着試験、および限られた患者数での臨床研究の実施により様々な課題が探索され、研究開発を継続してきた。現在、より規模の大きな臨床研究を5施設にて実施しており、本発表ではその概況についても報告する。
先端医療デバイスの開発には、当初から具体的な医療応用のイメージを明確化し、それに向けた仕様策定、試作機開発、評価(非臨床・臨床)の実施が好ましい。しかしながら、先端技術であればあるほど、研究進捗に沿って新たな課題の探索されることもしばしばある。本発表が、そのような先端医療デバイス開発の一事例として、同分野の研究者間の理解を深めるための議論の題材となれば幸いである。
謝辞:本研究は、AMEDの課題番号JP23ym0126092の支援を受けた。
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Saul Heredia, 原田 香奈子
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
151_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
Despite autonomous robotic surgery being still in an early stage, AI models are expected to improve the level of autonomy of surgical robotic systems in the future. Yet, AI requires an enormous amount of training data whose acquisition and labeling is time-consuming. VR simulators can help to speed up this development by generating synthetic training datasets, especially in surgical procedures with scarce data because of the reduced number of cases. In this work, we present a VR simulator of pediatric robotic surgery targeting the repair of esophageal atresia on neonates, a rare birth defect. We tested our VR simulator on the generation of synthetic training data for the semantic segmentation of robotic surgical instruments. The results showed that AI models trained using VR-simulated data can perform well on real images. This suggests that VR simulators may play an important role in accelerating the development of autonomous robotic surgery.
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小野木 真哉, 中島 義和
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
152_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
ロボット制御やナビゲーションにおいて座標系統合は必要不可欠である.特に医用においては赤外線を用いた光学式計測や電磁場を用いた磁気式計測が主流であるが,高価であることと簡便さに欠けるという実用上の課題がある.一方,産業用ロボット,Factory Automationにおいては高価なセンサの代替として二次元画像マーカがロボットの自己位置推定や対象位置の検出に用いられている.しかし,この技術を手術で用いるには術野に設置できるマーカサイズに限界があることもあり精度が十分ではない.センシングにおける精度向上手法としてセンサ統合による最尤推定がある.そこで,我々は慣性センサと二次元画像マーカの統合ことで臨床上実用的な位置計測手法の確立に取り組んでいる.本講演では提案するセンサ統合の手法および評価結果について報告する.
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小泉 憲裕
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
152_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
著者らは,ロボティック超音波局在診断・局所治療基盤システムを開発している。本研究で提案するロボティック超音波局在診断・局所治療基盤システムとは,呼吸等により能動的に変位・変形・回転をともなって運動する,臓器内に埋め込まれ,局所的な広がりをもつ患部を抽出・追従・モニタリングするとともに超音波を集束させてピンポイントに患部へ過不足なく照射することにより,がん組織や結石の治療を患者の皮膚表面を切開することなく非侵襲かつ低負担で行なおうとするものである。
上記のシステムを実現するために,下記の5つの作業手順を順次遂行することで,がん局在診断・局所治療技能を機能として抽出,構造化し,人工知能技術およびロボット技術を援用してデジタル機能関数としてシステムの機構・制御・画像処理アルゴリズム上に実装(医療技能の技術化・デジタル化)する。
その際,必要ならば専門医の医療技能に啓発された全く新しいアプローチから機能を追加・実装することにより,さらなる医療の質の向上(高速・高精度化)を図る。これにあたっては,我々が開発してきた下記の5つの独自のコア技術を基盤として,これを発展させることで行なう。
作業手順:(1)がんの局在診断・局所治療技能を機能として抽出・構造化,(2)機能におけるパラメータ解析,(3)機能の設計指針化,(4)機能の実装,(5)実験による機能の評価・改良
コア技術:(コア技術I) 人体に対する安全・安心接触/非接触動作技術.(コア技術II) 機能に応じた高精度機構設計技術.(コア技術III) 超音波医療診断・治療技能における機能抽出・構造化技術.(コア技術IV) 超音波診断・治療タスクに応じたシステム動作切替え技術.(コア技術V) 人工知能技術を援用したリアルタイム医用画像処理技術。
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中島 義和
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
153_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
人工知能(Artificial Intelligence, AI)は,近年その応用領域を拡大させてきた.AI導入の潮流は医療においても顕著であり,診断からはじまり,解析,術/治療計画,手術支援に至るまでAIの活用が検討されている.一方で,AI化およびDX化の潮流は,医療スタッフに対して新たにデータのデジタル入力を課すこととなり,必ずしも労働量低減につながっていない.AIを学習させるためにデジタルデータを用意したり,デジタル機器が表示する検査値をマニュアルでシステムに登録したりするなど,新たな作業が増えている.これは,ロボティックシステムの医療導入や知能化においても同様である.
この課題を解決する手段のひとつにAIの汎用化とそれによるデジタルデータの自動転送/処理が考えられる.我々は,目的特化型AIであるSpecialized AI群を自動で組み合わせて,全体として汎用AIを構成するネットワーク結合型マルチAIシステムを提案する.ネットワーク上に配備されたAI群は,データに記述されたセマンティックスを展開して自律的にタスクの種類や意味を識別し,さまざまなタスクを小さなデータ処理アルゴリズムの組合せとして自己構造化して,至適な処理プロセスを形成する.その際,ともすれば膨大な時間を要するセマンティックスの条件分岐計算を並列化し,AIネットワーク上に実装した.提案手法は,条件分岐の数に比例せず,AI群の結合処理は高速かつ安定であった.提案手法を使って,各種医療デバイスに実装されたAI群を自律自動で結合し,またVision AIやAuditory AIなどのインタフェースAIを自律自動で結合して,医療用汎用AIを構築した.
