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小島 太一, 大須賀 美恵子, 鎌倉 快之, 棒谷 英法, 常道 大智, 堀 淳二
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
195_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
As fully autonomous vehicles become more common, media browsing and PC work in the car increase, which is likely to cause carsickness due to a mismatch between visual and vestibular sensory information. We developed an original method to suppress carsickness by presenting visual stimuli expecting to reduce this inconsistency, and we conducted real car experiments on a test course with nine male participants (Ethics Review No: 2022-28). Subjective ratings and physiological measurements were employed during the experiment to verify the effectiveness of this approach. In our previously reported analysis of subjective ratings, we were able to induce stronger carsickness than in simulator experiments, but the effectiveness of the carsickness suppression method was not verified. In this study, we have conducted a comprehensive assessment of the carsickness suppression method, incorporating the analysis of physiological indices.
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竹本 亘希, 岡田 志麻, 万野 真伸, 牧川 方昭, 坂上 友介
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
196_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
脳梗塞等の中枢系の疾病の後遺症により手足の麻痺で苦しむ人が多く存在している.これに対して,手指の細かい動作の支援やリハビリテーションを目的としたウェアラブル・ロボット用いられているが,サイズが大きいものや,日常的に装着するにはおおがかりなものが多い.そのため,本研究では軽量で装着が容易なウェアラブルロボットとしてロボティック第6指の開発を行った.世界には6本指で生活している人が稀ではあるが存在しており,彼らは5指では両手でしなければならない作業を第6指を使用して片手でこなすことができる.特に,楽器演奏,例えばピアノでは,5指より容易に難しい曲を演奏することができる.本研究では,ピアノの打鍵動作に注目し,ロボティック第6指を用いた新奇な楽器演奏を目指した.ロボティック第6指の開発は3Dプリンタでの作成を行い,その後,動作実験を行い評価した.ロボティック第6指を動作させる生体信号は左腕の尺側手根伸筋の筋電図を用いた.実験対象者は健常女性5人(21.4±1.82)であった.評価方法は,まず,主観的評価としてSUS(System Usability Scale)指標を用いた.また,第6指の反射速度を評価するために,筋電図による打鍵入力から実際のロボティック第6指による打鍵までの時間の2つで行なった.結果としてSUS指標は(70.5±6.47)点であり,反射速度は(0,56±0.12)秒であった.この結果により,打鍵動作の面では多少の時間遅れを持つが,直感的な使用可能であることを示した.
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竹内 雅樹, 副島 裕太郎, 王 博宇, 隣 真一, 伏見 幹史, 関野 正樹
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
196_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
電気式人工喉頭(EL)は喉頭がんや咽頭がんによって声を失った人が声を取り戻すための方法の1つである。ELは円筒状のデバイスで、ボタンを押すとデバイスの先端にある振動子が振動するため、喉元に押し当てることで声道に振動が伝わり、口を動かすことにより発声を行う。しかし、ELの振動音は単純なパルス波であるため、使用者に関係なく単調で機械的なロボットが話しているような声しか出すことができない。この論文では機械学習の非線形回帰モデルを用いて、ヒトに近い声を生成するための電気式人工喉頭の振動スペクトル生成手法を提案した。まずは機械学習に用いる入出力データを自作の録音システムを用いて収集した。録音システムには3Dプリンタで印刷をした声道モデルとシリコン製のアダプタを用いることで、実際にヒトがELを使用して話している状態を再現したデータを生成することができた。次に、機械学習の非線形モデルを作成し、生成した入出力データを用いて学習を行った。ノード数15の中間層を入れることで、パラメータのサイズと学習誤差を共に最小にすることができた。従来型のELのパルス波と得られた振動音の比較評価を行ったところ、得られた振動音の方がよりヒトに近い周波数特徴を持つ、ということが分かった。特に4500Hzから5500Hzの高周波数帯域でより良い結果を示し、この周波数帯域はそのヒトの声らしさを決める第5ホルマントのある帯域のためヒトに近い声を生成できたといえる。
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RUOYU HE, 黒沢 正樹, 桐本 哲郎, 孫 光鎬
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
197_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
Radar technology, particularly Frequency-Modulated Continuous Wave (FMCW) radar, has garnered attention in the field of smart home monitoring due to its high sensitivity, long-range surveillance capabilities, and privacy-preserving characteristics. This study proposed a human motion state recognition system to determine motion state based on the spectrums form radar signals in home environment. A target’s velocity is assessed via micro-Doppler signature, compare against a velocity threshold, while its height signature discerns between high and low postures against a height threshold. The target’s horizontal position is determined via the Range-Angle map. The proposed threshold algorithm defines the motion state on velocity, height postures and indoor position. Subsequently, the performance of the system was evaluated by conducting experiments on three subjects. The results show the effectiveness, achieving accuracy of approximately 90%.
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増田 葉月, 岡田 志麻, 塩澤 成弘, 坂上 友介, 万野 真伸, 牧川 方昭
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
198_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
不妊症と月経随伴症状の増加は社会的課題であり,月経リズムや排卵日のモニタリングが重要である.既存の手法である排卵日予測検査薬や基礎体温計測は,毎日主体的に同じ時刻に計測する煩雑さがある.本研究では,より簡便な方法として,ウェアラブルデバイスで計測した睡眠中の心拍と睡眠情報に基づく卵胞期黄体期分類モデルを開発した.
18~34歳の正常な月経周期をもつ40名の女性を対象に,3周期にわたり,腕時計型心拍モニタ装置を夜間の睡眠中に着用させた.睡眠/運動/食事に関する制限は設けなかった.排卵日予測検査薬が初めて陽性になった日の翌日を排卵日とした.月経周期フェーズは,卵胞期(月経開始後5日~排卵日の前日)と黄体期(排卵日~月経開始日の前日)にわけた.
月経開始からの経過日,月経開始までの日数,概日リズム最低点時心拍数,平均心拍数,睡眠時間の5項目を機械学習のための特徴量とした.Group K Fold (k=5)による訓練データと検証データの分割,GridSearchCVによる最適ハイパーパラメータを探索し,卵胞期と黄体期に分類するロジスティック回帰モデルを作成した.
結果として,モデルの分類性能(適合率,感度,F1スコア)は,卵胞期黄体期いずれも90%以上であった.推定排卵日の平均絶対誤差は1.6日であった.今後は,正常周期以外の女性等モデルの適用範囲の拡大,排卵日予測を行う.
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坂 秀晟, 加藤 綾子, 金澤 悠喜, 桑名 健太
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
198_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
分娩時,胎児心拍数と子宮収縮の2つの時系列データからなる胎児心拍数陣痛図(Cardiotocogram: CTG)を判読することで胎児の状態を評価している.しかし,CTGの判読は難解であることから,判読結果の再現性の低さが問題となっている.この問題に対し, CTGの時系列データを画像として扱った深層学習を用いた判読システムが複数開発されている.これらの判読システムの性能向上に向け,胎児心拍数波形のレベル分類のガイドラインにおいてCTG波形の周期的な特徴による分類が行われていることに着目し,CTGを周波数スペクトル等の異なる特徴領域に変換して学習させることを提案する.本演題ではCTGの変換方式の違いによるCNN(Convolutional Neural Network)の学習モデルの精度を比較し,性能を向上させる入力データの確認を目的とする.これまでに時系列データ,周波数スペクトル,スペクトログラム,リカレンスプロットの4つの画像データセットに基づき,胎児の状態を2つのレベルに分類評価する学習モデルを作成した.各学習モデルのROC曲線のAUCを算出した結果,時系列データ0.68, 周波数スペクトル0.86, スペクトログラム0.50, リカレンスプロット0.61の精度を得た.周波数スペクトルによる学習モデルの精度が最も高いことから,周波数領域に重要な特徴量が含まれていることが示唆された.
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西田 健太郎, 盛田 健人, 真川 祥一, 池田 智明, 二井 理文, 若林 哲史
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
199_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
胎児発育不全は,妊娠期間中に胎児の成長が遅延し,胎児の体重が小さくなる産婦人科疾患である.発症すると出生前後の健康リスクが高まるため,早期の発見や管理が求められる.現在は超音波検査で推定される胎児の体重を用いて診断されるが,胎児発育不全の原因の特定が困難であることから,新しい診断手法が望まれている.近年の研究では血中酸素濃度を撮影するBOLD MRIを用いて,胎児発育不全と胎盤酸素化機能の関係性が示されたことから,新たに診断に活用できる可能性がある.そこで本研究では,BOLD MRIの胎盤領域における画像特徴量を用いた深層学習による胎児発育不全の推定を行った.ここではBOLD MRI動画像における胎盤領域のアノテーションが必要であるが,大量の動画像フレームに対するアノテーションには多大な労力がかかる.そこで本研究では時系列方向に領域伝播を行い,作業量の低減を行った.また,胎盤領域における画像特徴量を抽出し,時系列データとして深層学習モデルを学習することで,胎児発育不全か否かの二値分類を行った.
提案手法により,胎児発育不全をF値0.778で推定できた.また,胎盤領域のセグメンテーションありとなしで推定精度を比較した結果,胎盤領域のセグメンテーションありで高い推定精度を得たことから,本手法における胎盤領域のセグメンテーションの有効性が示された.
