目的:本研究は,JIS 4種チタンを強ひずみ加工法により微細結晶粒に改良した材料の機械的性質およびチタンの溶出量についてJIS 4種チタンとの比較を行うことを目的とした.
材料および方法:強ひずみ加工法で製作したチタン(G4M)および加工前のJIS 4種チタン(J4S)の各直径6 mmを長さ100 mmに切断し,万能試験機を用い引張強さ,耐力および伸びの測定を行った.硬さ測定には材料を長さ5 mmに切断後,横断面と縦断面についてそれぞれ樹脂に包埋固定を行った試料を用い,研磨後,ビッカース硬度計を用い,端から0.3,1.5と3.0mmの部位の測定を行った.組織観察は顕微鏡を用い観察を行った.チタンの溶出量の測定は直径6mm,長さ30 mmの各試験片を37℃,1%の乳酸溶液100 mL中に3か月間浸漬後,誘導結合型プラズマ質量分析装置を用い行った.
結果:G4Mの引張強さはJ4Sより約23%大きく,耐力は約33%大きく得られた(p<0.05).伸びはJ4SがG4Mよりも大きかった(p<0.05).G4Mの硬さはJ4Sよりも大きな値を示し(p<0.05),G4Mの硬さは測定部位による差は認められなかった.組織観察の結果,G4Mの結晶粒はJ4Sと比較して微細であった.溶出量はJ4SとG4Mの差は認められなかった.
結論:結晶粒が微細なG4Mの引張強さ,耐力と硬さはJ4Sよりも優れていた.したがって,G4MはJ4Sより偶発症を防止する観点からインプラントの製作用材料として適していることが示唆された.
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