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原口 大輔, 宮原 琉, 當別當 耀
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
153_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
単眼カメラによるマーカ画像計測を用いて、外科医の頭部の動きを入力とする内視鏡ホルダロボットの操作システムを開発し、動作性能の評価を行ったので報告する。頭部の動きを用いた内視鏡操作は、両手に術具を保持した外科医にとって直感的な方法であるが、頭部の動きをいかに正確、高速かつ簡便に計測できるかが重要な課題となっていた。本研究では、リーグソリューションズ株式会社製の高精度画像マーカ(ENマーカ)を用いて頭部の6自由度モーションをリアルタイムにキャプチャし、硬性内視鏡の全4自由度の操作が可能なシステムを構築した。本システムでは、操作者(外科医)が40㎜角のENマーカ1個を前頭部に装着し、内視鏡モニタに取り付けた汎用の小型単眼カメラでマーカを捉えることで頭部の動きを計測する。画像計測されたマーカの位置/姿勢および並進速度/角速度の各情報に基づくいくつかの制御則を考案、実装し、内視鏡ホルダの動作性能を調べることで操作性の評価を行った。
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山田 篤史, 遠山 育夫
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
154_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
長尺のカテーテルと十二指腸内視鏡を用いてファーター乳頭からアクセスする胆道系や,軟性腎盂尿管鏡を用いて尿管を経由してアクセスする腎杯には,角度が急峻な高次分枝が含まれており,その分岐形状は一般に破格である.これらの手技には,腱駆動型ワイヤ牽引機構が採用した外径2~3mm程度の長尺の軟性機器が使用されるが,体内では屈曲形状の大きな劣化や操作性の悪化が生じることで,高次分枝に対するアクセス性能が不十分であることが知られている.本研究では,これらのアクセス性能を改善するソフトマニピュレータ構造を提案する.提案する構造は,ツールポートを断面中心に設けた多ルーメンの先端チューブおよびシャフトチューブを直列した簡易構造であるが,屈曲形状の劣化や操作性の悪化を回避するために,ユニークな交差配線を用いて近似的な非干渉駆動を実現している点が特徴である.提案構造の基本構造を示し,運動学を用いて配線の力学的効果を示す.そして,試作機を用いて実施したファントム実験の結果を示す.また,提案構造を用いたロボット機構の展望を示す.
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神野 誠
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
154_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
手術支援ロボットが臨床現場で広く活用されている一方で,低侵襲微細手術領域では導入が進んでいない.低侵襲微細手術に用いられる術具は,外径1mm以下が要求され,機構的な実現が格段に難しくなる.筆者らは,微細低侵襲手術を対象とした外径0.9mmのディスク積層型2自由度湾曲機構と,その機構を搭載した遠隔操作型ロボットシステムの研究開発を進めている.同システムは,かつて,腹腔鏡下手術を対象として開発したシステムで,フォロアロボットには,6軸垂直多関節型産業用ロボット,リーダロボットには,3次元入出力デバイスを採用している.本報では,同システムを用いて,ストレートデバイスと2自由度湾曲機構デバイスの作業領域の比較を,ポインティングタスク評価用の眼球モデルで行った.その結果,2自由度湾曲機構デバイスの方が,より広い領域のポインティングタスクを実行できることが確認され,これにより,フォロアロボットの小型化が可能であることが示唆された.一方で,刺入点に対して大きな角度,すなわち,眼球内などで広い作業領域を得る必要がある場合,RCM(Remote Center of Motion)機能を有している6軸垂直多関節型ロボットをフォロアロボットとして用いたシステムでは,手首特異姿勢や姿勢軸の動作領域不足などの問題が懸念されることも明らかとなった.今後,本結果を踏まえ,高操作性リーダロボットや小型高精度フォロアロボットなどの研究開発を進める予定である.
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河合 俊和, 麦谷 祐真, 西澤 祐吏, 西川 敦
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
155_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
【目的】内視鏡外科手術では,医師のハイエンドツールである大型なリモート操作マニピュレータが広まっている.これに対し,滅菌領域の医師の補助ツールとして小型分散できるローカル操作マニピュレータがあれば,患者の状況を把握しやすい安心安全なロボット支援腹腔鏡下手術がコンパクトに実施できる.我々の研究目的は,術野を素早く展開できる鉗子助手ロボットの開発と,非拘束かつ直感的なローカル操作インタフェースの構築である.
【方法】鉗子助手ロボットLODEMについては,医師の作業領域が広く,手動およびモータ駆動でき,既存の鉗子を着脱できる機構を考案してきた.最新のLODEMは,刺入点まわりのピボット運動を直交ジンバル2軸,挿入抜去をベルト駆動とし,寸法340mm以下,重量2.0kg,鉗子先端5N負荷時の位置決め精度0.3mm以下である.ローカル操作インタフェースとしては,執刀医の手元鉗子をステレオカメラのRGBD画像で認識して位置姿勢を取得し,本LODEMをリーダーフォロワー制御するシステムを構築した.外径5mmの鉗子シャフトをMask R-CNNで画像認識して矩形近似し,Depth画像とあわせて矩形端点の三次元位置座標を取得する.