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Norio SHINOZUKA, Ryuichi FUJISHIGE, Junya NAGUMO, Ayaka KAWABE
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
199_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
Bioelectrical signals obtained from the abdominal wall of pregnant women include maternal and fetal electrocardiogram (mECG / fECG), electrohysterogram (EHG), and electromyogram (EMG) from abdominal smooth muscle group. In this study, we investigate batch separation process and analysis among these signals.
Four active electrodes on the upper, lower, left, and right sides of the maternal abdomen and reference/ground settled above the pubic bone.
Front-end of AP108 (Miyuki Giken) was used with 1kHz sampling. Normal CTG (cardiotocograph) was simultaneously recorded. MODWT (Maximum overlap discrete wavelet transform) and inverse MODWT (Maximum overlap discrete wavelet inverse transform) on MATLAB were applied.
mEGG, fECG, EHG, and EMG regions were sequentially extracted and processed in a time-series manner.
EHG signals were successfully separated form the maternal smooth muscle EMG associated with contractions after the 2nd stage of labor. Proposed method must be a promising way for monitoring labor output (contractions and abdominal pressure) during delivery.
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澤 風吹, 藤田 大輔, 嶋田 兼一, 石井 一成, 小橋 昌司
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
200_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus: iNPH)は歩行障害,認知障害,尿失禁を引き起こし,高齢者に多くみられる疾患であり,シャント術により症状の改善を期待できる.一方,進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy: PSP)も類似の症状を有するが,効果的な治療法が明らかでない.そのため,iNPHとPSPの鑑別診断は極めて重要である.現在の診断手法は,脳MR画像を主観的に評価するものであり,知識と経験に依存するため,読影者間変動が無視できない.本研究では,機械学習による脳MR画像を用いたiNPHとPSPの識別法を提案する.本提案法では,脳の解剖学的領域ごとの体積を定量化するVBM(voxel based morphometry)解析による特徴抽出を用いてiNPHとPSPとの識別を行う.VBM特徴量は,脳画像の白質・灰白質の分離,形状の標準化,および確率的アトラスとの対応付けを行うことで,灰白質の各領域の体積比として求める.識別は機械学習アルゴリズムであるXGBoostの2クラス分類モデルにより行う.また,SHAP(SHapley Additive exPlanations)を用いて特徴量選択を行う.実験結果より,提案手法のAccuracyは0.863,AUCは0.958であった.
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衣川 緋呂, 川上 文貴, 今井 基貴, 宮本 克彦, 熊谷 寛, 小川 恵美悠
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
200_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
我々は、低侵襲なパーキンソン病 (PD) 原因療法の開発を目指し、PDモデル細胞に対する光照射効果をPD関連タンパク質の定量評価により検討した。現在のPDに対する治療は薬剤・外科的療法の対症療法のみであり、薬剤の副作用や外科的治療の侵襲性があるため、低侵襲な原因療法の開発が求められている。我々は構造化光照射による生体内反応活性作用と物理的作用による新たな低侵襲なPD療法を提案する。PBMは細胞破壊を伴わない生体内反応活性化であり、PD患者の脳神経変性細胞における酸化ストレスを低減させ、正常な細胞機能を取り戻す期待ができる。位相構造を変化させた構造化光には、軌道角運動量を対象に付与する光渦などがある。細胞に対する軌道角運動量は、タンパク質の構造に作用させることで、原因タンパク質であるαシヌクレイン凝集体をほぐす可能性がある。
本研究では、構造化光およびPBMの効果を検討するために、PDモデル細胞における原因タンパク質であるαシヌクレイン、ドパミン産生に関わるチロシンヒドロキラーゼ、抗酸化ストレス指標Nrf2の定量的な評価を目的とした。照射48時間後にWB法によるタンパク質の定量から、各条件の比較を行った。構造化光照射によりαシヌクレインの減少が最も顕著に見られ、軌道角運動量とPBMの組み合わせにより、酸化ストレス低減からPDの原因タンパク質を低減し、ドパミン産生を促す可能性が示唆された。
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飯野 杏菜, 劉 爽 , 関野 正樹
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
201_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
経頭蓋磁気刺激(TMS)は精神疾患患者に対して、電磁誘導を用いて脳を繰り返し刺激し、症状を改善する治療法である。コイルが脳内に誘導する電場の計算には、有限要素法(FEM)などの数値計算が用いられてきた。しかしこれらの手法では、コイルの位置を変更するとすべてのシステム行列を再構成する必要があり、その都度1-2時間の計算時間を要する。本研究の目的は、任意のTMSコイル形状に対して、誘導電場をリアルタイムで算出するアルゴリズムを開発することである。相反定理を用いて、脳内の電場計算の代わりに、脳内の双極子に由来する脳の外側の磁場を計算した。これにより、コイルの位置が変化してもシステム行列を再構成する必要がなくなった。さらに、2次電流についても、FEMではコイルの位置を変化される毎に計算していたが、脳内の双極子の場所はコイルに依存しない性質を利用し、コイルの位置を変更しても、計算し直す必要のない方法論を考案した。こうした効率的な計算手法により、コイル位置が変化しても、行列の乗法のみによって脳の外側の磁場分布を得られるようになった。提案手法で円形コイルが誘導する電場分布を数値計算した結果、誤差はFEMより2.69%小さい2.17%であった。さらに、数値計算の時間はFEMよりも2時間以上短縮した4.3秒で脳内の誘導電場を計算し終えた。本研究により、患者に応じた最適なコイル位置を迅速に決定できる。
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飯野 杏菜, 伏見 幹史, 田畑 純一, 菊池 拓真, 副島 裕太郎, 和田 真孝, 中島 振一郎, 野田 賀大, 関野 正樹
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
201_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
経頭蓋磁気刺激(TMS)は寛解率向上に向けて、大脳皮質より深い脳領域を非侵襲的に直接刺激することへの関心が高まっている。先行研究では、様々なコイルに対して脳内に誘導される電場を計算し比較することで、深部刺激を実現するコイルを探索するという帰納的なアプローチがとられてきた。しかしこの手法では、理論的に脳への深達度が最強になるコイルは得られない。そこで本研究の目的は、電磁気学的観点から最強の深達度をもつコイルを導出することである。我々は新たに演繹的アプローチを採用し、まず電磁気学的に最強の深達度を実現する脳への誘導電場を記述した。記述の際は、準静場を効率的に記述する球面調和関数を用いた。その後、逆問題手法により、所望の電場を実現するコイル巻線を導出した。さらに、導出した巻線部分に溝が入ったヘルメット型の巻線フレームを3Dモデリングソフトにより設計し、3Dプリンタを用いて製作した。フレームの溝にコイルを接着することでTMSヘルメットを完成させた。導出したコイルを先行研究と同等の条件で、有限要素法による数値シミュレーションを実施した結果、我々のコイルは臨床で実現しうるコイルのなかで最強の深達度を実現できていることを確認した。従って我々のコイルは寛解率向上を見込める。今後は臨床試験に向けヒトの頭部を模したファントムを製作し、我々のコイルが誘導する電場分布を評価し、性能・安全性の実証を目指す。
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永澤 朗, 藤田 大輔, 渡辺 翔吾, 連 乃駿, 飯原 弘二, 小橋 昌司
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
202_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
脳血管疾患の一つである脳内出血(ICH: intracerebral hematoma)は,脳卒中全体の約18%を占める,高い死亡率と深刻な後遺症リスクを伴う疾患である.ICHのコンピュータ診断支援として,ICH領域の自動抽出による体積,形状,位置の評価が有効である.ICH領域抽出の従来法の多くはsemantic segmentationに基づいており,ICHと同様の高CT値を有する脳室内出血(IVH: intraventricular hemorrhage)の誤抽出が懸念される.本研究では,ICHとIVHの画像特徴の違いをより詳細に評価するため,Coarse segmentationとFine classificationの2段階によるICH領域抽出法を提案する.第1段階のCoarse segmentationでは,U-NetによるSemantic segmentationによりICHとIVHで構成される高吸収領域を抽出する.第2段階のFine classificationでは,高吸収領域内の各ボクセルを,イメージパッチを用いたCNNによりICHとIVHに識別する.イメージパッチを用いたCNN識別を用いることで,問題を単純化し,入力データ数の増加により精度向上を期待する.提案法を評価するため,ICHを有する被験者471例に適用した.Coarse segmentationでは,U-Netの特徴抽出バックボーンとして,VGG16 ,VGG19,Resnet152を比較し,Fine classificationではVGG16を使用した.実験結果から,Coarse segmentationでは,Resnet152が最も優れ,テストデータにおける高吸収領域の抽出精度は,Precisionが91.2%,Recallが92.3%,F値が90.9%であった.また,Coarse segmentationで得られた高吸収領域に対してFine classificationを適用した結果,テストデータにおけるICHの抽出精度は,Precisionが83.2%,Recallが84.6%,F値が82.3%であった.
