我々は、これまでに炭素架橋[3n]シクロファン類（n=2-6）([3n]CP)の合成、構造、および性質について研究を行って来た。この研究の新展開として、架橋炭素原子をケイ素原子に置換することにより、従来の炭素架橋CP類とは異なる新しい電子的性質が発現するものと期待してケイ素架橋CP類を合成する事にした。

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これまで、当研究室は酸素原子を配位原子としたアントラセン骨格を有する超原子価5配位炭素及びホウ素化合物の合成と単離に成功した。さらに、配位原子が中心原子により近づくことを期待して七員環を縮環させた新規三座配位子1を開発し、超原子価炭素化合物の合成にも成功している。
本研究では1のさらなる応用として、SCS、SeCSeおよびPCP pincer型のパラジウム錯体を合成し、アリルスズ試薬とアルデヒドを用いた触媒的アリル化反応においてその触媒活性を評価した。また、この触媒的アリル化反応の反応中間体をNMRにて観測した。

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ホウ素原子置換ベンゼンのオルト位をメタル化するために，メタルへの配位可能な窒素原子部位を有するN-メチル-1,3-ジアミノプロパンをホウ素原子上に導入した1を合成した。1に，塩基として(TMP) ₂MgをTHF中還流下で作用させることで，低収率ながらオルトメタル化が進行し，これにメチル化剤を加えることでオルトメチル化体2が生成することを確認した。さらに，2のホウ素原子上の配位子をピナコールへと変換することで，オルトメタル化体由来の3を得ることに成功した。また，¹³C NMRによる反応追跡から，初期中間体として4および5が生成することを確認した。

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当研究室では，5配位ケイ素化合物を合成するための配位子としてホスホニウムイリドに着目し，イリド炭素がケイ素原子に対して分子内配位可能な位置にある分子の合成を検討してきた。本研究では，リン原子上にフルオレニル基を導入することによってイリド炭素上の負電荷が安定化された，ホスホニウムフルオレニリド1の合成を検討した(Scheme 1)。ケイ素置換基として，トリメチルシリル基(a), シラシクロブチル基(b), ビニルシリル基(c), メトキシシリル基(d)およびフルオロシリル基(e)を用いた。多核NMR測定およびX線結晶構造解析の結果，29Si NMRにおける，3に対する1の高磁場シフトの度合いと結晶中のSi・・・C原子間距離との間に相関関係があることがわかった。

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我々はこれまでに、テトラチアフルバレニルエチニル基を導入したベンゼンの誘導体を合成し、それが溶液中強く自己会合することを見出している。今回、我々は類似した挙動を示すと考えられるオリゴチエニルエチニル基を導入したベンゼンの誘導体を合成し、その物性を評価した。 1,3,及び4置換体は、オリゴチエニルエチニルユニットと対応するヨードベンゼンとのカップリングによって合成した。6置換体においては、ハロベンゼンとのカップリング反応が進行しなかったため、ヨウ素化したオリゴチオフェンをヘキサエチニルベンゼンと薗頭反応させることによって合成した。これら多置換ベンゼンの生成は、TOF-MSとNMRにて確認した。本発表においては、これら多置換体の合成経路及び性質について、詳細に報告する予定である。

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先に我々は、両末端にビシクロ[2.2.2]オクテンを縮環させたチオフェン３量体を合成し、そのラジカルカチオン塩が熱的に励起三重項を与えるπダイマーを形成することを明らかにした。今回、導電性高分子のp-ドープ状態モデルにおける電子構造の系統的研究の一環として、対応するチオフェン４量体、５量体を合成し、そのラジカルカチオン塩の単離に成功した。
オリゴチオフェンのπダイマー形成のエンタルピー変化について調査し、その傾向について考察を行ったので、報告する。

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長鎖アルキルチオ基とカルボン酸のような極性官能基で置換された両親媒性TTFは比較的シンプルな構造を持ち、種々の有機溶媒中で酸化還元活性なファイバー構造を形成することから注目されている。我々の研究室では、以前ゲル化能を調べる目的でエステル基を二つ導入した両親媒性TTF誘導体を合成し、その性質を報告した。今回、更にTTF-4,5-ジアミド誘導体について調査を行ったところ、生成条件の違いにより異なる色や構造を有する様々なゲルや結晶を生じる事を見出したので、報告する。