【結果】Mask R-CNNの処理時間は300ms,統合ビジュアルフィードバック制御システムの実行周期は413ms,遅延時間は950ms以下であった.今後は,YOLACT++による処理時間の向上,ToFカメラによるDepth情報の取得率向上を考えている.
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荒船 龍彦
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
156_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
近年の医療技術の進歩に伴い,人工呼吸器や専用のバギーなどの医療機器による介助があれば,通常学級へ登校,登園も可能となる医療的ケア児が増え,またケア児本人や家族の希望を実際の就学に反映できるための医療的ケア児支援法も2021年6月に施行されたことでケア児の就学,保育の選択肢が増えつつある.しかしその一方で,学校や保育園でのバリアフリー化に始まる受け入れ体制,看護師などの人員配置,人工呼吸器や胃ろうなどの医療機器のメンテナンスなどが十分に準備されておらず,現場負担の増加が課題となっている.我々は医療的ケア児にまつわる様々な課題から『バッテリー必須の電動車椅子生活者の行動制限』,『健常者とは異なる目的と役割のある身体トレーニング』について,東京都立の支援学校である花畑学園と共に実施したハッカソン形式での具体的な課題抽出とプロトタイプ開発,そしてその評価について紹介する.
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桑名 健太
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
156_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
晩産化が進む日本において,障害児や医療的ケア児の増加が課題となっている.障害児や医療的ケア児は,自身の社会参加の困難性に加え,育児を担う両親や兄弟の負担も大きい.令和5年12月22日に閣議決定されたこども大綱において「障害のあるこども・若者,発達に特性のあるこども・若者の地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進し,それぞれのこども・若者の置かれた環境やライフステージに応じて,一般の子育て支援との連続の中で,その発達や将来の自立,社会参加を支援する.」とあるように,インクルーシブな社会実現を目指した取り組みが推進される中で,こどもやこどもを育てる両親を取り巻く環境整備は急務である.健常児の育児においても,核家族化に伴い両親の育児負荷は増大しており,男女ともに産後うつが問題となるなど,育児環境の改善が求められる.
このような状況において,障害児や医療的ケア児を含むこどもがよりよく生きていくための支援技術,また,障害や医療的ケアの程度を軽減するための支援技術として,生体医工学領域の知見・技術の活用が期待される.
本演題では,このような状況を踏まえ,今後取り組むべき課題を議論するため,演者が取り組んでいる新生児育児の体験を目指したセンサ付き新生児人形の研究や,分娩状況評価システム,臍帯切断デバイスの研究といった分娩にかかわる研究を紹介する.
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佐藤 裕一
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
157_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
医師の働き方改革の一環として、医師の負担軽減と医療の効率化を目指し、2024年4月から医師の業務の一部を他職種に移行する「タスクシフト」が本格的に始まった。当院でも診療放射線技師のRI検査における静脈路確保や、臨床工学技士のスコープオペレーター、看護師の特定行為を行っており、業務を補助するための機器も新たに導入された。
また、働き方改革の重要な要素である電子カルテの効率化として、当院ではミドルウェアをHUBとするシステム構築や、HL7 FHIR等の導入によるシステム間の連携や情報共有の効率化、一元管理を目指している。さらに、医療情報の標準フォーマット化、入力内容の自動チェック機能、二重確認機能の導入で、安全性を担保しながら多職種への入力業務の移管を進めている。
地域医療の応援業務の効率化として、オンライン診療の活用や医師が同乗しない移動式診察車を用いたモバイルクリニックの運用が進められており、さらに、遠隔でのロボット手術や手術支援も行われ、業務や移動の時間短縮に寄与している。
タスクシフトの推進には、各職種の責任範囲明確化、安全性の確保、医療従事者間の連携強化、研修体制整備などの業務上の課題や、装置のユーザーとなるスタッフ間、患者の世代間などの情報格差の問題を強く感じた。
医療従事者の負担軽減と質の高い医療提供を継続的に実現することが重要であり、技術開発を通じてこれらの課題解決に貢献していく必要がある。
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土井根 礼音
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
157_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
医師の働き方改革を背景に,医師の労働時間短縮に向けた取り組みとして,医師の業務の一部を,他職種に移管あるいは他職種と分け合う医師のタスク・シフト/シェアが推進されている.医師のタスク・シフト/シェアの対象となる医師以外の医療スタッフは,新たな技術や技能を身につけ,活躍の場が広がることが期待される一方,新たに認められた業務による負担の増加が懸念されている.また2025年には,日本人口の5人に1人が後期高齢者となる超高齢化社会を迎え,医療の需要が増加することで,医療スタッフの業務負担のさらなる増加が予想される.より良い医療の提供を実現するためには,医師のタスク・シフト/シェアの推進だけでなく,医療業界全体の業務の効率化および支援が求められている.
この問題に対し医療現場では,業務の効率化および医療情報の共有・利活用を目的として,ICT,IoT,AIなどのデジタル技術を活用する医療DXが推進されている.人工知能を用いた画像診断支援や医療機器のリモート管理技術などが医療現場に導入される中,ネットワークを介した医療情報の通信が行われることから,セキュリティ対策が課題となっている.医療スタッフはセキュリティの専門家ではなく,目の前の命を救うことが最優先であることから,セキュリティ対策を十分に行うことが困難な場合がある.本演題では,医療現場を取り巻くセキュリティ対策の課題について述べる.