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木村 裕一, 野口 日奈子, 津川 幸子, 有澤 哲, 阿部 弘基, 高橋 琢哉
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
202_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
【はじめに】脳における主要な興奮性神経系を構成するAMPA受容体の濃度は、新規に開発した放射性リガンドである11C-K2を用いたPET撮像によって入手可能となった(Miyazaki, Nature Med, 2020; AMPA-PET)。そこで本研究では、AMPA-PET画像に精神疾患に由来する情報が内包されているかUMAPアルゴリズムを用いて検討した。【方法】AMPA受容体は主たる興奮伝搬系であるが故に、精神疾患以外の、例えば性別や年齢といった交絡因子の影響が大きく、これが疾患情報の抽出に影響する可能性がある。一方UMAPは、確率モデルを仮定することなくトポロジーに基づいて特徴量空間におけるデータの分布を可視化するアルゴリズムであり、更に特徴点同士の関係に、精神疾患や交絡因子の情報を重畳させることが可能である。そこで、健常者、自閉スペクトラム症候群、双極性障害、鬱病、統合失調症、計251症例に対してAMPA-PETを実施し、Hammers Atlas (Hammers, Human Brain Map, 2003)を使用して全脳を75部位に分けた特徴量とした後、これをUMAPで2及び3次元に射影した。尚、PET撮像は、撮像が実施された各PET施設の生命倫理委員会の承認の下で実施した。【結果】脳局所でのAMPA受容体濃度を全脳で正規化した方が、疾患に基づいた特徴点の修正によく反応した。その結果、UMAPによって次元縮約された各被験者は、精神疾患毎のクラスターを構成した。【結論】以上から、AMPA-PETには精神疾患に関する情報が内包されており、疾患の鑑別には全脳正規化が有効であることが示唆された。今後は、精神疾患鑑別アルゴリズムへのUMAPの適用を検討する。
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片瀬 瑛仁, 加藤 昇平, 佐久間 拓人, 村上 丈伸
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
203_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
認知症患者の増加は世界的な問題である.現在医療現場では,認知症の早期発見のために認知機能の低下を測る指標として,MMSE やMoCA-Jなどの言語を用いる認知症簡易検査を利用している.認知症の治療薬を適切に利用するために,認知症の進行状況を世界共通の基準により評価する必要がある.しかし,言語を用いる認知症検査には,母国語間の等価性の問題が指摘されている.そこで,言語を用いない認知機能障害の検出モデルを提案する.経頭蓋磁気刺激下で測定した右第一背側骨間筋から取得した運動誘発電位を用いて,認知機能障害を検出し,その重症度を推定した.
本稿では,記憶障害を訴えた健常者8名および認知機能障害患者18名から得た運動誘発電位の振幅から特徴量を抽出し,データの不均衡を考慮した上で機械学習を用いて認知機能障害を検出し,正解率0.85の判別性能を得た.また,認知症のバイオマーカーであるAβ42への回帰分析では,決定係数0.242を得た.
本研究は,従来の医療現場での認知症検出では利用されていなかった経頭蓋磁気刺激下の運動誘発電位を,独自の機械学習を用いた提案モデルを利用することにより,軽度認知症の検出・重症度推定に適用した.認知症初期にしか投与できない認知症の治療薬による,認知症の進行の抑制に寄与し,医療現場の診断・診察にかかる負担を軽減する一翼を担うことが期待される.
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鳴海 太陽, 小林 透己, 榛葉 健太, 小谷 潔, 神保 泰彦
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
204_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
連合学習とは観念間の結びつきを学習することである.連合学習は複数の刺激が共起するときに起こることから,連合学習の神経基盤の最小単位は,ある神経細胞が複数の神経細胞から同時に入力を受け取る際の,細胞間の結合強度の変化にあるという仮説がある.本研究は,連合学習の神経基盤の理解のために,複数の神経細胞を同時に活動させ,かつ細胞間の1対1の結合強度の変化を捉えられる解像度で,ネットワークスケールの神経細胞の活動を計測することを目的とした.単一神経細胞スケールでの計測を実現するため,高密度微小電極アレイ上で神経細胞を分散培養し,細胞外電位を計測した.単一神経細胞スケールでの発火誘発を実現するため,光遺伝学により神経細胞に光感受性を持たせ,デジタルミラーデバイスによる微小面積の光照射で発火を誘発した.結果,光照射した単一神経細胞を高頻度で複数回発火させ,連続するシナプス入力が加重される現象である時間的加重を誘発した.単一神経細胞の連続発火間隔が短くなると,時間的加重による発火が起こりやすくなることを発見した.また,並列光照射により複数の神経細胞を同時発火させ,複数の細胞からのシナプス入力が加重される現象である空間的加重を誘発した.計測時間中の発火確率の変化から,神経細胞間の結合強度の変化を観察し,同期活動後の発火確率の変化を発見した.
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青木 倫太郎, Jose Gomez-Tames, Wenwei Yu
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
204_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
Transcranial magnetic stimulation (TMS) is a neurostimulation technique that can be used to identify cortical functional sites in the investigation of brain functions and holds clinical significance for pre-surgical mapping of motor and language functions. Although various motor brain mapping methods have been explored, the extensive number of TMS stimuli presents a burden on patients, limiting its application. The aim is to explore the optimal stimulus conditions necessary for effective TMS mapping. In particular, this study investigates the impact of changing the TMS coil parameters (orientation and position) on the estimation of cortical sites based on the relationship correlation between computed TMS-induced electric currents in the brain and measured MEPs. It is expected that is that refining the parameters will facilitate more detailed and practical mapping.
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磯村 こはる, Jose Gomez-Tames, Wenwei Yu
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
205_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
Low-intensity focused ultrasound (FUS) is a noninvasive neuromodulation technique with improved spatial precision and penetration depth compared to other noninvasive stimulation approaches. FUS has demonstrated its efficacy in modulating the human brain. While transspinal focused ultrasound stimulation (tsFUS) has been reported to modulate spinal reflexes in healthy rats, there are no reports on humans, mainly due to complexity on spinal cord targeting and safety concerns. The aim of this work is to computationally explore the feasibility of tsFUS in humans, using linear pressure wave equation to estimate acoustic pressure on the spinal cord (Sim4life). The results indicate that the maximum acoustic pressure in the spinal cord was three times higher than that in the brain (thalamus) for the same stimulation intensity at 500 kHz. This suggest the viability of tsFUS in humans applications.
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矢崎 優翔, 佐藤 廉, 秋元 治朗, 深見 真二郎, 永井 健太, 齋藤 祐樹, 熊谷 寛, 小川 恵美悠
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
206_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
我々は、悪性脳腫瘍に対する穿刺型拡散光照射による光線力学療法の実現に向けて、光線追跡シミュレーションを用いて組織内光伝搬を検討した。悪性脳腫瘍に対するサルベージ治療として、光線力学療法(PDT)の有用性が示されている。PDTは腫瘍親和性を有する光感受性薬剤を投与後、脳腫瘍表面からのレーザー光照射による選択的治療であるが、現状のPDTは摘出が困難な深部腫瘍には適応できない。
我々は脳腫瘍に細径光照射プローブを穿刺して行う新たなPDTの実現を目指し、腫瘍組織内光伝搬の検討を目的とした。先行研究では、神経膠腫細胞の皮下移植マウスモデルを使用し、レザフィリンの腹腔内投与後、664 nm半導体レーザーの穿刺照射による治療領域のをin vivo検討が行われた。この実験を再現するように、モンテカルロ法による光線追跡シミュレーションを行い、光強度分布を算出した。シミュレーションでは、腫瘍組織を楕円回転体で模擬した3D CADモデルを作成し、吸収係数0.431 cm -1で、散乱係数23.43 cm -1、非等方パラメータ0.9、屈折率1.4と設定した。腫瘍モデルの中央に周方向に均一照射が可能な細径プローブの穿刺を模擬し、拡散光照射による組織内光伝播シミュレーションを行った。先行研究の壊死領域と今回の計算結果の差から、治療効果の推定には光伝搬解析に加えて血管遮断による影響を考慮したモデル構築の必要性が示唆された。
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岡本 雷人, 榛葉 健太, 小谷 潔, 神保 泰彦
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
206_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
多くの神経疾患において、特定の細胞種の機能異常との関連性が認められ、神経ネットワークの理解を深める上で神経細胞を分類することは重要である。神経ネットワークの情報伝達の要素である神経細胞の電気的特性を、発現遺伝子による細胞種の分類結果と対応付ける試みが近年なされている。しかし、単一細胞ごとの解析に留まっており、神経ネットワークに影響のある神経細胞同士の結合は未検討である。本研究は、神経細胞の発現遺伝子と電気活動を、位置情報を保存した状態で観察する手法の確立を目的とした。神経細胞の位置情報を保つために、空間トランスクリプトーム解析技術HybISSと高密度微小電極アレイ法を組み合わせた。HybISSはスライス組織を対象とした手法であるが、本研究では神経ネットワークを網羅的に観察するために分散培養系に適用した。スライス組織と分散培養系の違いに起因する課題に対処するため、画像を分割して局所的な試料の変形に対処する解析手法を提案し、遺伝子検出の信頼性を向上させた。神経細胞の発現遺伝子と電気活動の様態を比較したところ、先行研究で報告された種類の遺伝子発現と電気的特性を有する細胞種を発見し、本手法によって遺伝子発現解析と電気活動計測の両立が可能であると示された。今後はネットワークレベルでの解析を行い、細胞集団形成の新たな法則の発見を目指す。
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小枝 正汰, 藤原 幸一, 角 幸頼, 角谷 寛
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
207_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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【背景】起立性低血圧症(Orthostatic hypotension; OH)は特発性レム睡眠行動障害(idiopathic REM sleep behavior disorder; iRBD)患者にみられる典型的な自律神経機能障害である.OHの有無を判定する手法としてシェロングテストがあるが,これは患者・医療者双方にとって負担が大きい.本研究では,より簡便な自律神経機能の評価法を開発するため,患者の臥位の心拍変動(Heart Rate Variability; HRV)からOHの有無を判定する機械学習モデルを構築した.【方法】本研究では,健常者及びiRBD患者を募集し,心拍センサを用いて,シェロングテスト中の被験者からR-R interval(RRI)を計測した.患者の臥位のRRIからHRV指標を算出し説明変数とした.本研究ではランダムフォレストを用いて健常者とiRBDを分類するモデルと,ロジスティック回帰を用いてOH(-)とOH(+)を分類するモデルを組み合わせて,最終的に三値を分類するモデルを開発した.【結果】分類性能はマクロ平均で正解率が81%,再現率が73%,精度が82%,F値で68%であった.最も検知が必要とされるOH(+)に対する感度は100%であった.【結論】本研究は,臥位のHRVから患者の自律神経機能の評価を可能にし,臨床現場での負担を軽減する可能性を示した.
