日本LCA学会誌
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17 巻, 2 号
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目次
巻頭言
特集「温室効果ガス排出削減貢献量評価−ガイドや活用の最新動向−」
解説
  • 鶴田 祥一郎, 内田 裕之, 本下 晶晴, 醍醐 市朗, 稲葉 敦
    2021 年17 巻2 号 p. 62-67
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/26
    ジャーナル フリー

    産業界の脱炭素化に向けたバリューチェーンでの温室効果ガス排出削減対応が求められる時代になっている。日本 LCA 学会では 2015 年に「温室効果ガス排出削減貢献量算定ガイドライン」を発表しているが、様々な地域や国への普及も踏まえたグローバルでの削減貢献量の算定を実施する際、発行した温室効果ガス排出削減貢献量算定ガイドラインでは、様々な地域や国への普及を含めた評価ができる手法としての記載となっているものの、具体的な算定方法やその注意点については説明されていない。そこで、様々な地域や国への普及に係る議論を整理し、第ニ版の温室効果ガス排出削減貢献量算定ガイドラインの策定を行ったので、その内容について本稿で解説する。

  • 内田 裕之
    2021 年17 巻2 号 p. 68-73
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/26
    ジャーナル フリー

    近年、気候変動問題の重要性の高まり、さらには温室効果ガスの実質排出量ゼロに向けた議論の中で、製品による温室効果ガス排出削減量の考え方が、産業界に広がりつつある状況である。この広がりに合わせ、これまでの自社の特定の製品の温室効果ガス排出削減貢献量ではなく、それらを合算した組織活動全体の温室効果ガス排出削減貢献量を一般に開示する事例も増えている。自社の企業価値を高めるためには、企業のビジネスモデル、経営ビジョンと整合して温室効果ガス排出量の削減を整理することが必要であることから、削減貢献量に関しても、個別製品での評価・市場アピールではなく、組織全体の評価結果を整理し、重点分野の特定や目標設定を行い、企業としての取組の方向性を示すことが求められる。

     このような背景に鑑み、日本 LCA 学会環境負荷削減貢献量評価手法研究会では、組織全体の温室効果ガス排出削減貢献量を算定するための方法を示す「組織の温室効果ガス排出削減貢献量の算定と開示に関するガイドライン」を検討している。本稿は、このガイドラインの検討の背景及び現在までの検討の内容について紹介する。

  • 醍醐 市朗, 本下 晶晴, 稲葉 敦
    2021 年17 巻2 号 p. 74-81
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/26
    ジャーナル フリー

    脱炭素社会に向けた温室効果ガス排出削減目標を達成する上で、温室効果ガス排出削減に資する製品等の普及を広く進めることは重要な役割を果たすと考えられる。ライフサイクルアセスメント(LCA)は製品等によるライフサイクルを通じた温室効果ガス排出削減量を定量化することで温室効果ガスの排出削減につながる製品等の普及を支援することができる。その一方、社会における温室効果ガス排出削減への貢献を評価する際に特に注意すべき点もいくつか存在する。これまで様々なガイダンス等において、温室効果ガス排出削減への貢献を評価する上での原則、要求や推奨事項がまとめられている。本稿では様々な主体から発行されている関連ガイダンス、ガイドラインや国際規格を紹介する。既存のガイダンス等について、評価の対象、LCA の適用、算定方法、およびその他の特徴といった視点からそれらを整理し、実務に活用する上で目的に応じたガイダンス等の選定に資する情報を提供する。

  • 橋本 征二, 廣田 大輔
    2021 年17 巻2 号 p. 82-88
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/26
    ジャーナル フリー

    滋賀県では、低炭素社会づくりに向けた事業者行動計画制度において、製品等を通じた貢献を計画及び報告の項目の 1 つに掲げていることから、貢献量の評価・算定の手引きを作成するとともに、貢献量評価に基づく「しが発低炭素ブランド」認定制度を導入し、事業者の取組を支援してきた。評価・算定の手引きを作成するにあたっては、目的、評価対象、貢献の発生場所、時間軸、ベースライン、部品・素材や研究開発の評価方法等が論点となったことから、本稿ではこれらについて紹介した。また、事業者行動報告書における貢献量の記載事業所数は順調に増加していること、「しが発低炭素ブランド」について、これまでに 10 製品の認定を行ってきたことを紹介した。滋賀県発の技術革新を促し世界の CO2 排出削減に貢献するため、滋賀県としても貢献量評価や認定ブランドの普及啓発に力を入れている。