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椛田 学
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
158_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
2023年に改正された、医用電気機器のEMC規格である、JIS T 0601-1-2:2023の改正情報を解説する。
今回の改正の目玉である近接磁界イミュニティ(JIS C 61000-4-39)が追加されており、これを中心に説明する。
本改正に加え、その他医用電気機器のEMCに関連する情報や動向につき併せて説明する。
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小崎 慶介
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
159_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
医学・医療の進歩により、気管切開、人工呼吸管理、胃瘻等による経管栄養、頻回の吸引などの医療的ケアを日常的に受けながら生活している日本全国の在宅医療的ケア児の数は、2021年時点で2万人強と推定されている。
生体医工学は、医療的ケア児の日常生活における生命機能のモニタリング、維持に大きな役割を果たしてきたことは言うまでもない。しかし、医療的ケア児をとりまく多くの医療機器の操作・維持管理には一定の知識と技術が要求され、日常的に児を介護している家族は、絶え間のない緊張にさらされてきた。
最近では、在宅の医療モニターや医療機器と医療機関を通信回線で接続して、これらの計測値や稼働状況を外部からモニタリングし、家族の質問や不安に応えたり、異常値を示す場合に医療機関から臨時に訪問するなど試みも行われてきている。
また、各種の医療機器が接続されている状況でも(リ)ハビリテーション関連職種が適切にセラピーを実施するスキルが共有され、濃厚な医療的ケアを要する在宅児であっても、訪問(リ)ハビリテーションを受けることが可能となっている場合もある。
コロナ禍を奇貨とした家庭における通信環境の充実は、濃厚な医療的ケアを要する在宅児の社会参加機会の拡大にも寄与している。今後は、家族支援の充実も待たれるところであり、この点に関して育児工学が果たしうる役割は大きいと期待される。
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家入 里志
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
159_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
鹿児島に着任して9年となるが、この間県内3施設の重症心身障碍者施設に医局員を定期的な診療に派遣し、手術介入が必要な患者の診療にあたってきた。手術内容としては経口摂取障害に対する腹腔鏡下胃瘻造設術、逆流性食道炎に対する腹腔鏡下噴門形成術、誤嚥性肺炎に対する気管切開術・喉頭気管分離術、血管ルート確保困難に対する埋め込み型カテーテル留置術などが主なものである。これらの患者は年齢も比較的高くある程度症状や症候が固定しており、手術介入により一定の治療効果が得られ、安定した療養生活を送ることが可能となる。一方施設ではなく在宅での養育・療養生活を送っている医療的ケア児は成長過程にあることが多く、心身の成長に伴い症状も変化し、必要な手術や治療が年齢や体格によって異なってくる場合も多い。また在宅の場合は医療者ではなく家族が主にそのケアを行うため、その背景や環境に応じた治療や手術を選択することが重要となってくる。本邦は欧米に比較してこのあたりのサポート体制は不十分であり、今後はICT/IOTを活用した医工学からみた研究やその成果の社会実装が求められる。
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渡邉 健二
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
160_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
日本は先進的な医療技術の下、こどもの命をつなぐことができる環境にある。半面種々の障害を残し、医療的なサポートを必要とするこども(医療的ケア児)が2019年には全国で2万人を超え、今後も増加することが予測されている。医療的ケアには呼吸器系、消化器系、排泄系など多種に及び、専門的な技術が求められ、家族は睡眠時間を削り、自身の余暇を楽しむことも出来ず、日夜を問わずケアに追われている。またきょうだい児も、余裕のない家族に遠慮し、自身の欲求を抑え、時には代わりに医療的ケアを実施するヤングケアラーの存在も近年注目されている。重症度によっては移動・外出も困難で、発熱などの体調不良時の対応も簡単ではない。また保育・教育を受ける環境も整わないこと、自然災害時への対策、成人期の移行問題など、医療的ケア児をめぐっては多くの課題がある。当法人はレスパイト施設として医療型特定短期入所施設の運営、また医療的ケア児者への訪問・オンライン・外来での診療を行っているが、出来ることには限界がある。医療関係者だけでなく、福祉職、保育・教育関係、行政職など多職種の関りが必要であり、これらの多職種の連携を図ると同時に、マンパワーの不足する日本において、医療的ケアの簡素化、機器の小型・軽量化、移乗や入浴時における介助者の負担の軽減、生体モニターの向上、社会と医ケア児者を繋ぐツールの開発など、生体医工学からの多くの関りを期待したい。
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小谷 博子
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
160_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
2021 年に「医療的ケア児支援法(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)」が施行され,医療的ケアの有無にかかわらず,子どもたちがともに教育を受けられるよう最大限に配慮すること,そして個々の状況に応じて関係機関が密に連携し,医療・保健・福祉・教育・労働について切れ目なく支援することが国の責務とされた。本法の施行により,学校や保育園への通園(学)において医療的ケア児の受け入れ体制が拡充され,日常的に酸素吸入や人工呼吸器の操作などの医療的ケアが必要な子どもたちが,訪問教育だけでなく,学校に通学するケースも見られるようになっている。
医療的ケア児を保育・教育の場に受け入れることは、医療的ケア児本人の健やかな成長・発達を促すだけでなく、まわりの子どもにおいても、多様性を受け入れる素地につながるなど、波及的な効果も確認されている。子どもたちの相互理解は互いの成長へと発展する可能性を持っており、「多様性」を体験的に理解することは、子どもたちの成長にとって大切なことである。
医療的ケア児が日常生活を営むためには、日常的な医療的ケアと医療機器による支援が必要である。今後は医療者だけでなく,医療機器を扱う非医療者(研修を受けた教員や保育士など)が増加していくと予想されており、多職種による連携体制の構築が必要であろう。
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大須賀 美恵子
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
161_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
(一社)人間工学会PIE研究部会の企画セッションは3回目となる.PIEはPsychophysiology in Ergonomicsの略称である.医学応用ではないが,生理指標を人の状態推定に用いるという点で生体医工学と親和性が高い.今回は,はじめに,司会の黒坂知絵からPIE研究部会の思いとこれまでの経緯について紹介する.その後,3件の話題提供を受けて,部会長の大須賀美恵子から副題の「いつでも どこでも あなただけ」をめざす上での技術課題とデバイス・サービス提供者・研究者への期待を述べ,最後に総合討論を行う.
