日本LCA学会誌
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19 巻, 3 号
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目次
巻頭言
特集「プラスチック資源循環とライフサイクル思考」
総説
  • 中谷 隼
    2023 年 19 巻 3 号 p. 106-116
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/26
    ジャーナル フリー

    近年、プラスチック資源循環による環境負荷の削減効果を LCA で評価するための方法が改めて問われているが、それには以下の要因があると思われる。すなわち、①脱炭素社会とサーキュラーエコノミーの実現が同時に求められている社会的背景、②評価方法に不確定な要素が残されていること、③資源循環の評価において「廃棄物処理」の視点に加えて「原料生産」の視点が強調されてきたことである。そのため、資源循環による社会全体としての負荷の削減効果を、どのように再生原料の供給側と需要側に割り当てるかという議論が避けて通れなくなっている。その評価には様々な手法が提案されているが、どういった条件を満たす循環利用に対して、どの手法を適用するべきかについては議論が煮詰まっていない。本稿では、プラスチックの資源循環を念頭に、リサイクルを含む循環利用のオプションを LCA で評価および比較する方法について解説する。まず、カットオフ法および負荷回避法と、負荷と削減効果の割当手法について、プロセスフローの図解によって説明する。また、プラスチック資源循環の評価に残された課題として、評価手法の選択、負荷を控除するプロセスの特定、資源循環の効果の表示に関わる問題について述べる。

解説
  • 森 史也
    2023 年 19 巻 3 号 p. 117-126
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/26
    ジャーナル フリー

    脱炭素社会、資源循環型社会への移行が求められるなか、プラスチックの循環利用による環境負荷の削減効果を定量的に評価することの重要性が増している。本稿では近年、国内外で報告されたプラスチックのリサイクル(マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル)およびエネルギーリカバリーの LCA 事例から、CO2 排出を含む気候変動への影響の削減効果に着目した。これらの評価事例を、システム境界や代替される製品の設定、削減効果の評価方法、さらに様々なリサイクル手法とエネルギーリカバリーの比較の観点から概観する。

  • 杉澤 建, 明戸 剛
    2023 年 19 巻 3 号 p. 127-134
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/26
    ジャーナル フリー

    セメント産業は多くの廃棄物・副産物を活用しており、中でもセメント製造プロセスで廃プラスチックを活用することは、エネルギーを有効利用しつつ適正に処理できる方法である。無機成分の混入や複数樹脂の混合により従来焼却されていた廃プラスチックを高温焼成用の石炭代替として使用することは脱炭素効果があると考えられ、本稿では LCA の手法に基づいて、セメント製造プロセスにおける廃プラスチックのエネルギー回収によるCO2の排出削減量を算定した事例について紹介する。実際の工場をモデルとして算定した結果、必要な熱エネルギーのうち 32% を廃プラスチックにより代替することで、セメント製造工程全体の排出量原単位の約 1 割に相当するセメント 1 t あたり 75 kg の CO2 排出量を削減できることが明らかとなった。今後もより多くの廃プラスチックをセメント製造プロセスで利用できる技術開発が進み、国際的な課題となっている廃プラスチックの処理方法の一つとして活用されることが期待される。

  • 島圖 良和
    2023 年 19 巻 3 号 p. 135-142
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/26
    ジャーナル フリー

    プラスチック循環利用は「プラスチック処理問題解決」「脱炭素」「省資源」と三重の価値を有するが、 ①使用済プラスチックの選別による効果と経済性のトレードオフ、それを超えるための技術開発面の課題や、②多様なリサイクルプロセスを公平に評価し、報告するための制度設計面の課題が残され、それらが障壁となって、まだその期待ほどには進展していないのが実態である。本稿では、レゾナック社が 20 年に渡って操業してきた使用済プラスチックのガス化プロセスの事例を紹介すると共に、そのガス化プロセスに限らず、広くプラスチック循環利用を促進するための課題に対する提言も行う。

