本稿では、サービス研究からみた循環経済のシステム理解を提示する。具体的には、消費側の活動、生産側の活動、およびデータ利活用それぞれに関する循環に新たに注目する。消費行動に関わる従来の取り組みとしては、システム思考の一部である因果ループに組み込まれた行動変容の理解、使用や所有形態の変化を要因とするバックファイア効果の分析、および循環型ビジネスの受容性のシミュレーションなどがある。本稿が注目する消費側の活動における循環では、そうした消費行動の背後を読み解いていくための概念として、“excite the loop”とロイヤルティループの二つを紹介する。これらはいずれも、顧客体験と顧客ロイヤルティを高め、価値創出という新たな質のループの実現に貢献する。生産側の活動における循環を考えると、消費者側の行動変容と対になる、リニア経済ではなく循環経済を前提としたビジネスモデルや製品の変革を組み込んだ研究の必要性が示唆される。データ利活用に関わる循環では、デジタル政策と循環経済の政策とを連動させた欧州における技術的・法制度の整備の他、日本における最近の取り組みを説明する。これら 3 つの循環とその相互関係は、今後の循環経済における消費形態の変化を分析していくことに役立てられる。
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