日本LCA学会誌
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目次
巻頭言
特集「産業団地のカーボンニュートラル化」
解説
  • 江﨑 哲弘
    2024 年 20 巻 2 号 p. 50-56
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー

    川崎臨海部は国内最大級のコンビナートが形成され、川崎市の産業の中心地である一方、二酸化炭素の排出量も多い。川崎市では、水素に関する取り組みを戦略的に推進するため、国に先駆けて 2015 年に「水素社会の実現に向けた川崎水素戦略」を策定し、水素エネルギーの積極的な導入と利活用による「未来型環境・産業都市」の実現を目指して取組を進めてきた。さらに、世界的な脱炭素・カーボンニュートラルの潮流を踏まえ、2022 年に「川崎カーボンニュートラルコンビナート構想」を策定し、カーボンニュートラル社会に適応・貢献するコンビナートへと転換していくための取組を進めている。

  • 加藤 純
    2024 年 20 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー

    石狩市は、2050 年カーボンニュートラルの達成に向けて、地域脱炭素の先進的な取組を行う地域「脱炭素先行地域」として国から選定された。日本海に面する石狩市は、良好な風況や広大な土地を有することから風力発電を中心に再生可能エネルギー(以下「再エネ」)が集積している。本稿では、これら地域に集積している再エネ電源を地域で活用する再エネの「地産地活」を目指す石狩市の取組について紹介する。

  • 畑中 直樹, 東海 明宏, 中久保 豊彦
    2024 年 20 巻 2 号 p. 62-67
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー

    気候変動対策をさらに加速する必要性が高まるなか、産業各分野で温室効果ガスのサプライチェーン排出量削減に向けての取組が進みつつあるが、この中で我が国の温室効果ガス排出量の中で少なくない割合を占める中小企業がボトルネックになる可能性がある。こうした中、自動車関連産業クラスターを形成する豊田市等において中小企業を主な対象に脱炭素経営を促進する取組が進みつつある。本稿では、これらの動向について整理するとともに、今後のサプライチェーン排出量算出及び削減における課題について考察した。

  • 土井 麻記子
    2024 年 20 巻 2 号 p. 68-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、産業団地における国内外の産業の脱炭素化に向けた取組を解説し、読者と共に日本での将来の実装イメージを共有することである。筆者は実証事業を通じて焼却炉を核とした地域循環共生圏モデルのうち素材産業、地域製造業との連携方法を区分した。そのうち、素材産業連携モデルでは、将来的に焼却炉が炭素循環プラントとなることが期待される。海外では、素材産業と連携して焼却熱を産業に供給する事例が複数あるため、その一部を本稿で紹介した。実装にむけて重要な視点である広域輸送の調査結果も示した。加えて、世界経済フォーラムが主導する「産業クラスターの移行イニシアチブ(Transitioning Industrial Clusters initiative)」の取組を紹介した。産業集積地では脱炭素化方策として、グリーン水素、H2 と CO2 のパイプライン、再生可能エネルギー、産業への廃棄物焼却熱供給、ケミカルリサイクル、電化、排水共同処理を視野に入れている。そこでは、脱炭素化実現のためには、関係者のパートナーシップ、ポリシー、技術、融資面での整備も必要と結んでいる。日本でもこれら海外の動きを参考にして、国内で連携を構築することにより、産業団地のカーボンニュートラルを推進していくことが必要である。

  • 吉川 克彦, 大西 悟
    2024 年 20 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー

    本記事は、産業共生及びエコ産業団地が産業の脱炭素化にむけた動向を報告することを目的とする。まず、近年の取り組みの中での位置づけを記述し、2023 年に行われた関連シンポジウム及び現地視察の紹介をする。その後、エコ産業団地の先進事例である韓国の取り組みを概説し、国際機関の支援イニシアティブを紹介する。産業団地の脱炭素化にむけては、個別の取り組みのみならず、他の産業団地との協働、国際的な連携が重要だと示唆した。

一般投稿
研究論文
  • 窪田 碧唯, 山崎 智生, 片山 昇, 堂脇 清志
    2024 年 20 巻 2 号 p. 83-93
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー

    魚類などの水産物は消費者に届くまで、冷蔵あるいは冷凍温度帯により輸送されるが、消費時においては魚肉を解凍する必要があり、魚肉の温度が上昇することで氷結晶の粗大化や酵素反応等により著しく鮮度低下が発生する可能性がある。一般家庭での消費を想定した場合、家庭内での一般的な解凍方法の候補として、電子レンジ、常温解凍、冷蔵解凍、浸水解凍、あるいは流水解凍が挙げられる。これらの解凍方法においては、環境負荷に影響を与える直接・間接のエネルギー投入が行われるため、それぞれの解凍時にかかる環境負荷が異なり、品質と環境影響との相互関係があることが想定される。そこで本研究では、冷凍サバにおける 5 つの解凍方法について、電気インピーダンス測定による魚肉の鮮度評価と LCA に基づく環境負荷を合わせた複合評価を行った。環境影響評価では、GWP(GHG 排出量)を評価指標として、機能単位(FU)をサバの切り身約 1 個分の可食部の 60 g を解凍するまでとして評価を行った。この結果、鮮度の観点からは、温度を低く保ったまま時間をかけて解凍することにより品質が保たれることが示唆された。この理由は、低温であるほど解凍中の細胞の破壊を緩やかにし、肉質の劣化を遅くすることが可能なためである。本研究では、電圧 50 mV、100 kHz ~ 10 Hz の周波数帯でインピーダンス計測を行った。100 Hz の結果から、流水解凍時のインピーダンスが最も小さく 40.8 Ω であった。一方で、インピーダンスが一番大きい解凍方法は冷蔵解凍で 69.0 Ω となり、劣化が進みにくいという結果を得た。また、解凍時間及び直接・間接エネルギー投入量を考慮した環境負荷は、流水解凍が 14.2 g-CO2 eq./FU と最も大きい結果が得られた。これは、水消費による間接的なエネルギー消費量が大きいことによる。その他の解凍方法では、冷蔵解凍が0.124 g-CO2 eq./FU、浸水解凍が 0.196 g-CO2 eq./FU、及び電子レンジ解凍が 0.005 g-CO2 eq./FU となった。最後に、電子レンジによる解凍をベースケースとして、サバの環境影響と鮮度を複合的に評価したところ、鮮度維持の観点からは常温解凍より冷蔵解凍の方が望ましいことが示唆された。

諸報
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