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我々はこれまでにジベンゾシクロオクタテトラエン二分子を縮環した分子ピンセットを合成してきた。この化合物はシクロオクタテトラエン(COT)の環反転によりanti体とsyn体の二つの配座異性体が溶液中で平衡状態にあり、そこに電子欠乏性の分子を添加することで平衡がsyn体へと偏り、syn体の向かい合った芳香環の間にその電子欠乏性の分子を包接する動的な分子認識挙動を有するホスト分子である。そしてこの化合物は導入した置換基の電子的な効果により、その包接能を著しく変化させると共にゲスト分子の一つであるDDQを添加した際に溶液の色が温度によって黄、緑、青と変化するサーモクロミズムを示すことが分かった。本発表では、この動的分子ピンセットの置換基効果とそのサーモクロミズムについて報告する。

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これまでに我々はチオフェンとピロールを組み合わせたπ共役系分子を合成し、それらが低い酸化電位をもつことに着目し研究を行ってきた。本研究ではPドープ状態の安定化を期待して両端をフェニル基でキャップした化合物を設計、合成し、物性検討したところ、トルエン溶液中でこの化合物は黄色と赤色2種類に分晶した。前者の結晶の光の吸収帯は連結した芳香環の数に比べ非常に有効共役長が短く、ピロールが構造に歪みをもたらしていることを示唆した。その歪みは熱や圧力で矯正され結晶転移によるクロミズムを示した。赤色結晶はX線結晶構造解析に成功し、結晶構造が明らかとなった。本発表では合成やクロミズムについて報告する予定である。

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我々は最近、新規で汎用性のあるスペーサーとして、オリゴアレーンを主軸としエチニル基部分を側鎖とするビス(2-エチニル-3-チエニル)アレーン型スペーサー（ETArスペーサー：中央のベンゼン環が１個の場合はETBスペーサーと略す）をデザインした。今回はETB/ETArスペーサーへの種々の置換基の導入について検討した。まず、対称置換型化合物の合成について検討し、幾つかの化合物を得た。また、ETBユニットをメチレン鎖で連結した誘導体も合成した。さらに配列制御連結のために、非対称置換誘導体の合成法について検討し、幾つかのモノ置換あるいは非対称置換誘導体を合成した。これと類似のユニットとの連結・脱保護・連結の繰り返しにより配列制御連結型の高分子量配位子および錯体を構築できると考えられる。

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ジピロメテンはポルフィリンの部分骨格に相当し、中心元素に導入することで優れた光物性を発現する配位子として知られている。これまでにホウ素を導入したBODIPYや遷移金属を導入した例が報告されており、その光学特性や機能性分子としての応用が幅広く研究されている。しかし、ホウ素以外の典型元素を用いた例は少なく、特に14族元素類縁体については報告例がない。筆者らは中心元素の違いによるジピロメテン色素の特性変化に興味を持ち、種々の14族元素導入を検討した。その結果、ジピロメテンに塩化スズ(II)を作用させることでII価のスズ原子が導入された化合物1の合成に成功した。X線構造解析によりその構造を明らかにした。1の光学特性についても報告する。

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すでに我々はカチオン性ホスファボリンであるホスホニオボリン (1) が水中のフッ化物イオンを捕捉し相間輸送することを報告している。しかし(1)は可視部の光吸収・蛍光が弱く水に不溶であるため、水中のアニオンの光センシングへの利用は困難であった。一方、光学特性に優れたアザボリンにカチオン性官能基を導入することで、水溶性とルイス酸性とが共に増大し、水中でのフッ化物イオンの蛍光センシングが可能になると期待される。今回、分子の周縁部にホスホニオ基、またアンモニオ基を導入した水溶性アザボリン (2) を合成し、(2)が水系溶媒中においてフッ化物イオンおよびシアン化物イオンを認識することを明らかにしたので報告する。(2)の水中でのアニオン認識能については現在検討中である。

