計量国語学
Online ISSN : 2433-0302
Print ISSN : 0453-4611
29 巻, 8 号
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論文
  • 動詞に接続する文法項目の場合
    中俣 尚己
    原稿種別: 論文
    2015 年 29 巻 8 号 p. 275-295
    発行日: 2015/03/19
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     この論文では,日本語の初級文法項目の中でも多くの動詞と接続して使われるものと,限られた動詞とのみ接続して使われるものとがあることに注目し,その度合いを「生産性指数」として可視化することを目的とする.7つの指標を候補として立て,BCCWJ から 103 項目を検索したデータを対象にそれぞれの指標を計算して比較するという手順を踏んだ結果,Guiraud Index の式を流用したものが最もよい結果を出すことがわかった.このようにして可視化された生産性のランキング表からは高生産性語は時を表す項目に偏り,また,話し言葉的な項目の方が生産性が低いという傾向が一貫して見られるなどの特徴が見出される.生産性の大小がわかれば,その項目を色々な動詞で練習する必要があるのか,それとも限られた項目だけを重点的に覚えればよいかがわかるため,日本語教育における導入法や指導の比重の議論を行う際などに重要な情報となる.
研究ノート
  • 村上・今西(1999)を中心に
    小野 洋平
    原稿種別: 研究ノート
    2015 年 29 巻 8 号 p. 296-312
    発行日: 2015/03/19
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     源氏物語の研究の記念碑である村上らのデータベースに基づき,統計的な解析を行ったのが村上・今西(1999)である.彼らは源氏物語の全巻を4グループにわけ,数量化3類の2次元布置から,それらの成立順序に関して示唆的な結果をもたらした.しかし,本研究では村上・今西(1999)の数量化の解釈をより明瞭にするために,数量化3類の5次元布置の座標から計算される距離データに関してクラスター分析にかけたが,解釈不能な結果しか得られなかった.そこで,次に村上らのデータに分散安定化変換を適用し,変換後の値をクラスター分析にかけることで,村上・今西(1999)で推測された源氏物語の成立論に関する結果を示唆する樹形図を得た.この結果は,村上・今西(1999)の推論とは矛盾しないが,より統計学的に厳密にいうと,高々2グループの成立順序を示唆するものであった.今後は,より綿密に,文献学的知見と統計学的手法の融合による,相補的な考察が深められるべきである.
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