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国連において 2015 年に採択された 17 の持続可能な開発目標(SDGs)の 12 番目は持続可能な消費と生産(SCP)パターンの確保である。持続可能な生産についてはクリーン生産や環境配慮設計などのアプローチが定着してきているが、持続可能な消費に対するアプローチはグリーン購入や廃棄物の分別など施策が限定的であり、定着には至っていない。SDGs やパリ協定によって、SCP パターン定着へのアプローチの対象が個別の課題からライフサイクル全体、さらに社会インフラまでに拡大し、改善を中心とする効率性アプローチから社会的な変革を目指す充足性アプローチに変遷してきている。本稿では、SCP パターン定着へのアプローチとして(1)SCP 政策の対象の変化と拡大、(2)消費と生産の連携強化、(3)社会システム転換、(4)ボトムアップの実践という 4 つの方向性を提示し、その入り口としての 13 の実現機会を提案する。この実現機会から導出される消費へのアプローチ事例として価値活用型循環、コト消費、環境情報提供を紹介する。
持続可能な消費を目指す政策は四半世紀以上試みられてきたが、環境負荷の増大には歯止めがかかっていない。本稿では、既存のアプローチを改善型政策アプローチ、今後展開されるべきアプローチをシステム転換型政策アプローチと称し、それぞれの概要と LCA 研究への示唆を説明した。改善型の持続可能な消費への施策は大別して 3 種類があり、LCA による知見も大いに活用される一方で、限界も存在する。それを補うのがシステム転換型のアプローチであり、これを模式化したビジョン創発型政策形成(envisioning-based policy making; EnBPM)の概要や利点などを説明した。EnBPM を適用した事例研究からは、従来のステークホルダーの枠を超えた協働作業が行われることが望ましいこと、そのための「場」の果たす役割が大きいことなどが示唆されている。EnBPM の観点からは、LCA にスクリーニング的な評価や形成的評価へ展開していくことなどが期待されている。
日本のようにモノが溢れる先進国では、シェアリングエコノミーは遊休資産を有効活用する機会として捉えられているが、所得水準が大きく変化を続ける新興国では、所有率の低いモノに対してシェアリングを定着させることにより、循環型社会を形成する可能性を秘める。現状で様々なシェアリングビジネスが導入され、今後所得水準が変化するなかで、どんなシェアリングサービスがアジア新興国に定着する傾向が高いかは明らかになっていない。本稿では、アジア新興国におけるシェアリングエコノミーの動向と研究事例を概観した上で、シェアリングが定着することによる持続可能な消費に向けた機会を探る。研究事例では、カーシェアリングと家庭洗濯のシェアリング(コインランドリーと洗濯代行)に着目し、環境負荷削減要因とともに利用に関わる動機や障壁を整理した。
食料システムは、食料や食品を提供することで私たちの健康や生活を支えている。一方で、食に関する生産や流通、消費などの活動が地球規模での環境問題に大きく関係していることが明らかとなってきた。持続的な食料システムを構築する必要性が世界的に認識されている中で、食に関連した学びの中に環境問題やライフサイクル思考を取り込むことの重要性が指摘されている。本稿では、宇都宮市内の小学校、中学校へのアンケート調査から、ライフサイクル思考に基づく環境教育を家庭科教育、食育で取り入れることへの課題を整理した。また、食べ残しを題材として著者らが作成したライフサイクル思考を取り入れた食育教材とその試行例を紹介する。
社会的に持続可能な消費を進めていくには、消費を担うアクターである消費者自身の意識や行動、ライフスタイルを変化させていくことが求められる。本稿では、そのような環境配慮型への行動変容に影響する規定因や行動を説明するモデル、行動変容施策の基礎について整理し、解説する。その上で、持続可能な消費に向けて市民の行動変容を促すための取組の課題や今後の展望について述べる。
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