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本研究では、ウミホタル等の生物発光体であるアミドピラジン誘導体(AP)に注目し、新しい分子機能開拓を目指している。APは蛍光性や酸化還元性を持つとともに、金属イオンに配位できる構造を有する。これらの特徴を活かした新しい分子骨格の構築として、これまでにビスアミドピラジン誘導体(bisAP)の構築に成功した。さらに、APをホウ素と配位させることにより、蛍光性を有する環状化合物の、アミドピラジン配位ホウ素(BAP)化合物の合成に成功した。今回、BAP誘導体とビスBAP誘導体(bisBAP)の合成と分光学的性質を調べた結果について報告する。

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海洋発光生物のウミホタルやオワンクラゲは、特異な複素環化合物を生物発光に利用している。我々は生物発光関連化合物の中から発光体であるアミドピラジンに着目し、新規機能性化合物の合成を目指している。本研究では、アミドピラジンのピラジン環窒素とアミド部位のカルボニル酸素をホウ素に配位させた新規なボランアミドピラジナート(BAP)化合物の合成に成功した。5位とアミド部位に種々のパラ置換フェニル基を有するアミドピラジンから合成したBAP誘導体について、その合成と基本物性について報告する。

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我々は、イミダゾピラジノン生物発光系の分子機構を解明すべく、イミダゾピラジノン誘導体の化学発光反応を詳細に調べてきた。本研究では電子移動型酸素化機構の確立を目指し、置換基を変換したイミダゾピラジノン誘導体を用いて、酸素並びに電子受容性分子との反応を解析した。その結果、イミダゾピラジノンアニオンと酸素分子との反応が、電子移動の関与する効率の良い反応であることを見出した。この酸素化プロセスの反応機構について議論する。

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共役を断ち切ることなくπ電子系が分布する方向を90°回転できるスピロ共役分子は、その特異な電子構造に興味が持たれる。スピロ共役によるπ軌道のエネルギーの変化を実験的に明らかにするとともに、機能性極薄分子集合体の新しい構成ユニットとしてのスピロ共役分子の可能性を探るため、ジアザフルオレン環を含むスピロ共役化合物とその関連化合物の気相紫外光電子スペクトルを測定した。別途行った第一原理計算に基づいて光電子バンドの帰属を行った結果、スピロ共役系を構成する互いに直交した二つの共役系の一方あるいは両方がヘテロ環である場合、両環とも炭化水素の場合とは異なるパターンで軌道エネルギーの変化が起こることを見出した。

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βアルキル型ポルフィリンは、外周に嵩高い置換基を持たない大環状π共役分子であり、メソアリール型と比較して密な超分子集積化が期待できる。本研究では、βアルキル型ポルフィリンをより自由に分子デザインしうる、新しい合成法の開発を行った。その手法を用いることで、両親媒性を有する新規ポルフィリンの合成を達成した。このポルフィリンの両親媒性に基づく集積化により、分子レベルで緻密に空間制御されたポルフィリン超分子組織体を合成した。また常磁性遷移金属をポルフィリンに挿入することで、中心金属‐金属間距離が極めて小さい一次元金属鎖が構築される。その磁気的相互作用についても併せて報告する。

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アズリポルフィリンは、分子内に通常のポルフィリンとは異なる寄与を有し、これを制御することで、様々な半導体材料への応用が期待される。今回、[3+1]ポルフィリン合成法を用いて、ベンゼン環が縮環した位置がそれぞれ異なる、モノ、ジ、トリベンゾアズリポルフィリンを合成し、そのジカチオンにおいて、ベンゼン環が芳香族性に対してどのような影響を与えているのかということを、¹H NMRの測定結果やNICSなどの構造計算結果を元に考察し、検討した。その結果、ベンゼン環の位置により、メインの18π系に強い寄与が見られるのではないかということが確認された。