研究論文
  • 平田 一馬, 中谷 隼, 林 徹, 藤田 壮
    2023 年 19 巻 3 号 p. 143-157
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/26
    ジャーナル フリー

    プラスチック資源循環戦略におけるマイルストーンの一つとして、使い捨てプラスチックの削減率に関する目標が示され、その達成に向けてレジ袋の有料化や包装資材の薄肉化など様々な取り組みが行われている。しかし、個々の取り組みが使い捨てプラスチック全体に与える影響や、それらの取り組みによる目標の達成可能性に関する議論が不足している。そのため、本研究では現在削減策がとられている使い捨て品目を調査した上で、各品目の削減可能量を推計しボトムアップ的に積み上げることで、実現可能な使い捨てプラスチックの削減率を推計した。その結果、トップダウン的に設定された目標値と、実現可能な削減量の間には大きな乖離があることが分かった。また、現在の取り組みは家庭部門からの排出削減への寄与が中心であり、産業部門から排出される使い捨てプラスチックに削減の余地が残されていることを示唆する結果が得られた。

  • MAKINO Ryodai, OHNO Hajime, GUZMAN URBINA Alexander, NI Jialing, FUKUS ...
    2023 年 19 巻 3 号 p. 158-168
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/26
    ジャーナル フリー

    The novel polyvinyl chloride (PVC) dechlorination technology addresses two challenges in the industrial metabolism of PVC: the loss of chlorine (Cl) into the environment as calcium chloride (CaCl2) or as a component of landfilled fly ash, and the loss of carbon (C). The technology recovers Cl as sodium chloride (NaCl), a conventional source of Cl, and also enables the recovery of carbon-containing chemicals that could potentially serve as a new source of C. The reductions in environmental impacts associated with the Cl supply chain will depend on the deployment of the process and the handling of PVC-containing products at the end of their life as a new form of composite resource. Using a multi-objective and multi-regional technology choice model developed in this study applied to 8 regions including Japan, Korea, Taiwan, India, Australia, Mexico, China, and Thailand, we found that the implementation of the dechlorination process could potentially reduce GHG emissions by up to 3.73% and reduce the area of salt farming by 44.9%, compared to a scenario with no Cl recovery process. The priority locations for the dechlorination process are regions with low GHG emission intensity in power generation and proximity to major PVC waste-generating regions.

一般投稿
研究論文
  • 李 佰鑫, 李 勤萱, 幸 怡媛, 近藤 康之
    2023 年 19 巻 3 号 p. 169-186
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/26
    ジャーナル フリー

    中華人民共和国が 2017 年に廃プラスチックの輸入を禁止し、日本の他の主要輸出先地域においても廃プラの輸入に関する許可基準の厳格化が進められてきた。そのため、日本国内における廃プラ回収・処理の検討が重要になっている。本論文は、2015 年に日本から輸出されていた 160.6 万トンの廃プラを輸出せず、国内で処理・リサイクルすることにより生じる環境、経済、社会影響を、産業連関分析を応用して統合的に評価した。本研究は、リサイクルする産業部門・方法の異なるリサイクルシナリオ(S1 ~ S6)と単純焼却および埋立を行うベースケースシナリオ(S0)を設定し、各シナリオの下での環境(CO2 排出量)、経済(所得)、社会(雇用者数、輸入額)に係る指標を算定し、それらを組み合わせて統合的に評価する手法を開発した。その手法を応用して、銑鉄部門によるコークス炉化学原料化シナリオ(S1)は、一定の社会経済条件(雇用の維持、輸入額で測られる資源調達の海外依存度の低減、および所得の維持)を満たすシナリオの中で最も CO2 排出量が少ないとの結果が得られた。本研究の結果は、単一の統合された指標を算定せず、複数の指標を組み合わせてシナリオを評価ための産業連関分析の有用性を例証するものである。

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