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鈴井 良輔, 夏目 淳, 橋本 実沙, 山田 美沙恵, 成田 肇, 光松 孝真, 隈井 すみれ, 伊藤 祐史, 山本 啓之, 中田 智彦, ...
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
207_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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【目的】乳児てんかん性スパズム症候群(IESS)は乳幼児の発達性てんかん性脳症である。IESSの長期てんかん発作予後を予測することは,特に原因不明のIESS患者において困難である。本研究は、IESSの特徴的な脳波であるhypsarrhythmiaから機械学習を用いて原因不明のIESSの長期発作予後を予測することを目的とした。【方法】当院で原因不明のIESSと診断、治療され5年以上追跡された18例を対象とした。フォローアップの中でてんかん治療が不要となっていた13例を予後良好群、治療の継続が必要とされていた5例を予後不良群とした。予後良好群の一部のみを学習用データとし、異常検知をMulti-heads Self-attention autoencoderを用いて行った。Hypsarrhythmiaの主な構成要素であるδ帯域およびβ帯域を抽出し、ヒルベルト変換を用いて各帯域の位相を算出し特徴量とした。学習時に最小化する誤差として再構成誤差を採用した。ランダムにデータセットを交換して10回繰り返した。【結果】予後不良群の同定において、モデルはそれぞれ感度1.00±0.00、特異度0.94±0.09、精度0.97±0.05、ROC曲線下面積は0.96±0.05であった。【結論】Self-attention autoencoderは、原因不明のIESSの発作予後予測を高い精度で可能にした。
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太畑 花菜, 猪山 昭徳, 吉野 公三
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
208_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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パーキンソン病(PD)と睡眠時無呼吸症候群(SAS)の併発は少なくない. SASのあるPD群(以後PD群)とSASのある非PD群間(以後非PD群)に睡眠パターンに違いがあれば, それを利用してPDを早期にスクリーニングできる可能性がある. 我々はこれまでに中途覚醒,NREM1,REM睡眠段階時の5秒スケールの脳波状態の遷移速度を解析し, PD群の方が非PD群より遅いことを報告した.本発表では,睡眠段階が遷移した直後もしくは遷移する直前の遷移期と変化しない安定期の脳波状態の遷移速度を計算し,PD群31名と傾向スコアマッチ群した非PD群31名間を比較した内容を報告する.解析の結果,中途覚醒,NREM1,REMのいずれの睡眠段階においても,遷移期の遷移速度が安定期に比べて有意に速かった.中途覚醒段階では安定期でPD群の遷移速度が非PD群より有意に遅く,NREM1段階では遷移期と安定期両方ともにPD群の方が非PD群よりも有意に遅く,REM段階では遷移直後の遷移期でPD群の方が非PD群より有意に遅かった.以上より,SAS患者の睡眠脳波状態の遷移速度にPDが影響を与えるphaseは中途覚醒,NREM1, REMの各睡眠段階間で異なることが明らかとなった.
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長柄 まりも, 久保 孝富, 山川 俊貴, 藤原 幸一, 池田 和司
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
208_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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飲酒は時に心身に悪影響を及ぼす.適量の飲酒であれば円滑なコミュニケーションの補助などポジティブな効果をもたらすが,摂取量が過多になると判断力の低下や,急性アルコール中毒など様々な有害事象を引き起こしてしまう.個人の心身の問題に留まらず,社会的な観点からも悪影響が出ない範囲の酩酊状態までに抑えることが望まれる.
酩酊度合いに関する計測手段はいくつかあり,呼気中アルコール濃度検査もその一つである.一方で経時的に変化する酩酊度合いを検出するためには,連続的なモニタリングが必要となる.そのため,連続的な計測が可能な心拍変動による酩酊度合いの評価が着目されるようになっている.心拍変動指標は自律神経活動と相関することが知られており,酩酊状態も自律神経の変化を生じると考えられていることから,心拍変動は酩酊状態の変化を検知する上で適した指標になりうると考えられる.しかし,心拍変動と酩酊段階について詳細に評価している研究は乏しい.
本研究では,心拍変動指標が酩酊段階に応じてどのように変化しているのか明らかにする.実験では被験者に実際に飲酒してもらった上で,心拍変動に加え,逆唱・片足立位などの各種神経学的検査および呼気中アルコール濃度検査についても計測を行った.
本報告では,その基礎的な検証として呼気中アルコール濃度から推定した酩酊段階,心拍変動指標,各神経学的検査の相関など基礎的検証内容について報告する.
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森田 滉生, 木下 雅貴, 杉 剛直, 松田 吉隆, 後藤 聡, 野平 晴彦, 兵藤 道大, 久保田 有一
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
209_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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集中治療室(Intensive Care Unit,ICU)などの救急医療の現場において,脳波検査が実施されることは,非痙攣性てんかん重積や治療の予後診断において有用である.しかしながら,脳波判読医の不足や電極を装着するには専門的な技術が必要であるなどの理由から脳波検査が日常的に行われていない.著者らは,ヘッドセット型脳波計で記録されたデータから脳波特徴を自動解析するシステムを開発している。本システムは,脳波データに加えて加速度情報を同時記録可能である.これらの情報を基に、脳波解析で問題となる電極接着や体動,眼球運動等に起因したアーチファクトを自動検出する.その後,ICUの脳波記録で重要な判読項目であるContinuity(脳波の連続性),ならびに背景脳波活動(優位律動と徐波)などの特徴を評価する.本システムは,ICU20例と健常ボランティア20例の記録データにて検証を行った.ICUの脳波と健常ボランティアの脳波では,アーチファクトの混入頻度も含めて脳波特徴は大きく異なっているが,いずれの記録データに対しても,概ね脳波特徴を把握できていると判断された.今後は,ICUの脳波において重要となるスパイク波や周期性放電の自動検出法開発などの汎用性の拡大と,解析された特徴と視察による特徴を詳細に比較した精度検証を進めていく.
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河西 璃玖斗, 後藤 和彦, 杉 剛直, 松田 吉隆, 後藤 聡, 池田 拓郎, 山崎 貴男, 飛松 省三, 後藤 純信
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
209_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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視覚誘発電位(visual evoked potential,VEP)は,視覚への刺激により大脳皮質野に生じる電気反応である.VEPは視覚機能の評価や視覚疾患の診断に利用される.VEPは脳波に比べて低振幅であるため,VEP波形を抽出するためには刺激同期加算平均法が用いられる.加算平均に用いる単一試行データにアーチファクトなどの雑音成分が含まれると,VEP波形の歪みや頭皮上分布特徴に影響を与える.そのため,加算平均を行う際には個々の単一試行波形から加算平均に適したデータを抽出する作業が重要となる.本研究では,これまで視察によって行われていた単一試行波形の選択を,自動化することを目指した.記録された単一試行データより,まず眼球運動と筋電図に起因したアーチファクトを自動検出した.次に,前頭部と後頭部の複数電極に対して,電位変動の大きなデータを自動検出した.上記の手順で選択された単一試行波形を用いて,加算平均波形を得た.頭皮上60チャンネルより記録された運動知覚刺激時のVEPデータ3例に対して本法を適用し,熟練者による視察での選択加算平均の結果と比較した.視察で選択されたデータと自動選択されたデータの一致率は69.5%であり,いずれも明瞭なVEP波形が導出された.本方法は,臨床におけるVEP波形導出の補助手段として有効と考えられる.