話題提供の1件目は,丸山崇先生から,ウエアラブルデバイスから得られた活動量や心拍,簡易深部体温を用いて,生体リズムや作業負荷を推測する試みを紹介していただき,これらの有用性と問題点を抽出し,労働者の安全衛生向上に寄与できる可能性について論じていただく.
2件目の榎原毅先生からは,日常の労働生活のセンシングによる健康リスクの早期予測だけではなく,健康経営の観点によるWELL認証など,職場のウェルビーイング向上に資する生体計測について期待することをお話しいただく.
3件目の鎌倉快之先生からは,デスクワークなど着座時の人の状態推定手法の事例として,カメラを用いた非接触での生体情報計測について,どのようなデータが取れ,どのような問題点があるかを,従来型(電極・センサ装着)およびウエラブルデバイスを利用する場合と比較して論じていただく.
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角井 泰之, 宮﨑 裕美, 明石 満, 佐藤 俊一
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
162_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
【背景】大規模災害では多数の被災者が皮膚に重篤な損傷を負い,移植による治療が必要である.しかし,スキンバンクのドナー不足は極めて深刻な状況であり,我々は移植用の3次元培養皮膚の開発と実用化を進めている.しかしその過程で,厚みのある組織には培地が供給されにくく,品質が低下することが明らかになった.このことは,再生医療用の組織培養における共通の課題である.そこで我々は,ミトコンドリアの光吸収により電子伝達系を刺激するphotobiomodulation(PBM)を応用し,培養中の皮膚を活性化できないか検討を行った.
【方法】3次元培養皮膚に対し,組織深達性が高い近赤外LED光(波長823 nm,750 mJ/cm2)を照射し,PBMを適用した.2日間培養した後,ルシフェラーゼ発光法によりATP量を,WST法により活性度を,ヨウ化プロピジウム染色法により死細胞の分布をそれぞれ評価した.
【結果】PBMの適用により,培養皮膚のATP量と活性度が有意に増加し,真皮層中の死細胞が有意に減少した.これらの結果から,PBMにより培養皮膚を構成する細胞の電子伝達反応,すなわちエネルギー源となるATPの産生が促進され,細胞死が抑制された結果,組織の活性度が向上したと考えられる(Tsunoi, et al., Photochem. Photobiol. 2022).LEDが安価な光源であり,かつ素子の配列により大面積照射が可能である特徴を活かし,我々はLEDアレイを内蔵したPBM用の培養装置を考案した(特許第6956340号).本発表では,試作した装置の皮膚培養への有用性についても報告を行う.
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佐藤 充, 佐藤 正樹
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
162_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
看護業務において検査・処置等介助中や患者への看護を実施中に電子カルテ上の情報が必要となる。この場合、清潔野の汚染を防ぐため操作の度にグローブ交換が必要となり業務効率が低下する。また、操作する度にグローブを消費する。本研究では従来困難であったジェスチャによる精密な電子カルテ操作が可能な非接触型操作システムを開発した。これにより手指衛生を保ちつつ電子カルテ端末を触れずに情報の取得が可能となる。センサとしてLeap motion controller 2を使用した。システム開発により手部の空間座標をマウスカーソルのスクリーン座標と連動させポインティング操作を可能とした。また、ジェスチャによる精密なクリック操作を実現した。開発したシステムおよびマウスを用いて模擬電子カルテの操作実験を実施した。本研究には5名の操作者を採用した。模擬電子カルテ端末は臨床と同様にベッドサイドに設置し、臨床現場を模擬した。計測開始とともに、必要な情報を取得するまでの所要時間を調査した。開発したシステムによる情報取得の平均所要時間は8.6±3.8 sとなり、グローブ脱着を含めたマウスによる情報取得の平均所要時間は28.5±5.5 sとなった(p<0.01)。本研究により、情報取得におけるグローブ交換にかかる時間を解消することが可能となった。また、グローブ交換のコストを削減可能である。看護業務中の電子カルテ操作は必須であり、臨床での実用に向けて更なる発展が期待される。
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佐藤 廉, 矢崎 優翔, 遠藤 俊毅, 秋元 治朗, 深見 真二郎, 永井 健太, 熊谷 寛, 小川 恵美悠
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
163_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
我々は、悪性脊髄腫瘍に対する穿刺型光線力学療法 (PDT) の実現を目指し、光照射による効果と安全性を数値シミュレーションにより検討した。悪性脊髄腫瘍は、運動神経障害による筋力低下や完全麻痺の症状を起こし、標準治療として摘出手術が行われるが、脊髄損傷のリスクが高く、生存期間は約13ヵ月と短く根治が難しい。光と薬剤を用いた癌の治療法であるPDTは、光照射により光感受性薬剤を励起し、生成する一重項酸素の殺細胞効果により腫瘍を壊死させる。我々は悪性脊髄腫瘍に対する摘出手術を伴わない新規治療として、細径光照射プローブを用いた脊髄腫瘍に対する穿刺型PDT(iPDT)の実現を目指す。低侵襲に脊髄組織に穿刺可能な細径光照射プローブを直接腫瘍組織に穿刺しPDTを行うことで、腫瘍切除による脊髄損傷のリスクを抑制した根治治療の可能性がある。