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ポルフィセン(Pc)はポルフィリン(Por)の構造異性体であり、その特異な環構造から、Porとは異なる性質が報告されている。そのために新たな可能性を秘めている化合物である。しかしPcはPorと比較して合成報告が少ないのが現状である。そのなかでも共役拡張ポルフィセンは報告例が数例しかなく、その物性について明らかにされていない。当研究室では、ビシクロ環縮合ポルフィリンを加熱による逆Diels-Alder反応によって共役拡張ポルフィリンを得る方法を報告している。そこで、この手法をPcに応用して、ビシクロ環縮合ポルフィセンから共役拡張ポルフィセンの合成を行った。本発表では共役拡張ポルフィリンセンの光学特性、電気化学特性について報告する予定である。

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大きなP軌道と電子雲をもっている硫黄原子は、固体中で強いS-S相互作用と、π共役系、また、分子間での電子移動が可能である。逆Diels-Alder反応によりπ共役を拡張させたテトラ(ジチアナフト)ポルフィリンの合成と有機半導体特性を検討した。また、光反応によりジチア化合物が、ジチイン化合物を生成する方法を用いて、連結ポルフィリンの合成を検討した。

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ポルフィリンは可視領域に強い吸収を持つことから、その光物性を応用して光合成系のモデルや有機太陽電池の素材として用いられている。また、蛍光を発することも知られているため、ポルフィリンの光物性に関する研究は盛んにおこなわれている。
今回、我々は[3+1]合成法を用いてトリビシクロアセナフトポルフィリンを合成し、光物性の測定を行った。その結果、他のポルフィリンと比較すると複雑な吸収を示し、蛍光スペクトルの形状、蛍光量子収率は励起波長によって変化することが分かった。さらに、蛍光検出波長を変化させると異なる励起スペクトルが得られたことから、このポルフィリンでは単一分子で2種類の吸収と蛍光が観測されたといえる。さらに、置換基を変えたトリビシクロアセナフトポルフィリンにおける光物性も測定した。

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これまで無機材料で構成されてきた半導体分野で、有機電界効果トランジスタ（OFET）の研究が盛んである。特に、塗布型有機半導体材料は、低コスト・フレキシブル・大面積化・軽量化という有機材料の特徴を生かせるため実用化が期待される。本研究では、優れたトランジスタ特性を示すベンゾポルフィリンやフタロシアニン類の可溶性前駆体の合成を検討した。

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我々は近年、フタロシアニン類縁体であるテトラアザクロリン(TAC)とC₆₀をリンカー分子を用いずに直接複合化した化合物(TAC-C₆₀)を合成している。また、このTAC-C₆₀の電子状態はTAC部の置換基のpush-pullの性質に大きく影響を受けるという興味深い性質があることが分かっている。本研究ではTAC-C₆₀の置換基に電子供与性のクラウンエーテルを導入し、カチオンを取り込ませることで置換基を電子供与基から電子吸引基に取り替えたかのような電子状態の変化を起こさせようと考えた。その電子状態の変化を電子吸収スペクトル、磁気円偏光二色性(MCD)スペクトルを測定して詳細に調べた。

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サブポルフィリンはホウ素原子を中心にドーム状に歪んだ分子構造を有し、環縮小された構造を反映して電子吸収スペクトルが対応するポルフィリンに比べて短波長シフトするなど、特有の物性を示す。これまでの報告からサブポルフィリンは中心ホウ素上に反応性の高い軸配位子を有することが明らかにされている。軸配位子を変化させることにより、サブポルフィリンの物性のファインチューニングが可能であると期待できる。本発表では軸配位子の高い反応性を利用した種々の軸配位子交換反応とそれによる物性変化、および酸素架橋サブポルフィリン二量体、サブポルフィリン―ケイ素フタロシアニンへテロ三量体の合成と物性について報告する。

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電子供与性基を有したトリシアノエチレンを用いて反応を行うことで、電子供与基と吸引基を同時に有したテトラアザポルフィリンの合成に成功した。また、このアザポルフィリンは電子供与基を変化させることでその吸収が大きく長波長シフトすることを見出した。合成時に置換基の位置異性体が4種類生成するが、分離することでそれぞれの構造に特徴的な吸収を示すことも明らかにした。本発表では、置換基の種類と位置による吸収変化を理論的な解釈も交えて報告する。

