日本口腔インプラント学会誌
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36 巻, 1 号
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総説
  • 守 源太郎
    原稿種別: 総説
    2023 年 36 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    近年,臨床研究ではリアルワールドデータ(Real-World Data)が注目されている.リアルワールドデータは日々,診療所や病院で行われる日常臨床の記録を反映した臨床データの総称である.リアルワールドデータを活用した臨床研究は増加しており,Randomized Controlled Trialの研究だけでは,明らかにできないエビデンスの創出に貢献している.日本でもさまざまな領域で,リアルワールドデータ研究が実施されているが,歯学系の臨床研究で応用されている事例は限られている.そこで,本論文では,リアルワールドデータとは何か,欠損補綴治療,それもインプラント治療にどのようにして応用が可能なのか,現行の法律や臨床研究,学会を取り巻く環境の視点から考えてみたい.本論文には,インプラント治療にかかわるデータベース研究のあるべき明確な解答は記載されていないが,「インプラント治療が国民の健康長寿の延伸に寄与する」というクリニカルクエスチョンを明らかにする研究プロトコールの立案に少しでも貢献できれば幸いである.

特集 審美領域へのインプラント治療の成功基準
  • 近藤 尚知, 正木 千尋
    原稿種別: 特集 審美領域へのインプラント治療の成功基準
    2023 年 36 巻 1 号 p. 12
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー
  • 中野 環
    原稿種別: 特集 審美領域へのインプラント治療の成功基準
    2023 年 36 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    トロント会議における現代のインプラントの成功基準のなかの一項目において,「インプラントは患者と歯科医師の両者が満足する機能的,審美的な上部構造をよく支持している」と定義されており,インプラント治療において審美は患者と歯科医師の両者にとって非常に重要な成功のための要件の一つである.審美の基準は,年齢,性別,時代,地域,感性などによってさまざまであり,患者の求める審美的な成功と歯科医師の考える審美的な成功は必ずしも一致するとは限らない.歯科医師は,個々の患者が求める審美を適切に把握することが重要である.そこで今回は,現在用いられているインプラントの審美的評価指標について考察するとともに,審美インプラント治療の成功の基準について検討を行った.

  • 佐々木 猛
    原稿種別: 特集 審美領域へのインプラント治療の成功基準
    2023 年 36 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    審美領域におけるインプラント治療は,上部構造の審美性(White esthetics)だけでなく,周囲組織の審美性(Pink esthetics)の獲得も求められる.また,上部構造と周囲組織が口唇や顔貌に対して調和し,良好なリップサポートとして機能することも,前歯部インプラント治療の重要な成功要件の一つである.したがって,審美領域におけるインプラント治療は非審美領域のインプラント治療に比べて,成功基準は高い.

    審美インプラント治療を成功に導くためには,以下のようなインプラント特有のさまざまな基本的原則を遵守することが必要である.①インプラントは天然歯と違い歯根膜を有しないため,生体恒常性を維持し,唇側歯肉を維持するためには2 mm以上の骨の厚みが必要である.②ソーサリゼーションによる辺縁骨の吸収に鑑み,インプラント間は3 mm以上,天然歯とインプラント間は1.5 mm以上の距離を確保して,乳頭部を支持する歯間部骨の保存を図る.③審美性と清掃性を考慮して,適切な位置,深さ,角度でインプラントを埋入する.④天然歯に比べ,インプラント周囲の防御機構は脆弱であるため,インプラント周囲には適量の角化粘膜が必要である.

    また,疾患で歯槽堤を失った患者に対しては,硬,軟組織の造成術が必要となる.症例を提示しながら,予知性が高く,効果的なGBR法を紹介し,角化粘膜を失わない臨床的工夫についても考察する.

