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本稿では、我が国の金属鉱物資源政策について簡単に整理を試みた。そのために、まず昨今の金属鉱物資源市場における懸念点等を整理し、それを踏まえて政策的な動向を整理した。我が国の金属鉱物資源政策の主たる目的が原料の安定供給確保であることは変わらない。しかしながら、昨今、こうした原料調達が持続可能性に対する阻害要因となってはいけないという社会的要請を受け、供給リスクの具体的な内容が変化してきたこと、そして政策としてもその点への対応が必要とされつつあることを示した。その上で、LCA、MFA といった評価系の研究との接点を探すことで、本学会にとっての鉱物資源政策の重要性を示した。
本解説では、オーストラリアなど世界各地で、鉄鉱石・アルミニウム・銅・リチウムおよびクリティカルミネラルズなどの鉱物資源や金属の生産を行う世界三大資源メジャーの一社であるリオティントにおいて、ESG・脱炭素の重要性とその取り組みについて概説するとともに、バリューチェーン全体を通じた新たな活動を紹介する。
鉱物資源は産業の発展や脱炭素社会の実現において重要な役割を果たすが、その一方でライフサイクル影響評価において鉱物資源使用はもっとも議論の余地のある影響領域の一つとされており、様々な課題を抱えている。そこで本稿では、鉱物資源使用のインパクト評価に関する近年の研究動向や今後の課題について解説することを目的とする。まずインパクト評価における基礎として、鉱物資源使用に関わる問題や影響メカニズムについて整理した。次に、既存の評価手法・モデルを 6 カテゴリーに分類した上で、それらの特徴や課題について解説した。最後に、主に鉱物資源使用のインパクト評価手法開発に関する今後の課題についてまとめた。
天然資源の採掘活動は、複雑なサプライチェーンを通じて大規模な「土地の改変」を伴うことが多い。天然資源は岩石圏から抽出され、技術圏へと流れ、最終的に生態圏へと拡散する。鉱業を始めとする天然資源の採掘活動は、すなわち自然資本のストックである岩石圏への関与とみなすことができる。したがって、天然資源の採掘活動の規模を測定することで、土地改変の度合いを定量的に評価することができる。本稿では、「土地の改変量」を資源の採掘活動を定量化する方法と捉え、隠れたフローを重量という単位で評価する「関与物質総量」に注目した。まず関与物質総量と他の類似指標との差異をレビューし、関与物質総量の特徴について説明した。次に、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチの両側面からの研究例を紹介し、特にボトムアップアプローチ について、素材だけで無く製品のライフサイクルを通じた評価例をあげた。最後に、これらの研究を通じて得られた概念である「資源パラドックス問題」について紹介を行った。
持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け実践と監視を推進している国際情勢において、鉱物資源の利用はとりわけ「目標 12:つくる責任、つかう責任」が強く求められており、公平かつ客観的なライフサイクルアセスメント(LCA)に基づく意思決定が重要になる。本稿では、広域かつ長期的な環境モニタリングにおいて有効な技術である衛星リモートセンシングの現状を整理するとともに、環境 LCA で用いられてきた土地改変強度の推定における衛星リモートセンシングの活用法について解説した。
マンガン団塊、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、レアアース泥などの海底鉱物資源は、近未来の金属資源として注目されている。本解説では、これらの研究開発の背景や歴史的な取り組みについて紹介する。マンガン団塊については、1970 年代末に実海域での 3 回のパイロット採鉱試験が行われた。その際、先駆的な環境影響モニタリングも同時に行われた。21 世紀に入って最初の 20 年間は、海底熱水鉱床が商業開発の最初のターゲットとして注目された。現在、海底鉱物資源の開発に向けては、環境保全策など、いくつかの課題を解決しなければならないが、商業的開発の可能性は高いと考えられている。研究開発には、国家的なものだけでなく、多くのベンチャー企業も参入している。日本国内での海底鉱物資源開発を実現するためには、日本独自のアプローチを模索する必要がある。
食事の変化は、食料生産が環境に与える影響を加速させると同時に、個人の健康に対しても深刻な影響を与える可能性がある。したがって、環境と健康の両方に配慮した食事は、人類の持続可能な未来のために不可欠な部分である。そのためには、継続的な食事の変化による栄養摂取量や環境への影響を分析することが重要である。しかし、家庭単位での食料消費と環境への影響を結びつけた研究や、世帯所得の違いによる、食料品目消費量と栄養摂取量に着目した研究は少ない。このような状況を踏まえ、本研究では、家計調査を用いて、200 品目の食料消費データから世帯所得別の栄養摂取とカーボンフットプリントを算出した。また、結果において、日本におけるタンパク質の摂取と、二酸化炭素排出量の関係に注目した。主な結果は次の通りである。1)年間五分位収入階層が高いほど、タンパク質摂取量が多いことが観測される。2)魚介類から摂取するタンパク質は五分位階層間で有意な差がなかったが、肉類から摂取するタンパク質は最も年収が高い階層と最も年収が低い階層の間で 2 倍以上の差が見られた。 3)年間収入階層が高いほど、肉類の消費による環境への負荷が大きいことがわかった。
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