本研究では、熱帯地域における地中熱ヒートポンプシステム(GSHPs)の環境評価を目的として、タイ・バンコクの商業施設におけるGSHPsの最適設計とライフサイクルインベントリ(LCI)分析を行った。比較対象は空気熱源ヒートポンプシステム(ASHPs)とし、評価項目は、LC-CO2, NOx, SO2排出量とした。熱源水温度の試算に基づく最適設計の結果、GSHPsのLC-CO2, NOx, SO2排出量はASHPsに対して、それぞれ28.8%、25.3%、26.6%削減された。さらに、日本で一般的に使用される地中への放熱量の設計基準内で、地中熱交換器長さと建築物の規模による要因別感度分析を行った。その結果、GSHPsのライフサイクル環境負荷は地中熱交換器長さの増加に伴って減少した。また、感度分析の範囲内で、GSHPsの環境負荷はASHPsより低いことが示された。一方で、建築物の規模に対して大規模な地中熱交換器が要求されることが示された。また、長期的な地温上昇に伴うシステムの持続可能性は明らかに出来ていないため、今後は経済面とシステムの持続可能性を含めた最適設計と評価を行う必要がある。
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