本研究では、悪性脊髄腫瘍に対するiPDT実現のために安全かつ有効な光照射条件を明らかにすることを目的とし、光線追跡および熱伝導シミュレーションを行った。一般的サイズの脊髄腫瘍を上回る計算モデルを作成し、光照射プローブを10 mm間隔で2本垂直に穿刺した場合のシミュレーションを行った。150 mW/cm2で360 sの光照射を想定した場合、腫瘍全域で半数致死量以上となる十分な光強度が確認できた。また、温度上昇は0.016℃であり、正常組織への熱的影響は生じなかった。
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石垣 駿, 鈴木 志歩, 朔 啓太, 鷲尾 利克, 山岸 義晃, 近藤 昌夫, 荒船 龍彦
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
163_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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複数の機器・生体モニタ情報を統合的に考察し重症患者管理を最適化させることは,人的コストと熟練を要するため,一部施設に限られる例外的医療のままである.そこで近年,複数の医療機器をネットワーク化する『相互運用性医療機器システム』が登場している.病院にある既存の医療機器の中には通信機能を有していないものもあり,これらの医療機器を改造・改良して新たに通信機能を追加することは難しく,改造・改良に伴う一変申請はメーカに経済的負担がかかり,我が国では相互運用性医療機器システムの医療での利活用は限定的である.そこで本研究では,既存の医療機器に対して改造・改良することなく相互運用性確立を可能にする支援システムの開発を目的とした.医療機器の表示画面から数値をカメラで読み取り,時系列データとして取得する.本システムは,ビデオカメラ,Windows PC,PC上で操作するソフトウエアから構成される.画面の数値表示領域内からOCR機能で数値を読み取る画像処理ソフトウエアを開発した.OCR機能では事前に作成した機械学習モデルを使用して数値の判別を行う.従来,解析対象が1機器のみだったが,並列処理の実装によって複数機器の同時解析を実現した.モニタ画面の数値の切り替えに伴うフォントの重なり表示も画像として学習させ認識できるように機械学習モデルを調整した.数値認識結果と目視判断した値を比較する評価実験の結果,読み取り精度は99.8%を実現した.
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南雲 健人, 堂前 佑太, 野澤 昭雄
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
164_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
過度の筋疲労は日常生活の質を低下させ、リハビリテーションの障害となる。従来の筋疲労回復手法として、Electrical Muscle Stimulation (EMS) がある。EMSでは、電気刺激により血流を促進し、筋疲労の回復を促す。しかし、過度の電気刺激は筋肉を収縮させ、筋疲労を悪化させる。筋疲労の度合いによって筋肉の収縮が起こる電気刺激の閾値が変化するため、個々の筋疲労の度合いに応じた電気刺激の強度の調整が必要である。それにも関わらず、既存のEMS手法は個々の筋疲労度を考慮していない。そこで本研究では、筋疲労回復をより効果的に行う新しいアプローチ、「EMSを利用した筋疲労回復バイオフィードバックシステム」を提案する。このシステムでは、電気刺激閾値法を用いて筋収縮が起きる閾値を決定し、閾値以下の電気刺激をフィードバックして筋疲労の回復を促進する。基礎検討として、筋肉トレーニング後に「電気刺激なし」、「筋収縮なしの電気刺激」、「筋収縮ありの電気刺激」の3条件下での電気刺激を与え、その影響を評価する実験を行った。その結果、「筋収縮なしの電気刺激」条件では、他の条件に比べて筋疲労が有意に減少した(p < 0.05)。これにより、本研究で提案するシステムが筋疲労回復に有効であることが示された。本研究の成果は、個々の状態に最適化する新たな筋疲労回復法の開発への一歩として期待される。
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永山 花香, 常盤 達司
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
164_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
立位姿勢制御の評価指標に重心動揺がある.従来研究において,ヘッドホンから呈示した音刺激が重心動揺を有意に軽減させることが示唆されている.一方で,音による空間認識が立位姿勢制御の向上に効果があることが報告されている.本研究では,外耳道を塞がず音を呈示可能な骨伝導音が重心動揺に与える効果を検証した.
本実験は,学内倫理審査の承認を経て実施した.被験者は,書面により事前に同意が得られた10名(平均21.9±0.74歳)とした.被験者に骨伝導イヤホン(shokz社)を装着し,「開眼・無音」「閉眼・無音」「閉眼・ホワイトノイズ」の3条件をランダムに各5試行ずつ実施した.「閉眼」の2条件では,重心動揺計の上に体性感覚を攪乱する目的でフォームラバー(ANIMA社)を設置した.
「閉眼」の2条件を「開眼・無音」条件の計測値で正規化し,重心動揺の総軌跡長,外周面積,矩形面積,前後・左右方向動揺中心変位を評価した.対応ある2標本のt検定により,「閉眼・無音」と「閉眼・ホワイトノイズ」の外周面積において有意差(p<0.05)が認められた.
骨伝導イヤホンは耳を塞ぐことなく骨伝導により音を呈示できる特長を持つ.本実験環境により,ヒトは外部の環境音を用いて空間を認識し,さらに音刺激により重心動揺を軽減させたと考えられる.骨伝導音がヒトの立位姿勢制御を向上させる効果が示唆された.