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小島 宰門, 加納 慎一郎
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
210_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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聴覚BCI(brain-computere interface)は聴覚刺激により誘導されるユーザの脳活動から意図を抽出し,外部機器の制御を可能にする技術である.我々はこれまでに,音脈分凝と呼ばれる錯聴現象を用いて複数の音脈を提示し,ユーザの音脈に対する選択的注意を検出する聴覚BCIシステムを提案してきた.しかし,試行の開始からユーザが注意を向けている音脈を推定するまでの時間(試行時間)が最適化されておらず,検出精度と情報伝達速度の両立ができていなかった.そこで本研究ではDS(dynamic stopping)を用いて,各試行に対して動的に試行時間の最適化を行い,検出精度と情報伝達速度に対する効果について検討した.計15名の被験者に対して行った,分凝知覚される4種類の音脈への選択的注意課題で得られた脳波データを用いて,オフライン解析によるシミュレーションを行った.その結果,DSを適用しなかった場合,検出精度0.83,情報伝達速度0.82 bit/min,適用した場合,検出精度0.76,情報伝達速度2.01 bit/minであり,DSの適用により検出精度を大きく低下させることなく,情報伝達速度を大きく向上させることができた.本結果から,音脈分凝を用いたBCIパラダイムの試行時間の最適化と,情報伝達速度の向上が可能であることが示唆された.
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水谷 奏心, 島田 尊正
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
210_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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1 背景
人間が生きていくうえでコミュニケーションは必要不可欠であり、それには身体動作が伴う。疾病等により何らかの原因で身体動作ができない場合でも脳活動から直接意思を読み取るBCI技術を用いればコミュニケーションが可能となるが、より短時間でより高い意思判読精度の実現が課題となっている。
2 目的
脳波のµリズムは運動イメージで抑制される。先行研究で手の運動において色彩の効果を用いてμリズムの抑制が強まったことが報告されているが、本研究では足の運動について実験を行い、色彩効果の他部位への効果について検証する。
3実験方法
被験者には20秒間、足を蹴り上げる運動を繰り返している動画を見ながら、同様のイメージをするタスクを課した。動画は右足のみ・左足のみの運動に分かれており、又それぞれ赤・青・緑・無彩色に着色した。また、心理効果のアンケート調査も行った。
4実験結果
赤・青において、他色と比べ強いμリズム抑制の傾向がみられた。またその二色において共通した心理効果があることがアンケートからわかった。
5 考察
結果より、従来の手の場合と同様の効果が見られた。「覚醒」と「注意を引き付けられる」という性質が大切であり、赤色に強くみられるが、青色でも見られたことから、今後μリズムのパワーの抑制においては色に限らず刺激に対してどれだけ注意を引き付けられるかが課題となるであろう。
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田中 慶太, 渡邉 弘毅, 山田 怜央, 金丸 真奈美
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
211_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
聴覚情報処理障害(APD)は,正常な聴力を持つにもかかわらず聞き取りに困難を感じる障害であり,その原因や評価,診断方法は不明瞭である.APDの一因として注意機能が考えられている.本研究では,APDの評価に用いられる両耳分離聴検査を利用し,その際の脳活動を計測することで分配的注意の定量的評価を目的としている.計測には健常者43名が参加し,全員に両耳分離聴タスクを実施した.このタスクは,左右の耳に異なる単語(タコ,イカなど)を同時に呈示し,受け取った両耳の言語音を紙に記述するタスクである.計測条件として,タスクを実行するActive条件と,実行しないPassive条件の二つを設定した.呈示音は35Hzと45Hzの異なる変調周波数で振幅変調され,周波数タグ付けを行った.これにより,変調周波数に対応した35Hzと45Hzの聴性定常応答(ASSR)が誘発され,左右の耳由来のASSRを区別した.解析では,Active条件下のASSRからPassive条件下のASSRを差し引き,注意によるASSRの変化を抽出した.さらに,左右聴覚野及び左右耳のASSRの差異を正答率と関連づけて検討した.その結果,タスクの正答率は右耳で高かった.また,ASSRの振幅は左聴覚野で大きく,正答率との相関では,右耳の正答率と右耳由来の左聴覚野のASSRとの間に有意な相関がみられた.これは左右耳への分配的注意を左聴覚野から定量的に評価できることを示唆する.
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伏見 幹史, 隣 真一, 船谷 聖子, 関野 正樹
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
211_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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非侵襲に脳活動を計測可能なモダリティである脳磁図(MEG)において.近年,新規磁気センサが開発され従来よりも高分解能な磁場測定の実現が期待されている。本研究では,下肢の電気刺激に対するラットの体性感覚誘発反応(SER)を対象とし,光ポンピング磁力計(OPM)を用いて磁場分布を高分解能で測定するための多点測定システムを構築し,MEG測定を実施した。本研究は,OPMやダイヤモンド中の窒素-空孔中心(NV)といった新規センサを用いたヒトMEGに対するベンチマークとして有用であるだけでなく,小動物の脳活動を侵襲的な電極計測に替えてMEGで測定するためのフレームワークの確立に貢献するものであり,倫理的観点からも望まれる。
はじめに,侵襲的な電極測定により最適な刺激条件を決定し,その後,磁気シールドボックス内にすべて非磁性材料で構築した測定系を用いてOPMによる磁場測定を行った。電極測定の結果から,電流値2.0mA,パルス幅600us,およびパルス間隔3Hz程度の刺激を与えたときに大きなSERが生じることが確認された。磁場測定においては,測定された磁場の時間波形が電極測定と一致する潜時にピークを示しており,誘発反応が正しく検出されたことが示唆された。一方で,磁場の空間マップには典型的な湧き出し・沈み込み対が見られず,さらなるノイズとアーチファクトの除去が必要であると考えられる。アクティブキャンセルコイルの導入や異なる刺激パラダイムの試行が今後の課題である。
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長山 和亮, 廣岡 祐仁, 中村 麻子
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
212_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
紫外線や放射線,機械的刺激などの外的ストレスは,細胞内でDNA損傷を誘発する.DNA損傷の中でもDNAの二本鎖切断損傷(Double Strand Break:DSB)は,慢性的に蓄積すると細胞のがん化に繋がることから極めて危険性が高いとされている.ところで,放射線生物学の分野では,放射線が照射された細胞のみならず,その周辺細胞にもDNA損傷が生じること(バイスタンダー効果)が報告されている.生体内では,細胞同士が結合し組織化していることを考慮すると,圧縮などの力学刺激も細胞間を伝わって,細胞へのダメージとして作用する可能性がある.そこで本研究では,自作した実験系で皮膚線維芽細胞に局所的圧縮を加え,圧子直下ならびに圧子から離れた領域の細胞運動やDNA損傷を詳しく調べた.その結果,圧子直下だけでなく,圧子から離れている領域(バイスタンダー領域)の細胞運動が著しく促進され,隣接する細胞同士が押し合い擦り合うような特徴的な動きが見られた.バイスタンダー領域の細胞では,核が細長く変形して,DNA損傷が無負荷群(Control)の4倍に増加していた.このように,機械的刺激が細胞組織に間接的に作用して伝播することによってDNA損傷が蓄積され,細胞のがん化を引き起こすといった新たなメカニズムが考えられる.
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田橋 優奈, 大出 李雲, 藤原 幸一, 武田 淳一, 大野 欽司
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
212_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
フリー
DNAは,遺伝情報を構成する物質であり,遺伝情報を持つエクソンという塩基配列と遺伝情報を持たないイントロンという部分が交互に並んで形成されている.DNAがmRNAへと転写される際にスプライシングによってメッセンジャー RNA 前駆体 (pre-mRNA) からイントロンは排除される.エクソン上の⼀塩基置換 (SNV)は多くの場合異なったアミノ酸を導入するが,異常RNAスプライシングを誘導するものもあり,それががんなどの遺伝疾患の原因となることがある.異常スプライシングを引き起こす SNV の特定は疾患ゲノム解析において⾮常に重要である.
そこで本研究では,異常 RNA スプライシングが誘発される SNV を持つ pre-mRNA を検出するために,グラフニューラルネットワーク(GNN)とNearest Correlation 法(NC法)を用いたモデルを作成した.
名古屋大学医学研究科 神経遺伝情報学分野から提供されたSNV近傍の塩基配列から,スプライシングに影響を与える124の特徴量を作成した.データセットは病因性66例,非病因性1030例の不均衡なデータセットである.この特徴量データ行列と,グラフ構築手法であるNC法を用いて作成した重み付き隣接行列をGNNの入力として分類を試みたところ,特異度が0.988 ± 0.0100,再現率が0.595±0.124,G-meanが0.763±0.0819,ROC-AUCが0.896±0.0524,PR-AUCが0.706±0.0616となった.非病因性の検出率を下げることなく病因性の検出率を上げることができたため,病態や治療法の誤判断を予防できる可能性が高まった.