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我々はビフェニルのテトラシアノ誘導体を新規に合成しこれを接合部に用いることで、フタロシアニンが近距離で接合した二量体を得ることに成功した。この錯体の構造、分光学的性質、電気化学性質について調べ、フタロシアニンモノマーと比較分析した。

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ポルフィリンはクロロフィルやヘムを構成する基本骨格であり、ポルフィリンの誘導体は機能性材料として応用が期待されている物質である。特に、環状ポルフィリンオリゴマーは光捕集アンテナシステムとして機能することが明らかとなり大きな注目を浴びている。当研究室ではこれまでに、ポルフィリンのmeso位をブタジインで連結した正方形環状四量体および三角形環状三量体の合成を報告している。本研究では、ポルフィリン誘導体のmeso位をジフェニルブタジインで連結した正方形環状四量体および三角形環状三量体を合成した。合成の詳細、および既報の分子との特性の違いについて報告する。

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当研究室で最近開発した３つのジピリルピリジン鎖からなるクリプタンド状ポルフィリノイドはカルボン酸を捕捉してD₃対称構造を取ることを明らかにした。光学活性カルボン酸の場合、クリプタンドのD₃対称による分子ねじれは一方に偏り、ジピリルピリジンπ電子系の電子遷移に相当する390nmの波長でCDコットン効果が観測された。ピリジンγ位にアミノ基を導入して水素結合能を増大させたクリプタンドを用いて、種々の光学活性カルボン酸とのバインディングについて詳細な検討を行った。

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ジピリルメタン及びビピロールを構成単位とする大環状ポルフィリノイドは、特徴的な種々のコンフォメーションをとる。８個のピロールからなり、８の字型の不斉構造をもつシクロオクタピロールでは、光学活性アミンの存在下での金属の挿入反応により、不斉金属錯体が生成した。１２、１６個のピロールからなるシクロドデカピロール、シクロヘキサデカピロールも同様にして不斉単核銅錯体を合成する事ができ、更にロジウムの挿入により強固な多重ねじれ構造を持つ多核金属錯体を合成する事ができた。金属の種類、反応条件によりこのねじれ構造を制御する事が可能であり、それらの構造について比較、検討した。

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フラーレンの可逆付加反応はフラーレンの分離法や位置選択的多段階付加反応を制御し得るテンプレートとして有用である。すでに私達は金属内包フラーレンLa@C₈₂とシクロペンタジエンとの反応を検討し、付加反応が高選択的に進行することを報告している。また逆反応が速やかに進行することを見出した。本研究では反応機構の解明と付加体の安定性の向上を目的として、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエンとの反応を検討した。付加体の構造を単結晶X線構造解析により明らかにし、化学反応性および位置選択性を理論計算に基づいて明らかにしたので合わせて報告する。

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sp²炭素のみからなるかご構造を有するフラーレンの内部に、Sc原子を内包させたSc内包フラーレンは、炭素ケージ構造及び内包種構造が他の金属内包フラーレンに比べて多種多様に富むだけでなく、Sc₃やSc₂C₂, Sc₃Nクラスターをケージに閉じ込め、通常分子としては存在できない金属クラスターを安定に存在させることができる。 　Sc₂C₈₂とアダマンタンジアジリンとの反応により、Sc₂C₈₂アダマンタン誘導体の合成、単離に成功した。単結晶X線構造解析及び各種スペクトル測定により、構造解析を行った。

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我々はこれまで、局在化1,3－ビラジカルの最安定スピン多重度に及ぼす置換基および元素効果について報告してきた。その一連の研究を基礎として、今回、テトララジカル1-4のスピン整列法の開発に取り組んだ。理論的な研究により、2位上の置換基X,Yを適切に選択することで、それらポリラジカル種のスピン多重度制御が可能になることがわかった。実験的な研究との相関についても報告する。