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村田 有未, 中村 実, 横山 徹, 古谷 大輔, 印藤 智一, 横田 伸一
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
165_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
【緒言】透析液の清浄化を達成するため,血液透析治療終了時には様々な消毒が行われているが,消毒後の細菌由来DNA (bDNA)が透析患者の炎症反応を助長するとの報告がある.一方,消毒後におけるbDNAの検出に関する報告は少ない.そこで,本報告は,次亜塩素酸ナトリウム消毒および熱水消毒後に検出されるbDNA量を比較検証した.
【方法】緑膿菌を用いて生菌数101~108 CFU/mLの細菌懸濁液を作製し,次亜塩素酸ナトリウム消毒(800 ppm,30分)および熱水消毒(99℃,15分)を行なった.そして,消毒後の検体から2本鎖DNAおよび1本鎖DNAをQubit(Thermo Fisher Scientific)した.
【結果】消毒後からは,次亜塩素酸ナトリウム消毒よりも熱水消毒で有意に多くのbDNAが検出された (P<0.01).また,bDNAは2本鎖DNAよりも1本鎖DNAの方が有意に多かった(P<0.01).一方,次亜塩素酸ナトリウム消毒では107 CFU/mL以下,熱水消毒では105 CFU/mL以下でbDNAが検出感度(5 ng/mL)以下となった.
【考察】熱水消毒で有意に多くのbDNAが検出されたのは,次亜塩素酸ナトリウムでは有機物分解作用によって減少したのに対し,DNAは熱に安定であるため,熱水消毒では減少しなかったと推察した.よって,bDNAの減少には次亜塩素酸ナトリウム消毒が有効であることが示唆された.
【結語】次亜塩素酸ナトリウム消毒は熱水消毒よりも消毒後のbDNAを有意に減少させた.
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大友 玲奈, 中村 実, 清水 久恵, 古谷 大輔, 印藤 智一, 横田 伸一
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
165_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
【緒言】これまで熱水消毒前後における透析液ライン内の金属腐食と細菌汚染(生菌数)に関する検討を行ってきたが,エンドトキシン活性値(以下ET値)の解析には至っていなかった.そこで,透析液ライン内の金属腐食の有無が熱水消毒前後での生菌数およびET値にいかなる影響を与えるかを比較検証したので報告する.
【方法】緑膿菌の最終菌濃度を約10 CFU/mLに調整した汚染透析液を新品ならびに金属腐食ポンプで25分間循環させ,32℃で12時間放置し汚染させた.その後,熱水消毒(95℃,15分)を行った.その後,熱水消毒前後でポンプ後の末端透析液を採取し生菌数とET値を測定した.
【結果】熱水消毒前の末端透析液中の生菌数は,新品で11.22±8.58 CFU/mL,金属腐食で29.23±29.50 CFU/mLとなり有意に多かった(n=12, P<0.05).また,ET値に有意差はなく新品で0.091±0.125 EU/μL,金属腐食で 0.211±0.241 EU/μLであった.一方,熱水消毒後で生菌は検出されず,ET値は新品で0.368±0.717 EU/μL ,金属腐食で0.063±0.085 EU/μLであった.
【考察】金属腐食ポンプを使用した場合,熱水消毒前の生菌数が新品より有意に多く確認されたが,熱水消毒後で生菌数とET値は超純水透析液の管理基準以下であり透析液の安全性は担保されていた.一方,金属腐食の有無とET値,また生菌数とET値に一定の相関関係は確認できなかった.
【結語】金属腐食の有無に関わらず熱水消毒後には生物学的管理基準を担保できた.
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佐々木 優貴乃, 奥 知子, 本橋 由香, 山内 忍, 佐藤 敏夫
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
166_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
【目的】近年、新しく販売されるダブルルーメンカテーテル(DLC)は、特徴的なシンメトリー構造を有するDLCが大部分を占めようになっている。しかし、これらのDLCの外観上の脱血孔-返血孔間距離LAVは0mmであり、過去の報告からは順接続時・逆接続時ともに再循環率Rは非常に大きくなる。今回の報告では、シンメトリー構造DLCのRを低く抑えることができる脱血メカニズムの解明を目的とし、各脱血孔からの脱血量を測定できる実験方法について検討した。
【方法】血液と同じ粘度になるように調整した溶液を含むボトルを2個連結し、シンメトリー構造DLCが両方のボトル内を貫通するように留置した。その際、先端側と中枢側の脱血孔がそれぞれ別のボトル内に開口するように留置位置を調整した。水頭圧による脱血量への影響を排除するため、脱血を開始すると同時に各ボトルの液面が一定になるように小型ギヤポンプを用いて溶液を補充し、そのときの各ボトルの補充量を各脱血孔からの脱血量と定義した。
【結果及び考察】検証したシンメトリー構造DLCの全てが、中枢側脱血孔からの脱血量が75%以上を占めていることが確認できた。すなわち、シンメトリー構造DLCのLAVは外観上0mmであるが、脱血の際には機能的にはLAVが10mm以上確保できていることと同等であり、これが順・逆接続に関わらず、Rを低く抑えるメカニズムの原因の1つであることがわかった。
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望月 嘉恋, 根本 充貴, 中前 有香子, 木村 裕一, 出口 龍良, 山下 真平, 柑本 康夫, 原 勲
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
166_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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【目的】本研究では,体外衝撃波結石破砕術(ESWL)の治療結果予測AIシステムの学習データ不足に注目し,データの人工的加増法MixupによるAIシステム性能の改善を図る.具体的には,Input MixupとManifold Mixup併用のAIシステム学習法を提案する.