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木村 雄亮, 池内 真志, 田口 光正
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
213_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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感染症は発展途上国の主要な死因であり、早期感染検査技術の提供が急務である。しかし発展途上国は無電化地域が多く、従来の電気的制御が必須な検査装置の導入が困難である。更に感染拡大や重篤化防止のために、感染患者の早期検出は必須であるが、未発症段階患者が検査施設を訪れる可能性は低く、早期発見に繋がりにくい。そのため電気的制御を使用せず、感染早期段階より特異的なウィルス検出が可能なポータブルデバイスの開発が必須である。
本研究では、核酸解析手法の一つであるLoop-mediated Isothermal Amplification(LAMP)法を、電気的制御を用いずに実施できる新手法「Non-Electrical Controlled LAMP (NEC-LAMP)」を用いた早期感染検出を可能とするポータブルデバイスを開発した。手のひらサイズの装置は、従来装置の1/50以下の試薬量で、最大9種のウィルスを検出できる。更に、サブマイクロリットルスケールサンプルを簡単な手順で操作できるディスペンサシステムの開発に成功した。本装置の最大の特徴として、水の添加操作のみでLAMP法を実行できる。これにより、非電化地域を含む様々な現場での低コスト感染検査が可能となる。また、断熱容器の中で反応を行うため、周辺環境に依存せず、均一な検査を実施できる。開発装置により、数種類のウィルスの特異的な検出に成功した。
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大澤 泰樹, 福智 魁, 井上 麻由, 八井田 朱音, 松村 有里子, 岩澤 篤郎, 伊藤 典彦, 沖野 晃俊
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
213_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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Atmospheric plasma can create a chemically active field and has been applied in various fields. By bubbling atmospheric plasma into a liquid, plasma bubbled-up water (PBW) with inactivation power can be produced. PBW can be applied to objects with complex shapes. In addition, the inactivation effect is maintained for a certain period of time. However, after the lifetime of the dissolved reactive species has elapsed, the water returns to its original state, and thus PBW is expected to be applied to living organisms. In this study, we evaluated the effects of PBW both on pathogens of the eye infection and the cornea. Since the reactive species produced by the plasma differ depending on the introduced gas, we also verified the difference in effect depending on the gas type. PBW produced by oxygen plasma reduced the number of viable bacteria by up to 3 orders of magnitude against a Pseudomonas aeruginosa suspension of approximately 107 CFU/mL. No significant toxicity was observed in the evaluation of the toxicity evaluation of equine corneal epithelial cells.
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秋元 陽佑, 山口 昌樹
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
214_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP) などの心不全マーカーは,生体メカニズムに基づく指標として診断能が高い。しかし,心不全マーカーは心不全の進行度,予後・再発の指標,薬剤の治療効果の判定に活用されているとは言えない。それは,心不全の状態は時間とともに変化するが,バイオマーカーを時系列的にモニタリング方法が確立されていないためである。筆者らは,抗体の近傍に光酸 (HPTS) を固相化し,特定波長の光を数秒照射することによりpHを変化させ,抗原が解離して抗体を再生できるレーザー pH 制御による再生法 (レーザー抗体再生法) というバイオセンサのリサイクル技術を考案している。本研究では,これを適用した繰り返し測定できる心不全センサを提案する。心不全センサは,ステンレスメッシュ表面に金を蒸着した基材,アミノ基末端の自己組織化単分子膜 (SAM) で固相化した抗BNP抗体,ヒドロキシ基を塩素に置換したHPTS誘導体,及び光電子増倍管で構成した。心不全センサにサンプルを滴下すると,BNPが抗BNP抗体に捕捉される。酵素標識検出抗体を滴下し,BNPをサンドイッチする。最後に,発光基質を加えて波長450 nm の発光強度 I を測定したところ,I = 2980ln (BNP) + 19713 (R2 = 0.86) で示される検量線が得られ,BNP 濃度のセンサとして機能することが示された。
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齋木 琢郎, 緒方 元気, 楠原 洋之, 栄長 泰明, 西條 康夫, 日比野 浩
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
215_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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Therapeutic drug monitoring (TDM)が今日の臨床で十分に活用されない原因に,高速液体クロマトグラフ質量分析計 (HPLC-MS/MS)などが測定に要する時間やコストが挙げられる.本研究では最先端のダイヤモンドセンサ (boron-doped diamond; BDD)を用いた電気化学的手法により,迅速,簡便,安価な血中薬物濃度測定法の創出を目指した.標的薬物として,経口がん分子標的薬のパゾパニブを用いた.
平板BDD(~1 cm2)を組み込んだ測定系を作成し,動物血漿を用いて測定法を検証した.薬剤経口投与後のラット血漿をBDD法で測定し,従来法(HPLC-MS/MS法)と比較検証した.臨床研究として,2018年10月〜2020年9月に新潟大学医歯学総合病院腫瘍内科にて治療を開始した軟部肉腫患者8名につき,本手法と従来法にて血中薬物濃度測定を行った.最後に,手の平サイズのポータブル測定装置を試作し,性能を評価した.
血漿サンプル~100 µL,除蛋白などサンプル処理~10分間および電気化学測定~35秒で完了する測定系では,推奨濃度域をカバーする0−150 µMが定量可能であり,60回以上の連続測定でも安定した反応を得た.内服ラットのみならず,背景の多様な臨床患者において,本手法の結果は従来法と比較して妥当であった.ポータブル測定装置は1回~40 µLの採血量で測定可能であり,内服ラット血漿の測定結果は当初のシステムと同様であった.
少量の血液,専門の訓練を要しない操作のみで測定可能であり,迅速,簡便,安価,リユース可能などの利点を有する本手法は,様々な領域のTDMに活用されうる.
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穴吹 大地, 穴吹 大地, 田原 詩織, 斉 威, 矢野 響, 西山 成, 和田 健司, 西村 亜希子, 石丸 伊知郎
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
215_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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我々は赤外分光を用いた日常空間における非侵襲血糖値計測の実現を目指している。従来の赤外分光は、赤外光を照射した計測対象の反射光から成分情報を取得する。その中で、赤外光源の波長帯域により近赤外光と中赤外光を用いた手法に大別される。近赤外光は皮膚へ高い透過性を有している。しかし、この利点は成分吸収の微弱さを表しており、生体内のグルコースのような希薄な濃度の成分を取得することが困難である。また、水による光吸収が1.45µmを中心とした広帯域な近赤外波長帯に存在している。そのため、成分同定に必要なグルコースの吸収ピーク(@1.6µm)に独立性がなく、水分量の変動の影響が大きい。一方で、中赤外光(10µm近傍)においては顕著な光吸収現象を生じるとともに、成分ごとの吸収ピークの独立性が高い。しかし、照射する中赤外光が皮膚水分に吸収されるため深部領域からの光を取得することが困難となる。そこで、生体から放出される中赤外光を分光する中赤外パッシブ分光イメージングを提案する。本発表では、遠方からの手首のパッシブ分光計測から血糖値モニタリングの実現可能性を実証した結果について述べる。さらに、パッシブ分光においては放射光積算効果が希薄な濃度である生体内のグルコースを検出可能にしていると考えた。この放射光積算効果を簡単なモデル式で表し、希薄な濃度の成分検出において有利に働くことを実証した結果について述べる。
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小橋 琉夏, 田原 詩織, 穴吹 大地, 矢野 響, 西村 亜希子, 和田 健司, 西山 成, 石丸 伊知郎
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
216_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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人体からは、プランクの法則に従って体温(36℃≒300K)相当の中赤外領域(波長:10µm近傍)の放射光が放出されている。これは、体を構成している分子が熱エネルギーにより分子振動する事による電場の振動を起因とした電磁波である。一方、グルコースなどの成分は、それぞれ固有の分子構造を持っている事から、分子振動の共振周波数が異なる。従来は、振動分光法の一つとして赤外分光吸光法が知られている。これは、照明をサンプルに照射するアクティブ分光法であり、分子振動エネルギーとして吸収された波長を観察する事により成分を同定する。パッシブ分光法とアクティブ分光法は、“ネガとポジ”の関係がある。アクティブ分光法で吸収ピークとして観察される同じ波長で、パッシブ分光法では発光ピークとして観察される。なお一般的に、グルコース水溶液は9.25µmと9.65µmに特異な吸収ピークを有する事が知られている。そこで、中赤外パッシブ分光イメージングにより人体から放出される放射光分布から9.25µm、9.65µmの発光ピークの発光度を2次元で画像化した。被験者に、実験途中で甘いジュースを飲んでもらった所、グルコース起因の発光度の偏在性の変化を観察する事ができた。これにより、例えば開腹手術時のグルコースの偏在性からがんの浸潤性を特定する、或いは時系列なグルコース濃度の変化量から消費量を推定して運動量計測に展開する事が期待されている。
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李 俐, 金子 美樹, 重松 大輝, 西中 芳幸, 譚 玉峰, 清野 健
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
216_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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近年、ウェアラブルデバイスによる生体情報の長期計測やスマートフォンを使用した食事・運動の記録が健康管理に応用され、その有効性が期待されている。食後の血糖値の急激な上昇やピーク回数の増加は、糖尿病や心血管疾患のリスク要因となるため、日頃から日常生活における食事と血糖管理の重要性が認識されている。従来の研究は主に特定の食事内容と固定された摂取時間に焦点を当ててきたが、本研究は日常生活下での食事の影響による血糖値と心拍数の変化を評価した。健常成人(13人、年齢 45.31 ± 13.22歳、男性10人/女性3人)を対象に、日常生活下で腕時計型ウェアラブル心拍計・活動量計Fitbitおよび持続血糖測定器(アボット社製FreeStyleLibre)を用いて3週間(21日間)の調査を行った。日常生活中の食事、運動などの情報を記録するため、スマートフォンアプリ(IntaHealth)とクラウドデータベースを構築し、情報に収集に用いた。本報告では、血糖値が含まれる2週間のデータに基づき、13人の研究協力者から得られた1220回の主食の食事の時刻を基準に、食事前後の平均血糖値と平均心拍数の変化を検討した。食事前後で血糖値と心拍数は逆U字型の変化を示し、食事前の低い血糖値は食後約40分でピークに達し、その後2時間まで徐々に低下した。心拍数も、40分から60分の間にピークを示した。本研究では実世界のデータを用いて、食事の影響による血糖値と心拍数の変化を検討した。
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大村 眞朗, 八木 邦公, 長岡 亮, 長谷川 英之
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
217_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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超音波エコー信号の周波数特性の変化は散乱体サイズや体積分率の違いに起因する.血液では赤血球が散乱体として振る舞い,免疫異常や炎症反応に関わる一指標として赤血球凝集度が挙げられる.本研究では凝集反応に伴う血球充填率や血球サイズの違いをエコー信号の周波数特性の変化から読み取り,in vivo血液循環のレオロジーの非侵襲計測法を開発している.従来の超音波送受信法では超音波プローブの受信帯域の制約により解析周波数が狭帯域化し,血球サイズ推定精度の不安定性が課題であった.そこで血液からのエコー信号の広帯域化およびS/Nの向上を目的に,広帯域プローブを用いた2周波数励起による新たな送受信法を開発し,3検討項目において単一の短パルスによる従来法と比較した.