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キラルピペラジン用いた不斉Michael反応の汎用性を検討する過程において，2-oxo-cyclopentanecarboxylic acid benzyl esterにZ-4-oxo-pent-2-enalを混合させるだけでフラン化反応が進行し，２位に四級炭素を構築できる事を見いだし，さらにジアステレオ選択的反応について検討したので発表する。この反応はHFIPや安息香酸などの弱いブレンステッド酸を添加することにより加速された。穏やかな条件下でフランに4級炭素置換基を導入できることがわかったので,β-ケトエステルにキラル補助基を導入し，反応加速剤として各種酸を加えることで，ジアステレオ選択的なフラン環の構築の検討を行った。キラル補助基に8-phenylmenthol、添加剤に2,2,2-trifluoroethanolを用いる事で高い収率を維持したまま、高ジアステレオ選択性の発現に成功した。（96% de）今後は，絶対立体化学を決定し，このジアステレオ選択的反応の汎用性を検討する予定である。

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これまでに我々は，クロメン誘導体のフォトクロミズムにおける２位の置換基の嵩高さが，反応の動的挙動に与える影響について系統的に調べてきた。本研究では，２位にスピロフルオレニリデン基をもつクロメン誘導体１の動的挙動を対応する2,2-ジフェニル体２と比較した。１は２の２つのフェニル基を炭素－炭素結合で結んだものに相当する。したがって１では，２におけるフェニル基の回転の自由度が失われているために，１の閉環過程ではスピロフルオレニリデン基と溶媒との相互作用は２に比べて大きいと考えられる。ポスターでは１と２の反応速度定数の圧力，粘度依存性を比較して，動的挙動の相違について議論する。

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1,2-ジクロロエタン中、AlCl₃とC₆₀の反応により、クロロエチル付加体(CH₃CHCl-C₆₀-Cl)が得られた。この付加体をフラレノール(CH₃CHCl-C₆₀-OH)に変換した後、強酸で処理することにより、新規フラーレンカチオン (CH₃CHCl-C₆₀⁺)を発生させNMR観測することに成功した。これらのカチオンの構造と安定性を、これまでに報告した他のアルキルC₆₀カチオンと比較して報告する。

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以前我々は、オルト位に4個のブロモ基、パラ位に2個のtert-ブチル基を有するジフェニルカルベンは室温脱気ベンゼン中で半減期16秒の長寿命三重項カルベンであり、ブロモ基が三重項カルベンの有効な保護基となることを示した。今回、より安定な三重項ジフェニルカルベンの発生を目的として、立体保護基としてオルト位にブロモ基よりも嵩高いヨード基とブロモ基を２個ずつ有するジフェニルジアゾメタンを合成し、その光分解によって三重項ジフェニルカルベンを発生させた。そして、各種分光法とレーザー閃光光分解法を用いて、発生したカルベンの安定性と反応性に対するオルト位ヨード基の効果を検討した。

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最近、我々は9-アクリジニル(フェニル)ジアゾメタンを合成し、その光照射により発生した三重項カルベンを特性化した。さらに、そのN-オキシド誘導体と銅イオンの錯体への光照射により、三重項カルベンと銅イオン間の強い強磁性相互作用による高スピン種が形成することを明らかにした。この結果はアクリジニルカルベンユニットがハイブリッド磁性体の有機スピン源として有効であることを示している。今回、我々は2ヵ所で配位可能なカルベン前駆体として1,3-ビス[(2,7-ジ-tert-ブチル-9-アクリジニル)ジアゾメチル]ベンゼンを合成し、その光照射により発生したビスカルベンの特性化を行った。

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三重項カルベンはラジカルの2倍のスピン多重度を持つため磁性材料の有効な有機スピン源と考えられている。4-ピリジルカルベン誘導体と銅イオンからなる高スピン錯体は自己集積によって容易に得られるが、非常に不安定であり、また磁気的相互作用が弱かった。最近、我々は9-アクリジニル(フェニル)カルベン-N-オキシドと銅イオンの2 : 1錯体が4-ピリジル系よりも安定性と磁気的相互作用の面で優れていることを明らかにした。今回、我々は3つの9-アクリジニル(フェニル)ジアゾメタンから構成されるデンドリマー型トリス(ジアゾ)化合物を合成し、トリス(ジアゾ)化合物の光分解によって発生 したトリスカルベンの安定性と磁気特性を検討した。