【手法】本研究で用いるESWL治療結果予測AIシステムは,術前手術計画CT像,結石体積,患者メタデータから得られる計15特徴量を入力とし,除石成功率を出力する5層全結合ニューラルネットワークである.提案法は,このネットワークに以下の2段階教師あり学習を施すものである.まず,収集臨床データの入力特徴量を重み付き平均したInput Mixupデータを用いて学習させる.得られたネットワークを用いて収集臨床データの潜在変数データ,すなわち3層目出力の中間特徴量を抽出し,それらを重み付き平均したManifold Mixupデータを用いて4,5層目を学習させる.
【結果】提案法で学習したネットワークに対して術前CT像撮像後ESWLを行った単発尿管結石を有する171例を用いた5-fold交差検証を行ったところ,ROC曲線下面積の平均は 0.72,標準偏差は0.033であった.この結果は,収集データのみの学習時に比べて統計的有意(p<0.05)に予測性能が向上していた.
【結語】臨床データを用いた検証実験の結果,提案する多種Mixupを用いた2段階学習法が予測性能の改善に効果があることが確認され,提案法の有用性が示唆された.今後の課題としては,学習時ハイパーパラメータやネットワーク構造の検討,入力特徴量の追加・再検討が挙げられる.
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吉田 祐希, 横田 翔平, 松下 裕貴, 佐藤 啓, 森田 英剛, 西川 拓也, 福満 雅史, 川田 徹, 上村 和紀, 朔 啓太
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
167_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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重症心原性ショック患者において、Veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation(VA-ECMO)は総血流量・血圧を確保する救命デバイスである。一方、逆行性のポンプ送血は、心臓にとっては負荷となり肺水腫を引き起こすこともあり、臨床では、遠心もしくは軸流ポンプによる左室除負荷(LV venting)を行う。LV ventingの臨床的有用性は数多く報告されているが、冠循環を含めた系統的循環動態理解は未だ不十分であり、VA-ECMO+LV ventingの機械管理は症例数が多い施設における臨床工学技師の熟練によって成り立っている現状がある。本研究では、VA-ECMO下のLV ventingが循環動態と左室負荷、冠血流に及ぼす影響を犬正常心および不全心モデルで検証した。計5匹の全身麻酔下ビーグル犬を使用し、VA-ECMOとLV ventingを確立した。冠動脈左前下行枝の結紮により不全心かつショック状態を作成し、同時に動脈圧、左室圧、冠動脈血流量(左回旋枝)を記録した。VA-ECMO は血圧および冠血流を増加させる一方で、正常心におけるLV ventingの追加は冠血流を低下させた (正常: 45±12 vs. VA-ECMO: 70±20 vs VA-ECMO+LV venting: 45±13 mL/min)。また、不全心ではその傾向は弱まった。LV venting時は、左室仕事量の減少を介した自動調節能により冠血流は必ずしも血圧に追従しないことが明らかとなった。左室仕事量とそれに伴う冠循環変化を考慮した機械操作を行うことが最適なVA-ECMO管理・離脱につながる。
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佐々木 拓海, 中西 俊之, 辻 達也, 加古 英介, 田村 哲也, 藤原 幸一, 村島 美穂, 濱野 高行, 祖父江 和哉
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
167_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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【背景】
心臓手術後の急性腎障害(AKI)は、生命予後と関連する重大な合併症のひとつである。人工心肺中の平均血圧や灌流量、ヘモグロビン(Hb)と術後AKIとの関連が報告されているが、予防のための基準値は定まっていない。本研究の目的はこれらの管理目標値を明らかにすることである。
【方法】
2015年4月〜2023年7月に人工心肺を用いて手術を行った18歳以上の患者を対象とした。主要評価項目を術後7日以内のAKI発症(KDIGO基準)または死亡の複合アウトカムとして、人工心肺中の平均血圧(40〜70mmHg)・灌流量(2.0〜2.6L/min/m2 )・Hb(6〜9g/dL)の各閾値を下回った程度と時間の積で面積を求め、関連を検討した。年齢、性別、術前の推算糸球体濾過量(eGFR)、チャールソン併存疾患指数、手術内容、緊急手術、赤血球製剤の投与量を共変量として各閾値ごとに多変量ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
375人を解析し、182人(49%)がAKIを発症、1人(0.3%)が死亡した。全ての閾値で年齢と術前eGFRがAKIと関連した。平均血圧が70mmHg未満(調整オッズ比[aOR]1.02、95%信頼区間[95%CI]1.00–1.03、100mmHg*minあたり)、灌流量(100L/m2 あたり)が2.2L/min/m2 未満(aOR 3.33、95%CI 1.02–10.9)、2.4L/min/m2 未満(aOR 2.79、95%CI 1.18–6.59)、2.6L/min/m2 未満(aOR 2.37、95%CI 1.26–4.47)、Hb(100(g/dL)*minあたり)が8g/dL未満(aOR 2.62、95%CI 1.26–5.47)および9g/dL未満(aOR 1.48、95%CI 1.11–1.97)の面積が大きいほどAKIと関連していた。
【結語】
人工心肺中の平均血圧を70mmHg、灌流量を2.6L/min/m2 、Hbを9g/dLより高く維持することでAKIの予防に繋がる可能性がある。
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