S/Nが十分な条件での散乱体サイズの推定精度を比較するために,平均粒径が異なる生体模擬ファントムを計測した.次に,in vivoを再現した赤血球凝集を評価するために,流路ファントム中のin vitroブタ血液の定常ずり速度依存性を評価した.最後にヒトin vivo頸部脈管の計測を行った.ファントムでは提案法および従来法の解析帯域(-20 dB帯域),散乱体サイズ,体積分率の偏り誤差やばらつきは同程度であった.一方,in vitro,in vivoにおける提案法では解析帯域を保持しつつ,低ずり速度での血球凝集サイズの弁別能向上,高ずり速度での凝集解離に伴う推定値のばらつき低下をもたらし,提案法のロバスト性向上を見込めた.
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村田 崇一郎, 増田 有矢, 熊谷 寛, 小川 恵美悠
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
217_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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我々は、カテーテルインタベンション後に生じるシース抜去孔の新たな止血方法として、レーザー溶着を応用し即時的に高い機械的強度を実現する手法の開発を目的としている。シース抜去孔は自然に閉鎖することはなく用手圧迫法や止血デバイスが用いられている。用手圧迫法は止血部に与える機械的強度が低く、長時間の絶対安静を要するため患者のQOLが著しく低下し、止血デバイスでは感染や虚血、手技の複雑さなどの課題がある。我々はレーザー照射により血管外膜のコラーゲンを42-60˚Cまで加温し、可逆的な変性によるコラーゲン溶着をシース抜去孔閉鎖に応用した新たな手法であるレーザーシーリングを提案している。
本研究は、熱伝導計算により血管内温度分布を明らかにし、先行研究における溶着効果の実測と比較することで溶着効果と組織温度の関係を検討することを目的とした。レーザー照射による血管加温実験を模擬した熱伝導モデルを作成し、実測データと比較することで作成したモデルの有用性を明らかにした。また、血管外膜溶着実験系を模擬する熱伝導モデルを作成し各照射条件における血管表面での温度履歴を計算した。コラーゲン変性温度である42-60˚Cを保持する時間が長いほど溶着成功率が高くなった。作成した熱伝導モデルを用いることにより短時間で溶着効果を与えるレーザー照射条件の最適化をできる可能性が示唆された。
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内山 駿佑, 住倉 博仁, 藤井 豊, 本間 章彦
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
218_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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体外循環による炎症反応等を評価するために,内部灌流型人工肺を用いたラット体外循環実験が行われている.しかし,ヒトに使用される膜型人工肺は外部灌流型が主流であるため,ラット体外循環実験に外部灌流型人工肺を用いることができれば,更なる体外循環の模擬が可能と考えられる.現在までに,我々はアクリルの筐体とポリプロピレン多孔質膜の中空糸からなるラット用外部灌流型人工肺を開発してきた.更なる検討として,筐体と中空糸に,柔軟,かつ生体適合性の高いシリコーン素材を用いることで,炎症反応や圧力損失の低減に繋がると考えた.そこで本研究では,ラット体外循環実験に適用可能なシリコーン素材を用いた外部灌流型人工肺(以下,シリコーン人工肺)の開発を目的とした.シリコーン人工肺は,筐体はシリコーンゴムより作製し,中空糸は均質膜である外径400 μmのシリコーン中空糸を用いた.血液充填量を1.77 mL,中空糸充填率を55 %とし,有効膜面積を先行研究で開発された外部灌流型人工肺と同等の0.022 m2とした.水実験により試作したシリコーン人工肺の圧力損失を測定した結果,流量の増加に伴い圧力損失も増加傾向を示し,流量70 ml/min時の圧力損失は最大16 mmHgであった.また,既存の内部灌流型人工肺と比較したところ,全ての流量において内部灌流型人工肺の圧力損失の値を下回った.今後は,血液実験にてガス交換能の評価を行う.
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増田 有矢, 村田 崇一郎, 熊谷 寛, 小川 恵美悠
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
218_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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我々は、新たなシース抜去孔の閉鎖として、レーザー組織溶着を応用することで、簡便かつ即時的に機械的強度の高い止血を実現する手法の開発を行っている。血管カテーテルインターベンションでは長時間シースが留置されるため、手技後に生じるシース抜去孔は自然に閉塞しない。そのため現在では用手圧迫や閉鎖用デバイスを用いた止血を行っている。しかし、用手圧迫では止血部の機械的強度の低さ、閉鎖用デバイスでは操作の複雑さや対応しているシース径の狭さなどの課題点が残されており、未だに最適な止血方法の確立はされていない。そこで我々は、新たな止血方法としてコラーゲンによる組織溶着を利用した、レーザーシーリングを提案している。組織内に多く含まれているコラーゲンが42–60度で可逆的な熱変性を起こすことを利用し、シース抜去孔の閉鎖を行う。
本研究では、摘出ブタ頸動脈にシースを挿入しレーザーシーリングを行い、有効な止血効果を得られる照射条件の検討を目的とした。血管内圧が100 mmHgとなるように血液で満たし、シース内部に光ファイバーを挿入した。上部から止血部に50 kPaの圧力がかかるように錘を乗せ、レーザーを照射しながらファイバーごとシースを抜去した。2分間の自然冷却させた後、抜去孔からの血液漏出量、血管下流部からの血液漏出の有無、目視による照射部の焦げの有無によるシース抜去孔閉鎖の評価を行った。
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築谷 朋典, 西中 知博
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
219_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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耐久性・抗血栓性の向上により,遠心ポンプは多くの補助循環様式に使用されている.補助循環では,脱血カニューレ先端部の閉塞やカニューレ自身の圧力損失によりポンプ入口部が低圧になり微小気泡が発生するリスクが存在する.遠心ポンプ内に気泡が発生する機構を明らかにすることを目的として,以下の市販遠心ポンプを対象にしてポンプ内部で発生する気泡の観察を行った.
ポンプA(羽根車径37 mm,クローズド流路,曲線羽根)
ポンプB(羽根車径 68 mm,セミオープン流路,直線羽根)
ポンプC(羽根車径 78 mm,クローズド流路,直線流路)
小児患者での使用時には気泡発生が問題になることが多いという経験的事実から,本研究では流量を1.0 L/minに固定し,入口圧を-100mmHgに低下させた条件で室温の水道水を閉鎖回路内で循環させた.回転数に同期したストロボ照明のもとで,デジタル一眼レフによりポンプ内部を経時的に撮影した.
所要回転数の最も高いポンプAでは,時間経過とともに翼前縁の圧力面側に気泡が集積し成長・合体することが確認された.
ポンプBでは,上流から流入した気泡はポンプ内部で微細気泡に粉砕され,ポンプ内部にとどまることなく下流へ流出した.
所要回転数の最も低いポンプCでは,ポンプ内部での気泡発生は認められなかった.
本研究により,補助循環用遠心ポンプにおけるキャビテーションの初生条件には,回転数のみならず羽根形状の影響があることが明らかとなった.