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高活性化学種である三重項カルベンを長寿命化する手段として、固体表面にカルベンを固定して二量化を防止することが有効であると考えられる。これを検証するために、カルベンの前駆体であるジアリールジアゾメタンをアダマンタン骨格をもつ三脚形トリチオールと連結し、得られた連結体のトリチオール部分をAu(111)面上にS-Au結合で３点吸着することにより、ジアゾメタンの自己組織化単分子膜を作製した。この膜に光照射し、脱窒素により発生したカルベンをOH基またはビニル基をもつフェロセン誘導体で捕捉することにより、膜上でのカルベン発生を確認した。

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アダマンタンの３つの橋頭位にCH₂SH基を結合した三脚形分子の第４の橋頭位に長さの異なるオリゴフェニレンエチニレン基を介してフェロセンを連結した。これらの連結体トリチオールの自己組織化単分子膜を金(111)面上に作製した。サイクリックボルタンメトリーにより膜上におけるフェロセニル基の酸化還元とチオラートの還元的脱離を観測することにより、吸着状態と分子間相互作用を検討した。

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[Ru(bpy)₃]²⁺-MV²⁺-EDTA系を用いたPhNO₂の光還元反応機構について、p-FPhNO₂を基質として用い、¹⁹F-NMRによる中間物質の同定を行うことで検討した。光還元反応では、3つの中間物質（1～3）の生成と減衰を伴い、最終的にp-FPhNH₂と未同定生成物4を与えた。まず、p-FPhNO₂の減少と共に中間物質1の生成が見られ80分で最大となった後、さらなる光還元反応により減少していった。また中間物質2の生成速度は、60～80分で最大になっていることから中間物質1の還元反応により生成したのではないかと考えている。現在、生成物1～4について同定中である。

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　β-アリール基質のソルボリシスは、フェノニウムイオンを経るk_Δ機構で主に進行する。そこで我々はα-CN-β-CF₃-β-フェニルエチルトリフレートのアセトリシスを行い、LArSR式による置換基効果解析から、k_Δ遷移状態の構造や安定性に対する電子求引性基の影響について研究を行った。 　LArSR式による解析でneophyl系がr⁺=0.57であるのに対し、本系のr⁺=1.09という値は、k_Δ遷移状態がFriedel-Crafts塩素化反応に見られるベンゼニウムイオンに近い構造であることを示す。更にα-CN-α-CF₃-OTfはr⁺=0.98であり、本系のCF₃基はβ位にあるにも関わらず同程度のr⁺を与えた。これはk_Δ遷移状態構造がフェノニウム中間体に近いことを示唆する。以上の詳細を報告する。

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　クラウンエーテルは種々のアルカリ、アルカリ土類金属と安定な錯体を形成する。クラウンエーテル-金属錯体の安定性に与える影響として、イオンサイズとクラウン環サイズの適合、クラウン環の柔軟性を利用した錯形成などが挙げられる。本研究では、クラウン環上の配位原子の電子的効果や、その環構造の柔軟性が錯形成反応に与える影響を明らかにする目的で、窒素原子を金属配位原子として持ち、剛直なクラウン環を構成できるbenzo基を有するN-arylmonoaza-5,6-benzo-15-crown-5 etherに着目し、このアザクラウンエーテルとアルカリ金属の錯形成反応とその構造を、安定度定数に対するアザ-アリール環上の置換基効果により検討した。以上の詳細を報告する。

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ベンジル位カチオンの安定性に及ぼす置換基効果解析では置換基の電子効果を誘起効果と共鳴効果に分離して評価する湯川―都野式が精度よく適用される。その一方で、アニオン系では溶媒の効果が顕著に含まれるため解析は容易でない。我々はフェノールの酸性度に及ぼす置換基効果に共役塩基の環置換基への特異的水和が重要な役割を果たすことを明らかにした。今回は溶媒を含まない気相中での本質的な置換基の効果を明らかにするため、電子的に多様な環置換基を導入したベンジル位アニオンの気相安定性を分子軌道法を用いて決定した。種々のアニオン系の置換基効果を互いに比較して、陰イオンの安定性にどのような電子効果が重要かを検討した。