特集 基礎から学ぶインプラント周囲軟組織最新知見
  • 加藤 英治, 山田 将博
    原稿種別: 特集 基礎から学ぶインプラント周囲軟組織最新知見
    2023 年 36 巻 1 号 p. 31
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー
  • 熱田 生, 古谷野 潔, 鮎川 保則
    原稿種別: 特集 基礎から学ぶインプラント周囲軟組織最新知見
    2023 年 36 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    口腔インプラント治療は欠損補綴において重要な選択肢となっている.インプラント体を口腔内で機能させるためには骨組織との結合性が重要であることは以前から知られているが,その機能を長期間継続させるには軟組織による封鎖性が不可欠であることも忘れてはいけない.この封鎖機構は,天然歯周囲に存在する生物学的幅径と類似した構造を有している.しかし,インプラント周囲における封鎖機能は,天然歯周囲と比較して明らかに低く脆弱である.その原因として,骨に直接埋入される口腔インプラントの周囲では歯根膜が存在せず,解剖学的に血流が不足していることが挙げられる.さらに組織学的にインプラント体と接着する上皮などの封鎖構造が天然歯と比べて明らかに限局的で少なく,上皮細胞のチタンに対する接着性がそもそも低いことなどから,わずかに存在する接着構造も封鎖機能が低いとされている.そのため,このインプラント周囲における軟組織封鎖性を向上させるため,インプラント体の材質,表面性状,さらに周囲組織の細胞活性に関するさまざまな研究が現在も進められているわけである.このような基礎的研究に対する理解は,適応症例の選別やインプラント体や手技の選択,さらには軟組織を考慮したメインテナンスの実践に役立ち,インプラント治療の長期間の成功につながると期待している.

  • 柴田 陽
    原稿種別: 特集 基礎から学ぶインプラント周囲軟組織最新知見
    2023 年 36 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    ブローネマルクによって提唱されたオッセオインテグレーション型インプラントは,母材であるチタン・チタン合金の表面改質によって早期の骨結合を獲得,高い成功率を示している.インプラント治療はさまざまな欠損症例に応用された結果,インプラント周囲炎による失敗例も散見されるようになった.歯の喪失は歯周病が主な原因であり,インプラント治療後の潜在的感染リスクは高い.加えてチタンインプラントでは天然歯と同様の歯周組織が再構築されず,天然の免疫力が機能しにくい.このための対策は粘膜貫通部で防御を強化すること,すなわち抗菌効果付与,アバットメントの改質による軟組織封鎖性の向上である.本稿では主としてチタンインプラント表面処理による抗菌効果について概説する.チタン表面酸化膜は抗菌効果を得やすく,そのメカニズムは組織適合性とも関連が深い.また最新の研究では表面処理チタン薄膜と軟組織の強力な即時接着効果が報告されており,歯科用インプラントへの応用も期待できる.

原著(基礎研究)
  • 臼井 龍一, 関矢 泰樹, 河野 恭範, 岩田 雅裕, 笹生 宗賢, 小笹 友生奈, 野村 聖一, 伊藤 充雄
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2023 年 36 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,JIS 4種チタンを強ひずみ加工法により微細結晶粒に改良した材料の機械的性質およびチタンの溶出量についてJIS 4種チタンとの比較を行うことを目的とした.

    材料および方法:強ひずみ加工法で製作したチタン(G4M)および加工前のJIS 4種チタン(J4S)の各直径6 mmを長さ100 mmに切断し,万能試験機を用い引張強さ,耐力および伸びの測定を行った.硬さ測定には材料を長さ5 mmに切断後,横断面と縦断面についてそれぞれ樹脂に包埋固定を行った試料を用い,研磨後,ビッカース硬度計を用い,端から0.3,1.5と3.0mmの部位の測定を行った.組織観察は顕微鏡を用い観察を行った.チタンの溶出量の測定は直径6mm,長さ30 mmの各試験片を37℃,1%の乳酸溶液100 mL中に3か月間浸漬後,誘導結合型プラズマ質量分析装置を用い行った.

    結果:G4Mの引張強さはJ4Sより約23%大きく,耐力は約33%大きく得られた(p<0.05).伸びはJ4SがG4Mよりも大きかった(p<0.05).G4Mの硬さはJ4Sよりも大きな値を示し(p<0.05),G4Mの硬さは測定部位による差は認められなかった.組織観察の結果,G4Mの結晶粒はJ4Sと比較して微細であった.溶出量はJ4SとG4Mの差は認められなかった.

    結論:結晶粒が微細なG4Mの引張強さ,耐力と硬さはJ4Sよりも優れていた.したがって,G4MはJ4Sより偶発症を防止する観点からインプラントの製作用材料として適していることが示唆された.

症例報告
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