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鵜木 崇, 上村 和紀, 横田 翔平, 松下 裕貴, 森田 英剛, 吉田 祐希, 此内 緑, 佐藤 啓, 川田 徹, 朔 啓太
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
219_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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【目的】重症心原性ショック(CS)患者に対しVA-ECMO(以下ECMO)は非常に有用であるが、その一方左室後負荷増大、肺水腫(ECMO lung)を惹起する。近年、経皮的LVADであるImpellaとの併用療法(ECPELLA)が拡大しその有用性が期待される。ECPELLA循環管理はより複雑である為、コンピュータによる自動制御システムを開発、CS動物モデルで検証した。
【方法】LVADをImpellaの代用としてECMO-LVAD循環を循環平衡理論に基づいてモデル化し、平均血圧(MAP)、左心房圧(PLA)、総血流量[TSF= ECMO 流量 + LVAD 流量+自己心拍出量(CO)]を設定目標値(MAP:70mmHg、PLA:14mmHg、TSF: 120~140ml/kg/min)となるようECMO流量・LVAD流量・心臓血管作動薬投与量をPI制御するコンピュータ自動制御システムを設計した。麻酔下犬連続7例に対し冠動脈塞栓でCSモデルを作成し、その検証を行った。ECMOは大腿動静脈からの送脱血、LVADは開胸により左室心尖部脱血、左頚動脈送血とした。CSに対しECMOを開始しECMO lung状態となることを確認した後、LVADを開始しシステムの自動循環制御性能を検証した。
【結果】CSからECMO導入(流量80±1 ml/kg/min)により有意なMAPの上昇(25±5→70±13mmHg)を認めたが、同時にPLAの著明な上昇(20±4→42±15mmHg)(ECMO lung)を認めた。その後自動制御システムを起動したところ、COに応じてECMOとLVADの流量の最適化、血管作動薬が自動制御され、制御開始40-60分後にはECMO 流量:42±27ml/kg/min、LVAD流量:54±21 ml/kg/minで制御され、CO:29±56ml/kg/minでMAP:72±5mmHg、PLA:13±2mmHg、TSF:125±18mmHgと設定目標値へ良好に自動制御された。
【結論】開発したシステムは循環平衡理論に基づき、遠心ポンプにFrank-Starling曲線の特性を持たせ、PLA及びCOを元に最適なECMO/LVAD流量を制御する事によりサクションを起こすことなく、良好に管理された。今後、ECPELLA循環管理の自動制御への応用が期待される。
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沢崎 薫, 中村 匡徳, 木村 直行, 川人 宏次, 山﨑 雅史, 藤江 裕道, 坂元 尚哉
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
220_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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血管収縮・拡張に重要な血管平滑筋細胞の円周方向配向は,発生過程で内皮細胞との相互作用によって形成される.成熟後の動脈壁においても,内皮細胞は血流による力学刺激に応じて機能を変化させ,平滑筋細胞と相互作用し血管壁の恒常性維持に貢献している.一方で血流変化を伴う多くの心血管疾患で平滑筋細胞の配向の乱れが報告されており,力学刺激による細胞間相互作用変化が関わる可能性もあるが,詳細は不明である.我々はこれまでに,血管壁を模擬した平滑筋細胞を含む圧縮コラーゲン組織上に内皮細胞を播種した共培養モデルに壁せん断応力を負荷し,内皮細胞存在下でのみ組織内の平滑筋細胞が流れ方向に対して垂直に配向する現象を見出した.本研究では,内皮―平滑筋細胞間相互作用による力学環境情報伝達が,平滑筋細胞の垂直配向を引き起こす可能性を検証した.細胞間相互作用や内皮細胞の壁せん断応力に対する応答に関与するNotchシグナル阻害剤DAPTで共培養モデルを24時間処理し,その後2 Paの壁せん断応力を24時間負荷した.その結果,DAPT処理下では圧縮コラーゲン組織上の内皮細胞および組織内の平滑筋細胞のいずれも特定の方向への配向を示さなかった.無処理の共培養モデルでは,内皮細胞は流れ方向に沿って配向した.本研究結果は,壁せん断応力に曝されない平滑筋細胞への力学的環境情報の伝達に,Notchシグナルによる細胞間相互作用が関与する可能性を示唆する.
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大和田 将広, 渡邉 宣夫
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
220_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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細胞や組織が損傷すると生体恒常性を維持するために修復される.組織修復は損傷した組織の種類や大きさに強く影響を受けることが広く知られている.それに加えて酸素やそれを供給するための血管も組織の修復に影響することが近年明らかになった.しかしながら調整した酸素環境下における血管網の形態について未だ検討の余地がある.そこで我々は損傷した組織周辺の酸素分圧を局所的に調整しつつ,同時に周辺血管を直接観察可能な装置を構築することを研究目的とした.
局所溶存酸素量調整装置として,気体透過フィルムを介してリン酸緩衝液(PBS)中の溶存酸素量を調整する装置を作成した.この装置は小動物背部に血管観察用生体窓として設置する計画である.この装置の妥当性検証実験として95 %の酸素や窒素を流入させ,PBS中の溶存酸素量を測定した.この時の酸素と窒素はピンチバルブによって制御した.また酸素センサーとピンチバルブの電圧値を計測した.
窒素を供給したPBSの溶存酸素量は0.01 mg/Lであり,酸素では37.5 mg/Lであった.これは大気環境下における純水の飽和溶存酸素量が8.26 mg/Lであり,大気中の酸素濃度が約21 %であることから,95 %酸素における純水の飽和溶存酸素量に値する.また血管を観察したところ一般的な生体窓と比べて透過光の低減が確認されたが,この課題は,高感度カメラを用いて対応可能と考える. よって我々は組織修復研究への応用可能な局所溶存酸素量調節装置を構築する事ができた.
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坂元 尚哉, 髙橋 幸慈, 山崎 雅史, 藤江 裕道
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
221_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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In this study, we constructed a three-dimensional co-culture model of brain endothelial cells and astrocytes with a centrifugally compressed collagen construct, and evaluated the effect of the elastic modulus of the construct on the formation of endothelial cell-cell junctions that contributes to blood-brain barrier integrity. In the co-culture model, the gene expression of Zonula occludens (ZO)-1, one of the molecules associated with the endothelial tight junction, increased with the construct elastic modulus. In contrast, no significant relationship was observed between the elastic modulus and ZO-1 gene expression in monocultured endothelial cells. The transendothelial electrical resistance in the co-culture model also increased compared with that in the monocultured endothelial cells. The result indicates that the increased elastic modulus promotes the formation of tight junctions in brain endothelial cells under the coculture condition with astrocytes.
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村松 淳平, 橋本 道尚, 三浦 重徳, 尾上 弘晃
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
221_2
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
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血管内皮細胞は、血流による流体せん断応力や、筋肉による圧縮・伸展応力に応答し、その機能や形態を変化させることが知られている。このような複合力学刺激は、血管内皮組織の発達や成熟に深く関与していることが知られているが、その詳細は未解明である。先行研究では、in vitro血管モデルを構築し、灌流培養や伸展培養を行うことで力学刺激に対する血管内皮細胞の応答を観察している。しかし、培養前後の細胞の形態やたんぱく質発現の変化を解析するにとどまっており、複合力学刺激に対するリアルタイム応答を観察するためのライブセルイメージングシステムはこれまで提案されていなかった。そこで本研究では、複合力学刺激下で培養を行い、リアルタイム観察可能なライブセルイメージングシステムを提案する。本研究では、共焦点レーザー顕微鏡にマウント可能な刺激培養ステージトップインキュベータを作製し、複合力学刺激に対する血管内皮細胞の形態変化をリアルタイム観察した。また、ECMで構成されたin vitro血管モデルを作製し、デザインされた複数種類の力学刺激下で血管内皮細胞が培養されたことを示した。本研究は、生体内の血管内皮細胞応答を完全に再現した人工血管モデル構築への大きな一歩となり、力学刺激に対する細胞応答観察システムとしてのプラットフォームとなることが期待される。
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小林 宏一郎, 松本 和磨, 岩井 守生, 上田 智章
2024 年Annual62 巻Abstract 号 p.
222_1
発行日: 2024年
公開日: 2024/10/25
ジャーナル
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超高齢社会を迎えた我が国では、簡便な方法で健康モニタリングが行えるシステムの需要が高まっている。呼吸や心拍波形の計測は、健康モニタリングに心肺機能の評価に有効な情報を与える。心拍波形計測では、心電図や光電脈波など身体にセンサを接触する必要がある。日常的な健康モニタリングにおいて、センサの身体への長時間の接触は、不快感や肌荒れなどの問題を引き起こす。そのため、非接触で計測可能なシステムは望まれている。これまでに非接触な心拍波形計測は、静電容量センサやカメラを用いた方法が提案されている。我々は、結合容量電極を用いた呼吸や心拍波形の計測を提案してきた。この方法は、1つの電極(センサ)のみで呼吸と心拍波形(心臓動体波)を計測でき、胸部や背中の1点から計測可能な特徴がある。しかし、現状の結合容量電極は、約700×700×33 mmの大きさがあり、実用的には改善が必要である。
そこで今回は、市販の小型なセラミックコンデンサを電極とした呼吸・心拍波形計測システムを開発した。本システムでは、従来の大きな結合容量電極に代わり、約5×3×1 mmの大きさのセラミックコンデンサを電極としたことにより、小型化かつ安価で実現可能である。本システムにより計測した呼吸および心拍波形を示し、この特徴を報告する。
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