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いくつかのニトロアルカン類の酸塩基反応において見られる反応速度と平衡の特異な関係性は、ニトロアルカン異常性として知られている。フェニルニトロメタンにおいても塩基に水酸化物イオンを用いた際にこの異常性が確認されている。本研究では、置換フェニルニトロメタンにおけるニトロアルカン異常性の原因をプロトン移動正逆両反応の速度解析によって実験的に解明することを目的としており、塩基性条件下でのニトロネイトアニオンのプロトン化反応速度を重溶媒中でのH-D交換を利用して測定し、置換基効果を求めた。発表では、以前に測定された脱プロトン化反応速度の結果と合わせて、プロトン移動反応のメカニズムについて議論する。

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アシロイン（α－ヒドロキシケトン）は酸、塩基触媒下で分子内転位を起こすことが知られている。本研究では、反応基質の化学変化と溶媒和-脱溶媒和の現象がどのようなタイミングで起こるのかを明らかにするために、水性溶媒中でのアシロイン誘導体の水素移動反応について実験的解析を行った。NMRの結果より、塩基性条件において水素移動が確認されたが、副反応によってアルデヒド、カルボン酸及びジケトンが生成していた。その大きな原因である酸素を除去し、窒素雰囲気下で反応させることによって副反応を抑えられることがわかった。その条件で、UVスペクトルを用いて水素移動反応の速度を測定した結果について報告する。

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　分子内にアニオン性のC原子とO原子をもつ有機塩基は、その2原子ともに求核性がある。これら2箇所の求核部位を有する求核種の位置選択性を検討するために、気相中での様々な求核種と塩化メチルによるS_N2反応、およびシアン化水素によるプロトン引き抜き反応について分子軌道計算を用いて解析した。いずれの反応系でも、求核種のC原子が攻撃するよりもO原子が攻撃するほうが活性化エネルギーは小さい値を示した。一方、C原子が攻撃するほうが反応エネルギーは小さくなり、熱力学的に安定であることが判明した。発表では、様々な求電子剤を用いた反応性の比較や位置選択性について報告する。

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　ベックマン転位により起こる転位と断片化は、当研究室の理論計算によると、単一の遷移状態を通り、その後それぞれの生成物への経路分岐が起きていることが示唆された。本研究では、その機構の一般性を明らかにするため、類似反応であるシュット反応の速度論的研究を行った。実際に、置換3-フェニル-2-ブタノンを用いた反応は、転位と断片化による二種の生成物を与えた。またUV測定では、吸収変化から、シュミット反応の中間体とされるイミノジアゾニウムイオンを通っていることも示唆された。今回は、中間体から発生する窒素の体積変化を追跡することにより反応速度を決定し、それをハメット則に適用したので報告する。

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ケイ素やゲルマニウムは炭素と比較して電気陰性度が小さいため、その多重結合構造は炭素の平面構造とは大幅に異なり、著しく折れ曲がる。本研究では、当グループで開発された超球面探索法を用い、合成研究に高い関心が寄せられているケイ素およびゲルマニウムのアレン類似構造を含む最小の組成であるSi₃H₄およびGe₃H₄の構造の非経験的探索を行った。得られた構造およびそれらのエネルギー的関係について、炭素の対応する組成であるC₃H₄との比較を行い、相違点を系統的に検討した。

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　先に当研究室では、イミン結合を軸・環の集合要素として用いることでヒドリンダセン型軸分子(E)-2を環状分子内へ効率的にスレッディングさせ、その後のエンドキャップ導入を通してイミン架橋型ロタキサンを構築することに成功した。また、イミン結合の加水分解・再形成により環の運動性制御が可能であることを報告した。
　本研究では、イミン結合形成に伴うスレッディング段階及び加水分解段階における基質依存性を明らかにすることを目的とし、新たに合成したシクロヘキサン型軸分子(E)-1及びヘキサヒドロピレン型軸分子(E)-3を用いることで、環状ジアミン分子とのスレッディング特性及びロタキサン構築後のイミン結合の加水分解による[2]ロタキサンへの変換を調査し、イミン架橋ステーションの構造が加水分解平衡に与える影響を比較検討した。

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