  • 望月 規弘, 大池 倫世, 西村 和彦, 石原 賢一
    2021 年17 巻2 号 p. 89-94
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/26
    ジャーナル フリー

    本解説では、川崎市における温室効果ガス削減貢献量評価への取組「川崎メカニズム認証制度」について報告する。この制度では、LCA 手法を活用して、市内事業者の優れた環境技術・製品・サービスを従来と比較して、温室効果ガス削減貢献量を評価し、認証する。最大の特徴は、川崎市外にこれらの技術・製品・サービスが普及することによる域外貢献量の算定及び認証にある。川崎市では、本制度と「低 CO2 川崎ブランド」の2つの制度により、市内事業者の優れた環境技術を活かした取組を推進している。

事例論文
  • 横山 亮
    2021 年17 巻2 号 p. 95-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/26
    ジャーナル フリー

    部品や素材の CO2 排出削減貢献量の評価には、最終的な用途の特定や評価対象製品単独での効果の抽出が困難であるという課題がある。しかし、電子部品については、対象となる最終製品が電気電子製品や自動車等にある程度限定されること、自身が電力を消費することなどから、CO2 排出削減貢献量を単独で算定することが可能である。今回、既存のガイドライン等に示された方法を基に、電子部品の特徴に適応させる形で CO2 排出削減貢献量の算定方法を3つに整理し、また、実際の算定に必要となる計算式を設定した。この方法により製品の CO2排出削減貢献量の評価を行い、結果を積み上げることで電子部品メーカーである TDK の組織としての CO2 排出削減貢献量を算定した。

諸報
一般投稿
事例論文
  • 王 任卓, 納富 信
    2021 年17 巻2 号 p. 110-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/26
    ジャーナル フリー

    本研究では、省エネルギーを中心とした地球温暖化防止に向けた市民の意識向上と行動促進を目的として、環境配慮行動モデルに基づいて内容を設定した講義形式の教育プログラムを企画・立案し、それを 4 回にわたる連続講座として実施した。主な受講者は埼玉県本庄市内在住の 60 ~ 80 代の市民で、講座の形式と内容は、情報提供による聴講形式を中心としながら、省エネ体験要素と日常生活における省エネルギー行動の自己チェックなども織り交ぜた、知識と実践を関連付けるものとした。結果として、地球温暖化および省エネルギー取り組みに関する各種情報の系統的な導入により、受講者の地球温暖化に対する「危機感」と「関心度」が有意に変化し、「危機感」と「関心度」の変化の間に強い相関性を確認した。また、地球温暖化防止につながる“省エネ取り組み”に関する情報の導入により、「取組動機」が有意に変化し、省エネ取り組み行動の変容も認められたことから、本教育プログラムの効果も確認された。

  • 金澤 智尚, 松本 光崇, 吉本 光宏, 菅原 道雄, 吉村 彰大, 松野 泰也
    2021 年17 巻2 号 p. 124-135
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/26
    ジャーナル フリー

    持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みとともに、循環経済に根ざした環境への取り組みが世界的に注目を集めている。建設機械業界では、製品の再生サービスが環境負荷やメンテナンスコストの低減に大きな影響を与えている。本稿では、鉱山機械部品にリマニュファクチャリングを適用した場合の環境への影響を評価した。本研究では、鉱山機械の旋回減速機および走行減速機に使用される歯車部品の評価に焦点を当てた。具体的な評価は、再生および再生技術の適用による環境影響に関する評価であり、各製造および再生工程を調査することにより定量評価を行った。その結果、製錬工程と熱処理工程の地球温暖化ポテンシャル(GWP)が、対象部品の多くを占めていることがわかった。一方、資源消費に関しては、部材の製造工程が約 100%と大半を占めていた。これらの結果から、再生技術適用により、鉱山機械 1 台当たりのライフサイクルで 20 ton-CO2 eq の削減効果があると予想され、資源消費に関しては、約 5.4 kg Sb-eq/LC 低減される。

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